ぼっちな武偵   作:キリメ

17 / 41
原作からの抜き出しが少し多かったのもあり、文字数が増えてしまいました。カットしても良かったんですがそうするとややこしくなるところもあったので...

このシリーズの投稿は久しぶりです。忘れてないといいけど...


14.千葉村

鶴見留美という少女

 

 

 

林立を抜けると開けた場所に出た。どうやらここがゴールらしい

 

平塚「おお、遅かったな。早速だが、これを下ろして配膳の準備を頼む」

 

平塚先生がワンボックスカーから降りてくる。オリエンテーリングのコースとは別に、山の車道があるのは知っていたが...今は関係者側だから車でここまで来てもいいのか。俺も車で行けばよかった。楽したいからだけど

 

 

後ろのトランクを開けると、弁当とドリンク類が折り込みコンテナに入って山と積まれている

 

平塚「それと、デザートに梨が冷やしてある。包丁類もあるから、皮むきとカット、よろしくな」

 

どうやら梨は近くの小川で冷やしているみたいだ。しかし、一学年分の梨を剥くとなると結構な労働量だ。加えて弁当の配膳もある

 

葉山「手分けした方が良さそうだな」

 

三浦「あーし、料理パス」

 

すぐさま三浦が口を開いた。確かにそのネイルじゃ厳しいだろうしな

 

戸部「俺も料理は無理だわー」

 

海老名「わたしはどっちでもいいかなー」

 

平塚先生を除く九人のうち三人が配膳に回ることが決定した。早い、早すぎるよ

 

葉山「んー、どうするかな。配膳はそこまで人いらないだろうし......他にやりたい人いる?いなかったら俺たち四人て配膳やるけど」

 

まあグループごとに分けるってんならそれでいいだろ

 

由比ヶ浜「んじゃ、あたしたちで梨やるよ」

 

八幡「それじゃ、俺たちは剥いた梨をさらに並べていけばいいんだな」

 

葉山「全員どこに着くか決まったようだね。じゃあみんなで頑張ろう」

 

 

 

手際よく雪ノ下が梨を剥いていく。...上手いな

 

由比ヶ浜「ふふん、あたしも相当腕を上げたからね」

 

雪ノ下「そう、楽しみね。お手並み拝見といったところかしら」

 

怖い!怖いから。二人とも梨剥くくらいでそんなに争わないで!八幡怖くて泣いちゃう(女の対立に)

 

雪ノ下がくすりと微笑んでいる。あれは余裕の笑みか?

 

だが...その顔が次第に曇っていく。俺たちも声を出すことができない。なんだこれは

 

由比ヶ浜が剥いた梨はなんというか...うん、一刀彫りの仏像みたいにでこぼこしているし、なぜか真ん中が一番細い

 

由比ヶ浜「な、なんでー!?ママがやってるのあんなに見てたのに!」

 

八幡「見てただけかよ...」

 

思わず声が漏れるくらい衝撃を受けた

 

由比ヶ浜「べ、別にいいじゃん。逆にヒッキーとキーくんは料理できるの」

 

八幡「ヒッキーって俺のことか?」

 

キンジ「まさか理子以外にキーくん呼びする奴がいるとは」

 

由比ヶ浜「そうだし。比企谷だからヒッキー。結構いいでしょ」

 

雪ノ下「ごめんなさい、由比ヶ浜さんのあだ名のセンスは料理並みだから」

 

由比ヶ浜「ゆきのんひどくない!?」

 

八幡「まぁ言いやすいならそれでいいぞ」

 

実際、武偵高じゃ苗字で呼ぶ奴は少ないし、あだ名やコードネームで呼んでる奴もいるからな

 

雪ノ下「それで、料理の方はどうなのかしら。できれば由比ヶ浜さんと変わってもらいたいのだけれど」

 

キンジ「俺はできないぞ、八幡がいつも作ってくれるから」

 

八幡「白雪も作ってきてくれるじゃねーか。あんなの俺作れないぞ」

 

由比ヶ浜「ヒッキー料理できるの、意外!てかゆきのんわたしを見捨てるの?」

 

雪ノ下「ゆ、由比ヶ浜さん、そうではないわ。ただ今は練習している時間も材料もないから変わってもらうの。また練習には付き合うから...ね」

 

由比ヶ浜「ゆきのんありがとー」

 

雪ノ下「由比ヶ浜さん、危ないわよ、それに暑苦しいわ」

 

由比ヶ浜「えへへ〜ゆきのーん」

 

八幡「なぁ戸塚、あの二人はいつもあんな感じなのか?」

 

戸塚「あはは、まぁね」

 

キンジ「八幡、時間がそんなにないから急がないとやばいぞ」

 

八幡「マジか、おいお前ら後にしろ。急がないとやばいぞ」

 

雪ノ下「え、ええ。そうね」

 

由比ヶ浜「やばっ。わたしもがんばるし」

 

八幡「お、おう」

 

 

するするしゅるるー

 

サクッサクッ

 

するするしゅるるー

 

サクッサクッ

 

八幡「ふぅ、これで終わりか」

 

皆作業を黙々とこなしていたのでなんとかロスタイムを巻き返すことができた。見れば小学生たちが続々と到着してきた

 

そこからしばし俺たちは弁当と梨を配布するだけの存在になった。「いきなり弁当が現れた」「ホラーだ」なんて声は聞こえない。聞こえないんだからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、腹も膨れ皆ひと段落した時点で今度は夕食の準備だ。作るのは日本のキャンプで大人気、カレーライスだ。日本独自で進化したカレーは香港でもブームを引き起こしている。俺もイ・ウーや寮でよくカレーを作っていた。あれ、大量に作っても二、三日ぐらいなら寝かしとか言って置いとけるのがいいよな。日本のラーメンとカレーは世界に誇れるものだと思いましたまる

 

さて、夕食の準備と言っても俺たちが作るわけではない。飯盒炊飯をするために必要な手順を各グループに教えていかなければならないのだ

 

まずは、小学生たちにお手本として炭に火をつけることから始める。デモンストレーションとして平塚先生が教師たち用の火をつけることになっているらしい。こういうのって普通係りの人がやるんじゃ...

 

平塚「まず最初に私が手本を見せよう」

 

言うが早いか、流れるような作業で適切なサイズの炭を積み上げる。その下には着火剤と丸めた新聞紙が置いてある。着火剤に火をつけ、燃え上がった新聞紙を炭に移すために団扇で適当に煽る

 

随分と手慣れているがやはりイ・ウーのバーベキューに比べると遅い。炮娘なら炭を火炎放射器で燃やすし、ステルス共は魔術でバーベキューセットごと燃やす奴もいる。思い返してみても、まともに団扇で火をつけるのを見たことがないな。一般校の教師がまともじゃない方法をとるわけがないか。蘭豹ならどうするかな...うん、油とかぶちまけそうだ

 

そんなことを思い返していると、なかなか着かないことにまどろっこしくなったらしく、突然立ち上がり少し離れた場所にあったサラダ油を...

 

ぶっかけた

 

たちまち火柱が上がる。歓声とも悲鳴ともつかない声が沸き起こる。だが、平塚先生は動じることなくタバコをくわえようとして、少し残念そうな顔をしながらそれを戻した。そして火柱をみてニヒルな笑みを浮かべる

 

平塚「ざっとこんなところだな」

 

八幡「ここに常識人はいないんですね」

 

平塚「何を言っている。時間を無駄にしない合理的な行動ではないか」

 

八幡「なんですかそれ。それにしても随分と手慣れてますね」

 

平塚「ふっ、これでも大学時代はよくサークルでバーベキューをしたものさ。私が火をつけている間、カップルたちがいゃちゃこらいゃちゃこら。...ちっ、気分が悪くなった」

 

なんか...すみません。それにしても、行動一つ一つが蘭豹に似てるな。おそらく独s

 

平塚「比企谷、余計なことは考えるな」

 

八幡「う、うす」

 

やっぱり蘭豹だよこれ

 

平塚「男子は火の準備、女子は食材を取りにきたまえ」

 

ここで男女を分けるのは個人的な理由が入ってませんか?大丈夫だよね?

 

 

 

 

 

 

パタパタパタパタ

 

「......」

 

パタパタパタパタ

 

「......」

 

 

気まずい

 

準備をしてもらったためこっちで団扇を扇ぐ作業を受け持ったのだが、途中で戸部、戸塚、キンジが飲み物を取りに行ったので、今は葉山と二人っきりだ。後、男女分けの時に戸塚が男だとわかり心に癒しを失ったことをここで言っておく

 

俺が扇いでいる間、葉山は後ろで立っているだけだ。俺の後ろに立つな、とか言ってみたいけどそれはキンジにとっておくことにする

 

団扇で炭を扇ぐのが初めてということもあり、炭が徐々に赤くなっていくのを見ているとだんだん楽しい気分になってきた。いつもはセーラが風を起こしてくれるからな。身をもって有り難さを感じました。これからはもっとセーラに感謝したいと思いましたまる

 

テンションが上がってきたが、炭の前に立ち続けるのはさすがに暑い。汗を拭うついでにさっきから視線を感じる葉山に声をかける

 

八幡「なんだ?」

 

葉山「いや、なんでもないよ」

 

はぐらかすようにいう

 

手を休めずに、ジト目で葉山の方を見続ける。もしここに海老名さんがいたらややこしかっただろうが今はいないので問題ない

 

葉山「本当になんでもないんだって」

 

八幡「...めんどくさいからさっさといえ。気が散る」

 

そう言うとさすがに観念したのか口を開いた

 

葉山「比企谷くんはさ、雪ノ下さんのことどう思う」

 

八幡「なんだ藪から棒に」

 

葉山「いや、随分仲よさそうにみえたからね」

 

八幡「別に仲は良くないぞ。少し意気投合しただけだ。これが終わったら会う機会もないだろうしな」

 

葉山「そうなのかい?もしよければどんな話をしたか聞かせてくれないか」

 

八幡「別に大したことじゃねーよ。雪ノ下陽乃のことについて少しな。あと、雪ノ下のことが気になってるからって、少し話しただけのやつにまで突っかかってくるな。その表情も嘘くさいし、内面まで丸わかりだぞ」

 

葉山「くっ...そんなこと」

 

八幡「悪いがこう見えても人の心理を読み取ることは得意なんだよ。雪ノ下陽乃レベルならまだしもそんな粗悪品を俺に見せつけるな。しかもばれてないと思っているところがさらに腹ただしい。どうせなら本音でこいよ」

 

葉山「君はいったい」

 

戸部「隼人くん、比企谷くんお待たせっしょ」

 

戸塚「思ったより遠かったよ。でも遠山くんってすごい力持ちだね。サーバーごと持ってくるなんて」

 

キンジ「結構ギリギリなんだけど」

 

八幡「なんだキンジ、もう限界か?アリアに特訓してもらうよう言っておくか?」

 

キンジ「まさか、まだまだいけるぜ。戸塚、何処におけばいいんだ?まだ持ってくるわ」

 

戸塚「一つで大丈夫だよ」

 

戸部「ペッー、遠山くん凄すぎっしょ、な、隼人くん」

 

葉山「そうだな」

 

 

団扇をキンジに交代し紙コップの麦茶を受け取った。葉山が何か言いたそうな様子だが、あの感じだと本人も何が言いたいかまとまってない様子だ

 

俺は陽のあたるベンチに腰掛けてお茶を飲み休憩時間を満喫する

 

そこへ女子たちが戻ってきた

 

葉山や戸塚のもとに集まってお疲れ様ムードが漂う。俺はともかくキンジが頑張っているんだから気にしてやれよ。途中から火を扇いでいるキンジ自体が空気になって送り出されていくのようにみえたからね

 

その後、肉や野菜それにロリエ...ローリエを入れたりして、なんとなくの分担ではあったものの米とぎも終え、俺たちの分はきちんと準備が整った。あとはじっくり煮込むだけだ

 

周囲を見渡せばら炊ぎの煙が辺りに散見できる

 

どうやら初めての野外炊飯ともあって苦戦しているグループも少なからずいるようだ

 

話の結果、平塚先生が火の当番をし、俺たちは小学生の方に行くことになった

 

小学生たちは高校生の登場をちょっとしたイベントのように捉えているのか、自分たちのカレーの完成度を自慢し、食べてけ食べてけと引き留めようとする

 

葉山たちは小学生に囲まれて和気藹々とやっている。さっきは何か言いたそうだったが、時間が空いたためか今は落ち着いているようだ。大方色恋沙汰の話だったのだろうが。キンジの身の回りでもそう言うの多いからな。間宮あかりなんかいい例だ。それでも銃が出てこないだけ優しいんだろうな、一般校は

 

そんな和気藹々とした中でも、いや和気藹々としているからこそ弾かれるものもいる。先ほどの少女、鶴見留美がそうだ。

 

小学生たちにとっては、すでに彼女が一人でいることは日常的な光景なのだろう。誰も気にしたりしない。けれど、外部の人間からするとやはり気にかかる

 

葉山「カレー、好き?」

 

先ほどと同じように、輪の中に入れようと目立つこの場で話しかける。それを見て、雪ノ下が小さなため息を吐いた

 

同感

 

悪手である

 

この場で彼女に話しかけるメリットなどないし、彼女もそれを望まないだろう。ぼっちに声をかけるときはあくまで秘密裏に、晒し者にならないように配慮する必要がある

 

今の彼女に向けられるのは憎悪や嫉妬など悪意のものでしかないだろう。中には無関心を貫いている奴もいる。小学生で感情を完全にコントロールできるやつのほうが少ない。俺じゃなくても、雪ノ下雪乃や由比ヶ浜結衣でさえ、彼女に向けられるのが悪感情であることに気がつくだろう

 

鶴見「...別に。カレーに興味ないし」

 

冷静を装ってそっけなく答えると、その場を離れた

 

何を言っても悪意が向けられる中でできるだけ冷静に、何も感じていないようにその場を離れる姿は何処となく悲しそうで、しかし自分を責めているようにさえ見えた

 

ちなみに俺と雪ノ下はこのイベントに参加していない。キンジは依頼完遂のためにイヤイヤやっているが顔は悪くないからな。態度もさすがは武偵、別人かと思うほどだ。まぁ俺から見ればイヤイヤやっているのが丸わかりだけど

 

そして、コミュ力の低い俺と雪ノ下はどちらも人の輪の外、人の目の集めない場所にいる。二人の間はそれなりに空いていて、どちらも不干渉を貫いている

 

そんなぼっちゾーンに鶴見もやってきた

 

俺と雪ノ下の間までくると、そこで立ち止まる。お互いがなんとなく視界に入る程度の距離だった

 

葉山といえば少し困ったような寂しげな笑顔を浮かべていたが、すぐに他の小学生の相手に戻った

 

このまま鶴見を無視してお互いに不干渉を貫いてもいいのだが、さすがに小学生の女の子を無視できるわけもない。一部始終は見てたしな

 

八幡「よぉ、お前戻らなくていいのか?」

 

鶴見「いい、どうせみんなバカばっかだし」

 

八幡「まぁ、世の中大概はそうだ。早めに気づいてよかったな」

 

俺の言葉が意外だったのか、不思議そうな顔でこちらを見る。値踏みでもするかのような目線はいささか居心ちが悪い

 

けど小さな女の子に見つめられるってなんかいいよね

 

雪ノ下「あなたロリコン?」

 

八幡「ばっか俺はシスコンだ。もう何年も会ってねーけど」

 

断じてロリコンではない。あくまで小町を思い出していただけだ。...多分

 

留美「名前」

 

八幡「鉛筆」

 

雪ノ下「なぜいきなりしりとりを始めたのかしら、呆れるのを通り越して軽蔑するわ」

 

八幡「通り越したら尊敬しねぇか...普通」

 

雪ノ下「...人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るものよ。こんな変な人もいるのだから」

 

さらっと俺をけなさないでくれませんかね。確かに鶴見の意図を理解した上で無視したわけだが

 

鶴見「...鶴見留美」

 

雪ノ下「私は雪ノ下雪乃よ」

 

八幡「比企谷八幡だ。ふざけて悪かったな」

 

雪ノ下「あらふざけてたの?小学生をバカにして愉悦に浸るなんてあなたもしかして変態?」

 

八幡「キレッキレの毒舌だな」

 

鶴見「なんか、二人は違う感じがする。あのへんの人たちと」

 

なるほどね...確かにぼっちだし。でも甘いな、キンジもなかなかのものだぞ

 

鶴見「私も違うの。あのへんと」

 

自分に言い聞かせるように、ゆっくりと噛みしめるように言った

 

由比ヶ浜「なに?どったの?」

 

鶴見留美のことを気にしていたのか、何かを感じ取ったのか、こちらにやってきた

 

雪ノ下「彼女は由比ヶ浜さん。わたしと同じ部活に入っているわ」

 

由比ヶ浜「あ、そうそう。あたし由比ヶ浜結衣ね。鶴見、留美ちゃん、だよね?よろしくね」

 

だが鶴見は由比ヶ浜の声に対して、頷くだけにとどめた

 

雪ノ下「違うって何処がかしら」

 

鶴見「周りはみんなガキなんだもん。まぁ私、その中でもうまく立ち回ってたと思うんだけど。なんかそういうのくだらないからやめた。別に一人でも別にいっかなって」

 

由比ヶ浜「で、でも。小学生のときの友達とか思い出って結構大事だと思うなぁ」

 

鶴見「別に思い出とかいらない。中学入れば、よそから来た人と友達になればいいし」

 

鶴見留美は新しい環境になれば、人間関係が一新されると、楽しくやれると希望を持っている

 

八幡「違うな」

 

もちろんそれは間違った考え方というわけではない

 

雪ノ下「...その通りね。おそらくだけど、あなたの通っている小学校の生徒も、同じ中学へ進学するのでしょう?なら、同じことが起きるだけよ」

 

雪ノ下は実際に経験したのだろう。言葉一つ一つに重みがある。俺は藍幇の後ろ盾のおかげでハブられる程度で済んだけどもっとエスカレートした行為を受けたのかもしれない。しかも武偵は実力主義な面が強いからな。そういう面でも一般校とは違う

 

雪ノ下「それくらい、わかってるのではなくて?」

 

鶴見「やっぱり、そうなんだ......」

 

ぽつりぽつりと鶴見がこれまでの経緯を話し始めた

 

*****幼z...少女説明中*****

 

 

 

 

 

 

 

 

高原の夜は季節に限らず冷えるものだ

 

小学生はそろそろ就寝時間のはずだ。とは言っても多くの人は友人と過ごす夜を大人しく眠ることなく、夜通し語り合うのだろうか

 

平塚「どうした?何か心配事かね?」

 

葉山「まぁ、ちょっと孤立しちゃってる生徒がいたので...」

 

三浦「ねー、可哀想だよねー」

 

平塚「なるほど、それで、君たちはどうしたい?」

 

可哀想とは言ったもののどうしたい、というようなことは思っていないようだ。自分に直接関係しない問題ないんてそんなものだ。変に関わって問題を起こすリスクを負う奴なんてそうそういない

 

葉山「俺は...できれば、可能な範囲でなんとかしてあげたいと思います」

 

希望のあるような言い方だ。無責任で横暴。できない可能性を暗に匂わせて、全員に釈明の余地を与えている

 

雪ノ下「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」

 

確定した事実であるかのように断言した

 

葉山「そう、だったかもな。...でも今は違う」

 

雪ノ下「どうかしらね」

 

予想以上に雪ノ下が苛立ちを醸し出し、葉山も何か暗い雰囲気を出しているため、座には重い沈黙が垂れ込める

 

八幡「一ついいか。可能な範囲って何処までだ。下手に手を出して場を荒らすだけにならないのか?」

 

葉山「それは...これからみんなで考えるさ」

 

八幡「みんな...ね。悪いがその程度の覚悟で取り組むのなら俺は降りる」

 

三浦「はぁ?せっかく隼人がみんなでなんとかしようって言ってんのに、なんでそんなこと言うかな」

 

八幡「葉山がみんなでやろうって言っただけで俺もやるなんて言ってない。それにお前は責任取れるのか?」

 

三浦「ちょっ、そんなのまだわかんないし。だから考えるんじゃん」

 

平塚「やれやれ...少し落ち着きたまえ。雪ノ下、君は?」

 

雪ノ下「...私は...、彼女が助けを求めるのなら、奉仕部の理念に則ってあらゆる手段を持って解決に努めます」

 

その答えに平塚先生は、うむと大きく頷いた

 

平塚「で、助けは求められているのかね?」

 

雪ノ下「...それは、わかりません」

 

由比ヶ浜「ゆきのん。あの子さ、言いたくても言えないんじゃないかな」

 

八幡「罪の意識か...」

 

由比ヶ浜が自分の体験も含めて鶴見留美の感情を予測する。その言葉はきっと由比ヶ浜だからこそ伝わるもので、だからこそ部外者である俺やキンジも納得できた

 

平塚「よし、雪ノ下の結論に反対のものはいるかね?」

 

誰からも否の声は出ない

 

俺も言ったからな。助けを求められたら武偵として、解決に取り組むって。やるからには曖昧なことはできない

 

平塚「よろしい。では、どうしたらいいか、君たちで考えてみたまえ。私は寝る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題対処することが決定して数分が経ち何人かが意見を言うものの、結論は出ない、そんな簡単に出るものでもないが。途中から葉山に雪ノ下が突っ掛かり、そこに三浦が参戦してさらにヒートアップする事態にまでなった

 

 

とりあえず今上がった意見や考え方をまとめてみると───

 

議題『鶴見留美はいかにして周囲と協調を図ればよいか』

 

三浦:別の可愛い子とつるめばオケ。周り見下してるのをやめればいい

 

海老名:趣味を共有できる友達をつくる

 

戸部:いろいろ話しかけてみる

 

葉山:みんなで仲良くできる方法を

 

戸塚:中学に入ってすぐに違うグループを組めばいい

 

雪ノ下:主犯格を徹底的に晒し者にする

 

由比ヶ浜:ゆきのん...

 

キンジ:これも任務に入るのかな。下手に関わりたくないんだけど、専門でもないし

 

俺:諦めろ

 

最後らへんの奴ら参加してないだろ。てか俺らだな。まあ鶴見自身がどうしたいかを明日聞いてから考えるからいいか

 

だが葉山の言うみんな仲良くは無理だ。今だって高校生同士で喧嘩してんだからな

 

 

 

 

 

 




感想待ってます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告