Fate/Grand Order 〜Also sprach Zarathustra〜   作:ソナ刹那@大学生

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幾つか言いたいことがあります


まず、お気に入り登録50突破ありが……と思ったら300超えてる!?えなんで?
思わず携帯で見たとき、
「えなんで?えなんで?………えなんで?」って携帯に聞いちゃいましたからね?
ある時UAが20ぐらいから一気に120近くに伸びたりとか、やっぱり評価バーの存在は大切ですね。評価してくださった方々ありがとうございます。


続いてですね、言いたいことというか懺悔ですね。

ぶっちゃけますと、このSSを書き始めた時は、「もしFGOの主人公が藤井蓮風だったら?」ぐらいの気分で書いてました。
けれど、沢山の方々からいろんな感想に意見を頂いて、刺激を受けました。
だって円卓vs黒円卓なんて考えてなかったもん!けどそれ面白そうって思っちゃったもん!
なんかこういうの面白そうってのがあったらどうぞ言ってください。ただ反映する保証はありません。俺個人が面白そうって思ったやつのみ、本編或いは番外編という形で使うかもしれません。そん時はご了承ください。まぁ見たいなら自分たちで書いてください!ってことです要は。

改めて、皆さんありがとうございますm(_ _)m
まさかこんなに支持頂けると思ってませんでした。
受験勉強の合間に書くので、更新ペースは「みんなが忘れた頃にやってくる」だと思いますが、気長にお待ちください。
では、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m



第3節 影との対峙

戦乙女。ヴァルキュリア。

北欧神話において主神であるオーディンに仕える女性たちのこと。戦死した英雄たち --エインフェリア-- を来たるべき最終戦争の兵士として収集するため、天上のグラズヘイムにある神々の神殿 --ヴァルハラ-- へと魂を送る役割を持つ。いわゆるそれは、死神のようなものである。

 

さしずめ地を駆ける様は閃光。素早い剣技を持ってして、這い上がる屍たちを蹴散らしていく。

それは誇り高き騎士。例え今はその信念は消え失せていようと、確固たるものであったと疑う余地なく伝わってくる。

無駄なく洗練されたその疾走は、戦乙女の名に恥じぬ代物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァルキュリア!?ヴァルキュリアってあの北欧神話のヴァルキュリアかい!?」

 

ドクターがその名に驚愕した。

まぁ、気持ちは分かる。日本でもかなりメジャーな名前だ。おそらく最近の若者の殆どは、名前ぐらいは知ってるはずだ。主にアプリゲーム等で。

 

「北欧神話で有名な、神々の最後の戦争であるラグナロクのための戦士たちの魂を集めるオーディンの使い。そのヴァルキュリアだと!?」

 

詳しい説明をしてくれたドクターは、一瞬の間を置き打って変わって落ち着いた口調で続けた。

 

「…けど、ヴァルキュリアが召喚されるのってあり得るのか?半人半神、神霊に近いとも言える。それに一個人の名前じゃないし…」

 

サーヴァント事情は詳しく知らないが、どうにも単純な英霊と神霊を呼び出すのとはわけが違うらしい。滅多にないことだとか。先ず普通の方法では難しいと。

それにヴァルキュリアは、オーディンに仕える女性()の名称だ。「ポチ」じゃなくて「犬」だ。まれに、集合体として召喚されるらしいが、先に同じくこれもレアなケース。

 

「あのぉ…ですねぇ…」

「どうかしました?」

 

恐る恐る手を上げて、何故か申し訳無さそうに口を開くヴァルキュリア。めっちゃ目泳いでる。

 

「その、なんと言いますか…ヴァルキュリアと言うのは本名ではなくてですね…」

「…え?」

「魔名と言って、あだ名と言いますか…二つ名と言いますか」

「じゃあ本名は?」

「………分かりません」

「………え?」

 

唖然。呆然。愕然。ちょっと何言ってるかよくわからない。

自分の名前がわからない?なんだそれ?

 

「私には過去の記憶がないんです。私が何者で、いつの時代の人間か、どのように生きたのか。…分かることは少なくて、何者かから与えられた「ヴァルキュリア」という魔名。そして私が持つ能力。最後に世界の今についてと、私がすべきこと。原因は分かりませんが、そういった知識以外のものが消失しています」

「………」

 

なんてこった。喪失ではないにしろ、記憶の損失は色々と厄介である。

人間誰しも一長一短だと言うのならば、それはきっと名高き英雄も変わらないだろう。およそ完全な万能などそうそう存在せず、だからこそ英雄は最終的にその物語の幕を閉じたのだから。

サーヴァントの真名を知るというのは、すなわち強みと弱みの両方を知るということ。仮に顕著な弱点があると言うならそれをマスターが知らないというのは、万が一の時に対処が出来ず、窮地に陥る可能性が出てくる。

世界の救済なんて、えらく大層な使命を果たす中、そういう事態は避けなければいけない。

 

「…ドクター、こういうことってあるの?」

「うーん…なにせ、この聖晶石を触媒とした『フェイト』による召喚ですら、本来ならばあり得ないことだからね。それにまず英霊の召喚成功例が少ない。召喚システムに何か異常があったか、そもそも聖晶石の使用という強引な方法のための影響か。なんにしろ今言えることは、今の完全に復旧しきっていないこのカルデアでは、()()()()()()()()()()()()ということだ」

 

ならなんでこのタイミングで召喚させたのか?という疑問は置いておく。それが他ならぬ自分たちのことを思った親切心による施しだって分かってる。その感謝を仇にして返すような無粋な真似はしたくない。

 

「言われてみればおかしな話よね。その格好からしても」

 

所長が疑問に思ったのはヴァルキュリアの姿。黒い軍服。

 

「その服装は、どう見てもヴァルキュリアのいた神話の世界の物とは思えないわ。むしろ近世…いや近代かしら。比較的最近の人物なのでしょう」

「所長に賛成。ここ最近で軍人の英雄となると…第一か第二の世界大戦ぐらいかもね」

 

あの凄まじい時代を生きたというのなら、さぞかし強い心をお持ちだろう。あいにくとそのあたりの歴史は詳しくないから、該当しそうな人物は浮かんでこないのだけど。

 

「…しかしマスター」

 

ただ黙って耳にのみ意識を傾けていたヴァルキュリアが、ただ一心に俺の目を見て芯の通った言葉で紡ぐ。

 

「自分が何処の誰かも分からないような私ですが、数少なく知るこの力は、貴方の剣としてふさわしい実力だと自負しています。数少なく知るこの仮名に誓って、マスターの力になってみせます」

 

跪いて俺に忠誠を誓うあたりまるで騎士のようだ。

騎士道精神など俺は詳しく知らないし、もちろん持ち合わせてもいない。

現代に近い軍人ということだから、フィクションや中世に出てくるような騎士ではないだろう。騎士であるという文化が残った、おそらくヨーロッパの方のもの。

当然日本にいた俺にその感覚は理解出来ない。けれど、それが誇り高く、純粋に崇高なものだとは分かる。

サーヴァントとして現界した彼女がマスターである俺に忠義を示すのは当然のこと。騎士である彼女はそう思ってるのだろう。

けど、それが俺の望んでることと一致しているとは限らないわけで。

 

「顔を上げてくれってヴァルキュリア。そういうのに慣れてない身からすると、むしろ緊張するというか、逆に気を使うというか…」

「けれど、私はマスターの…」

「藤井蓮」

「…え?」

「いや、そういえば名乗ってなかったなぁと思ってさ」

 

サーヴァントに名乗らせておいて、自分は名乗らないなんてなんと礼儀知らず。それこそ恩を仇で、というやつだ。

 

「藤井蓮。俺の名前。よろしく頼むぜ?忠臣じゃなくて()()としてさ」

「…蓮、ですか?」

「そう、蓮。別にマスターと呼ばれることは嫌じゃないけど、(キング)に仕える騎士(ナイト)よりかはさ、心持ちは共に苦難な道を歩いていく親友(フレンド)って方がやりやすくていいや」

「蓮…貴方は…」

「とまぁそんなわけで、頼りにしてるからさ。さっきみたいに跪くとか無しで。そこそこに慣れ親しんでいこうぜ、な?」

 

お互いにお互いが命を預け合う関係。サーヴァントがいなければマスターは無力だし、マスターがいなければそもそもサーヴァントは存在出来ない。切っても切り離せない。だからこそ信頼が必要だと思う。そんなただの損得とか利害の一致程度でやり抜いていけるとは思えない。

俺が求める関係ってのは、前後ろに並ぶんじゃなくて、隣に並び立って歩いていくものだ。そりゃあ実力とかそういうので言えば、引っ張ってもらうのは仕方ないだろうけど、そういう理屈は抜きで隣を歩いていたい。同じ方向を見ていたい。互いに手を取り合っていたい。

仕方ないで済ませるのは怠惰過ぎる。一度死を終えて、2度目の仮初めの命だとしても、それを簡単に終わらせていいはずがないんだから。

本来なら死人が生き返るなんてことあってはならないと思うが、サーヴァントはこれとはまた別の話だ。生き返るというより、幽霊が現れたという感覚の方が近い。いや幽霊は苦手だけど。

そんな幽霊だとしても、俺のために…というのは烏滸がましいが、戦ってくれる相手に真摯でいなければならない。それがマスターである俺の在り方だから。

 

「……はい!よろしくお願いします、蓮!」

 

その時の彼女の笑顔は、見た目相応の輝かしい少女のものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の剣になる。

その言葉に違うことなく、戦場を駆ける様はまさに戦乙女(ヴァルキュリア)。所詮彼女の前では、屍は屍に過ぎない。

生者ではない。ましてや戦士の成れの果てというわけでもない。現世に未練を残した無惨な魂の残滓。おそらくこの謎の大災害によって生を終えた人たちだろう。わけも分からず死んだとあれば、それは確かに霊となって現れよう。もしかしたら、自分が死んだことに気づいてないってこともあるかもしれない。

ならば、ならばこそ、その彷徨う魂に終わりを刻み込み、正しい世界へと帰るように、現世(ここ)との繋がりを断たねばならない。

それを無慈悲と嘆くのか、救済だと賞賛するのか。そんなのは大した話じゃなくて、結局のところ、このままでいいはずがないという俺の押し付けたエゴ。言ってしまうならただの障害だ。それ以上でもそれ以下でもない。心の中で手を合わせ冥福を祈るのみ。

魂を狩り、黄泉へと送る。やってることはそれとなんら変わらず、まさしくそれは死神だ。

 

「…やっぱり凄いんだなサーヴァントって」

「はい…。ヴァルキュリアさんのあの動き、わたしとしても尊敬の一言に尽きます。特にあのスピード、俊敏性に長けていると言われるランサーのクラスにも引けを取らないのではないでしょうか」

 

洗練された無駄のない動き。剣尖で穿ち、刀身で斬り払い、惑うことなくこの荒れた大地を駆ける。それはさしずめ舞踏(タンツ)のよう。思わず見惚れてしまうような、確かな覚悟が見えるものである。当の彼女自身は何も覚えていないのだろうけど。

 

「…なぁマシュ」

「はい?なんでしょう?」

「………俺がマスターでいいのか?」

 

俺の何となくな質問に一瞬目を見開いて、俯向くようにゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「それは……わたしには、先輩以外のマスターという存在の経験がありませんし、比較のしようがありません。先輩がマスターとして良し悪しどちらかを判断するには、経験も時間もまだ足りないです。…あ、でも!」

 

下を向いてた視線が俺の視線と合致する。

 

「それでもわたしは、先輩がマスターで良かったと思っています!」

 

俺を見上げるその目はとても一生懸命で、あまりにもただ俺だけを純粋に見て必死に取り繕うものだから、思わず笑ってしまった。

 

「あ…ちょっと先輩!笑うことないじゃないですか!」

「ははは…いや、可愛らしいなって思って」

「か、か、可愛い…ですか…!?」

 

途端に顔を赤くしてしどろもどろする。加えて俺をポコポコ叩いてくる。

その様子は実に微笑ましい。けど、いくら手加減しているからってサーヴァントによる打撃は痛い。

 

「マスターあの〜」

 

叩かれてだんだんアザが出来つつある中、気だるそうに声をかけた主の方へ振り向く。

 

「私が一生懸命サーヴァントに相応しい行いを!と思って、死霊退治をしている最中にですね?そうやってあからさまにイチャつかれると、こっちもなんかやるせないと言いますか、モチベーションが下がると言いますか、今すぐ光の粒子になって聖杯の元に帰りたくなるんですよね。要はリア充は爆ぜていいと思います」

 

最早ただの私怨じゃないかそれは。

 

「そりゃあ私はリアル年齢を数えればお婆ちゃんでしょうし?サーヴァントなんて結局のところ孤独ですしね。…えぇそうですよそうですとも!どうせ私は生きてた頃だって、どっかの神様のせいで結ばれることなんて無かったんですよ!一生孤独で戦場の中で、騎士としての誉れなんか謳っちゃってのたれ死んだんですよ!女として負け組なんですよ!」

「…とりあえず、ごめん」

「わぁ〜ん!蓮の優しさが傷に塗りたくられる塩のようです!身寄りがなくて寂しいボッチの私とオルガマリーは、いったいどうすればいいのですか!?」

「ちょっとヴァルキュリア!なんでさらっと私を混ぜてるのよ!?」

 

陰の薄かった所長をごく自然に巻き込み、さらには自分以上に惨めにさせる。天然なのか故意なのか?どちらにしろエグい。さすがはサーヴァントになるほどのことはあるということか。

 

「蓮!私にも構ってください!」

「仮にも英雄がそんなこと言わないで」

 

キャラが違いすぎるでしょ?出会った頃(今話冒頭)の時のあんたはどこへ行ったんだ。

 

「そっちの四人!仲がいいことこの上ないけど、すぐに逃げて!サーヴァント反応だ!」

「なっ…!」

 

ドクターの緊迫した連絡が届いてすぐ、俺らの目の前に黒い靄のようなもので覆われた人の形をしたなにか。

確かにさっきまでの死霊とは、存在感というか、完全に別物なんだと即座に理解させられる。

 

「逃げるって言ったってもう無理よ!…マシュ、ヴァルキュリア!2人で相手すれば問題ないはず、迎え撃って!」

「了解しました…!」

「えぇ、蓮と臆病なオルガマリーは下がっていてください!」

 

その言葉に大人しく従い、念のために所長に付いていることにする。どことなく落ち込んでるような気もするが、今はそこに触れる余裕がない。

 

「せっかくのいい所だったのに…よくも!」

 

いやまだ何も了承した覚えはないんだけど?

 

「マスター!宝具の開帳を申請します!」

「あぁ!任せた!」

「…この剣、我がマスターへと……」

 

切り替えが早すぎてついて行けない俺がいるけど、頼もしいったらありゃしない。

さっきまでとは打って変わり、その目は敵をただ見ている戦士のものだった。

 

「---Yetzirah(形成)

 

彼女の細剣に魔力が収束する。

それはその宝剣を取り巻くように渦巻き、同様の形となって覆い尽くす。

 

「閃光よ、戦友(とも)を照らす導となれ…!」

 

刀身に青白い雷が踊る。迸るそれは浄く輝いて見せる。

これが戦乙女の振るう幻想の具現。今は忘却された彼女の伝説の象徴そのものであり、この世の奇跡そのものである。

 

戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)…!」

 

宝具開帳。膨大な魔力がここに神秘を纏いて顕現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マシュ、私が貴方に合わせます。貴方は出来るだけあれの気を惹き付けてください。そこからは私がなんとかします。…行きますよ!」

「はい!」

 

そして瞬間疾走する。

微かな時の間もなく、影に染まったサーヴァントの眼前で打突を繰り出す。

 

「---!」

 

その速度は予想以上だったのだろう。僅かに防御が遅れ後ろへ多少飛ばされた。

その隙を閃光は見逃さない。すぐに片足で踏み切り追い打ちをかける。奔る雷鳴の如く無数に間髪なく繰り出される打突という名の雷撃。

瞬間にて一閃、神速を欲しいがままに、最大の利点であるその速度は結果を伴い形を成した。

 

「---!」

「…っ!」

 

だがそれでも攻めきれない。神速の嵐を全て、その鎖をつけた杭で弾き返してる。

確かに速さも手数もこっちが上回っている。相手も防戦一方、反撃の隙間はないように見える。

だがそれがいけない。こちらは宝具を開帳している。しかし相手はそれがまだだ。この状況下、拮抗などあってはいけない。

サーヴァントにとって宝具は切り札。文字通りに本来は出し惜しみするものだ。だが相手がサーヴァント。そして何よりも懸念があったから。しかもその懸念が予想以上に当たってしまった。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

ヴァルキュリアが一歩下がり、その背後からマシュが盾を叩きつける。

武具の大きさの差異による物理的威力の差。質量のある一撃を上から叩き込めば、当然ながら強いインパクトを生む。

だがそれも受け止められる。こっちは言わずもがなだ。明らかな経験の不足。サーヴァントになったばかり、加え元よりこういった戦闘に慣れていないマシュと、過去の伝説を現在に昇華した英雄。簡単に埋まるものではない実力差がある。

 

「てぇぇぇぇい!!」

 

ならばなぜヴァルキュリアは攻めあぐねているのか?

それは『フェイト』の仕組みが故。

聖晶石の使用による強引な召喚のため、本来の聖杯戦争のように特定された依り代を使う必要がない。が、それと引き換えに十分な力を持って呼び出すことは出来ない。

『フェイト』によって呼びされたサーヴァントは、本来サーヴァントにはない成長を求められる。

…いや、成長とは美化し過ぎだ。リハビリテーション、本来の力を取り戻すための回復行為。

サーヴァントの魔力を高めていくことで、英霊たちは一定の段階に達するごとに霊基が再臨されていく。その時々に失われた自らの能力を取り戻す。

言ってしまえばロールプレイングゲームのようなものだ。経験値を積んで新しい技を得る。順序は逆なれど、『フェイト』はそういった過程を強要している。

 

「くっ…!」

 

そのための均衡。召喚されて間も無い彼女が苦戦する理由。熟練度の不足により、本来の半分の実力も出せないだろう。

 

「だからと言って…!」

 

実力が出し切れない?それがなんだ?それくらいのハンディが何だと言う?

既に自分の剣は主に捧げた。

 

「任せた!」

 

そう、その言葉を授かったのだ。ならば、例え進んで従うお付きの立場になったのではないにしろ、ここで立ち止まってるわけには行かないのだ。

彼は信頼出来る。己が命を預けられる。初めて会ったはずなのに、()()()()()()()()()()()()()()()、そんな不思議な感覚。直感の域を過ぎぬ根拠も何もない推測だが、それは彼女の中で確かな理由であった。

 

「…マシュ!」

「はいっ!」

 

呼びかけに応じ、マシュは盾を構えそのまま一直線に、敵の正面へと突撃した。

 

「たぁぁぁぁああっ!!」

 

ただの正面突破。力任せにぶつかり、敵の動きを止める。

そんな策もない強行策を愚かと言うか?

否、確かに彼女1人であるならば、英雄相手にそのような手は失策だろう。

だが、彼女は1人ではない。

 

「……いただき、ですっ!!」

 

正面からの全力の一撃。かのサーヴァントと言えど、足止めさせられる。

その瞬間があれば速さを武器とする戦乙女には、死角を突き背後に回ることは造作もない。

 

「………」

 

その一閃は核を貫き、敵性サーヴァントは黒い塵となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ、なんとか…勝った…」

「大丈夫マシュ?ヴァルキュリアも怪我は?」

「いえ、これくらい問題ありませんよ!確かにちょっと疲れましたが、おかげで多少勘を取り戻せましたし」

「わたしも、大丈夫です…」

 

明らかに疲労が溜まっている。サーヴァントと対した初めての戦闘。疲れないわけがない。この間まで一般の少女だった子が、巨大な盾を振り回し自分のため、俺たちのために戦ってくれる。

 

「チッ…」

 

自分の無力さが憎い。ふざけるな。何が一緒に戦うだ。さっきの戦闘、まるで手が出せなかった。次元が違った。

…本当に、ふざけてやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---君は、力を欲するのかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---っ」

 

今、何か……。

 

「悪いけど休んでいられないんだ!さっきと同じ反応が、2つやってきている!」

「なっ…!」

 

神様は超えられない試練を与えないと言うが、だとしたらこれはどう説明するつもりなんだろう。測定ミスでは疑ってしまう。

 

「…迎え討ちます」

「けど今戦ったばかり…!」

「けど、逃げ切れるとも思えません。ここは私が時間を稼ぎますので…」

「駄目だ!」

 

その通りだ。その通りではあるけど、それをしていいかは別問題だ。

 

「…蓮、私を信じてください」

「…っ!」

 

…本当に情け無い。馬鹿みたいだ。かっこ悪すぎて血反吐を吐きそうだ。

 

「…令呪を持って命ずる」

 

翳した左の手の甲が光る。

 

「絶対死ぬんじゃねぇぞ、死んだら殺してやる」

「勿論です。まだ構ってもらってませんから」

 

何馬鹿なこと言ってるんだ、ニヤつきやがって。それで盛大にフラグ回収したりしやがったら、マジで許さないからな。

 

「…行くぞマシュ!」

「は、はい!」

 

所長を担いだマシュと共にその場を疾く離れた。

 




わんわんお!

はい、なぜか好感度が既に結構高い戦乙女。勘がいい人にはなぜかは分かったでしょう。てか言ってるしね(こじつけ感凄いけど)。

さて次回は遂に、練炭こと主人公が……


気長にお待ちください

感想、評価よろしくお願いしますm(_ _)m

あと、活動報告でちょっとした質問をしましたので、答えて頂けるとありがたいです。そっちもよろしくお願いします。

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