granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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作者の自己満足完結。

どうぞお楽しみください。


幕間 明かされた想い。見えてきた歪み 2

「何故だ……」

 

 静かになった部屋の中で、カタリナは声と体を震わせる。

 

「お姉さま?」

 

「君もセルグも、そうやって。勝手に背負って、己に罪を押し付けて……何故想いを明かさない! 何故己の胸の内にだけ留めて終わろうとする!! 君達は何故! 助けを求めてくれないんだ!」

 

 胸に宿った怒りはヴィーラが起こした事に対してではない。聞けば聞くほどに、ヴィーラがどれだけの想いで事をおこしたのかが理解できた。彼女は皆のためと言いその実、方向性はどうあれ、セルグを想い、事をおこしたのだ。仲間殺しの汚名を着てでも、ヴィーラは仲間と、セルグの心を救おうとしていた。

 そしてそんな事を露知らずにいた自分が、カタリナは情けなくて仕方なかった。

 

「仲間を疑うことを、皆さんは良くは思わないでしょう。ですから私は一人で」

 

「勝手に決めつけるな!! そうして何も知らないまま私は、大切な君にまた重荷を背負わせていた……私がのうのうとしている間に君はまた、自ら重荷を背負うような道を選んでいた。それを知って私が何も感じないと思うのか!!」

 

 慕うのならば頼ってほしい。想いを打ち明けてほしい。それがカタリナの心の底からの願いであった。

 気づけなかった自分にも、告げてくれないヴィーラにもカタリナの苛立ちは募る。

 

「私は、お姉さまの為ならどんな道であろうと」

 

 ヴィーラの言葉でカタリナの頭に沸騰したように血が上る。カッとなった感情が彼女の体を動かした。

 パンッと音を立ててヴィーラの頬が打たれ、カタリナはヴィーラの言葉を遮る。

 

「いい加減にしろ!! ヴィーラ、私の為なんて……そんなことの為に自分を捧げないでくれ。もっと自分の為に生きてくれ。君がその身を捧げるより、私は君が幸せになる姿を見たほうが何倍も幸せだ!!」

 

「お姉……さま」

 

 叩かれた事実に茫然としながらカタリナを見上げるヴィーラ。少しだけ滲んできそうな涙を堪え、ヴィーラは悲痛な表情を浮かべるカタリナを見上げ続ける。

 

「私は本当であれば君に慕われるべきではない咎人だ。君の想いを知っていながら、自らの目的の為にそれを利用した私は、君に糾弾されることはあれど、その身を犠牲にしてまで、慕われるような人間ではないんだ」

 

 嘗て、カタリナが犯した過ち。

 ここアルビオンの騎士学校には一つのしきたりがあった……騎士学校主催の御前試合。その優勝者はシュヴァリエとの契約を果たし、アルビオンの領主となる。

 騎士学校にいた時代、歴代でも最高峰の実力者とされたカタリナはその御前試合において、領主として島に縛られることを嫌い、決勝戦のヴィーラとの戦いで手を抜いた。

 カタリナが、島に縛られたくないという事を知っているヴィーラに。自らを慕っていると知っているヴィーラに、カタリナはすべてを押し付けたのだ。カタリナと共に居たいと言うヴィーラの想いをも知っていたというのに。

 だが、ヴィーラは決して糾弾しなかった。普通であれば裏切られたと罵るだろう事にもヴィーラは怒りを抱かなかった。昔と変わらずカタリナを慕うヴィーラの姿に、カタリナは常に心締め付けられていたのだ。

 無論、ヴィーラがカタリナを慕う理由もある。騎士学校入りたてのヴィーラが魔物に襲われていたとき、命の危機を救ったのはカタリナであったし、家柄故に孤独であったヴィーラといつも一緒にいてくれたカタリナにどれほどヴィーラが救われたのか。その程は想像に難くない。

 

 だがそんなことはカタリナにとっては取るに足らない当たり前の事。大きな過ちを犯して尚、慕ってくれるヴィーラをカタリナが大切に思わないわけがない。

 カタリナの手加減を見逃し領主を引き受けたこと。仲間殺しの非難を受けようともセルグを排除しようとしたこと。そのどちらも、()()カタリナにとっては許せないことであるのだ。

 

「君がアルビオンを離れ、私達と共に旅をすると決めてくれた時。私はもうこれ以上君を苦しめることはないと思っていた。犯した過ちの贖罪ができると安堵した。同時に、これからは君と共に在りたいと願った……お願いだヴィーラ。もう二度と、全てを背負おうとしないでくれ。私はそんなに頼りないか? グラン達はそんなに頼りないか? 君がそんな風に背負う事を私は望まない。私達はこれから、皆で背負っていかなければならないんだ」

 

 カタリナの懇願にヴィーラはまた涙が滲みそうになった。敬愛するカタリナの本気の願い。それが自分に向けられ、胸が高鳴ってしまう。

 

「お姉さま……私は」

 

「ヴィーラ、話してくれてありがとうね」

 

「ゼタさん……」

 

 カタリナの想いに答えようとしたヴィーラを遮りゼタが割って入る。ヴィーラは全てを語った。カタリナとのぶつかり合いもあり、ヴィーラは納得を見せようとしていた。

 だがカタリナ同様、ゼタにも伝えなければいけない大切なことがあった。割って入ったゼタは視線をヴィーラへと向けると、早々に話を切り出す。

 

「ヴィーラの話が終わったところで、私からもちゃんとヴィーラに伝えることがあるんだ。セルグからの伝言を」

 

「セルグからって……伝言の事一言も言ってなかったじゃないか。どういうことだよ、ゼタ」

 

「ごめんね、グラン。ヴィーラと一緒に伝えなきゃと思ってたから黙ってた。ヴィーラ、セルグはね」

 

 ゼタがヴィーラの手を取った。そっと握る手は温かで優しくて、きっと恨み言を伝えられるショックを和らげてくれてるのだと思い、ヴィーラはゼタの言葉をしっかり聞こうと耳を澄ませる。

 

「――謝罪と感謝。それを伝えてくれって」

 

 へっ、とヴィーラの声が漏れる。さぞや怒りの声があっただろうと思っていたが、予想外な伝言に思考が追い付かず呆ける事しかできないヴィーラを見て、ゼタが少しだけ笑った。

 

「フフ、セルグは言ってた。ルーマシーでは一応の意識があったんだって。あの時のセルグは間違いなくルリアちゃん達を殺そうと思っていた。ルーマシーでの一件で意図せずとも暴走の可能性を引き上げてしまった自分がここにいるのは危険でしかない。だから少し離れて自分の出生を探るんだって。ビィと一緒で、セルグも組織にいる前の記憶がないそうよ。セルグが起こした異常な行動には何か秘密があるからそれを探しに行くってさ……だからねヴィーラ。今回の事でセルグはヴィーラの事をこれっぽっちも恨んじゃいない」

 

「そんな!? だって私はひどい事を」

 

「セルグもきっと理解していたんだと思う。ヴィーラが言うように、きっとセルグは壊れてしまいそうなんだ。でも……今、セルグは何とかしようとしてる。自らの秘密を探り、またここに戻ってくるため、皆と一緒に旅をするために、セルグは前を向いている。だから、ヴィーラに大人しく殺されるわけにはいかなかった。ヴィーラと戦ったのはそれだけだと思うんだ」

 

 ゼタの言葉にヴィーラだけでなくグラン達も驚きを隠せなかった。

 ただ居られなくなったから、離れていった。それだけだと思っていたセルグが今、彼らとまた一緒に旅をするために動いているというのだ。

 心が壊れそうでありながらも、ギリギリのところで彼はまだ生きようとしている。

 その事実が、彼らの胸を打つ。

 

「だからね、ヴィーラ。私は一つを除いてヴィーラが言った事もやったことも気にしてないよ」

 

 少しだけ気持ちが上向いた仲間達に、ゼタは不穏な影を落とす。

 一つを除いて……その言葉にヴィーラもグラン達も疑問符を浮かべた。

 

「一つを除いて……?」

 

「そう、一つだけ――――」

 

 バンッとヴィーラの前に手をついてゼタはヴィーラを睨み付けた。

 

「納得いかないのよ! 一人で全部抱えちゃって。一人で全部解決する気になっちゃって! 何様のつもり!!」

 

「お、おいゼタ、おちつ」

 

 まさかの激昂にラカムが止めに入ろうとするが、ゼタの言葉は止まらない。

 

「ザンクティンゼルで私はヴィーラに救われた……恥も外聞もかなぐり捨てて私はヴィーラの胸で縋るように泣いた。何故だかわかる? ヴィーラの優しさがうれしかったから。ヴィーラが全てを受け止めてくれたからよ! それなのに、ヴィーラは一人で抱えてたっていうの!? ふざけるんじゃないわよ!! 私はやられたままは嫌いなのよ! お返しくらいちゃんとさせなさい!!」

 

 一息でゼタは思いのままに言葉を並べた。気性の激しい彼女ならではの想いを乗せた言葉は、そのままヴィーラの胸へと突き刺さる。

 

「ちゃんと言ってよ……私達を頼ってよ。貴方がしてくれたみたいに。そうやって一人で抱えてもよくないことは私を救ってくれたヴィーラならわかるでしょ……」

 

 一転してしおらしく想いを吐露するゼタの声には悔しさが滲む。ヴィーラが抱えていることに気づかずにいた。助けられてばかりで助けられないのはゼタにとって、悔しいの一言に尽きた。

 カタリナとゼタ。共に本気で言葉を投げてくれた二人にヴィーラの心は静かに動かされる。

 敬愛する人も、頼りになる仲間も、こんなにも本気で自分を思ってくれていた。それに対して自分はどうか。

 仲間を疑うことを快くは思わない。そんな決めつけで否定されることを恐れ、信用をせず抱え込んでいた。己のしていたことは何と失礼なことか。

 

 憑き物が落ちたようにヴィーラの心が軽くなった。少なからず恨み言の一つや二つ出てくると思われたセルグからは感謝と謝罪をもらい、敬愛する人と大切な仲間からは、一人で抱えるなと言われた。

 知らず知らず心にため込んでいた後悔や不安が今この瞬間、ヴィーラの心から抜け落ちていった。

 

「ゼタさん……申し訳ありませんでした。私はどこか、弱みを見せる事を嫌がってしまっていました。そのせいで今回みたいに一人で走り、こうして皆さんに心配をかけて。本当に、申し訳ありません」

 

 俯くゼタの顔に触れ至近距離でゼタの瞳を見つめると、ヴィーラは小さく笑う。妙に気恥ずかしくなったゼタが顔を赤く染め視線を下げると、ヴィーラは笑みを深めてその綺麗な顔をゼタに近づけた。

 

「ありがとう、ゼタ……」

 

 耳元でそっと呟かれた声は小さくてゼタにしか聞き取れない音ではあったが、ゼタはそれを確かに聞き取った。呼び名の変化に嬉しさを感じハッとしたように顔を上げるゼタだが、すでにヴィーラはカタリナへと顔を向けている。

 

「お姉さまも。申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます。私の為にお姉さまが本気で言葉を投げて下さった……本当に嬉しいです」

 

 カタリナはヴィーラの言葉にまだ不服そうな顔を見せる。当然だ、まだヴィーラは感謝の言葉しか述べていない。

 カタリナが求める答えが。これからをどうするか、今後をどう生きていくかをヴィーラはまだ告げていないのだ。

 のらりくらりと躱すことはヴィーラの得意技だと熟知しているカタリナは機先を制す。

 

「誓ってくれヴィーラ。私の為ではない。君の為に、これからを生きると」

 

「はい、わかっております。ですが私が幸せになるために、まずはお姉さまに幸せになってもらわなければいけません」

 

「おい、ヴィーラ。まだ」

 

 相も変わらずカタリナ第一な考えを聞き、不満の声を上げるが今度はヴィーラが制する。

 

「フフフ、何を言われようとも、私の幸せはお姉さまが幸せであることが絶対条件ですもの。そこだけは変わりません。私を心配してくださるようでしたらまずはお姉さまが幸せになってください」

 

 いつも通りの見目麗しき彼女の笑顔がこぼれ、いつも通りの落ち着いた雰囲気が戻ってくる。彼女の変化にうれしく思いながらも、カタリナは変わらないヴィーラの言葉にため息を一つ吐いた。

 

「ハァ……やれやれ、前途多難だな」

 

 ため息を吐きつつもカタリナはヴィーラの言葉を許してしまう。どうにも厳しくはなり切れないようだ。そこがヴィーラが慕う所以でもあるわけだが、カタリナとしては複雑であろう。

 

 

「グランさん、ジータさん。ご心配をおかけしました」

 

 続いてヴィーラはグランとジータの元へ向かう。事の成り行きを見守っていた若き団長たちは、安心した様子でヴィーラを迎えた。

 

「ヴィーラ……僕もジータも。ヴィーラには感謝している」

 

「きっと私達は、セルグさんとの事を流したままでした。もし危なければ止めればいい。その程度の認識しかなかったんです。でもヴィーラさんはもっとずっと、色んなことを考えてくれて、色んなことに気づいてくれていて。たくさんの可能性を考えてくれていた」

 

「僕たちではできないことをしてくれるヴィーラには感謝はあれど責めるようなことは絶対にしない」

 

「だから今度は、皆が一緒にいられる道を、セルグさんが壊れない道を。一緒に探してもらえませんか」

 

「今度は、僕たちも一緒に考えるから」

 

 こうまで揃うのかと思うほど、グランとジータは交互に感謝と願いを告げる。示し合わせたわけでもないのに次々と口を開く二人に少しだけおかしくなり笑いながら、ヴィーラもまた答えを告げた。

 

「――ありがとうございます。お二人の気持ち、痛み入ります。ご期待に添えるよう尽力は惜しみません」

 

「あぁ、これからもよろしく頼むよ、ヴィーラ」

 

「ヴィーラさん、私からもよろしいでしょうか?」

 

「リーシャさん?」

 

「あの日の私とセルグさんの会話を聞いていたのでしたら、貴方にもご助力願いたい。私は、あの人の罪の意識を何としても変えてあげたいんです。ヴィーラさんはもう無理だと悟って今回の事を起こしたのだと思います……でもゼタさんが言うように、彼はまだ生きようとしている。だから、お願いします。ここにいる皆さんと共に、彼を救う道を見つけてほしいのです」

 

 決意を秘めたリーシャの言葉にヴィーラは目を丸くする。一呼吸、いや二呼吸程の間を置いたところで小さく吹き出すと、ヴィーラは笑い始めた。

 

「フ、フッフフ」

 

「ヴィ、ヴィーラさん!? 何が」

 

 慌ててヴィーラに詰め寄るリーシャにヴィーラは目じりに涙を浮かべながら口を開いた。

 

「もぅ、本当に面白いですねリーシャさん。私は今言ったではありませんか。団長さん達の願いに尽力致しますと。それにしても、随分と彼にご執心なようですね。ゼタさんと言いリーシャさんと言い。彼を引く手は数多のようですね。グランさん、ライバルは強敵のようですよ」

 

 ヴィーラの言葉にリーシャとグランが顔を赤く染める。

 

「ヴィーラさん!! 人が真剣なお願いをしているときに、そんな浮ついた話を持ち込まないでください!!」

 

 真面目に聞いてくれと言う怒りと、どことなく否定できない気もする勘ぐりに顔を赤く染めたリーシャ。

 

「ヴィーラ!! だから僕はそういうんじゃないって言ってるだろ!!」

 

 片や、グランは未だに慣れない色恋沙汰のからかいに大慌てで顔を赤く染めた。

 

「まぁ、二人してそんなに否定してはいらぬ誤解を生みますよ」

 

 何が誤解なのか、どれを否定していいのか。ヴィーラの言葉にわけのわからず思考がぐるぐる回る二人を見て仲間達は盛大に笑った。

 こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。張りつめていた緊張は随分と長い事のように思えて、この日彼らは心行くまで笑いあった。

 

 ここ数日の暗さを吹き飛ばすように、ガロンゾでの一幕のように、盛大に。彼らは次なる戦いに向けて英気を養う。ラカムとオイゲンが歌い、カタリナとヴィーラは思い出話に花を咲かせ、イオとルリアまでも、遅くまで大騒ぎ。リーシャとゼタはグラン、ジータと一緒に今後の戦いについて真剣な談義をしていた。

 皆が寝静まったのは夜も大分ふけた深夜に近い時間帯だった。

 

 

 

「ふぅ……まさか私がこんなにも影響されるとは思いませんでした」

 

 皆が寝静まった頃、一人起きたヴィーラは甲板へと出ていた。三日も寝ていたのだ。そんな簡単には眠れないのだろう。

 思い出すのは先程までの皆との触れ合い。心の底から、ヴィーラは仲間としてその場にいられた気がした。

 思えば、セルグへの懸念を抱いてから、どことなく一歩引いた目線で仲間達を見ていたことに気づき、ヴィーラは小さく自嘲する。

 

「お姉さまだけでなく、彼らもまた、こんなにも温かい」

 

 胸に手を置いたヴィーラは仲間達の姿を思い浮かべる。

 まだ幼さの残る団長の二人。まだまだ子供の時分のイオとルリア。敬愛するカタリナにからかいやすいリーシャ。今はいないが何故か気が合うロゼッタ。どことなく危なっかしくも、頼りがいのあるラカムとオイゲン。そして今日から大切な友となったゼタ。それから艇に巣食う害ちゅ……一部思い出すだけで非常に不快な思いを抱くものがいたような気がしたが、気がしただけで既にそれは脳内から消去されていた。仲間を思い出して去来する、これまでにない安らかな感覚にヴィーラは酔いしれる。

 

「そして……セルグ・レスティア」

 

 次に思い返すのは、今回の発端ともいえる彼との戦い。

 圧倒的なシュヴァリエのチカラに飲み込まれてしまったヴィーラを助け出してくれたのは殺そうとしていた彼であった。

 

「謝罪と感謝……それを申し上げるのは私の方です」

 

 ゼタから聞かされた伝言。殺そうとし、命を救われた自分に向けられた言葉にヴィーラは顔を顰める。

 

「本当にどこまでも、愚直で、優しくて……」

 

 だから、命を奪うのには並々ならぬ覚悟が必要であった。壊れているセルグを救うにはこれしかないと思わなくては、セルグという人物を殺すことはできなかった。

 セルグへの懸念が高まるたびに、彼女の描く未来は現実味を帯びて来て、ヴィーラの心を締め続けていたのだ。

 そんなヴィーラに伝えられたセルグからの言葉。ヴィーラは心が軽くなるのを感じた。

 セルグが生きていて感謝と謝罪をくれたことにヴィーラは救われたのだ。

 

「だから、必ず戻ってきてくださいね。今度は私から、伝えなければいけないことがありますから……」

 

 黒に染まる空を見上げ、ヴィーラは憂いの言葉を紡ぐ。ヴェリウスはいるだろうが今のセルグは一人だ。

 彼女が今日語ったように、セルグの心が壊れかけているのなら、一人になっている現状は決して良い状況とは言えないだろう。

 

「セルグさん……どうか御無事で」

 

 憂いと熱を帯びた声が夜に溶けていく。見上げる夜空は、ヴェリウスと融合した彼のように、煌めく闇に染まっていた。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか。

本作ではゼタ×ヴィーラをお届けします!(冗談です

なかなか書き上げるのが大変でした。
心理描写というのは本当に難しいです。
本作の中でキャラクターが生きているように読者の皆様が感じていただけたら作者は嬉しいです。

次回から動きに動くアマルティア編開始です。(幕間長かった~

それでは。お楽しみいただけたら幸いです。

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