ぼっちな武偵   作:キリメ

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2.教室での発砲はご遠慮ください

約10年ぶりに日本に帰ってきた。いや国籍はもう中国だから帰ってきたはおかしいか。なぜ日本に来たかというと留学生として香港武偵高校から東京武偵高校に転校したからだ。クラスは2-Aらしい。まぁ本当の目的はあの遠山金一の弟、遠山キンジの監視だ。

 

だがまぁ正直言ってめんどくさい。運がいいのか悪いのか部屋が空いてるとのことで同室になったおかげで監視はやり易い。その前に四人部屋に一人で住んでたってどんだけ贅沢してたんだよと突っ込みたくなった。

 

話を戻すが事前報告では兄を亡くしたショックで強襲科Sランクから探偵科Eランクに落ちたらしい。監視する必要性を感じない。何よりも武偵辞めたがっているみたいだし。とはいえ上からの命令には逆らえんか。ん、俺?もちろん諜報科でランクはSだ。ランクが低いと手を抜いてるって思われて印象が悪くなるし何より出世に響くんだよなあ...

 

 ちなみに監視に当たって幾つかのルールがある。

 

一.遠山キンジに藍幇の人間とばれてはいけない。

 

二.伊・Uの遠山キンジへの干渉を必要以上に邪魔しない。

 

三.昔の比企谷八幡を知っている人間(両親、妹、幼馴染み等)との接触の禁止。

 

四.MAXコーヒーは1日一本まで。

 

但し、一〜三においては臨機応変な対応を許可する

 

最後のだけは納得いかない。少なくも二本は欲しい。しかもこの制約だけ何度も念押しされた。仕方ないから缶コーヒーじゃなくてペットボトルのを買うことにした。内容量が倍近くあるんだ。数についての制約はあっても量の制約はなかったからな。俺ってば策士!違うか?違うな。

 

それにイ・ウーの干渉ってどんなことしてくるかわからないのだから、干渉しないもなにも無いだろうに。まぁこの任務が終わったら武小校に2階級特進だからな。しかも期間は高校卒業までの2年間。しかも場合によってはさらに短縮されることもあるということで思わず立候補したが、1日の半分以上を監視対象と過ごすってのはなかなか疲れるもんだな。

 

 

さて今日は始業式でいつもよりも準備がかかる。俺に関しては最後の書類提出等もあるせいでなかなか忙しかったがあとは靴を履くだけで学校に行けるまで済ました。

 

「なんでまだ準備してんだよ、キンジ」

 

それに対してキンジといえばまだ飯も食ってなければ服も着替えていない。

 

「飯はどうすんだよ、時間ねーぞ。」

 

まぁ、飯に関しては大丈夫だろう。多分あいつが来る。

 

ピーン、ポーン

 

すごく慎ましいチャイムの鳴らし方だ。

 

「八幡!出てくれ。」

 

「いや、自分で出ろよ。」

 

「今着替えてる途中なんだ、白雪に見られたら怖い」

 

横目でキンジを見るとリビングの鏡の前でシャツのボタンを留めている。確かに見られたらいろいろ面倒くさそうだな。

 

ピーン、ポーン

 

「どちら様で?」

 

「あっ八幡くん?あの、その...キンちゃんいる?」

 

やっぱり白雪か。わざわざご苦労なことで。

 

「いるぞ」

 

そう言いながらドアを開ける。

 

「何の用だ」

 

「あ!あの、キンちゃんにお弁当作ってきたから、まだ食べてないかなって思って...入ってもいい?」

 

 くそ!先を越されたか。できる限り部屋に入れたくないんだよな暴走したら壊れるし(部屋が)

 

「い、いいぞ。ちゃうど飯の準備をしようと思っていたところだ。」

 

 少し早いが学校に行くか。2人の邪魔したら悪いしな。それに転入生だから職員室にも 寄らないといけないし。

 

「お邪魔します、キンちゃん。」

 

「行ってくるわ、キンジ。」

 

「ちょっ、先行くのかよ、待ってくれ、一人にするな!」

 

「準備の遅いキンジが悪い。それに転入手続きがある。」

 

「一人にするななんて、一生一緒にいて欲しいってこと(〃▽〃)大丈夫、キンちゃんの側から離れたりなんかしないから。」

 

「いや白雪に言ったんではなくてだな。てか、勘違いしすぎた!落ち着け!」

 

 どうやら荒れてきたみたいだ。原因は俺?知らんな。

 

「それにその呼び方、やめろって言ったろ。」

 

「あっ......ごっ、ごめんね。でも私......キンちゃんのこと考えてたから、キンちゃんを見たらつい、あっ、私またキンちゃんって......ご、ごめんね、ごめんねキンちゃん、あっ」

 

......文句を言う気も失せるな。キンジも同じようだ。先行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

諜報科棟

 

 

 始業式前に最終手続きを行っている。それにしても担当教師のチャン・ウーって人はすごいな。気配をほとんど消していたせいでどこにいるかわからなかった。こんな人間が教師やってるなんてどうなってるんだよここは。

 

「ありがとうございました。」

 

始業式が終わったらまた来いということらしい。それともう一人転入生がいるらしい。しかも同じクラス。普通違うクラスにするだろうにそこは適当だな。特に蘭豹なんて女と思えないほどの雑さだ。

 

ゾワッ!?

 

なんだ!今一瞬凄い殺気が...考えるのはよそう。

 

 

 

 始業式が始まってもキンジが来ない。何してんだ?もしかして白雪に殺された?だとしたら俺にまで責任が。いや、ないな白雪は普通に登校してるし...少し、いやだいぶキンジの事心配してるみたいだけど。ん?教務課から周知メール?...チャリジャック、武偵殺し、E・Uか?...関わったら負けだな、うん。キンジには悪いがこれも仕事なんでな。ほんとだよ、ハチマンウソツカナイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい!腹痛でトイレにこもってたら、集合時間過ぎていた。殺されるなこれ。とにかく急ぐぞ...

 

 

 

ずぎゅぎゅん!

 

不意に銃声が鳴り響く。

 

「れ、恋愛だなんて......くっだらない!全員覚えておきなさい!そういうバカなことを言う奴には......風穴あけるわよ!」

 

 すげー入りづらい。しかも今喋ってる?奴がおそらく転入生だろう。転校早々の挨拶でぶっ放すなんてこいつが初めてかもしれない。関わるのはよそう。

 

「失礼します」ガラガラ

 

「あらあら、随分と遅かったですねー」

 

「うっす、すみません。」

 

どうやら怒ってはいないようだ。命の危機を回避した俺はもう一人の転入生を確認する。 ピンクのロングツインテールにカメリアの瞳という特徴的な姿で初めて会うはずなのだが...

 

「...」

 

「...」

 

 あいつに...似ている?いや、そんなはずはない。髪の色も目の色も違う。それに猴の瞳と似ている。イロカネ持ちか?まさかw...今は考えるのはよそう。

 

「あんた、あたしと昔あったことある?」

 

「人違いだ。俺はお前のことなんて知らん。」

 

「ふーん、あんた名前は?」

 

「は?」

 

「だから名前は!」

 

「いや、人に名前を聞くときは自分から名乗るものでだな。」

 

「うるさい!いいから名乗りなさい!でないと風穴!」

 

 なんだこいつ、すごく生意気、まぁどうせ自己紹介しなきゃいけなかっただろうしいいか、てか怖い。

 

アリアを無視し教壇に上がる。

 

「香港武偵高から来ました比企谷八幡です。よろしくお願いします。」

 

よし!噛まずに言えた。

 

「はい、比企谷くんね。じゃあ遠山くんの後ろの席に座って。」

 

「待ちなさい!まだ話は終わってないんだから!キンジも八幡も覚えておきなさい!逃げたらでっかい風穴あけてやるんだから!」

 

後ろで何か騒いでるが聞こえない。キコエナイモンネ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み、特にすることもなく一人屋上の片隅でステルスしながら飯を食ってるとキンジが来た。気づいていないようだ、無視しよう。

 

''神崎・H・アリア''

 

 過去の活動記録を調べていくつかわかったことがある。まず、あいつはイロカネ持ちの可能性がある。方法はわからないが3年前に何者かに銃で撃たれてから体に変化が起こったようだ。そして''H'' イ・ウーのあいつと関係があるならまちがいないだろう。猴と特徴が似ていることからヒヒイロカネだとも推測できる。そしてもう一つ、俺が香港で出会った''あいつ''はアリアの可能性がある。武偵になった12歳の写真を手に入れたがかなり似ていた。変装でもしていなかった限り。あっ髪型は違ったか。

 

 だがアリアの方は気づいていないだろう。あの時お互いに名乗ってないし、髪もだいぶ長くアホ毛もなかったからな。目?腐ってたかもしれないが前髪が隠してはっきりと見えなかったと思う。プロフィールも藍幇とか変わった記録はしっかり操作されてただの武偵にしか見えない。...Sランクだけど。

 

 帰宅して一息ついてるとキンジが帰ってきた。キンジを尾行したアリアもついてきた。何してんだよキンジ...面倒くさいから自室に立て籠もり聞き耳をたてる。自室はしっかり改造済みだ。防音、防弾、防寒はもちろんのことドアには三重ロック、換気扇には赤外線センサーと感圧センサーを設置し侵入者には毒ガスと機銃のプレゼントだ。パソコンは自動爆破だし、俺の黒歴史ノートはとり方を間違えると部屋全体が燃える。...デスノートかよ。まぁほとんど機嬢が設計してくれたんだけどな。おかげで市販の物より格段に信頼できる。さて、部屋の隠しカメラで確認するか...

 

「キンジ...あんた、あたしの奴隷になりなさい!」

 

......ありえんだろ、こいつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら!さっさと飲み物ぐらい出しなさいよ!無礼なヤツね!」「コーヒー!エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!一分以内!」

 

注文多すぎだろ...

 

「あいつ...八幡はどこにいるの?同室でしょ?」

 

「ん?あぁ八幡なら廊下を右に曲がったところの二部屋のどちらかだと思うぞ。ただ両方ともすごいセキュリティがかかってるけど。」

 

「ふーん、だから視線を感じるのね。おそらくこの部屋のどこかに監視カメラが設置してあるんでしょう...ね!」

 

 そう言いながら部屋を散策する。まずい!カメラを壊されたら外の状況が把握しづらくなる。

 

「なんとなくここにある気がするわ。...あった!八幡見てるんでしょ!壊されたくなかったら今すぐでできなさい!でないと風穴祭りよ!」

 

 仕方ない。あの様子ではこのまま泊まり込んででも待ち構えてそうだし、明日も学校あるし。

 

「わかったよ。で、要件はなんだ?」

 

「...ていうかな、ドレイってなんなんだよ。どういう意味だ」

 

「キンジ、あんた強襲科であたしのパーティーに入りなさい。そこで一緒に武偵活動をするの。八幡に関しては今はいいわ、どこかに行ってなさい。どうせ本当のこと話す気ないでしょうし、カンだけど。」

 

俺...部屋から出る意味あった?

 

「何言ってんだ。俺は強襲科がイヤで探偵科に転科したんだぞ。それにいずれは一般高校に転校しようと思ってる。武偵自体、やめるつもりなんだよ。それを、よりによってあんなトチ狂った所に戻るなんて...ムリだ。」

 

「あたしにはキライな言葉が3つあるわ。」

 

「聞けよ人の話を。」

 

「『ムリ』『疲れた』『面倒くさい』この言葉は人間の可能性をダメにする言葉よ。」

 

「そして『みんな仲良く』『みんな友達』『空気読めよ』この言葉は個人の可能性をダメにする言葉だ。大体リア」

 

「あんたは黙ってなさい!」

 

「.........キンジ...先寝とくぞ...」

 

「おい!まて、俺一人でこいつの相手をしろっていうのか!?」

 

「こいつじゃない!あたしには神崎アリアって名前があるの!八幡も待ちなさいって...あれ?アイツどこ行ったの?」

 

「ん?そういや...消えた?」

 

 その頃俺は自室で簡易シャワーを浴びていた。一応設置だけしておいたのがここで初めて役に立った。部屋ではキンジが追い出されているところだ。立場が逆転してる気がするが...もういい完全無視して参るgo to the マイ布団!

 

 

 このあとキンジがどれほど苦労したか八幡は知らない...

 

 

 

 

 

 


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