ぼっちな武偵   作:キリメ

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11.藍幇とアリスベル

「義父!ウルスと決別したってどういうことだよ」

 

知らせを聞いた俺はすぐさま諸葛の部屋に向かい質問する

 

「どうもこうもまだ何もわかっていないのですよ」

 

「どういうことだ」

 

「突然ウルスの使者から手紙が届きましてね、藍幇との関係を切らせてもらうとのことです」

 

「原因は...」

 

「上海藍幇となにかあったか...あとは蕾姫さんとの関係でしょうね。最近何かありましたか?」

 

「......まぁそれなりに」

 

レキのことだけでなく今までおこった出来事を全て報告する

 

「おそらくそれも原因でしょうね。とはいえ、そうなるとそっちからの交渉も厳しそうですね...。契約が有効である以上璃璃色金がこちらを完全拒絶していないということでしょうけど」

 

「まぁ、そうなんだろうけどさ」

 

いくら其れがあるとはいえ、あいつの心を保証するものではない。それにこれを望まない人もいるわけで...

 

「それよりもイ・ウーのことです。あなたが帰省中の間別の諜報員に見張らせていましたが遠山キンジと神崎アリアによってイ・ウーのトップ、シャーロック・ホームズが倒されイ・ウーは事実上崩壊しました」

 

「っ......ということはもうすぐバンディーレがあるってことか」

 

「そうですね、誰が行くかはまた考えるもして...その前に修学旅行ですよ」

 

「行きたく無いんですけど...」

 

「残念ですが任務です」

 

「うっす」

 

「今回の修学旅行で曹操姉妹に動いてもらいます。そのバックアップ及び場合によっては撤退の支援、援護などをしてもらいたい」

 

「それはキンジに身バレしても仕方が無いということでいいんですか?」

 

「ないとは思いますが、最悪の場合そうですね。ただ捕まる程度ならなんとかなるのでいいですが神崎アリアと遠山キンジの力は未知数です。警戒しておいて損は無いでしょう」

 

「じゃあ俺は先に日本に戻っておいたほうがいいですか」

 

「それでも良かったんですけどね、あと二週間程度ここにいてもらいますよ」

 

「えー嫌なんだけど」

 

「それだけ慕われてるってことですよ」

 

「それにしても去年のはやりすぎでしょ」

 

「そんなことなかったと思うけど」

 

八幡「いや少なくとも80万はかかってたぞ」

 

「まぁ予算は希望制だからね」

 

「それにしてもなんで俺だけ...まぁいいや。でそれまでは何してたらいいんですか、休暇?休暇だな、うん」

 

「実はちょっとマズイことになっていてね、立花・氷焔・アリスベル、この人物を保護して欲しいのです」

 

「俺の力が必要なほどの人物なのか?」

 

「言いにくいんですけどね、上海から来た藍幇の一部が立花家の資産を乗っ取る目的で両親を殺害したのだ、幸いというべきか娘のアリスベルが逃げのびているらしいが場所がわからないというわけです」

 

「!そいつらはどうなった」

 

「すでにできる限りの処分は下したのですが上からの圧力がすごいものでね」

 

「...そいつらは後で殺るとしてなぜ保護する必要があるんだ」

 

「香港藍幇の代表として謝罪したい気持ちもありますがそれ以上に今後の行動が知りたいですね」

 

「まぁそうだよな...」

 

「そこは本人の意思次第ですね」

 

「了解した。3日以内に解決する」

 

「くれぐれも極秘裏にお願いしますよ」

 

「わかってるよ義父」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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sideアリスベル

 

 

私は、香港に拠点を置く日本人の一族、旧華族・立花家の一人娘でした。そのたの暮らしには何一つ不自由なく、日本人として日本語での初等教育も受けていました。

 

お母様は異能であり、その血を引いた私は幼い頃から基礎的な式を教わりました。

 

 

─────すべて過去の話

 

 

 

 

 

─────藍幇─────

 

上海に本部を持つ大陸のマフィア。数多の異能を擁する無法者たち。

彼らの一派が────私のお父様とお母様を殺めたのです

 

フィギアスケートのレッスンで外出中だった私だけが難を逃れることができました

 

そのご善良な警官の方が密かになにがしかのお金を下さるとともに藍幇について教えてくださりました

 

 

私は藍幇を許さない

 

 

でも家を、両親を失った私に何かできる力があるわけもなく、私は路頭に迷いました

 

九龍北部のスラムに隠れて初めて道端で眠り、起きた時、所持していたお金がすべてなくなっていました

 

生きるためには、翌日から働かなければなりませんでした。

 

しかし身よりのない子供ができる仕事などあるはずもなく、私はみるみるうちに痩せ、汚れ、幽霊のように廃車置き場で寝起きしています

 

 

『アリスベル。もしあなたが一人ぼっちになってしまうようなことがあったら...日本の沖縄、首里城に行きなさい今は観光地になっていますが、そのお城の地下にはご先祖様が封じた『貘』という生き物がいます。貘は立花家の嫡女に味方する、守り神。何でもできる異能の獣なのです。いずれきっと、アリスベルの力になることでしょう』

 

 

お母様がなくなる直前におっしゃった最後の言葉

 

何とかしてこの現状を打破し沖縄に行かなくてはいけません

 

 

藍幇を倒すためにも

 

 

そんなことを考えながら廃車置き場に戻ろうとすると

 

「お前がアリスベルか?」

 

いきなり後ろから声をかけられました。これでもお母様から色々教わっていたため素人に後をつけられるようなことはありません。それに私を知っているということは藍幇の人間でしょう。おそらく私を消しにきた

 

「.........なんのことでしょう」

 

今の私に戦う力はありません。ここは人違いということでしのぎましょう

 

そう考えた私はできるだけ衰弱した様子でとぼける 。しかしこの人物は私の心のうちまで見透かしたような目で見つめたあと

 

「あーめんどくさいから率直に聞くぞ、お前これからどうしたい」

 

そう一言告げた。

 

その言葉に感情の波が押し寄せる。その波を吐き出してしまえは楽だろうけど、そうすれば私がアリスベルだと認めることと同じだ

 

「っ、そんなことわかんないわよ!」

 

だがそれをまだ幼い私にできるはずがなかった

 

「貴方が何者か知らないですが藍幇のせいで!お父様とお母様は!」

 

「.........すまん」

 

「!!そんな言葉で!」

 

そんな正体もわからない男に、たった一言謝られただけでおさまる感情じゃない

 

「未然に防げなかった俺たちの責任だ」

 

「っ、はっ、はぁはぁ、...どういうつもりですか」

 

「あーどこまで知ってるかわからんが、今回の件藍幇全体の意思ではなく一部の連中の暴走だったことは知っているか?」

 

「ええ、知っています。でもそれが何なんですか、藍幇は悪くないとでも言いたいのですか!」

 

「ちげーよ、話は最後まで聞け。それで、藍幇としてはお前を保護または何かしら形の上で謝罪したいというわけだ。納得いかんだろうがな。で、お前これからどうしたい」

 

納得いくはずのない提案、このまま感情に任せて叫ぶこともできますがそれでは意味がない。

 

「実行犯やその関係者についてはすでに処分が下っている、まぁ殺せってんなら殺すが」

 

そうしたい気持ちもある。でも

 

「なら...日本へ、日本の沖縄へ連れて行ってください」

 

「...それでいいのか?」

 

「はい」

 

「...わかった。とりあえずここから移動するぞ、色々準備が必要だ」

 

「...その前に、貴方は誰なのですか」

 

「ん?あー名乗ってなかったな。この場合名乗るべきなのか?まぁいいか。えーと俺の名は八、藍幇のエージェントだ」

 

藍幇のエージェントなら私なんかすぐに見つけられるのだろう。それにしても

 

「八ですか。本名かはわかりませんがもう一つ、あなたはこの国の人ですか?話し方に少し訛りと発音に違和感があります」

 

「ん、あぁ俺生まれは日本だから。下手くそでごめんね?」

 

「日本にまで藍幇の勢力は広がっているのですか?」

 

そうだとしたら沖縄に行っても藍幇から身を隠せるとは限らない。そもそも藍幇の力で日本に行く時点でですが

 

「無視かよ...。って、そういうわけじゃねーよ...まぁ色々あってな。時間はあるんだ、向こうで知りたいなら話す」

 

「そう言えばどこに向かっているのですか?」

 

「安全で健全なホテル」

 

「...そうですか、ありがとうございます」

 

「別にお礼をいわれるようなことじゃねーよ」

 

「そう、ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルで久しぶりのシャワーを浴び、買って来ていただいたイチゴ大福を食べる。ほんの数日の出来事だったけれど今までの私がどれだけ恵まれていたか、そしてそれはもう戻ってこないことを感じさせる時間だった。

 

そのあと八さんに今後の予定を聞いた。

出発は明日、鳳 鈴鈴という偽名で日本へ向かうらしい。

 

話がひと段落したので八さんの過去について聞いてみた。八さんの境遇は私とは違う意味で辛く苦しい人生だった。スラムで過ごしたものにしかわからない境遇、私が八さんの年にこうなっていたら無事だったかわからないくらい恐ろしいものだった。

 

藍幇に入るきっかけまで話し終わった八さんはそこで話を切った。

 

「ここから先は聞かないほうがいい、俺も言うつもりはない」

 

「最後に一つ質問いいですか」

 

「答えられる範囲ならな」

 

「八幡さんは今の状況、立場を後悔していますか」

 

「.........後悔もなにもそうするしか生きる道がなかっただけだ、まぁ今藍幇を裏切るなんて考えたこともないけどな。誰が何と言おうと此処は俺を救ってくれた大事な場所だ。絶対に裏切らない」

 

「逆に私がいつか藍幇の敵になるとして、ここで殺すとは考えないのですか」

 

「今回の件は完全にこちらが悪い。だから今は殺さない。だがまぁ藍幇にとって脅威となったならその時は」

 

「分かりました、ではまた」

 

「...また、か」

 

「ええ、また」

 

「何をする気か聞かないが後悔だけはすんなよ」

 

「はい、向こうで色々学んでくるつもりですから」

 

「それならいい、か」

 

「じゃあ、また明日」

 

「おう」

 

 

 

 

こうして私は無事沖縄につくことができました

 

復讐に囚われている今ですがいずれ変われるのでしょうか、少なくとも藍幇と一括りに悪と決めつけるのはやめましょう、八さんのような人もいるのですから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「というわけだ」

 

「彼女がどうなるか、日本での出会い次第といったところかな」

 

「で、報酬はあるのこれ?」

 

「もちろん、11日後が楽しみだね」

 

「報酬がそれとか嫌だァ!!」

 

「冗談だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




アリスベルを知らない人には少しわかりづらいところがあったかもしれませんが楽しんでいただけたのなら幸いです。

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