granblue fantasy その手が守るもの 作:水玉模様
本編ではなかなかスポットの当たらない彼らの隠された物語を描いていこうと思います。
予め申し上げて起きますがギャグにしかなりません。
それではお楽しみ下さい。
グランサイファーの一室。
薄暗いこの部屋にて3人のエルーンの男たちが何やら怪しげにヒソヒソと会話を……
「ウェーイ!! さぁてどうする2人共~このチャンスをいかにモノにするか。とりまご意見箱設置~!」
否、なにかを企んでいるようだが、どうやら声を抑える気は無いようである。
ここにいるのはローアイン、トモイ、エルセムの仲良し3人組。
先程のリーシャ歓迎会で、なし崩し的に得たチャンス、”キャタリナさんとの2人っきりのあまいお茶会(予定)”の決定を経て作戦会議中である。
如何な流れを用意するか、決めのセリフはどうするかなど、事細かに今から話し合う(予定)だ。
「ってもよ~、ぶっちゃけ俺たちが何をどうこう考えたところでよくわかんなくね? 俺達庶民にお茶会の話とか聞かれてもよ~」
「確かに……つってもグラサイに乗ってる人でそんなお茶会が似合いそうな気品溢れるヒトなんていねえし。とりま誰かに相談するべきじゃね?」
「オイオイお前ぇら何弱気なこと言ってんだよ。そんなお茶会がどうのって話は関係ねぇだろ! キャタリナさんを落とすシチュエーションとそこまでの流れをだな」
「だから、そもそもそのお茶会の雰囲気が分からなきゃそんなの考えつかねぇってんだよ。」
作戦会議開始から十数秒、いきなりの難問に彼らはぶち当たった。
普段はヴィーラとカタリナの2人で行われるお茶会。2人とも明らかに気品溢れる上流階級と言った佇まいを見せる騎士だ。優雅な所作や言葉遣いだけを見ても間違いなく街のゴロツキに近い自分達とは雲泥の差がある。 それはつまり住んでいた世界が違うのだ。
彼女たちの常識が彼らの非常識。彼らの常識が彼女たちの非常識である可能性は大いにあり得る。
固まる3人は思考を重ねた。一人は起こり得るシチュエーション(妄想)を想像し、一人は頼れる人はいないか可能性を模索する。一人は、お茶会とはどんな感じなのか想像を膨らませる。
「とりま、セルグさん呼んでみね? あの人いつもローアインの応援してくれるし、今回も頼りに」
「フッ、キャタリナさん。これは今回のお茶会の為に俺が作った新作料理です。食べてみてください。ってのはどーよ?」
「うわうっざ、最初のフッってのがいらねえわっていうか人の話聞けよ!? まずお茶会とはどんなものかを知るために誰かに聞いてみなきゃ話になんねぇだろって!」
「でもよ~お茶会っていう位だから……お茶飲むんじゃねえの?」
「は? お前何当たり前な事聞いてんの? そうじゃなくて、お茶会とはどんな風に楽しむかってとこだろ」
ボケる二人……ローアインとエルセム相手に、ツッコミのトモイ。若干トモイが疲れそうだが、彼らのバランスは上手く保たれているようだ。
妄想を膨らます当事者と、状況を理解していない天然野郎を相手にトモイが一先ずの提案をする。
「とりま、セルグさんに聞いてみようぜ。 あの人色々知ってそうだしいつもローアインの新作料理とか手伝ってくれるしよ」
「でも、もう流石に寝ちゃってるんじゃね? さっきみんな部屋に戻ってく雰囲気あったし……」
つい先ほど、部屋の前を何人かが通っていく気配がしたような気がしていと思っていたとエルセムは口にする。ちなみにあくまでも気がしただけである。実際のところは、歓迎会は以前進行中であり、現在はセルグがリーシャに折檻されている最中だ。
「あ~そうだな。とりま今日はキャタリナさんをどうやってキュンキュンさせるかってところを考えて、お茶会については明日、セルグさんに聞いて見るって感じでどうよ?」
「りょっ。それじゃまず、さっきしてた妄想の話を具体的によろ」
一先ずの方針が決まり、彼らは作戦会議を再開する。まずは先ほどちらりと挙がったローアインの決め台詞の流れから考察していくようだ。
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グランサイファーにあるカタリナの私室。彼女らしい整然とした部屋と静かな空気に包まれる中、部屋の主であるカタリナとローアインは優雅なティータイムと洒落込んでいた。
「どうだ? ローアイン。君には少々似合わないかもしれないが、こういう静かな空気の中で、お茶の香りと味をじっくりと楽しむと言うのも悪くないだろう。」
「キャタリナさん、何言ってんスか。俺だっていつでも騒いでるわけじゃ無いっスよ。たまにグラサイの甲板で一人静かな時間を過ごしたりなんてこともあるんスから。それに、貴方との静かな時間と言うのは心が躍る。」
普段の彼からはありえない、静かで落ち着いた言葉。やや気障なセリフにカタリナが微笑んだ。
勢いと反省を促す意を込めて今回のお茶会はヴィーラとではなくローアインと2人で開いてみたが、存外リラックスしている自分がいることにカタリナは驚く。
ヴィーラの前ではどうしても頼れるお姉さまで居ようとしてしまうからだろうか。彼との二人の時間と言うのは心が安らぐことに気付いた。
「普段は騒々しい君とこうして静かな時を過ごすのは意外と落ち着くな。 ふむ、普段からそうしてくれればヴィーラとももう少し仲良くなれるのではないか。」
「キャタリナさん、それはちょっと甘すぎッスね。ヴィーラちゃんはキャタリナさん命っすから。何があろうと俺を認めることはないですよ。っとそうだ、今日はお茶を御馳走になるってことで、俺の方からもある物を用意しました。一緒に食べましょう。」
「ほう……一体何をつくってきたんだ?」
カタリナの問いかけにローアインは自信満々に小さく笑う。
その表情を見て興味深そうにローアインの様子を伺うカタリナの視線を受けながら、彼は後ろから小さな小包を取り出した。
「開けてみてください……」
「――随分と丁寧だな。只のお茶会で何もここまで……これは!?」
カタリナから驚きが上がる。
開かれた包には真っ白も真っ白。純白な白に染まっているケーキが鎮座していた。余計な装飾の無いそれが何故か妙に美しく見える。
「真っ白なクリームチーズで作った俺のスペシャルレアチーズケーキです。貴方のその穢れない美しさを表現してみました。」
「ローアイン……君は。フフ……全く、君はいつの間にそんなに気障な男になったんだ。これでは私も揺らいでしまうじゃないか。」
観念したようにカタリナも小さく笑みを浮かべる。ほんの少しだけ照れくさそうなその表情は普段の凛々しさが成りを顰め、まるで恋する乙女の様。
部屋を包む空気で、先程より2人の距離が縮まっていることを、互いに、確かに感じ取っていた……
――――――――――――
「ってな感じでどうよ! ヤバくね? これはもうキュン死に確定っしょ~!」
「――キュン死に確定っしょ~っじゃねえよバカ! 誰ださっきの。まず口調が安定してねえ&超絶にうぜぇしきめぇ。」
「大体そんな取り繕ったキャラで責めて意味あんのかよ……」
「お、エルっち良いこと言う。それだよそれ、モテメンでもないローアイン如きが気障なセリフとか寒いだけっしょ。有りのままの自分でもっとっていうか自分の強みを生かすような」
「っんだよそれ。んじゃとりま今の無しで、代わりに俺に相応しいモテポプリーズ」
非難の嵐に全く動じずローアインは別な意見をトモイとエルセムに求めた。
妄想の中のカタリナがキュン死にしていたのに全く相手にされなかった(当然だが)事に不満を募らせるものの、すぐに次の思考へと移る彼のメンタル面は非常に強いと言えるだろう。
「いやでも、さっきの妄想のお茶会の雰囲気……なんかすっげ~シックリきてた。意外とお茶会ってあんな雰囲気なんじゃね?」
「あ~それはありありかもしんね。普段キャタリナさんとヴィーラちゃんが2人で楽しんでるってことはあの静かな雰囲気がぴったりだわ」
「お、マジでぇ? んじゃさっきの雰囲気の中から俺様のモテポを最大限に生かす流れを考えっぺ」
「それでいくか……いや、やっぱりグラサイ一のモテメンのセルグさんから意見を求めるべきじゃね。あの人ならきっと何かいい言葉を」
「あ? ちょ、待てよトモちゃん。さっきからセルグさん推し多いけどどうしたんよ。確かにセルグさんモテメンだけど……モテメンならラッカムさんだってグランダンチョだってそうだろうよ。」
「もしかしてトモちゃん、セルグさんガチリスペクト的な?」
何故かセルグを引き合いに出してくる不自然なトモイの言葉に2人から疑惑の声が上がった。
確かにセルグは容姿もそれなりに良いし、強いこともあって、普通に考えればモテメン確定なのかもしれない。騒動の中心にはいつも彼がいるような気がするしヒトを惹きつけるタイプの人間なのだろう。
だが、どうにもそれだけではない何かを2人はトモイから感じたのだ。
「あ~、割とガチかも。あのヒトまじカッケェ―んだ。正直、俺が女だったら惚れてる」
「なっ!? オイオイ何事? 一体何がトモちゃんをそこまで心動かしたのか、ガチで気になるんだけど~」
「まじか~もしかしてそこにモテメンの秘訣が隠されてる的な!?」
「ツーわけでトモちゃん語っちゃって~」
「良いけど……おめえらテンアゲしすぎて腰抜かすんじゃねえぞ……アレは、そう。ザンクティンゼルでセルグさんの歓迎会やった日の夜の事だった……」
2人の声に応える様にトモイは目を瞑り語り始めた。
まるで一つ一つ確実に思い出すようにしっかりと言葉を選びながら話す姿に、聞いているローアインとエルセムは唖然として表情を固める。
「(ちょ……エルっち、トモちゃんガチ語りはいっちゃったぞオイ)」
「(うっわ~まじっベェーじゃん。本物ジャン。ガチリスペクトじゃん)」
「唐突に夜風に当たりたくて甲板に出ようとしたらゼタちゃんの声が聞こえてきて……誰かと話してると思って、思わず隠れちまったんだ。そしたら……」
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※トモイの記憶によって補完された妄想です
「そっかぁ……あの子、ちゃんと幸せだったんだね。最後まで幸せに生きていたんだね……」
親友の最後を聞いたゼタが流す涙が月明かりを反射し、彼女の端正な顔を儚く彩る。
普段は強気な彼女のその弱々しい姿は、激しく庇護欲を掻き立てるような危うい魅力に満ち溢れていた。
対するセルグもいつも通り、と思いきやこちらも雰囲気は優しく柔らかな空気を纏っていた。
「ゼタ、アイツとの約束があるんだ。聞きたいか?」
「え?」
唐突に告げられた言葉を理解しきれず、ただ頷きながら肯定の意だけをゼタが返すと、セルグはゼタの前に跪く。
その姿はまるで姫に仕える騎士の様にも、結婚を誓う恋人達の様にも見えた。
「今日より君と共にあろう。君の心の傷が癒えるまで。君がオレを超えるときまで。そして、アイツとの約束を果たすその時まで。君を守りぬくと誓おう。かつてのオレとは違う。大切な人を今度こそ、どんな理不尽からも守りぬいてみせる……これがお前に誓うアイツとの約束だ。」
告げられた言葉にゼタが固まる。まるで時を止めたかのように微動だにしないゼタはたっぷりと時間を置いてから思考がやっと回り始め、今告げられた事を理解する。
「は? え、いや、あ? ちょっと待って!? いきなり意味が分かんないわよ。なんでいきなりそんな話に!」
「フッ、今言っただろう。君がオレを超える時まで、君を守る騎士となる。どこまでも、どんなことからも守り抜いてみせると」
小さな笑みと共に告げられた言葉に、それが嘘偽りなく己に向けて約束された誓いだと理解したゼタは顔に熱が集まるのを感じた。
目の前のセルグが直視できず、俯きながら小さく言葉を返す。
「その……ありがとう。頼りにするわ……」
「――ああ、頼りにしてくれ」
恐る恐る顔を上げたゼタとセルグの視線が絡み合う。恥ずかしそうに互いに小さく笑う姿は愛し合う2人としか思えないだろう。
優しい空気に包まれて2人だけの確かな誓いの夜を月明かりが照らす。
向かい合うゼタとセルグの距離は手と手を繋ぐ程度には近づいていた……
――――――――――――
「マジか……マジですかぃ! っべぇーわ、セルグさんまじっベェーわ! なにこの最強のモテメンパティーン」
「だろ! 仲間になったその日に一生を懸けるような誓い。しかも守ってあげる系。これでキュン死にしないナオンはいねえよ的な!」
「これはセルグさんについていくしかねえべ……トモちゃんがリスペクトするのわかるわ~」
「だろだろ、だからセルグさんに意見を求めりゃ何とかなる気がするんだよ!」
「ん? ならよ~さっきのローアインの妄想と今のセルグさんの流れを組み合わせてみればもしかして」
「っ!? それだ! エルっちさえてる~ちょいまち、今シチュ練り(妄想)すっから……」
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「どうですか……キャタリナさん。お味の方は」
「――流石だな。正直只のお茶会でここまで素晴らしいものを用意されると私としてはちょっと心苦しくなってしまう」
カタリナからは素直な称賛と共にわずかに苦い表情が贈られた。
なにか失敗したかと考えを巡らせるもローアインに思い当たる節は見当たらず。どうしたのかとカタリナに問いかけようかとした矢先に、先にカタリナが声を挙げる。
「すまないなローアイン。私は情けなくもこんなに素晴らしい料理を作れる君に、女として嫉妬してしまっているんだ……折角こんなおいしいものを作ってくれたと言うのに私は君に対してよからぬ感情を抱いてしまった。許してくれ……」
「――キャタリナさん……。フッ、何言ってんすか。キャタリナさんがいくらパーフェクションなオンナだからってそこまでできちゃ俺の立場が無いっスよ」
「ローアイン……しかし」
笑って気にしていない素振りを見せるローアインに、カタリナはますます己が抱いた暗い感情にいたたまれなくなった。
俯き悲しそうな表情を浮かべるカタリナはそれだけローアインに嫉妬という感情を向けたことを後悔しているのだろう。だが当の本人は全く気にしていないし、むしろ自分にも彼女の為にできることがあることを狂喜していたところだ。
自責の念がなかなか消えないカタリナに笑顔を取り戻そうと、ローアインは一つの決意をした。
「キャタリナさん。貴方に約束したいことがあります。」
「――約……束?」
俯くカタリナの視線を占領するようにローアインはカタリナの前に跪く。
そして誓いの言葉を告げるのだった。
「今日から俺と一緒に料理の練習をしましょう。貴方が胸を張って料理ができる様に、俺よりもずっとずっとおいしい料理を作れるようになるまで。俺が一緒に手伝いますから。これまでの俺とは違う。どんな料理ができようと必ず食べて感想を言います。どんな難しい料理をつくるときも必ず手伝います……これが、俺ができる約束です」
「ローアイン……私なんかの為になんでそこまで……」
「最初に言ったはずでしょ。からかってるわけでもなんでもなく、正真正銘、貴方に惚れたって……」
「ッ!? あぁ、ローアイン私も……本当は」
見詰め合う2人の距離が近づく……
部屋に漂う空気は、ローアインの作った真っ白なケーキよりもずっと、ずっと、甘ったるい空気であった……
――――――――――――
「どうよ! どうよこの感じぃ! テンアゲ過ぎて途中から入り過ぎちまったけど、こんな感じならキャタリナさんももうマジでキュン死に5秒前的な?」
「うぉおおい! 今のヤベくね? とりま今の流れの何度もシミュ(妄想)っておかないと……」
「バァカ、お前がシミュ(妄想)ってどうすんだっての。つーか、ローアイン……やっぱり駄目だ。あの誓いはセルグさんじゃなきゃダメだ。エルっちの言うとおりだった……セルグさんの良さとローアインの良さは違う。やっぱりローアインはローアインじゃなきゃダメだってことが良く分かった」
「はぁ? オイオイ、どういう事よトモちゃん。もちっと具体的に感想は言えよコラ」
「端的に言えば、似合わない。あれはセルグさんだからできる事なんだって確信した」
「ちょ、待てよ!? トモちゃんあそこまで煽っておいてそれとかテンサゲすぎんぜ」
「っんだよ~それじゃ、一体どうすんだっての……」
「悪りかったって……とりまローアインの良いところから考えていこうぜ。そっからキュン死に確定な流れを組み立てんべ」
「りょ~。ひとまず3人で色々考えっか。ダメなら明日モテメンズに聞いてみようぜ」
「あいよ~んじゃ、とりま思い突いちゃったナウ!」
「お、いきなりノリノリ~発言を許可する」
「よっしゃいくぜ……最初の流れはだな……」
自信満々の笑みでエルセムが語り始める。繰り出される提案に一喜一憂しながら彼らは会議を続けていく。
こうして彼らの夜は更けていった。
この作戦会議が果たして実を結ぶのか、徒労に終わるのか。
それは誰にもわからない……
ただ一つ言えることは……彼らはその夜をとても楽しそうに過ごした。なぜなら楽しそうな声が聞こえたと団員達からグランへ声(苦情)が上がっていたからだ……
如何でしたでしょうか。
正直彼らっぽい会話が難しくて仕方ないです。
ノリだけはそれっぽい気がする、、、
是非どうだったか感想をお聞かせいただきたい!
それでは。
お楽しみいただければ幸いです。