でもストーリーの進行上悪役になるキャラは出てくる。
これがクロスの弊害か...
多分この程度アンチに入らないと思うけども
───体育館 舞台側───
「キヤァァァ!!」
「助けて!誰か!」
「ちょっとなんで止まってるのよ!」ドン!
「ドアが開かないんだ!」ガンガンッ
「ふざけないで!早くしてよ!」
「虫⁉︎い、イヤァァ$%#*=?#!」
ザワザワザワザワ
そこはまさに地獄絵図だった。全校生徒が入るには狭い体育館の中で行き場もなく叫び、押し合う生徒たち。彼らの恐怖の対象は2つ。舞台に立つ3人の銃を持った人間と、館内を飛び回る5センチはある蟲だ。
「これで僕らも嫌われ者だね」
AK-47Ⅲと呼ばれるアサルトライフルを片手に
「そう思うならスマホの電源を消せ」
同じくアサルトライフルを構えた
「消したらハロから連絡きてもわからないだろ。バカなの?」
「あぁ?だれが主電源を消せとまでいった?」ガチャリ
「あれ、そんなことも忘れたの?バカなの?あっ馬鹿か」
「おまっ、いい加減にしろよ?」
バーンッ!
「嘈杂住嘴(うるさい黙れ)」ゾワッ
青娥と紫円の口論を諌める目的での発砲は2人だけでなく体育館内全ての人間を黙らせるだけの効果を発揮した。
カラン、と薬莢の落ちる音だけが響き渡り、館内を飛び回っていた蟲も壁にとまり息を潜めている。青娥ですらスマホを閉じて事の顛末を見守っている。
場のすべての人からの視線を受けた
「肆足指令(紫円あとはよろしく)」
紫円の耳元で小さく呟くとまた舞台の壁際まで戻る。狙撃手の杢は純粋戦闘能力では紫円に敵わないが殺気の使い方は八幡に次いで長けている。
これ以上怒らせるべきでないと考えた2人は少なくとも今は私情は置いておいて任務に集中することにした。
そして紫円は舞台の中央、マイクスタンドの前に立ち全体を見回しながら日本語で話し始めた。
「...
少し片言で文法も変だがそれを指摘する人も笑う人もいない。寧ろ日本人ではないことがから国際的なテロの可能性がよぎった。
何故か開かないドア、閉じきった窓とカーテン、空中に飛ぶ無数の蟲、銃を構えた3人の男。この状況下で反抗しようと考える人間などこの場に1人もいなかった。
───体育館制圧完了───
───体育館 舞台裏───
体育館が混乱に陥るより少し前、雪ノ下陽乃は委員長なしの文化祭をどう回すべきか考えていた。
2人とも八幡と接触したら戻ってこれないし委員長ちゃんもよくわからないし...あーもうめんどくさい。静ちゃんは静ちゃんで先生への対応に追われてるしやっぱり氷人形で誤魔化すのが一番かな。
「陽乃、少しいいか」
「...どうしたの?またなにか問題?」
思考を遮ってきた静ちゃんの表情はさっきよりも悪い。しんどいのはわかるけど一回外で空気を吸ってリフレッシュすべきだと思う。ただでさえ体育館は空気がこもって
「確認なんだが葉山は確かに裏口から出て行ったよな?」
「ん?そうだよ。ほらあのドア...?」
あれ、ドアが...ない?...‼︎?
シュッ
殺気を感じ限界まで体を逸らす。その瞬間目の前を爪のようなものがさっきまで私の首があった位置を横切った。避けきれなかった前髪が切れるのを感じながらバク転の練習要領で二回転し、距離を取る。
攻撃してきたのは静ちゃんの姿をした何か。その証拠に腕だけが異常に太く爪も鋭い。おそらく異能か妖の類、それも従一位レベル以上の。
「...静ちゃんに何をした」
「少し眠ってもらっただけだ。ほかの人間も同じようにの」
周りを確認すると確かにさっきまでいた教師や生徒が1人もいない。それに室内なのに少しづつ霧が発生している?
「...これは、五里霧中...!?」
「知っておるか。まぁ気がついたところでもう遅いがの」
〔五里霧中〕とは本来霧を起こし姿をくらますことに使われるけど人を誘い込み惑わすことにも使われる妖術のはず。その対策は霧を払うか自分の位置を確立させること。
「む」
霧を出すことなら私にもできる。だったら霧に干渉することだってできるはず。
相手がこちらに危害を加えてくる様子は見られないのでいつもなら簡略化する式を丁寧に構築し限界まで力を貯める。
「...」
私でも次第に制御できない部分が極寒の冷気として体から放出される。その様子に相手が驚いているのが見える。
「
霧を凍らせ結晶化したものをある程度の大きさに固めると相手に向かってマシンガンの如く放つ。全ての弾を撃ち、霧が完全に晴れると目の前には凍りついた...敵がいる。
ズキっと全身に痛みを感じ手を見ると指先が...凍傷になっている。他にも...髪の毛の一部が凍りついていたりと雪ノ下陽乃を知る人間が見たら驚くだけでは済まない姿だろう。まぁこの...凍りついた空間にいる人間なんているはずないけど...
......それよりも静ちゃんたちを探さないと...それにこの男が八幡の...味方だとしても不逮捕特権は効かないから...かなりの情報が聞きだせる...はず...だ.........。
そう考えて一歩踏み出したところで私の意識は途切れた。
「...ようやく効いてきたようだの」
「結構タフでしたね。はっさんが気にしろというだけはあったと思います」
先ほどまで雪ノ下陽乃によって氷漬けにされていたはずの
奈絡はともかく李徴にも傷ひとつない。さらに言えばこの場に氷はおろか水溜りすらない。
「それにしてもやはりその蟲は便利だの。その歳で立派なもんだ」
このトリックのタネは単純だ。
もし最初から蟲で攻めても、霧で惑わそうとしても雪ノ下陽乃は対応しきっただろう。だから雪ノ下の認識できないギリギリのラインまで霧を発生させ毒絲蜂を隠して鱗粉を飛ばした。
『すでに遅い』の言葉通りドアがないと思った時点で鱗粉の効果は出ていたのだ。
「またそれですか。僕と連携をするたびにいってますけどいつまでも子供扱いしないでくださいよ」
「俺ぐらいの歳になればお主も八幡も、静幻も同じようなもんだ。それにお主の力と成長を認めておるからこそそういったことが言えるのだ」
「あーもう、わかりました。紫円の方も片付いたようですし後ははっさんの方がどう転ぶかですね」
「彼奴は無駄に面倒見が良いからの」
「まぁ単なる善意じゃないんでしょうけどね。この女も何かしら企んでそうでしたし」
「だからこその取引なのだろうよ。言葉にしていない駆け引きなどざらにある」
「実際はっさんの本当の目的ってなんです?」
「静幻、いやもしかしたら八幡にし見えていないものがあるのかもしれん。まだ言葉にできるものなのかわからんがの」
「はぁ、あっとりあえずここは任せます。僕は館内の蟲に集中するので」
「心得た」
───体育館 舞台裏 制圧完了───
───校舎屋上───
『体育館の制圧は完了したみたいですよ』
「そうか。陽乃さんは?」
『そっちも無事無力化に成功したみたいです。気にしすぎだったんじゃないんですか?』
「...引き続き油断するなと伝えてくれ」
『はーい』
その時バタンッと屋上の扉が開く。
『おっ』
「きたか......───。」
別に名前を出しても良かったかもしれないと思ったり思わなかったり
感想、高評価よろしくお願いします