ぼっちな武偵   作:キリメ

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水没したケータイを交換し部活の合宿も終わったので投稿再開です

データが消えたせいでモチベーションがあがらない




8.吸血鬼

 

 

 

 

あっぶねー、ギリギリ間に合ったぜ。あと少し遅れてたら理子が丸焦げになってたな。

 

「はー...くん?」

 

「......」

 

理子が話しかけてきたが今は無視する。だって正体ばれたくないし。アリアに俺がイ・ウー関係者ってばれたら絶対面倒くさいことになるし任務にも差し支える。

 

「話は後だ、理子、神崎アリアと遠山キンジを連れて此処から離れろ。」

 

「!わっわかった、だが、無理はするなよ」

 

どうやら俺の考えを理解してくれたようだ。まぁ俺がこいつを倒す意味はないし適当に時間稼いで逃げてもいいな。というか働きたくねぇ

 

「糞が!いつもいつも俺をコケにしやがって。おい死神!貴様は必ず殺す!」

 

「おうおう、お元気なことで」

 

あえてブラドのヘイトを高めて理子たちから注意を逸らすつもりだったが特に必要無いみたいだな。

 

理子たちが此処からある程度離れたであろうと思い、攻撃を仕掛けるため徒手格闘の構えをとる。

 

「ふっ!貴様のその技は確かに脅威だが今の俺には無駄だッ」

 

ブラドの体が紅く発光する。雷の力を筋力に変換しているってところか。しかも帯電してるから、絶縁体の手袋をしているとはいえ迂闊に触れない。

 

「.........」

 

だがお前は相変わらずその再生能力に依存している。それに俺の技はそれだけじゃない。

 

バン!

 

「ちっぃ!」

 

一発の銃声でブラドの両目が弾け飛ぶ。カナの銃技【不可視の銃弾】だ。イ・ウーではお互いの技、能力をコピーする事があるから俺もカナの銃技を身につけさせてもらった。流石に本人には劣るがお前には躱す選択肢がないから簡単に当たる。

 

ちなみにカナの銃とはちがって俺の銃は自動拳銃だから早撃ちには向いてないんだが、藍幇の天才技師によって自動拳銃の限界を超えた連射と安定感がある。

 

少しタメてこいつの頭上に跳び上がる。雷の力によって第三形態に変身したブラドは魔臓も再生しているようだ。銀弾ではないため破壊した目は一瞬で再生した。

 

「あめぇッ」

 

空中にいる俺向かって伸ばしてきた右手に左手で法化銀有手榴弾(ホーリーグレネード)を握らせると、そこを力場としてブラドの背後に回る。

 

その瞬間爆発音とともにやつの右手が吹き飛ぶ。そして空いた右脇に今度は右手で掌底を叩き込んだ。残った左手の横払いをバックステップで躱し、挑発するように時間を見る。──まだ終電には余裕があるな。

 

「てめぇ何をした...どうやって第三形態を解きやがった」

 

その言葉通り、既にブラドからは先ほどのオーラも電熱も感じられない。理子達にとの戦いで負った傷こそ再生しているが右手は失い第1形態にまで戻っている。

 

「別に...お前の中にある魔蔵の活性を抑制しただけだ。お前を殺すのは本意じゃねえが...まぁなんだ、運が悪かったと思え?」

 

「餓鬼がぁッ」

 

バン!

 

「!!?」

 

突如銃声が響く。

 

バン!バンッ!バンッ!

 

続けて3回。計4回の銃声とともにブラドの両肩、右脇腹、そして舌から血飛沫が上がる。全て魔蔵のある場所だ。

 

何処から?誰が?と言うように射線の先を見ると───

 

「四世!?貴様!尻尾巻いて逃げたはずじゃ」

 

理子だ。負傷した2人を置いて戻ってきたらしい。アリアが黙ってるはずないと思うんだがどうやって1人で来たんだ?

 

「誰が逃げたって?ずっとこの機をうかがってたのさ、ブラド、お前を倒すためにな!」

 

「だが気配など一切しなかったはずだ...まさか!」

 

「ん?あぁようやく気づいたか。なぜ俺が気配を消さなかったのか、大きな音のする爆弾や視界を潰したか。そんなことしなくてもお前に負けないことぐらい、お前自身が一番知っているだろ?」

 

「ちっ、だがそれはあれを使っての事だ。それがなくしかもこっちは」

 

「あーそもそもだ。俺が最初から介入していないって時点で、この戦いの主役でもキャストでもねーんだわ。雷に当たった的な感じ」

 

「...それで4世か...。ふんっ、結局人の手を借りねば復讐すらろくにできんとはな。やはり欠陥品か」

 

「本当にそうか?いくら俺がいたとは言え、撃たれる殺気すら気がつかないものか?」

 

「...まさか」

 

「そうだろ?理子」

 

「いつまでも理子を見下すんじゃねぇよ。イ・ウーは技を磨き教えあう場所、理子は死神から技術を盗み学んだだけ。...それに、今度こそ終わりだ」

 

4つの魔蔵を撃ち抜かれ再生機能の停止したブラドの体に銃弾を数発撃ち込む。何度も何度も魔蔵のあった肩と脇腹に。まるで二度と再生しないよう完全に破壊しないと安心できないかのように。

 

ブラドが気絶してもまだ理子は銃を下ろさない。

 

「...理子、これ以上殺る必要は無い。あとは警察に任せるぞ」

 

そう言ってブラドに対ステルス用の手錠をつけようとして手首から先が完全には無いことに気づいた。仕方が無いので首輪をつけておくか、見た目狼だし犬みたいなもんだろ。

 

「なんで!やっと、やっとなんだよ。やっと今までの復讐ができるんだよ。はーくんだって理子の気持ちわかるでしょ?」

 

「あぁわかるぞ...いやってほどな。だからこれは俺のワガママだ、お前には殺しをしてほしく無いっていうな。」

 

「...はーくん。でも理子は」

 

「一度はお前達でこいつを倒したんだ。あの時こいつは確かに理子に負けを感じていた。理子は既に勝ってんだよ。復讐なんてする必要無い、それに理子の目的はこれで終わりか?」

 

「...まだ、オルメスとの決着がついてない」

 

「そうだ、理子はアリアに憎しみや復讐してやりたいと思うか?」

 

「あるよ、アリアは私とは違って恵まれている、それが許せない。」

 

「その恵まれているって判断は理子から見たものだ。アリアにはアリアの事情があるのはもう知ってるだろ」

 

「...」

 

「なんでアリアと戦いたいんだ?わざわざパートナーまで用意して。本当にアリアが憎いならどんな方法でもいいから殺せばいい。それをしないのは何故だ?」

 

「それは!それじゃアリアを、ホームズをお祖父様を超えたことにならないから!」

 

「そうだ、お前はアリアが憎いから戦うんじゃ無い。自分の力を示したい、認めてもらいたいから戦うんだ。復讐のために負けを認めた相手を殺すことを果たして誰が認めてくれる?怪盗は物は盗るが命を盗らない。命を盗ったらそれは怪盗じゃなくて殺人者だ。お前はそんなものに堕ちたいのか?」

 

「いやだ!私は...理子は...怪盗として力を示したい!」

 

「それでいい、それを自覚できただけでも少しは変わったんじゃねーの?」

 

「変わったのかな...でも、ありがとはーくん。」

 

「お、おう。」

 

「それと...約束、破りそうになったけど許してくれる?」

 

「...別に約束なんて口だけのもんだ。要は自分の心の持ち方次第だろ。強要する権利なんて誰にもない」

 

「そっか...じゃ、とっとと家にかえろう!」

 

「はぁ変わり身が早いのか無理してんのか...まぁいいか」

 

理子を落ち着かせるためとは言え、さっきの話し方は黒歴史ものだな。HSSのキンジみたいだ。あっこれはキンジに悪いか。

 

先に屋上から飛び降りた理子に俺も後に続こうと思ったが一応気絶しているブラドに声をかける。

 

「ブラド、おい」

 

掌底

 

「ゴハッ!」

 

「目、覚めたか?」

 

「死神...か。なんの真似だ?」

 

「いや、一応挨拶しとこうと思ってな。」

 

「いや、この首輪の方を言ってんだが」

 

「俺のこと、訊かれても答えんじゃねーぞ。吐こうとしたらその時点で殺す。藍幇(俺たち)の監視が日本(ここ)に届かないと思うな。俺は今日ここにはいなかった。いいな?」

 

「っ...安心しろ俺はお前の正体なんてしらねーよ。つーかイ・ウーの他のメンバーのほとんどが知らねーだろうよ」

 

それがそうでもないんだな。理子経由でジャンヌ、夾竹桃。カナやシャーロックぐらい。パトラとヒルダがちょっと怪しいけど、それ以外の奴らは俺が諸葛八という名前で藍幇の工作員ってことぐらいしか知らないだろうけど。

 

「そうか。それとあいつにはもう関わるな」

 

「俺はもうそんな気力もないが...娘の事まではわからねーぞ」

 

「大丈夫だ。ヒルダがどう動こうと理子はもう乗り越えた」

 

「けっ、俺にはどうでもいい事だ。でもまぁそうだな、そうでなくては」

 

「1人でなに腑に落ちたような顔してるんだって言いたいが...そろそろ警察が動くだろうしここでお別れだな」

 

「ふっじゃあな」

 

「じゃあな。マッカンでもまた差し入れに行ってやるよ」

 

そう言って俺も屋上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

「で、なんで此処にいるんだ」

 

横浜からそのまま東京まで帰ろうとしたら隣の席に理子がいる...だと。いや、普通に考えてありえんだろ。

 

「だって理子も東京かえるし」

 

「いやそれでもだな」

 

「理子の情報収集能力を侮ってはいけないのであります!」

 

「はぁ、それでキンジ達はどうしたんだ」

 

「下の階に放り込んだ後のことは知らないよ?多分無事なんじゃない?」

 

「まぁいいか、少し寝るわ」

 

横浜駅から東京駅まで40分あるので少し眠ろ仮眠することにする。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇはーくん理子頑張るから。どんなものだって盗める怪盗になるから。はーくんの心も盗んでみせるよ。あの無口ミントになんか負けないからね。......好きだよ、はーくん」

 

 

 

 

 

 




ブラドがなんかいい奴になった気がする

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