GATE SF自衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:炎海

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風邪で鼻水と咳がヤバい……。
頭もボーッとしてきて、半日くらい寝てましたわ。

とにかく月曜以内に投稿しなきゃって慌てて仕上げたのがこちらでございます。


第十四話  その過去は既に無くー What is your lost property?

 瓦礫の中を、浮かぶように歩く。

 そこはかつての故郷、その残骸。

 

 無造作に壊されたそこには、過去の思い出も、今を生きる人々すらもいない。

 

 所々に転がるのは、人の形をした炭だ。それは片付けに割く余裕もなく、放置された人だったもの。

 

 ふと、足に何かを引っ掻ける。拾い上げると、それは焼け爛れた小さな人形だった。

 

 視線の先には、まだ色を留めた死体が並べられている。炭化していない、人だと分かる死体だ。細胞のサンプルを採ると、次々に燃やされていく。葬儀も身元確認も出来ないほど、そこには死が溢れかえっていた。

 

 防護服の中からでも分かるほど、強い日差しが続く。セミが鳴くことも、風鈴の音が響くこともない夏の太陽が、散乱する死体を腐らせる。

 

 悲しむ涙も、慟哭する声も枯れ果てた。昨日まで響いていた嗚咽も、嘔吐の声も、もう聞こえない。瓦礫の音と、テントから響く呻き声だけが、この光景が現実だと教える。ミルフィーユの様に混ざった思考に、その雑音はよく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前11時13分、東京都銀座。二つの世界を繋ぐ門が現れるよりも少し昔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京は、地獄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い……」

 

 特地、アルヌス基地。銀座へ続く門の前で、伊丹は他のメンバーの到着を待っていた。今回の彼の服は野戦服ではなく、オリーブドラブの軍服姿である。それも冬服の。

 

「あいつらまーだ準備してるのか?」

「遅いっすね……、なんかあったんすかね?」

 

 隣には倉田が見送りに来ている。今回彼は居残り組となるのだ。

 やることのない伊丹は、すっかり様変わりした基地を眺めていた。

 

「しかしまあ、任務に行ってる内に随分と変わったもんだな」

 

 既に施設の数割が、プレハブからコンクリ製の建物に置き換えられている。建物の本格的な設営に伴い、様々な施設も増設されていた。

 

「電脳用のナノマシン施設に、義体用のメンテナンス施設。………なあ倉田、あれ何に見える?」

「三つのわっか………、生物災害マーク?」

「だよなぁ、まさか生体兵器の持ち込みまで想定されているのか?最近でも旧式の野生化が確認されていただろうに」

 

 伊丹と倉田の目線の先には、生体兵器を示す、所謂生物災害マークのついた建物があった。

 

「でも投入されたって噂もないですし、施設だけつくったのかも?」

「それ、近々投入する可能性があるってことだろ。いよいよヤバくなってきたなぁ」

 

 建物の付近には、様々な荷物が置かれている。搬入作業も続けられている事から、作りかけて放置、ということではないだろう。

 

「なんにせよ、ろくなもんがこねえのは明らかだな。特地も日本も、問題だらけだ」

 

 ニュースサイトを開きながら、伊丹はそう愚痴る。視界投影された画面には、様々な情報が並べられていた。

 

「IRシステムの事故に始まり、セラノゲノミクスへの不正アクセス事件。月面に着地した火星生物とのファーストコンタクト。日本も賑わってきたねぇ」

「代理戦争にシフトしたといっても、大戦期のいざこざは未だ継続中。中東辺りじゃ、対テロ名目の戦力投入が未だに続いている状態ですしね」

「資源は欲しい、だが安易に戦力をまわすこともできない。難儀なもんだよ」

 

 門の向こう側、分かりやすく言うならば地球側とでも称するべきか。そこでは未だに情勢は安定していないのだ。除染技術の発達により、核事件による放射能汚染の解決こそ目処はたったが、資源問題、放射能汚染以外の環境問題は終わらない。石油資源の枯渇は間近であり、新たな環境汚染を生み出す兵器も運用され始めている。加えて世界大戦による急激な環境問題の同時多数出現。今の地球はゆっくりと、だが確実に死へと向かっていっているのだ。各国が特地への期待を寄せるのも、無理もない話である。

 

「にしても、その清浄な環境を汚すような兵器を、わざわざ持って来ますかね?」

 

 倉田の意見も最もだ、自分達が求める資源には、環境資源も含まれる。だが、生体兵器は暴走すれば、その環境を汚染しかねないのだ。

 

「上の連中としては、多少のリスクを払ってでも、特地側の統治機関との関係を持ちたいんだろうよ。それこそ、核を向けて脅してでもさ。それに生体兵器は機械に比べ、ある程度は支援がなくとも単独で運用できる。場合によっちゃ、俺たちを残して門が閉じる可能性もあるからな」

 

 『安全性』、という考えを度外視すれば、生体兵器は最も優れた運用コストを誇る。無論、それは兵器としては落第もよいところではあるが、事実そういった運用がなされたケースは存在する。しかし………。

 

「その運用をした結果が、生体兵器の野生化でしょうに。山狩りした生体兵器の腹の中から、過去にMIA扱いされていた兵士の残骸が見つかったケースもざらじゃないですし。死体ならマシな方、最悪は同化して、ユニットの一部として取り込まれていた、なんてこともありますしね。払い下げの旧式だと、腹を裂いたらテロリストがでてきたとかも聞きますし」

 

 倉田が溜め息をつきながら、過去にあった生体兵器による事故を述べる。事実、追い詰められた兵士が暴走させた事例も多いのだ。

 

「なんにせよ、俺らにできることは少ししかないさ。この特地を偵察し、上に報告する。それだけさ」

「その一つの国会招致、まあ実態はただの吊し上げでしょうが……」

 

 吐き捨てる倉田を、伊丹は暗い笑みを浮かべながらなだめる。

 

「まあまあ、形式も大事よ倉田クン。政治家はいつでも世間体を大事にするからな」

 

 暖かい日差しの中、門の近くの一部のみが暗く淀んだ空気を漂わせていた。理由は言うまでもなく、この二人の雰囲気である。

 そんな雰囲気をはらうように、明るい声が響いた。

 

「お待たせー、イタミー!!」

「隊長すみません、遅くなっちゃって」

「本っ当に遅いよ!!なんかあったのか?」

 

 声の方を振り向くと、蜂蜜のような金色の髪を揺らすテュカと、その手を引く栗林の姿が見えた。その後ろにはレレイとロウリィ、富田の姿も見える。

 

「あー、この娘たち、思ったよりも時間にルーズで。荷物を纏めたりするのに手間取っちゃったんです」

「あーね、そういやこっち側、時計とか無かったわ。つーかこっちの時計も役に立たないんだっけ。それじゃあしかたないか」

 

 時計を見る習慣が無いなら、この時間のルーズさも頷ける。それに公転や自転の周期も、こちらの地球と少し違うらしい。そのため、持ってきた時計をそのまま使うと、必ず少しずれてしまうのだ。

 

「えっと、レレイにテュカ、ロウリィも入って三人、富田と栗林もいるな」 

 

 栗林も冨田も、伊丹と同じ制服姿である。レレイとロウリィは普段と変わらない姿。テュカは、いつものTシャツとジーンズでは寒いだろうと、上からセーターを着せられている。

 欠けているメンバーが居ないか、伊丹は点呼をとっていく。ここにあと二人の人物が加われば、全員揃うのだ。

 伊丹がイライラしながら靴で地面を叩いていると、横からジープが滑り込んできた。

 

「よっ、待たせたな伊丹」

「遅せぇよ。で、例のお二方はいるようだな」

 

 伊丹の問いに、柳田は左手の親指で後ろを指す。すると、後ろから二人の女性が出てきた。ピニャとボーゼスである。

 

「書類は確認したぜ。だが、本当にあれだけでいいのか?」

「俺がランボーやメイトリクス大佐のような、正面切ってドンパチやる人間に見えるのか?かえってデットウェイトになるだけさ」

「そうかい、まあ好きにやりな」

 

 そう言うと、柳田は伊丹のポケットに紙幣を突っ込む。

 

「陸将からの詫びだ、なんか美味いもんでも食えってさ」

「お前今のす○家の値段知ってて言ってるだろ?え、なに?皇女さまにマクドでも行けってか?」

「ハンバーガーも現代の象徴だぜ?まあ支給がこれくらいしか出なかったんだがな」

「悲しいこと言うなよ……」

 

 目を逸らしながら口笛を吹く柳田に、伊丹は眉間を押さえながら突っ込む。まあ、今回は非公式の来日、仕方ないだろう。世知辛いのはいつものことである。

 気を取り直し、伊丹は全員へ向き直る。興味、怖れ、好奇心、皆それぞれ異なる表情をしている。

 

「全員よしっと。忘れ物は無いな?なら出発するぞ」

 

 伊丹の確認に、全員が頷く。安全装置や、各種保護機能が解除され、門を囲うドームが開いていく。中から現れたのは、周囲のコンクリート製の建物とは異なる、石造りの建造物である。

 『門』、特地と日本を繋ぐもの。その全てが露となる。

 

「これが………、門」

 

 伊丹の隣で、ピニャがそう呟く。その顔は、少しの好奇心と、恐怖の混ざった表情であった。

 伊丹は先行し、第一歩を踏み出す。続いてロウリィ、レレイテュカが入っていく。

 こうして、日本と帝国、その最初の来日が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが………、日本」

 

 それが、日本、銀座へと降り立ったピニャの、第一声であった。門の向こう側の景色を目にしたピニャは、もう何度目かと言うほどの驚愕に襲われていた。

 

「そびえ立つ摩天楼、都市中を埋め尽くす光の文字、これが、これが帝国が戦争を仕掛けた相手……」

 

 ピニャの目からでもわかる、圧倒的な技術力の差。そのあまりの違いに、ピニャは圧倒されていた。

 今回ばかりは、圧倒されていたのはピニャ達だけではない。レレイ、テュカ、ロウリィも、特地との違いに驚いていた。

 タイムスリップした昔の人のよう……、いや、事実似たような状態である彼女達を後ろに、伊丹は警衛所で手続きをしていた。

 全員分の手続きが受理され、後は荷物検査のみというところに差し掛かった時、彼は後ろから声をかけられた。

 

「どうも、情報部の駒門といいます。今回のご案内を務めさせていただきます」

 

 振り返ると、そこには黒服の集団と、それを率いる男が立っていた。

 

「どうも、今回参考人招致に呼び出された伊丹です」

 

 その男の挨拶に習い、伊丹も自己紹介を返す。

 

「しかしまあ、厳重なもんですね」

「おや、わかりますか?」

 

 にやりと笑みを浮かべる駒門に、伊丹は親指で向こう側のビルを指した。

 

「味方とは言え、狙撃手に狙われてボーッとしてるほど能天気ではないつもりなんでね。銃口に背中を預けるならともかく、銃口の真ん中へ飛び込むのはごめんさ」

 

 その指摘を受けた駒門は、くっくと含むような笑みを浮かべる。

 

「おやまあ、噂通りの奇妙な人だねぇあんた。ほんと、調べる人を飽きさせんわぁ」

「そんなに楽しい?自堕落なおっさん調べても、つまらんだけでしょ?」

 

 表情を一転させ、へらへらとした笑みを浮かべる伊丹に、駒門は首を振って返す。

 

「伊丹耀司33歳、陸上自衛軍二等陸尉。大学卒業後とほぼ同時に入隊し、幹部候補生をビリから二番目で卒業。電子戦に見るべき所は多少あるものの、それ以外は特に無し。あー、いや、目をつけられない程度に下か。その後はレンジャー資格を取得し、何故かそのあと『S』で活動記録が見つかる。………これを見て興味をそそられない奴がいますかねぇ?」

 

 心底面白そうに手帳の内容を読み上げる駒門に、伊丹は頭を掻きながら笑う。

 

「いやー、いるんじゃないですかそういうの?たーだの駄目なおっさんの経歴でしょそれ。まあ電子ドラックに嵌まって、自分で自分のこめかみぶち抜いたやつよかマシでしょうけど」

 

 伊丹の後ろから聞こえる、世界を呪うような悲鳴を聞きつつ、駒門は目を細める。

 

「いやいや、これだけでも充分楽しめましたよ。でもね、ちょーとおかしなデータがありましてねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つからないんですよ、あんたが『S』で活動していた記録が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に、伊丹は頭を掻く手を止める。沈黙がその場を支配し、両者の不気味な笑顔が彩る。

 

「いえ、言い方を変えましょうか。正確には『S』に入ってしばらく後、大戦末期から終戦直後までの活動を示す記録が、ごっそり無いんですよ。まるでその間、伊丹耀司という人間が存在しなかったようにね」

 

 頭から手を離し、ポケットに突っ込みながら、伊丹は口を開く。

 

「偶然無かったのでは?当時の戦火で焼失したとか……」

「いや、いや、いや。よーく調べてみるとその直前、あんたが当時の分隊から異動していた記録が見つかったんですよ。例の、特戦第七課へね」

 

 その言葉に、伊丹は目を細める。両者の間に、濃密なまでの殺意が高まっていた。

 

「それ以上の情報は?」

「『私』は知らんですがね。まあ、引き際位は心得ていますわ」

 

 そう言うと、駒門は伊丹へ背を向ける。黒服達へ幾つか指示を出すと、再び顔を向けた。

 

「あんたの経歴はともかく、そのお人柄は信頼できるさ。まあ、少なくともあたしは尊敬しとるよ、あんたのことをな」

 

 その言葉に、今まで放っていた殺気を沈めると、伊丹は口を歪めて笑う。

 

「そりゃどうも。んじゃ、俺も期待させてもらいますよ、駒門さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀座駐屯地から国会議事堂へ向かう道。伊丹一行は、用意された貸し切りバスに乗車していた。

 

「おたくの女性自衛官さん、まーだ調子治らないんですかねぇ」

「あそこだけルイージみたいなオーラ出してやがる………。おーい!おい、栗林ー!」

 

 伊丹と駒門の目線の先には、バスの後部を占拠し、緑の弟もかくやの負のオーラを放出する栗林がいた。

 

「余程ショックだったんでしょうねぇ、あれ」

「俺だって傷つくときゃぁ傷つくのよ、まったく」

 

 とりあえずの目的は、ラフな格好のテュカの衣服をどうするかである。流石にジーンズにセーターで、国会へ向かわせるわけにもいくまい。

 

「ホロでもいいんだが、解けたときが面倒だしなぁ」

「その辺はシビアですからねぇ。特定する輩は絶対出てきますし、後々彼女もホロだったんじゃないかとか………、言い出す阿呆もいないとは限らないですし」

 

 そんなことを話しながら、バスは銀座の街を抜けていく。伊丹が特地へ派遣された後から、随分と変わったものである。

 

「国際神姫杯ももうすぐか……。しかしまあ、随分とホロ看板が多くなったもんだな」

 

 銀座の街の看板は、物理的なものから、ホロを用いた非実体型の看板が多くなっていた。

 

「銀座事件の後、壊されたものの修復の名残ですねぇ。ホロ看板は、機材ひとつで自由にデザインを変えられますから」

 

 その分、ホロデザイナーの仕事は山のように増えましたが、と駒門は笑う。ホロに使用される機材は高価ではあるが、一度手に入れれば何度でも自由に変えられる。銀座事件で壊された物の多くが、ホロで代用されている理由である。

 

「虚飾の街、なにもかも偽物。世界中が特地に憧れるのも、実はそんなとこにあるからかもしれませんねぇ」

 

 今の時代、装飾の多くはホロで代用され、人の身体ですらも替えが利く。本物である理由も、薄まり始めているのだ。

 

「今じゃ合成品の食事だって、本物に近い味がする。電脳にソフトをインストールすれば、そこらの泥ですら高級料理に早変わりさ。ならば本物の価値とは?何故天然物にこだわる?…………そんなことを、話し合ったこともありましたね」

 

 車窓をぼんやりと眺めながら、伊丹は議論の内容を思い出す。少し昔、自分の上官との会話だ。あのときの答えは、一体どんなだったか………。

 

「ま、あんまりにも阿呆らしくなって、そんな考えドブに捨てましたけど。どーせどれだけ考えても、バカを見るときは見るもんだ。なら、嘘でも存分に楽しみましょうや」

 

 それを聞いた駒門は、愉快そうに吹き出した。

 

「くっくっ、流石は二重橋のお人だ。そんなことを言われると、悩んでる方が馬鹿らしく思えてくる。あそこに回されたのも納得ですわ」

「勘違いも甚だしいんですがねぇ。ま、ありがたく頂戴しときますよ」

 

 駒門の言葉に、伊丹は心外そうに肩をすくめた。事実、別に伊丹には名を馳せるようなことをした自覚も無いのである。

 

「その時出来ることを、全力でやった迄なんですがねぇ。何を間違えたら英雄何ぞになるのか。やだやだ、早死にしそうでやーだやだ」

 

 事実、その重荷のせいで、要らぬ負担を背負うことも少なくないのだ。伊丹としては、是非とも代わってもらいたいものである。

 

「持つものに持たざるものの苦しみはわからぬ。ま、本人の自覚以上には以外と合ってると思いますよ」 

「やめてくださいよぉ、心底やってられん。あんなもの重すぎるんですよ」

「まあ、私は適任だと思いますがねぇ」

 

 伊丹はやだやだとばかりに耳を塞ぐ。本当に、彼にしてみれば重いだけなのだ。

 

「あー、そうそこ。あそこで飯にしましょう!」

 

 伊丹は話の話題を強引にずらした。駒門が笑いながら、無線に指示を出す。

 そんなこともあり、一行は少し早めの昼食をとるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本を見に来てるのに、肝心の昼飯がマクドですか………」

「そう言うなよ富田、飯にこんだけしかでねんだからさ」

「世知辛いっすねー」

 

 そんなことを喋りながら、栗林と冨田、伊丹はMの看板て有名なハンバーガーをパクついていた。

 彼らの近くでは三人娘、そしてピニャとボーゼスが同じようにバーガーを食べていた。

 どうやら彼女らはこの店の誇る、注文からの高速の品だしに驚いているらしい。

 

「この量の料理、注文を、これだけの速さで出すとは………」

「もぐもぐ………。殿下、戦時の食糧としても中々。はむっ……、むぐむぐ。」

 

 大量生産大量消費を誉められてもなぁ、と伊丹は思った。しかし、特地にしてみればこの大量生産もまた、大きな差と言えるだろう。

 近年のマクドは進化し続け、その速度は他の追随を許さぬものとなっている。速さのマクド、味のモスとは誰が言ったのか。

 

「まあ、満足しているならいいか」

 

 美味しそうに食べている彼女達を見ると、そんな心配もどこかへ吹っ飛んでいく。

 

「さて、これが終われば国会召致か………。まあ、なるようになるかねぇ」

 

 バーガーをかじりつつ、伊丹は空を見上げる。冬の空はどんよりとし、今にも降りそうな暗さであった。

 

 




用語集

『特戦第七課』
頻発する対テロ戦争、各種代理戦争に伴い、新たに特殊作戦群内に設立された部隊。しかし、特殊作戦群内に設置されたものの、その命令系統は完全に独立しており、事実上全く別の部隊と化している。情報セキュリティにおいては最上位に位置する部隊でもあり、その実態を知ることはまず不可能。一部では書類上、形しか存在しない『隠れ蓑』の部隊という噂もある。



すみません、今回風邪でボーッとしていて、執筆に回す余裕がほぼありませんでした。そのため見落とし等がありましたら本当申し訳ありません。日曜日に寝落ちして、予約投稿出来ませんでした。

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