ルミルミの出番は次からです
12.カナからの依頼
香港から日本に戻り少し時間が経過し今後の準備はある程度できた。銃やナイフのメンテも終わり装備品も潤沢になった。あとはキンジとレキのことか
レキひいてはウルスとの関係は硬直状態が続き、戦闘こそ起こっていないが関係回復は難しいだろう。バンディーレでもおそらく対立する
一方でキンジの方も難航している状態だ。アリアとは組むかもしれないが白雪や理子、武藤や不知火などとの連携が取れていないと勝てないし続かない。せめてアリア以外に二人はチームに入って欲しい。そのためには修学旅行で一緒に行動させるのがいいんだがそこに至るまでのプロセスが遠い
何か(都合の)いい依頼を見つけてやらせるか?
そんなことを考えながら教務課の掲示板を見ると『警告!』と赤字で書かれた紙が目にはいった。そしてその中に知っている人の名前がデカデカと書かれていた
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8/14 時点での単位不足者
遠山キンジ
専門科目(探偵科) 一単位不足
カジノ・ピラミディオン台場の警備任務は、営業を円滑に継続させるに至らなかったため評価を半減(端数は切り上げ)する
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お、おいおい...
キンジのやつ単位落としてやがった
カジノの警備任務はおそらくパトラと戦った時のものだろう。イ・ウーが絡んでいるとはいえここまで単位ギリギリの生活をしていたとはな。正直驚きだ
だがこれは都合がいいかもな。単位を取る名目で依頼を渡し、メンバーもこちらでそれとなく誘導していけばチーム作りの基盤になるだろう
藍幇もキンジを狙っているがまだ拙いところもある。バンディーレで同じになればいいがならなくても終盤に引き込めばいいだろ。そこら辺の話しは俺の管轄外だからどうでもいいけど
とにかく何か依頼を探さないとな
一単位取る必要はない。ある程度単位が取れればいい。逆に多くても次の分として繰り越せるから損ではないし単位は気にしなくていい
一通り目を通しその中で一番良さそうなのを取る。キンジの性格はこの際無視しておく。楽にコミュニケーションを必要としない任務は八幡的ににポイント低い。...俺は楽な方を選ぶが...
side キンジ
...今日、ようやく退院か...
イ・ウーから生還した俺たちは、白雪が浮かべていた救命ボートに拾われ...数時間後、救助に来た水上飛行機に乗せてもらった
武藤が運転する機体は1日がかりで台場沖まで帰って、半ば眠るように気を失っていた俺はそのまま救護科に隣接する武偵病院に運び込まれたそうだ
イ・ウーがその後どうなったのか...知らないし、知りたくもない
───もうあの組織のことは考えたくない
どうせヤツらはリーダーを失い、バラバラになったのだから────
あの後、俺の病室には政府関係者と名乗る黒服男が「今回のことは永久に他言無用」と言い残して去っている
俺自身関わりたくない話だからそれでいいのだが...
反省しきり、だな。イ・ウーの件については
パートナーのためとはいえ、本気を出しすぎた
もう──本気は出さない。ヒステリアモードも自重する。そうやって、今度こそ平和な日常を享受する『平凡な高校生』に一歩ずつ近づいていくんだ
その思いと共に
俺は退院し、新たな日常への一歩を踏み出してい「おいキンジ、いるか?」
俺の決意を踏みにじるかのように入ってきたのは八幡だ。怒りを込めて睨みつける
八幡「ん、邪魔したか?悪い、帰るわ俺 」
そう言って流れるようにUターンして病室から出て行く。わかればいいんだ、わかれば
八幡「単位落とした事について教えてやろうと思ったのにな」
バタン
...
......
.........
え?
単位落とした?オレガ?
いやカジノ警備はしっかりとやったはずだ途中パトラの妨害で抜けたけど犯人は捕まえたし問題ないはずだよな?
いや待てパトラを捕まえたって言ったけど実のところ逮捕したわけではないし倒しただけだよなそれにイ・ウーに関しては他言無用って言ってたから単位外の功績として扱われるのか?だとしたら単位をもらえていない可能性もあるパトラの事がなかった事にされたら単純な警備不足として扱われるだろうし
待て待てそもそも八幡が嘘をついている可能性もあるし考えすぎな気もしなくない
そうだよなというかそうであって欲しい
とりあえず一旦落ち着こう
...
......
.........
キンジ「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!??」
なぜかお怒り状態のキンジだったので用件だけ伝えて部屋を出る
後ろで叫び声が聞こえるがレキの飼っているオオカミがなんかだろう
キンジ「はちまーーん!」
ほらはちまんさん呼ばれてるぞ、返事してあげて。というかあんな風に俺が叫ばれたらマジで引くレベル。目立ちたくないし
キンジ「おい八幡!」
って俺か?面倒くさいんだけど
八幡「どうしたキンジ」
キンジ「はぁはぁ。さっきの話本当か?」
八幡「さっきの?」
キンジ「俺が単位落とした話」
周りを気にするようにして小声で話してくる
八幡「ああ、それか。そうだぞ、カジノ警備不足だってよ」
キンジ「本当か...」ズーン
八幡「安心しろ、さっきお前にぴったりな依頼を見つけたから」
先ほど取った依頼書を渡す
キンジ「本当か!助かる」
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サポートスタッフ募集
推奨科 なし
報酬 1単位
千葉村におけるサポートスタッフを募集
小学生団体の案内、安全確保、イベントの手伝いなどを2泊3日で行う
他のスタッフと協力し円滑に進めること
定員 2〜4名
日時 8月16日〜18日
食事、交通費支給
申請期限 本日まで
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キンジ「八幡、言いにくいんだかこれしかなかったのか?」
八幡「他にもある事はあるがキンジに合ってない」
キンジ「これもあってないと思うんだが。人数は集まらないし、何より小学生の相手とか無理だ」
八幡「安心しろ、他のところからも人は来るらしいから小学生と直接関わらなければいい。なんなら安全確保とかいって離れるのもアリだぞ、武偵として顔が売れて変に目立つがその時だけだろ」
キンジ「それも嫌だな」
八幡「それに他の依頼って言ったら浮気調査0.2単位やカジノ警備0.3単位とかか」
キンジ「カジノ警備はしばらくいいかな...浮気調査も気が向かないし。そもそも今の時期に単位を多くもらえる依頼も少ないか」
八幡「やったらいいじゃねーか。アリアとか誘ってよ」
キンジ「アリアは今忙しいしな...」
八幡「じゃあ理子や白雪は?」
キンジ「白雪は多分星伽の掟とかで無理だろうし理子はいまいないだろ」
八幡「そうだったか?じゃあ武藤らは?」
キンジ「武藤はともかく不知火ならいけるかもな」
そう言って電話をかける
だが不知火か...チームを組むという観点ではいいが派閥的な問題があるからな...最悪戦る事になるかもだが
キンジ「そうか、悪かったな。...アリア?あいつはいま忙しいんだよ......ああ、悪かったな。じゃあな」
どうやら無理だったみたいだな
キンジ「やっぱり無理だ。組む相手がいない」
八幡「他には...」
キンジ「そういや八幡は予定ある?」
八幡「いやないぞ」
夏休み中にやる事は全部やったしな、あとはキンジのことだけだ。それはともかく誰かいるか...?
キンジ「八幡!一緒にやろうぜ!」
八幡「は?」
キンジ「いやだからこの任務一緒にやろうぜ」
八幡「断る!」
キンジ「何故!」
八幡「そのアレだ。予定がいっぱいでな。スケジュールが押してるんだ」
キンジ「...さっき予定ないっていったよな」
八幡「げ」
そういやそんなこと言ったな。あまりに自然に聞いてくるから答えちまったよ
キンジ「頼む!ルームメイトとして友達として手伝ってくれ!」
八幡「...友達かどうかは知らんが顔見知りってことで手伝ってやるよ」
このまま断っても後味悪いし、押し切られそうな気もするしな。もう押し切られてる?自分から身を引いただけだ
キンジ「友達じゃなかったのか...」
八幡「...アレだ、仲間。武偵に友達なんて関係はいらない。少なくとも俺は利害関係のあった仲間がいればいい...それと戻る場所」
キンジ「仲間か...そうだな、武偵憲章にも仲間を信じ、仲間を助けよってあるしな。助けてくれ八幡」
八幡「...はぁ、しかたねーな」
こうして俺も参加することになったのだが、キンジのチームを作る下準備で受けた依頼を俺と行くってことは俺とキンジが組む可能性があるんじゃね?そうなったら引き抜きとか楽そうだけどカナとの約束を破ることになるんだよな。『キンジのチーム』じゃ無くなるから
───まぁなんとかなるか
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