ぼっちな武偵   作:キリメ

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お久しぶりです。
修学旅行1日目を書ききろうとしたんですが、一週間を超えてしまったと2日目をそこまで書かないこともあり途中で切れました。




20.キャラバン・ワン

修学旅行

 

リア充どもは騒ぎ、ぼっちは孤立をどう誤魔化すか悩むイベントだ。知らない人と同じ部屋になったものならいつの間にか自分一人だけ部屋にいるか逆に知らない人が集まって追い出されるまである。

 

だがそれはあくまでも一般高の場合だ。武偵高では各個人がグループを作るなりして京阪神のどこかで二泊三日すれば良い。手抜きといったらそこまでだがぼっちからしたらむしろありがたい。

 

俺も一人で寺でも巡ろうかと考えていたのだが、目に見えない大きな力によってアリアと理子と一緒に行くことになった。

 

 

 

────そんな俺が理子に誘われてから少ししたころ

 

 

「はーくんって修学旅行なに着て行くの?」

 

「なにって制服だろ?」

 

「実は服装は防弾性があればなんでもいいんだよ」

 

「へー」

 

「興味ない!?」

 

「いやだってUMIQLOとかで防弾インナー買えばそれでいいし、てか持ってるし」

 

「それじゃつまんないよー」

 

「つまんないってな...」

 

「と言うことではーくんには服を作ってもらいます!」

 

「......作る?」

 

 

 

「それでなんで装備科棟なんだ?作るなら特別棟の裁縫室だろ?」

 

「はーくんに裁縫スキルがある?」

 

「ない」

 

「だよね。だから作ってもらうの、オーダーメイドで」

 

「そんな奴がいるのか」

 

「そう、理子の服も改造したり作ってくれてるんだよ。サキサキ一人で」

 

「一人でって、しかもオーダーメイド...高そうだな?」

 

「ところがどっこい、通常価格10万円のところいまならなんと8万円!もちろん防弾防刃。しかも三ヶ月のアフターサービスも付いてくるよ!」

 

「それ勝手に決めてないか?てか8万でも異常だろ」

 

「これは予約割り込み料も入ってるからね。すでに1年先まで予約でいっぱいだよ。最近だと企業からもデザイン関連で声がかかってるみたいだし」

 

「随分とすごい奴なんだな...と、ここか?」

 

「はろはろーさきさき」

 

無視ですか、無視ですね。

 

「ちょっと理子。入るときはノックしてからっていつも言ってるでしょ」

 

「まぁまぁそんなことよりもほら!お客さんだよー」

 

「はぁまたなの...で、誰...!?」

 

なに?俺のこと知ってるの?

 

「そう!腐り目愛好かグフッ」

 

「理子、ちょっと来い」

 

「ちょたんま、腹が」

 

「蹴るよ?」

 

「はい」

 

なんなんだ...

 

 

 

 

 

 

「無視して悪かったね。私は川崎沙希、装備科Bランク、制服のメンテなどをメインでやってる」

 

「諜報科比企谷八幡だ。理子に連れてこられただけだからなにを頼めばいいのかわからん」

 

「サキサキにははーくんの防弾私服を作って欲しいんだよ。と言っても上着とシャツだけだけど」

 

「あのね、私はあんたのせいで忙しいわけ。確かに理子には感謝するところもあるけど注文が急すぎ。それに男物なんて初めてだし」

 

「そうだぞ、俺は制服でいいし帰るぞ」

 

「アリアと理子は私服で過ごすけど一人だけ制服でいいの?」

 

「ふっ、ハブられるくらいどうってことない。なぜならいつものことだからな」

 

「あ、そういうのいいから早くして」

 

oh...

 

 

 

 

 

理子を置いて採寸室へと連れていかれる。採寸室と言っても仕切りが一枚あるだけだが

 

「じゃあ上脱いで」

 

「お、おう」

 

上着を脱ぎ防弾インナー一枚になる

 

「へぇ、意外とがっちりしてるんだね。見た感じだと細く見えたからちょっと驚いたよ」

 

そう言いながら肩幅を図るために後ろにまわる

 

「まぁ武偵だしな」

 

「よし、じゃあインナーも脱いで」

 

「「は?」」

 

ん?はもった?

 

「ほら脱がないなら脱がすよ」

 

インナーを掴まれスポン、と脱がされる

 

「「おおー」」

 

流石におかしいと後ろを向くと沙希と理子が俺を見ていた

 

「...なにしてんだ?」

 

「いや、私は別に...理子が勝手に...ね?」

 

「その割には結構ガン見してたじゃん。このむっつり〜」

 

「理子」

 

「ん、どうしたの?」

 

ベシ

 

理子の頭にチョップする

 

「あぅ」

 

「変声術を使うな、ややこしい。それで...採寸さっさと終わらせてくれ」

 

「ん、んん。そうだったね。悪い、ごめん。それにしても意外と結構傷があるんだね」

 

「意外か?」

 

「まぁSランクだしそんな話も出てこないからね。傷自体は結構古いけど」

 

武偵にとって傷は珍しくない。むしろ恥とすら捉える。強襲科ならともかく、諜報科で傷があるやつは大抵拷問痕だ。沙希もそう思ったんだろう。

 

「まぁ小さい頃は結構ヤられてたからな」

 

香港放浪時代のリンチやウルス抗争時の傷が大半だろうが

 

「そうなんだ...悪かったね、変なこと聞いて」

 

「構わん。昔のことだ」

 

 

「よし、終わったよ。後は一週間後に取りに来てくれたらいいけど何か色指定はある?」

 

「...黒系で」

 

「わかった。じゃあそこの連れてって」

 

地面で横たわっている理子を指差す。あまりにもうるさかったから玉口枷と両手両足に手錠をして、簡易ベッドに放置していた。理子が可哀想っていうよりは簡易ベッドで休めないから言ったって感じだな。

 

「わかったよ。それとこれ前金」

 

「確かに受け取ったよ。期待して待ってな」

 

「あいよ」

 

「んーんー」

 

...さて、どうしよう(汗)

 

 

 

 

 

初日・京都

 

東京から京都に行く新幹線はだいたい同じ時間に乗る。全体的に制服が多い中、俺ら三人が私服ということもあり、それなりに浮いていた。

 

特に俺がそれなりに見栄えのする服装だったらしくアリアから意外の一言をもらった。俺からしたらアリアも沙希に頼んでいたことに驚きだが

 

 

 

「やっぱり比企谷ってかっこよくない?」

「不知火君とはまた違うっていうか」

「しかも遠山キンジと同部屋」

「やばいこれだけでこの修学旅行に意味があったわ」

「同じチームになりたかったー」

「でも比企谷って誰とも組むつもりないみたいなこと言ってなかった?」

「えっそれ何処情報?」

 

あと周りも騒がしいがこれは俺がどうこうっていうよりも沙希の服のデザインおかげだろう。高かったが品質は確かだと実感した。また注文してもいいかもな...

 

 

太秦映画村

 

「ねぇ、ほんとに行く気?」

 

「別にここで行く必要ないだろ」

 

「甘い!甘すぎるよ二人とも!マッカンよりもまんより甘いよ!」

 

「しかしだな...」

 

「なに?二人とも怖いのw」

 

「ちっ違うわよ。だいたいお化け屋敷なんて子供騙しよ!そんなのよりほかの場所に行くわよ!」

 

「あっれー?そんな子供騙しが怖いの?あっ!アリアは見た目も子供だもんねー」

 

「っ!いいわよ、そんなに言うんだったらやってやろうじゃない。ほらあんたも行くわよ」

 

「おいアリア」

 

ちょろすぎだって

 

「はいはーい、3名様入りまーす」

 

「おい理子も押すなって」

 

俺もだった...

 

 

 

 

 

「まだ続くわけ?そろそろ出口があってもいいんじゃない?」

 

「アリアおもしろ〜い。まだ入って1分も経ってないのにw」

 

「う」

 

「それにしてもはーくんは意外と大丈夫そうだよねー」

 

「お化け屋敷の幽霊なんて怖くないだろ。怖いのは人間だ」

 

「およ?意外とまともなことを言うね」

 

「つまり人が脅かすタイプのお化け屋敷が一番怖い」

 

「全然大丈夫じゃなかった!!」

 

そんな話をしてあるだけでも少しは気がまぎれる。アリアも少しづつ余裕が出て来始めたところで

 

ピカッ!ドーン!ゴロゴロゴロ

 

雷の効果音とフラッシュが静かな部屋に響く

 

「みギャァーーーー!!」ピューー

 

同時にアリアの姿も消える

 

「あはははは!待ってよーありあちゃーんw」ピューー

 

「ちょっ...置いていかれた...だと」ポツーン

 

仕方なく1人で進む

 

ゴールもそろそろだろうと思い一安心する眼の前に死体が二人いる。間違いなく人間だ。だって息してるし

 

機械と違って動き出すタイミングが呼吸から予測できる。気配を消すことによって相手に気づかれずに進み次のドアを開けようとした瞬間

 

ドン!

 

壁から死体が倒れて来た。反射的に後ろに下がる。人にぶつかる。目があう

 

「う、ウワァーーーー!」

 

ダイス音

 

0/1D6

 

ゾンビA SAN48→42

 

ゾンビAはパニック状態になった

 

ハチマンはゾンビAを倒した

 

ハチマンは心のダメージを手に入れた

 

...

 

......

 

外に出ると半泣きのアリアとそれをからかう理子がいる。全く...涙したいのはこっちの方だぜ

 

「はーくんおそーい」

 

「お前らが走っていったからだろ...」

 

「アリアが走っていったからねー。アリアったらすっごいビビっちゃってさー。すごく面白かったのに全然見れなかったしもう一回行く?」

 

「「行くか!」」

 

「...とりあえずゆっくりできるところに行くわよ。小腹も空いたし」

 

「そうだなそうしよう」

 

「えーつまんないのー」

 

...

 

侍のコスプレをして映画村を歩く三人に視線が集まる。特にアリアに

 

「おおー!すごく見られてるよ。やっぱりアリアが可愛いからだね!」

 

「今言われても全然嬉しくないわね」

 

理子は普段のゴスロリとは違いキリッとした侍のイメージを与えてくる。変装とか得意だし男装も普通にできるもんな。俺の場合、侍というより人斬り感がすごいけど。

 

対してアリアは幼い町娘の格好だ。流石小学生と間違われるだけある。似合いすぎて逆に怖い。あと町娘なのに日本刀を二本構えて威嚇して来て物理的にも怖い。

 

 

殺陣をやっているみたいなので中に入る。時代劇のワンシーンを目の前で観れたことに小さな感動を覚えた。また演技の技術説明などを面白く説明していたのも新鮮だった

 

 

全体を一周してからコスプレを返却して近くの寺に行く

 

...

 

広隆寺

 

「ここが広隆寺。なかなか大きいのね」

 

「確かここには国宝第1号があったはずだ」

 

「弥勒菩薩像だっけ」

 

「正式には木造弥勒菩薩半跏像だったかな。たぶん、知らんけど」

 

「かなり適当!?」

 

入館料を払って霊宝殿に入る

 

「お寺ってお金入る場所といらない場所があってややこしいわね」

 

「確か紅葉とかが綺麗に見れる場所は有料とかいう神社もあったよね」

 

「北野天満宮だな。学問の神様として菅原道真を祀っている」

 

「もしかして八幡ってお寺について結構詳しい?」

 

「有名なところはだいたい押さえてるぞ。主に祟り神」

 

「ジャンルが限定的ね...」

 

 

「これが弥勒菩薩?」

 

「どう見ても考える人だよね」

 

「あれはブロンズ像だろ。これは木造」

 

「素材の違いなのね...」

 

...

 

昼ごはんを食べるためタクシーで京都駅に向う。こってりが苦手だというアリアのためにあっさりしたラーメンを選択したのだ。その店は───

 

 

───新福菜館

 

創立1938年中華そば専門店として屋台からスタートしたこの店は真っ黒な醤油スープと緑の九条ネギが特徴のラーメン屋だ

 

本店の隣には第一旭という豚骨醤油ラーメンもあるが今回はこっちへ

 

店内は食堂風で二階建て。ギリギリテープル席を確保し並と焼き飯を全員分注文する。平日にもかかわらずかなりの混雑具合だ

 

「はーくん、この卵って盗っていいの?」

 

「取り放題だが盗り放題じゃないぞ」

 

「ゆで卵が入れ放題...珍しいわよね」

 

「確かに珍しいな。まぁ他にもネギ入れ放題や梅干し入れ放題の店もあるらしいし」

 

「お待たせしましたー。チャーハン定食です」

 

「「「...」」」

 

「黒いわね」

 

「チャーハンも結構黒いね」

 

「実際に見るとまたすごいな」

 

「「「いただきます」」」

 

パクパクモグモグ

 

「...美味いな、濃厚な醤油味なのに飲みやすい」

 

「こんなに黒いのに辛くないわね」

 

パクパクヒョイモグモグ

 

パクヒョイパクヒョイヒョイモグモグ

 

ベシッ

 

「アウチ!」

 

「理子取りすぎ」

 

「そんなことなくなくないよ?」

 

「他のテーブルの卵がなくなってここのテーブルに卵が積み重なってるのにそんな言い訳が通じると?」

 

「大丈夫!持って帰るから」

 

「それアウトな」

 

「ちょっとお客さん」

 

ほらやっぱり注意される

 

「ラーメンはすすらないと。そんな上品に食べるもんじゃないよこれは」

 

「あ、はい。すみません」

 

そこ?そこなの?

 

「すする?理子わかる?」

 

「もちろん。こうやってズズズッとね」

 

ズズズッズルッ

 

「そうそう上手いじゃねーか嬢ちゃん」

 

「なんか汚らしいわ...八幡もできるの?」

 

「一応な。まぁ日本独自の文化の一つとでも思えばいい」

 

「そう...じゃあ一度だけ...」

 

ズズグフッ

 

「けほけほ」

 

「ピンクの嬢ちゃんは下手くそだなっといらっしゃいませー」

 

店員が去った後恨めしそうな目線でこちらを見てくる

 

「全く恥をかいたわ。それにしても二人ともできるのになぜしなかったの?」

 

「別に普段はしないぞ」

 

「あくまでも文化としてだからね〜。言われない限りやらないかな」ヒョイ

 

「そ、そうよね...」ヒョイ

 

「まだ茹で卵食うのかよ...」

 

...

 

腹ごしらえを済ませタクシーで八坂神社へ向かう。時期的に祇園祭は終わってしまったがまぁそこはいい。みるところはいくらでもある。

 

門は混んでいたが中はかなり広いこともあり、人気のない場所を通ればそこまで疲れはしなかった。

 

寺から出て最近徐々に人気の出てきた抹茶スイーツの辻利抹茶ソフトを食べながら鴨川に座る。隣では理子とアリアが話している。

 

目の前を静かに流れる川を見ていると、自然と意識が内側に入っていく。

 

 

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。

 

 

ふと鴨長明の方丈記が浮かんだ。

 

出会いがあるから別れがある。

いつまでも同じ場所に留まるものはない。

ただそれが早いか遅いかだけのことだ。

 

そのことを拒絶し馴れ合いを求めるくらいなら

 

俺は───

 

 

─────

 

「本当にいいんだな」

 

「ええ、でも君こそ本当にいいの?」

 

「そのことには俺も気になってはいたからな。こちらの提案を呑んでくれる以上、拒否するつもりはない。それに...どうせ既に犯罪者だ。今更一つや二つ増えたところで問題ない」

 

「...そう。わかった。最後に一つだけお願い」

 

「?」

 

「矛盾してるかもしれないけど...必要以上に傷つけないで。君自身も」

 

「...善処する」

 

───

 

 

「──くん」

 

猶予は一ヶ月

 

「──くん」

 

上に報告はした。許可も出た。後は───

 

「はーくん!」

 

!!

 

「なんだいきなり。びっくりしたじゃねーか」

 

「さっきから呼んでるのに全然気づかなかっただけだし」

 

「それで?何の用だ。俺は川を見て忙しいんだ」

 

「はぁ?あんたそれ忙しいっていうの...」

 

「アリア、今はそんなことはどーでもいいの。てかはーくんマジで気づいてない?」

 

「なにが?」

 

「アイス、溶けてるよ」

 

...

 

......

 

.........

 

「うぉ!ちょむまって!てか理子いうのおそいって」

 

幸い服にはかかってなかったがコーンにアイスはなく、緑の溶けたアイスが手にベタベタについていた。

 

「というかよくここまで気がつかなかったわね。わざとかと疑ったわ。違うようだけど」

 

このあと理子がコンビニでお手拭きとティシュを買ってきてくれたおかげでなんとかなった。

 

そしてアイスを持ちながらの考え事はやめようと決意した八幡であった。

 

 

 

 




*この作品はフィクションです。特定の企業
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