ぼっちな武偵   作:キリメ

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先にキャラ紹介をとうとうしようとしたらデータが行方不明になったのでこちらを先に投稿しました。

最高評価ありがとうございます。初めてだったのでとても嬉しいです!


28.文化祭

総武高校で行われる文化祭初日。俺たち夜蜘蛛のメンバー8人は私服で総武線に乗って学校に向かっている。ただ狭い。

 

人混みに押されながらなんとか無事正門前までつくと入り口には大きなアーチがある。おそらくだが、中の様子からしてこれだけ大規模な文化祭を行っている高校は少ないんじゃないだろうか。

 

「うわー、これ一体どれだけの予算がかかってるんだせ?」

 

「人多すぎ。帰って籠りたい」

 

解甲帰室(家に帰りたい)

 

「おいおい仕事だから無理だぞ」

 

奈絡が俺の代わりに2人に注意する。俺がいなくなってから少なくとも2年は隊長を務めただけあって昔と大きく変わった。だがな、正直俺も帰りたいのは帰りたいんだよ。夜蜘蛛のメンバーなんてそんな連中ばっかだろ?

 

「と言うか動きたくないなら出店変わってくれてもいいんだぜ?」

 

「作戦に支障がでる。無理」

 

「それはそうだけどなー?」

 

「それよりそろそろ準備しないと間に合わないんじゃないか?」

 

「大丈夫だぜって...あれ?」

 

「はぁ手伝うぞ、おまえら」

 

「あーあ、はっさんに迷惑かけてやんの」

 

水閘愚頂(情けない)

 

 

ここで一度今回の作戦と目的について確認することにしよう。

 

今回俺たちが行う作戦、それは学校の占拠だ。文化祭最後の有志によるライブで集まった全校生徒の大半を体育館に監禁する。ここに8人しかいないメンバーのうち5人を配置する。ここは奈絡が指揮に指揮を取ってもらう。ここで雪ノ下陽乃や平塚静、その他警備員など一定の戦闘能力がある人間を無力化する。ただし雪ノ下陽乃に関しては大きな抵抗はしないだろう。

 

次に外で待機する2人。水閘と袁肆(エンシ)は出店をやりながら状況に応じた対応をしてもらう。連絡を受けた警察や武偵の足止め、脱出ルートの確保などやることも多い。しかも出店で売り上げを稼ぐ必要もある。

 

最後に俺の役割だが、俺がすることは雪ノ下雪乃の拉致とそれを追いかけてきた葉山の相手をすることだ。雪ノ下には悪いが若干手荒なことになりそうだ。葉山が覚醒しようがしまいが俺の約束は達成されるわけだが...

 

そして全員の通信をサポートするためにハロを、拉致した雪ノ下のメンタルサポートにシロが作戦に参加する。シロを出した時点で俺の正体がわかるかもしれないがそれは仕方がない。

 

「さて、そろそろ開会式だ。2人以外は帰るタイミングは好きにしてくれていい。だが明日は色々準備があるから下見だけはしっかりしとけ」

 

 

 

『それで八幡はどこに行くんですか?』

 

見たい出し物や食べ物を探しに他のメンバーはバラバラに動いている。俺も外の店を一通りみて少し食べたあと、昼食を取りに大勢の人が校舎内から出てくるのに逆らいながら中に進んでいく。

 

夜蜘蛛のメンバーは書類上香港武偵高に在籍してるといっても考査以外は、基本的に藍幇の構成員として任務に明け暮れている。そのためこういったイベントにプライベートで過ごせる日はほぼ無い。正直準備は半日で終わるから明日だけ来てもよかったんだが、せっかくだから両方来ることにしたわけだ。

 

そう考えると短い間だったがキンジ監視の任務は楽だったのかもしれないな。カナがイ・ウーに参加しなかったら全くのノーマークだったけど。

 

とはいえ、今日来た理由はあいつらのためが主であって俺は特に見るものもない。強いて言うなら千葉村のメンバーのクラスだが、明日テロを起こすのに知ってるやつと会うのは変装してるといっても少しまずい。

 

「とりあえずパソコン室でも行くか」

 

『は?』

 

人も少なそうで長居できそうな場所を提示すると、ハロは馬鹿にしたような呆れたような声を出した。

 

『何いってるんですか?ついに目だけじゃなくて脳まで腐ってきたんですか?』

 

人口知能のハロは他のAIと比較にならないくらい早い速度で成長し今では受け答えも完璧である。それはもう俺を簡単にdisれるくらいには。

 

「ばっか、パソコン室なら誰もいないだろうし、もしかしたら自作ゲームがあるかもしれないだろ?」

 

『えー嫌ですよ。どうせつまんないですし』

 

「まぁ時間は嫌ってほどあるし昼からでもいきたい場所に連れていってやるよ」

 

『しゃーねーな』

 

「何様だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どの時間でも人の少ないと思っていたパソコン室は近づくにつれて人口密度が高くなっていく。しかもその多くは学生ではなく、どちらかと言うとオタクやゲーマーと言われる種類の人間に思えた。

 

「なぁ、この人の多さは何だ?」

 

『ちょっと待ってください......あっこれかもしれないです』

 

スマホに通知が届き中身を開くとそれは2ちゃんねるの記事の一つだった。

 

《閃光の舞姫・高校でもその実力は健在!》

 

「なんだこれ」

 

『この記事の学生がどうやらここの学生みたいですね。どっから漏れたかわかりませんけど』

 

「はぁ、そいつも災難だな。あったことないけど」

 

そういってきた道を引き返そうとするとハロが引き止めてきた。

 

「なんだよ」

 

『せっかく何でやりませんか?』

 

「やだよ、俺ゲーム得意じゃねーし」

 

『やりましょーよ』

 

「やだ」

 

『やりましょーよ!』

 

「やだ」

 

『...やれ』

 

何この子怖い。駄々をこねる感じから急にトーンを下げるのは良くないな。一瞬ドキッとする。

 

冗談はさておき、もともと行く予定だっただけにまた別の場所に移動するだけだと気持ち的にも疲れてしまう。俺は人ごみをかき分け一番前に行くともう1人の男に声をかけ次の対戦相手として登録してもらう。

 

プレイを見てきるとこれだけの人が集まった理由がわかった。正確な射撃、アクロバティックな動き。どちらも見る人を興奮させるには十分だ。あ、ちなみにこれシューティングゲームです。

 

『うわー強そうですね』

 

「まぁそうだろうな」

 

『実力じゃ結構な差ありません?』

 

「格ゲーや弾幕ゲームならまだやってるんだけどな。普段から銃とか使ってるとわざわざゲームする気にならないだろ」

 

『私はそんなことないですよ』

 

「お前は何もしてないだろ」

 

「あ、あのいいかな。次...順番なんだけど」

 

「あ、すまん」

 

そういってから今の自分の状況に気がつく。俺はハロと会話をしているわけだがその声はイヤホンから聞こえてくる。つまり周りからは見えない相手に向かって会話してる変で気持ち悪いやつに見えるわけだ。しかも昼食の時間になったせいでさっきまでの集団もぞろぞろと帰ったようだ。まぁ知らないやつのプレイなんか余程のことがない限りみないし当たり前だけど。

 

『完全に引かれてますね』

 

「...お前のせいだ」

 

小さく悪態を吐きながら椅子に座る。ディスプレイには『ヘッドホンアクター』の文字と荒野の背景。右隣には目つきの悪い一年生と思われる女子生徒が座っている。

 

ヘッドホンアクター...ヘッドホンの人物?

 

「ルールはわかりますか?」

 

「ああ」

 

「難易度はどうします?」

 

『もちろんextraですよね』

 

「...hardで」

 

武器選択画面でハンドガン、サブに短剣を選ぶとカウントダウンが始まる。

 

開始とともに大量の浮遊生物(的)が現れる。即座にフルオートで20体撃ち落としリロードする。その目の前で36個の爆発が起こる。その爆発の中から2丁拳銃のツインテールの少女がって...こういうとアリアにしか聞こえないな。髪の色と長さは全然違うけど。

 

STGにおいて何に一番注意すべきか。色々と意見はあるだろうが対戦タイプでの俺の持論としては無駄撃ちしないということだ。このゲームの場合弾切れの概念がない。リロードすればいくらでも撃てる。つまりリロードで差がつく。

 

俺はあえて相手の狙った的を狙うようにして撃つ。すると相手の弾が届く前に目標がロストするため無駄撃ちさせることができるということだ。むしろそうでもしないと2丁拳銃に対抗できない。

 

そしてこのゲームのバグなのか想定していない動きなのか知らないがナイフを投げても一定時間でまた戻ってくる。銃をリロードしている間はナイフで対応ということを繰り返すと次第に差が縮まってきた。

 

そしてラスボスと思われるヘッドホンの少女が現れた。どうみても相手プレイヤーのアバターと色違いとしか思えないけど自作ゲームでここまでのクオリティなら文句をつけるのも変な話だ。

 

それに...

 

アリアと戦うイメトレにもなるしな!

(ゲームだけど)

 

...

 

......

 

結論からいうと負けた。それはもう完膚なきまでにやられた。

 

エイムしてもすぐに動くし常に発砲してくるし、何より動きがプログラミングとは思えないけど自由な感じがした。

 

「お疲れ様でした。結構いい線いってたと思いますよ。何かやってたんですか?」

 

「...リアルサバゲーをちょっとな?」

 

「はい?」

 

「...いや、なんでもない」

 

『リアルサバゲーってなんですか。デスゲームのまちがいですよ』

 

「あっそれと一応スコア賞も用意していてこのスコアだとジュース一本ですね」

 

そう言いながら渡してきたのはMAXコーヒー。

 

「え、いや、そのですね...」

 

予想外な出会いに驚いていると何かに勘違いしたのか気まずそうな表情で言い訳みたいなのをはじめた。

 

「いや、むしろよくわからない景品よりこっちの方がありがたい」

 

「え、そうでしたか?」

 

「なんか悪いことしたな。すまん」

 

マッカンを片手に逃げるようにパソコン室からでる。独り言の件といい気を遣わせてしまったかもしれないな。単純に気持ち悪いとしか思われてないかもしれないけど。

 

 

校舎内を適当に散策していると前からぐったりとした様子で近づいてくる男が1人。

 

「おいどうした青娥?」

 

「ん、あっはっさん」

 

その表情は暗く、文化祭のテンションとは思えない。別に明るい必要はないが。

 

「いや、さっき2-Fの劇を見に行ったら少し気分が悪くなって」

 

「2-F?あぁ、それで?」

 

2-Fといえば千葉村で一緒だったメンバーだな。確か由比ヶ浜や戸塚、葉山に

 

「なんて言ったらいいのかな...BL?」

 

海老名さんもいたな...

 

「おいおい幾ら何でも学校でそんなことあるわけないだろ」

 

「少なくとも僕はそう感じたよ...少し疲れたから帰ってゲームする」

 

「そうか、お大事にな」

 

文化祭が始まってからまだ四時間程度で1人脱落とは総武高も侮れないな。

 

なんて冗談をハロと言いながら問題のクラス、2-Fの前に着く。受付前には男子生徒が1人立っているだけだ。

 

声をかけるとまだ上映前ということで教室内に入る。BLに興味はないが青娥を倒した劇のレベルに興味はある。見た感じ男子は俺1人のようだ。あまり気にすることでもないが。

 

...

 

......

 

劇のテーマは星の王子様。なのに何かが違った気がする。戸塚と葉山、どちらも知っている男子だが何か貞操の危機を感じた。総じて感想を述べるなら戸塚が女の子にしか見えない時がありそこに焦った。

 

 

『なかなかのクオリティでしたね』

 

「正直行き過ぎだとも思えるが」

 

『まぁ海老名さんですから。調べたところ今年のコミケにも参加していたようですよ。顔認証が一致しました』

 

「その情報は別にいらないって...」

 

 

そんなこんなで俺たちの束の間の休日は過ぎていった。

 

 

そして作戦が始まる

 

 

 

 

 




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