granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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ラビ島編終了のお知らせ。

今回は少しいろんな意見が出てきそうな内容ですね。

それではお楽しみください。



メインシナリオ 第19幕

 セルグとゼタがグラン達と合流すべく走り出す頃、当のグラン達は、もうすぐグランサイファーに戻れるところまで来ていた。

帰路の途中を何度も魔物に邪魔されながらも、少し先にグランサイファーが見えてきた所で、ふとグランはあることが気になってリーシャに疑問を投げかけた。

 

「あの、リーシャさん・・・?」

 

「え?あ、はい。なんでしょう?」

 

 グランサイファーが見えてきたことでそっちに意識が向いていたのだろう。隣から声を掛けられたリーシャは、キョロキョロと周囲を見回してからグランを確認してから向き直る。

 

「モニカさんもこの島に来ているって話でしたが、アマルティアはもう大丈夫なんですか?」

 

「そうですね・・・一先ずは事態の収束はしました。

貴方たちの脱出により、黒騎士の抹殺を断念した帝国軍はすぐに軍隊を退いております。アマルティアは現在、準警戒態勢と言ったところです。

幸いにも二度目の侵攻の時は黒騎士抹殺に注力していたようで、団員達への被害はほとんどなく、各部署が機能できる状態を保っておりましたので一先ずは大丈夫かと思われます。」

 

 焦った様子もなく、心配の表情を浮かべることもなく、リーシャは淡々と回答していく。

 そこに今度はジータからおずおずと言った様子で声がかけられた。

 

「でも、また再度の侵攻があるかもしれないんじゃ・・・」

 

「あり得なくはないですが、その場合には高速艇による伝令を出す手筈にもなっております。それに、黒騎士のいないアマルティアにわざわざ侵攻する意味が薄いです。可能性は低いと思いますよ。」

 

「そうなんですか、それじゃ一安心なんですね!良かったです!」

 

 リーシャの答えでアマルティアが落ち着いて安全になったことを素直に喜ぶルリアの様子に、グランもジータも不安になっていた部分が解消されたのか顔を綻ばせた。

 

「うん、ザカ大公の事もあったし、心配ではあったんだよね。良かったね、イオ。」

 

 戦場となったアマルティアに残ったザカの事を心配しているのではと、グランはイオへ声を掛けた。

 

「う、うん・・・ありがとう、グラン。」

 

「おぉ?なんだイオ、素直にお礼を言うじゃねえか。さてはグランの気遣いが嬉しくて照れてるな?」

 

「な!?違うわよ馬鹿トカゲ!別にそんなんじゃないわよ!」

 

「んな!?馬鹿トカゲとはなんだ!!大体オイラはトカゲじゃないといつも言って」

 

「まぁまぁビィ君、落ち着いてくれ・・・怒ってるビィ君もかわいいな。」

 

やけにしおらしくお礼をいうイオとそれを茶化したビィが言い争いになりそうな所を窘めたカタリナはリーシャへと向き直るとグラン達と同様に疑問を投げかけるのだった。

 

「リーシャ殿、いくら事態が収拾したとはいえ要であるお二人がアマルティアを離れるのは些か軽率ではないかと思うのだが・・・」

 

 船団長であるリーシャと船団長補佐であるモニカ。アマルティアでの騒動でも二人を欠いていたことで秩序の騎空団の動きが鈍っていたことが記憶に新しい彼らには当然の懸念である。

 

「そうでしょうね・・・私たちとしても確かに不安な部分はありました。とりあえず、そこらへんはモニカさんも交えて理由をお話ししますよ。さぁあと少しです。行きましょう。」

 

 そういってまた前を見て歩き出すリーシャの背をヴィーラが見つめる。

 何か腑に落ちない・・・ヴィーラはカタリナの問いにも明確に答えを見せないリーシャに情報を意図的に隠していると嫌な気配を感じていた。

 

「なんでしょう・・・少しだけ違和感を感じますね。」

 

「あ?別におかしな感じはねえと思うが。」

 

 隣に立ったラカムがヴィーラの言葉に疑問を呈するが横からアポロが吐き捨てるように口を開いた。

 

「フン、暢気な連中だ・・・」

 

 僅かに焦りを含んだアポロの声は普段より固いもののその理由にまでヴィーラ達がたどり着くことはなかった。

 

「黒騎士さんは何かおわかりですか?」

 

「そうだな・・・少なくとも奴らが何故この島に来たのかくらいは、察することができたか・・・」

 

「それは一体どういう」

 

「残念だが、それを答える気はないな。」

 

「あらあら、意地悪な人ね・・・」

 

 話に入り込んできて話す気を見せないアポロへ今度はロゼッタが口を挟んだ。

 相変わらず飄々としてつかみどころのない彼女の雰囲気はこの場で悩む彼らを見て、楽しんでるようにも見える。

 

「貴様も同じだろう?理解していながら何も言いださないとは私より性質が悪いと思うが?」

 

 だが、返されたアポロの言葉に今度はロゼッタへと視線が集中した。

 さらりとその視線を受け流しながらロゼッタはそこで含みのある笑みを見せる。。

 

「なんだよ、ロゼッタも何か気づいてるのか?」

 

「フフ、ごめんなさいね。でもこれは貴方たちの覚悟の問題。貴方たちが選んだ道なのよ。お姉さんは邪魔しちゃいけないと思って。」

 

「とにかく行けばわかるんだな。早くグランサイファーに戻ろう!」

 

 埒が明かないとラカムはリーシャの背を追うように駆け出して行った。

 それに続いていく仲間達を見送りながら、一人その場に佇むロゼッタは呟く。

 

「さて、彼らはどの道を選ぶのかしらね・・・・」

 

 相変わらず楽しんでいる雰囲気を見せながらロゼッタは歩き出す。彼女の顔にはいつまでも微笑みが張り付いたままであった。

 

 

 

 

「おお、これはおいしいな・・・本当にお主は優秀な料理人の様だ。どうだ?私の下でその腕を振るうつもりは?」

 

 グランサイファーへとたどり着いた一行が最初に目にしたのは、おいしそうに食事を頬張る秩序の騎空団第四騎空艇団、船団長補佐のモニカの姿であった。

 

「あ~わりぃッスけど、俺が一生を懸けて料理を振舞う相手は決まってるんで・・・キャタリナさんと言う運命の人がいますから、そのお誘いには乗れねえんだ。」

 

「むう、そうか。是非拠点の食堂を任せたいのだがな・・・仕方ない。お、リーシャ戻ったか!」

 

 ローアインに誘いを断られ気落ちする姿まで見せるモニカの姿にグラン達は唖然。

 そんな光景を作り出したモニカにリーシャはため息と共に前に出た。

 

「はぁ、モニカさん・・・何をしてるんですか?」

 

「お主が行ったきり、いつまでも帰ってこないからグランサイファーにいた彼らと少し話していたのだ。仲良くなって食事まで御馳走されてしまってな。おいしかったぞ、話が済んだらリーシャも頼んでみると良い。」

 

「・・・なんだかモニカさん、アマルティアでの騒動以来少しだらけてませんか?」

 

 楽しそうに笑うモニカの姿にリーシャも驚きをと呆れが混じった表情となる。尊敬する先輩は任務中にこんな姿を見せる人であっただろうか・・・とリーシャの疑念が言葉となって飛び出した。

 

「うむ、そうかもしれないな。今まではリーシャが頼りなかったから気が抜けなかったが・・・もうリーシャはいっぱしの船団長だ。私が居なくても十分やっていけそうだから私は近々隠居の予定さ。」

 

 そんなリーシャの問いにモニカは遠い空を見ながら、安心しきった様に答えるのだった。

 

「モ、モニカさん!?何を言ってるんですか!!まだまだモニカさんには働いてもらわないと困ります!!私はまだ未熟の身・・・モニカさんがいないと私なんて・・・」

 

「またそうやって自分を卑下する。お主の悪い癖だぞ。気が抜けないと思っていた私がもう大丈夫だと確信したんだ。自信を持て!」

 

「む、そうやっておだてて逃げる算段ですね・・・騙されませんよ!」

 

 自分を卑下にするリーシャを窘めるようにモニカが言葉を贈るもリーシャはそれを素直に受け取れないでいた。

 彼女の中ではどこまで行こうと自分はまだまだなのだろう。モニカの言葉を言葉通りに受け取れず、リーシャは険しい目つきでモニカを見据える。

 

「ええい、本当にやり辛くなった・・・以前の方が可愛気があったぞ。」

 

「やっぱり逃げるつもりだったんですか!?」

 

「そ、そんなことはないぞ・・・ほら、グラン殿たちが置いてけぼりになってる。ちゃんと話を進めないと・・・」

 

 矛先を変えようと後ろで呆気に取られたままのグランたちへモニカはこれみよがしに視線を向けた。

 

「あ、そうでした・・・」

 

「ところでセルグの奴はどうした?一緒に居るはずだろう?」

 

 モニカの言葉にこんなことをしている場合ではないとリーシャが向き直ろうとするも、見知った顔の者がいない事に気づきモニカは催促するようにリーシャに尋ねた。

 

「セルグさんは途中で仲間のゼタさんが忘れ物を取りに向かったのに同行しております。すぐ戻るかと。」

 

「そうか、セルグは今いないか・・・少しだけ好都合かもしれないな。」

 

 小さく呟かれた最後の言葉はグラン達には聞こえない声量でリーシャにだけ届く。つぶやいたモニカの表情は先ほどと打って変わって険しさに染まっていた。

 

「はい・・・」

 

 その言葉に、目を細めながらリーシャも小さく返事を返す。まるでこれから戦いに赴くような、そんな雰囲気を醸し出しながら二人はグラン達の下へと歩いていく。

 

 

「あ、リーシャさん。えっと、それでなんでお二人がここに・・・?」

 

「そうですね、約束通りお答えしましょうか・・・」

 

 リーシャがグラン達の問いに答えるとモニカが一緒に前に出てきた。

 先ほどまで食事をとっていた、だらけた空気から一転し居住まいを正したモニカは大きな声でグラン達へ、とあることを告げる。

 

「我々秩序の騎空団は、貴公等に対し、大罪人である黒騎士とセルグ・レスティアの返還を要請する。」

 

「な!?」

 

 告げられた言葉にグラン達は声をそろえて返すのだった。

 グラン達の驚きを余所にモニカはそのまま声音を変えずに続けていく。

 

「尚、これはあくまで対等の立場での要請である。本来であれば勝手に大罪人を連れ出した貴公等にはそれ相応の罪が問われる可能性もあり得るところだが、あの時は状況が状況であった。」

 

「モニカさんの発言もある以上、一方的に貴方たちを罪に問うことはできません。しかし、事態の収拾がついた今、お二人の身柄はこちらに引き渡して頂きます。」

 

 モニカの言葉に続くようにリーシャが補足していくも、グラン達は戸惑いを隠せない。

 

「そんな、一方的に身柄を引き渡せなんて!?」

 

 突然の要求に思わず納得いかないと声を荒げるジータはリーシャへと詰め寄ろうとするも秩序の騎空団である二人は、それをあしらうように手で制する。

 

「先ほども申し上げました通り、あくまで要請です。これは貴方たちを罪に問わないための最大限の譲歩です。急を要する事態ではなかったはずのあの場に於いて、秩序の騎空団への連絡が一切無いまま島を離れた皆さんの行為は、事実上は脱獄の幇助に当たります。」

 

 脱獄の幇助・・・その言葉にグランとジータから血の気が引いた。

 オルキスを助けるためアポロと協力することを決めた。その為にアマルティアを離れたことでここまで大きなことになるとは考えてもいなかったのだ。

 突如飛び込んできた罪という言葉に、現実感を持てぬまま二人は言葉の意味をなんとか理解しようとしていた。

 

「ふ、やはりそういう事だったか・・・さて、そちらの要請を聞く前にこちらの質問に答えてもらおう。小娘、お前が言った私が欲している情報とはなんだ?」

 

 言葉の出ないグラン達を余所にアポロはこの事態を予想できていたのか、動揺を見せずに淡々と必要な情報を聞き出すべく口を開いた。

 

「それを今、貴方が知ってどうなりますか?貴方はアマルティアの拠点に戻り、再度自由を失う身です。それを知る意味は無いと思われますが?」

 

 だが、リーシャはその問いに対し冷徹に切り替えしていく。

 

「そうだろうな・・・だがこいつらは違う。私の目的、それを果たすためにこいつらにその情報を与えてもらおう。」

 

 あしらわれようと冷静に、アポロはどこまでも強かに交渉を続けた。

 

「なるほど・・・つまり彼らに貴方の望みを託すと?」

 

「それならばいいだろう?」

 

「そんな!?黒騎士さん!オルキスちゃんを助け出すんじゃないんですか!?」

 

 共に行くことを諦めたアポロの発言にルリアが声を上げた。

 これまでに見せていた決意や覚悟は偽物だったのかと非難の目を見せるも、アポロはルリアの声にも動じずに、諭すよう言葉を返していく。

 

「落ち着け。ここで強硬手段に出て逃げても良いが、それでは情報が手に入らない。奴を追うのが急務な今、私が大人しく捕まって情報が得られるのならお前たちに託したほうがまだ可能性があると踏んだ・・・それだけだ。」

 

「随分彼らを買っているのですね・・・いいでしょう。そこまで言うのでしたらお教えします。その前に・・・皆さん、黒騎士の身柄を拘束してください。」

 

 リーシャは周囲にいる団員達へ指示を下す。

 瞬く間にアポロの手には枷が取り付けられ、その左右に秩序の騎空団の団員が銃を向けたまま位置取ることになる。油断も隙も見せないリーシャの姿に、アポロはもはや感嘆を禁じ得なかった。

 

「フン、抜け目がないな。」

 

「情報を聞き出したところで強硬手段に出るくらい、貴方なら平然とするでしょう?」

 

「・・・チッ、本当に厄介だな。あの男・・・あとで叩きのめしてやろうか。」

 

 己の思考を完璧に読み切っているリーシャの強かさに、密かにセルグへと怒りを向けるアポロはここまで歩いてきた道を睨んだ。

 

「それでは我々の持ってる情報をお渡ししましょうか。」

 

 リーシャは部下より空域の地図を渡されるとそれをグラン達に見せながら説明をはじめる。

 

 

 

「秩序の騎空団は、このファータ・グランデ空域全域に団員を配置しております。彼らの報告によると帝国軍はアマルティアを撤退後、ルーマシー群島へと向かいました。補給や休息の為とも考えられますが、森しかないルーマシーで、わざわざフリーシア宰相が艇を降りて何処かへ行ったとの報告もありますから間違いなく彼女は其処に何かを求めて向かったと言う事になるでしょう。」

 

「ルーマシー群島・・・」

 

「なんでそんなところに・・・」

 

 グラン達が思考を巡らすよりも早く、大きな物音が響く。

 

「グァ!?」

 

 其処には蹴撃だけで周囲の団員達を昏倒させたアポロの姿。決して諦める事のない力強い瞳でリーシャを見据えたまま彼女は口を開いた。

 

「必要なことは聞けた・・・後はお前達を倒しこの場を!?」

 

 臨戦態勢を取ろうとしたアポロの言葉が止まる。

 同時にアポロは地面に倒れ伏し、その背中を力強く踏みつけられることになった。

 

「黒騎士・・・あまり我らを甘く見るなよ。秩序の騎空団である我々が、お主の様な者を簡単に逃がすと思ったか?」

 

 先ほどのだらけた様子は欠片もない。歴戦の戦士たる強さをまざまざと見せつけるようにモニカはアポロを組み伏せていた。

 倒れたアポロの目の前に刀を突きたてることでアポロに生殺与奪の権利はこちらにあると見せつける。

 更に周囲には秩序の騎空団の団員達が取り囲んでおり、各々武器を構えている。

 

「ぐっ、貴様ァ!!」

 

「黒騎士さん!?」

 

「モニカさん!!どうして黒騎士さんにそんなひどいことを!?」

 

 アポロへの仕打ちにルリアがモニカを糾弾するように声を上げた。

だが、当のモニカにこれまでのように親しみやすい感じはない。その瞳は冷徹なままルリアを見据える。

 

「ひどい?これが本来の我々の務めだ、ルリア殿。

 黒騎士もセルグも手配ランクSの重要人物なのだ。本来であれば即刻気絶させることも、場合によって殺すことすら厭わないくらいのな。」

 

「そんな・・・」

 

「どうやらアマルティアで一緒に居た時とは随分感じが違うようですね・・・」

 

 ヴィーラの呟きにモニカはアポロを逃がさない様に意識を割きながらも答えていく。

 

「そうだろうな・・・お主らを信じたが故にまんまと出し抜かれてしまったわけだからこうなるのも致し方あるまい。先ほども言ったな、本来であれば貴公等の行いは重罪であると。」

 

 またもや告げられた罪の言葉に一行の顔色が変わる。

 

「わかったかお前達。私と共に人形を助ける覚悟とはこういうことだ。もう一度問おう。こいつらを敵に回してまで、お前たちに人形を救う覚悟があるか?」

 

 動揺が隠せないグラン達にアポロは問いかける。

 焦りを隠しきれない声音は、彼女にとって今の状態が彼女ではどうにもできない状態だと言うことをグラン達に告げていた。

 罪を背負ってまでその覚悟はあるのか・・・と。

 

「う・・・グ、グラン・・・」

 

「く・・・こんな・・・」

 

「さ、さっきの情報を頼りに私達だけでルーマシーに行けばいいんじゃない?それなら少なくともオルキスを助けには行けるわけだし、ここでこの人達を敵に回しても・・・」

 

「だが、オルキスを元に戻す方法を知っているのは黒騎士だ。それに黒騎士は帝国の様々な部分に精通している。彼女なしで我々がどこまでやれるか・・・少なくともオルキスを取り戻す成功率が下がるのは間違いないだろう。」

 

 幼いイオがこの状況に妥協案を模索するが、カタリナがそれでは難しいと反論する。

 

「じゃ、じゃあどうするってんだ・・・」

 

 決断の進まない無為な会話を繰り広げる仲間達。

 余りにも簡単に選んでしまった覚悟の道を前にして、二の足を踏むグランとジータ。

 

「団長さん。これが貴方たちが選ぼうとした道よ・・・秩序から外れた先に目的を目指す覚悟があるか。今貴方達は試されている。」

 

 ロゼッタの言葉がまだ幼さの残る二人の団長に焦りを生んでいく。

 

「こんなこと簡単に決められるわけ・・・」

 

 まるで断崖絶壁を後ろにしたような切迫感であった。グランとジータは己の決定一つで仲間達のこれからの人生が変わるかもしれないこの状況に、回らない口で小さく呟くことしかできずにいた。

 

 

 

「ったく、何悩んでんだか・・・」

 

 そんな中、突如聞こえる呆れた声に、その場の全員が声の出所へと視線を向ける。

 

「セルグ!?」

 

 ゼタと共に現れたセルグは、事のあらましを秩序の騎空団の団員に聞いていたのだろう。近くに佇む団員に小さくお礼を言ってから彼らの下へと戻ってきた。

 

「追われる対象が増えるってだけだろう?オレとしては別にどっちでもいいかな。黒騎士なしでもオルキスを救い出す気でいるし、秩序の騎空団に追われようと逃げながら旅はできるだろうし・・・」

 

 セルグの心底どうでもいいと言いたげな言葉にモニカの視線が鋭くなる。

 

「ほう、随分な口を叩くじゃないか、セルグ・・・・ちゃんと無罪放免となって旅を続けたいのではなかったか?」

 

 歴戦の戦士たるモニカが周囲を威圧するような怒気をセルグへ向けた。

 セルグとは間違いなく仲が良かったはずのモニカが向ける怒り。グラン達を気圧さんばかりに放たれたそれに、セルグは対抗して押し返すように殺気を放ち始める。

 

「モニカ・・・余り怒らせないでくれ。ガロンゾでオレがあっさり捕まった理由は知っているはずだ。なんならここにいる団員全員血祭りにあげてやってもいいんだぞ。もともと組織に追われていたオレにとって秩序の騎空団に追われるようになろうが大して変わらない。

 確かにお前がオレを信じてくれたからアマルティアでは大人しくしていた。だが、無罪放免になった方が気楽に旅ができるってだけでそこにこだわるつもりは更々無いぞ。」

 

「セルグ・・・」

 

 セルグの言葉を受け、モニカの頬に冷や汗が伝う。セルグの実力であれば今の言葉は十分に実行できる。

 団員達の命は今、セルグの手に内にあるのだ。

 

「つまらない事を言って、そいつらを困らせないでくれ。少なくとも黒騎士が濡れ衣を着せられているのは事実だ。そいつの為にも、オルキスの為にも、そしてルリアの願いの為にも、オルキスの救出をオレ達は手伝うと決めた。」

 

 セルグの言葉にグラン達の表情が変わる。

 何故オルキスを助けたいのか。何故アポロと共に行くと決めたのか。焦りから忘れていた選択の理由を思い出した彼らから動揺と不安が消えた。

 

「セルグさん・・・そうですね。グラン!私決めた。」

 

「ああ、僕も・・・モニカさん、僕たちは黒騎士と一緒にオルキスを助け出す!」

 

「それを邪魔するのであれば、私たちは戦います。例え秩序の騎空団が相手でも!」

 

 もはや迷いはない。リーシャとモニカを睨みつけながらグラン達は各々武器を取る。

 武器を構えた一行を前にモニカはため息を一つ吐いた。

 

「つまり諸君は、秩序の騎空団を敵に回すと言うことで良いのだな?」

 

 最後の確認と言わんばかりの威圧を込めた視線は先ほどまでの彼らであったなら、答えを返すことなどできなかったであろう。

 

「構いません・・・それでオルキスを助けることができるなら、僕たちは迷わずにそれを選ぶ。」

 

だが既に、彼らに迷いは無かった。

 

 

 選択権が今度はリーシャとモニカへと移った。

 ここでグランたちを捉えるべく全面衝突するか、或いは・・・

 沈黙を保ったままの二人によって、グラン達に重苦しい空気がのしかかってくる頃、今度はリーシャがため息をつくと。

 

「はぁ・・・モニカさんが遊んでるからセルグさん来ちゃったじゃないですか。」

 

 リーシャは少しだけ責めるような口調となってモニカへと呟いた。

 

「お主の口上が長かったのだろ?私のせいにするな。本当に最近よく言うようになった。後で覚えておけ・・・」

 

 対するモニカは生意気になった後輩に小さな怒りを向けるように言葉を返した。

 

「ひ!?い、いやですねモニカさん・・・冗談に決まってるじゃないですか・・・」

 

「ほう・・・冗談だったか?お主から冗談など一度も聞いたことが無かったからな、思わず本気にしてしまった。」

 

 先ほどまでの重苦しい雰囲気を消して、これまでの様に親しみやすい声音へと戻った二人が繰り広げる会話に一行は呆気にとられた。

 

「あ、あの~一体これは?」

 

 状況の呑み込めないグランがおずおずと二人の間に割って入り尋ねると、モニカは罰が悪そうに答えるのだった。

 

「すまなかった・・・わかっていたさ、セルグと黒騎士がいる時点でこうなることはな・・・何とかグラン殿とジータ殿には理性的な判断をしてもらいたかったが・・・仕方ないか。」

 

「一体どういうことですか・・・?」

 

 ジータも疑問を浮かべながら二人へと聞き返していく。

 

「元から力尽くでは拘束するのが難しい二人だ。一応強硬策に対応するために我々二人が出張ってきたわけだが、出来るなら手荒い手段にはならない方向で連行したかった。その為に随分と無茶苦茶を言ってしまったな。」

 

 申し訳なさそうにするモニカに、ただただグラン達は困惑するしかなかった。

 

「えっと・・・つまり?」

 

「要するにハッタリで穏便に黒騎士とオレをアマルティアに連行したかったってわけだ。まぁ、茶番だな・・・」

 

「そうはっきり言ってくれるな。土台無茶な話なのだ、黒騎士とセルグだけでも何人必要かわからないのに。その上、天星器を扱う化け物二人に星晶獣を従える者に、特殊な訓練を積んだ戦士だって?私達に全滅しろとでもいう気か。いくら団員を連れてきても力尽くで拘束なんて真似、できる気がしないさ。ましてや部隊のほとんどは警戒態勢中のアマルティアから動かせない。」

 

 諦めを通り越して呆れへと表情を変えたモニカの言葉にグラン達は少しずつ状況を理解し始める。

 未だはっきりと呑み込めていない状況をグラン達が整理している間にリーシャはモニカの下へと歩み寄っていった。

 

「こうなっては仕方ないですね。モニカさん・・・船団長の座、お返しいたしますよ。」

 

 リーシャはこうなることが分かり切っていた様に、次なる方針を打ち出す。

 

「ああ、打ち合わせ通りになってしまったな・・・リーシャ、船団長として命ずる!これより船団長補佐としてエルステ帝国への捜査任務に当たれ。」

 

 リーシャの言葉に答えながら、船団長となったモニカは威厳を以てリーシャへと命令を下した。

 

「承りました。モニカ船団長!これよりエルステ帝国への捜査任務に着任いたします。」

 

 モニカの命令に、船団長補佐となったリーシャが敬礼と共に返す。

 するとすぐさまリーシャはグラン達へと向き直った。

 

「と言うわけで、グランさん、ジータさん。私の同行許可を願います。名目は帝国が行う悪事を暴くために・・・貴方達と黒騎士、セルグさんが秩序の騎空団と協力して事に当たるとします。同時に黒騎士とセルグさんには罪状軽減のための捜査協力ということで我らと契約をしてもらいますね。それから・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!もう何が何だか・・・・カタリナ!パス!!」

 

「私も無理!カタリナ、お願い!!」

 

 状況の変化に追い付けないグランとジータは話が分かるであろうと踏んだカタリナに対応を丸投げする。

 

「な!?え!?ええい、仕方あるまい。そ、それではリーシャ殿。一体どういうことなのか説明を頂きたい。」

 

 リーシャの前へと押し出されたカタリナは、努めて冷静にリーシャと相対し質問を投げかけていく。

 

「はい、そうですね・・・我々秩序の騎空団としてはあなた方・・・いえ、黒騎士とセルグさんには監視下にいてもらわなければなりません。お二人を野放しにしていることは秩序の騎空団として何としても防がなければいけない事態です。しかし、残念ながら我々にはそれを押し付けるだけの力はありません。貴方達が嫌だと言ってしまえば我々にはどうすることもできないわけです。ここまではよろしいですか?」

 

「ま、まぁ・・・大丈夫だ。なんだか少々申し訳ないな・・・」

 

 リーシャの言葉でカタリナに少しばかり後悔がのしかかってくる。はたから見れば実力行使で己の意見を押し通している様なものなのだ、決まり事から外れた自分たちの行為を見返してカタリナは申し訳なさそうに謝罪をする。

 

「いえ、お気になさらず・・・そこで私が同行することで捜査協力と言う形で我々の管理下にあることとします。同時にメリットとして捜査協力による罪状の軽減を提示致します。貴方達は晴れて自由に目的の為に動けますし、お二人には事の顛末によっては終わり次第の自由の身となることもあり得るかとは思います。ここまでで何か質問は?」

 

「そうだな・・そちらが同行する上で私達に何か制約がかかったりは?」

 

「そうですね・・・あくまで私との協力捜査という名目、つまりは秩序の騎空団の管理下に置かれてるという体ですので・・・お願いですからこれ以上罪を重ねないでください。ホントお願いしますよ。特にセルグさんには注意してもらいたいです・・・絶対無茶苦茶すると思うし。」

 

 一斉に仲間達からの視線がセルグへと集中した。”絶対バカなことするんじゃねえぞ”と言いたげな刺々しい視線と”まぁ何を言っても無駄だろうな・・・”という諦めの視線がそれぞれ降り注いだ。

 突如向けられた視線にセルグがビクリと肩を震わせ縮こまっていく。

 

「ああ~それはその通りだな。我らとしても本当であればそんなことはしたくないし十分に気を付けるとしよう。」

 

 小さくなっていくセルグをみながら、カタリナはまたも申し訳なさそうに返すのだった。

 

「他には何か?」

 

「無茶をしないのであれば同行した私は一団員という扱いで構いません。あれこれ要求することもありませんし、自由に動いてもらって結構です。ただ、最終的な目的としては帝国の・・・牽いてはフリーシア宰相と黒騎士の罪の所在をはっきりさせると言う事だけ念頭に置いて欲しいと思います。結果を残せなくては黒騎士とセルグさんとの契約も成立しません。これは恐らく皆さんにとっても重要な事でしょう。」

 

「なるほど・・・だが、ううむ・・・随分と寛大な対応をしてくれるのだな・・・私たちはいわば秩序の騎空団に対する反逆者と言えるだろう。それなのにこんなに・・・」

 

カタリナは予想だにしない対応に驚きを隠せなかった。

 

「貴方達を敵に回すより、貴方達を味方に引き入れた方が様々なことが片付けられそうだと。そう、判断したまでです。その為にどこまで譲歩すればよいかも。まぁ、本当なら我々だけで片付けたいところではあるのですが、悔しいですね。力不足ですよ・・・」

 

「なるほど・・・と言う事だグラン、ジータ。彼女の同行を許可しても良いか?私が見るにどこにも不都合はないと思われるが・・・」

 

 後ろで聞いていた二人に改めてカタリナが問いかけると二人からは明るい笑顔で返事が返ってきた。

 

「そうだね、セルグも助かるんだったら願ったりかなったりだよ!リーシャさんが仲間になってくれるのも心強い。」

 

「オルキスちゃんも助けに行けるし・・・こちらからお願いしたいくらいですね。」

 

 二人の声にカタリナも思わず笑みをこぼす。そのままリーシャへと向き直り

 

「だそうだ、リーシャ殿。これからよろしく頼む。」

 

 落ち着いた表情でその右手を差し出した。

 

「はい。どうぞよろしくお願いします。」

 

 差し出された手を握り締め、リーシャも笑みをこぼした。

 こうしてリーシャはグラン達の仲間に迎え入れられる事となった。

 

 

 

「モニカ・・・」

 

 少し遠目に事の成り行きを見守っていたモニカにセルグが声を掛ける。

 

「ん?なんだセルグ?」

 

「悪かったな・・・」

 

 静かに、ただ一言。セルグは謝罪の言葉を口にした。

 後悔の表情を浮かべて謝るセルグにモニカはきょとんとした顔をみせて答える。

 

「何だ一体?約束の事なら別に守ってくれさえすればいつでも」

 

「いや・・・それじゃない。

 お前達にその気が無いことくらい・・・わかっていたんだ。それでもまだ子供であるアイツ等に脅迫紛いな要求をしている姿を見て少し・・・苛立ってしまってな。力で押し通すようなことをしてしまった。すまない・・・」

 

 再び謝罪の言葉を口にするセルグは心から後悔しているようであった。

 アマルティアで自分の言葉を信じてくれたモニカ。ケインとの邂逅の時にも、モニカはセルグの事を想って言葉を発してくれたはずだった。

 それをあっさり切り捨てた己の行いをセルグは悔やんでいた。

 

「それも全ては私達の力不足が原因だ。今回の事態を招いたのも、ここでお主たちを止められないのも。それはお主が気にすることではあるまい。彼らを脅迫して要求を通そうとしたのは事実だ。私としても謝られては心苦しいぞ。」」

 

「しかし・・・」

 

 気にすることはないとモニカが窘めるもセルグは納得しない。

 そんな思いつめた顔で俯くセルグを見たモニカの脳裏にひらめきが走る。

 セルグの後ろから歩いて向かってくるジータを視界に映したモニカはセルグには見えないように笑みを浮かべた。

 

「そんなことよりお主、突き放してきたと思ったらこうして歩み寄ってくるとは・・・女心をくすぐるのが上手いな。あんまりその気にさせないでくれないか。」

 

 ジータが射程圏内に入ったところで、これ見よがしに乙女の顔をつくるモニカは少しだけ大きく言葉を発する。

 モニカの発言の瞬間にジータの足が早まるのをみて彼女は隠していた笑みを深める。

 

「モニカ!?こんな時に何を言ってるんだ・・・オレは真面目な話を」

 

 哀れなセルグは背後から迫る災厄に気付かぬまま、唐突に恥じらうような表情を作るモニカに慌てた様子で誤解を解こうとする。

 セルグがモニカにちゃんと話を聞いてもらうべく、肩に手をかけようとしたときだった。

 

「セ~ル~グ~さん!」

 

「ジータ!?今のまさか聞いていたのか・・・」

 

 背後から飛んできた見るからに不機嫌そうな少女の声にセルグがたじろぐ。

 

「次の目的地はもう決まったんですから!モニカさんと()()()おしゃべりばっかりしてないで下さい。はやく行きますよ!!」

 

 そう言ってセルグの手をとるジータはモニカを人睨みすると、引きはがすようにセルグを連れ去っていく。

 

「うおぁ!?ジータ待てって、別にそんなに慌てなくても・・・悪ぃなモニカ!約束、また今度だ!!」

 

「うむ、楽しみにしているぞ!あと、リーシャの面倒を見てやってくれ!」

 

 遠ざかるセルグに大事な後輩を託しモニカはグランサイファーを見送った。

 飛びたったグランサイファーが見えなくなるとやれやれといった様子で自らの艇へと戻っていく。

 

「生真面目なやつめ・・・それにしてもホントに大人気の様だな・・・アイツ。」

 

 リーシャよりもからかいがいのある少女の不機嫌な様子を思い出して、またひとしきりニヤニヤしたモニカは団員に撤収の指示を出した後、再度グランサイファーが飛び去った空を見つめる。

 

「リーシャ、しっかりやるんだぞ・・・」

 

 期待と僅かな憂いを含んだ声は、一体何を想ってこぼれ出たのか・・・・漏れ出た声は誰にも聞かれることなく青い空へと溶けていった。

 

 

 

「というわけで、新たに同行することとなった秩序の騎空団のリーシャさんだ。」

 

 グランサイファーの甲板で改めて顔合わせをすべく一同が集まる中、グランの声に促されるように1歩前にでたリーシャは深々とお辞儀をする。

 流石は秩序の騎空団ともいえる模範的で丁寧なお辞儀に一行は思わず居住まいを正した。

 

「改めまして宜しくお願いします。同じ目的を持つものとして仲良くして頂ければ助かります。」

 

「はい!よろしくお願いしますね、リーシャさん!」

 

「付いてくるのはいいが、足手まといにはなるなよ。」

 

 元気いっぱいに返すルリアと、辛辣なアポロの対照的な対応に他の仲間達は思わず苦笑する。

 

「聞いておきたいんですけど、リーシャさんってどんな戦い方をするんですか?これから仲間となる以上戦力の把握はしておきたくて・・・」

 

 仲間となったリーシャの実力を把握すべくグランが質問を投げかける。

 リーシャは少しだけ考えると腰に携えた剣を手に取った。

 

「そうですね、私は戦闘に於いては剣を使いますが、これまで部隊指揮をすることが多く、モニカさんの様に武闘派ではありません。回復や風属性の魔法も使えますので前衛よりは中衛が好ましいと思われます。」

 

 太陽の光を反射する刀身にはそれほど傷が無く余り使い込んでるわけではない事が伺える。

 

「中衛か、カタリナやロゼッタと協力してもらいそうだね。そういえば・・・指揮といえば僕らを助けに来てくれた時のリーシャさんの檄はすごかったな・・・カッコよかったです。」

 

 帝国軍に囲まれたグラン達を助けに来た時のリーシャの姿を思い出し、少しだけ憧れを含んだグランの言葉を聞いて、リーシャは瞬く間に顔を赤くする。

 

「グ、グランさん!?戯れはよしてください!あんなの、勢いに任せたただけなんですから・・・やだ、もう恥ずかしい。」

 

「あら?お姉さん、女なのにドキドキしちゃうくらいかっこよかったわよ・・・それにしても慌ててる顔は可愛らしいとか、貴方いいわねぇ。」

 

「ロゼッタ・・・一応言っておくがあまり遊ぶなよ。」

 

 顔を赤くして謙遜に謙遜を重ねるリーシャの姿に、正に獲物を見つけた肉食獣の様な目をするロゼッタ。

 そんなロゼッタにセルグが釘を刺すように後ろから制止の言葉をかけた。

 

「あら、怖いガードマンがここにいたのね。」

 

 肩をすくませて残念そうな顔をするロゼッタに、セルグはやれやれとため息を吐く。

 

「出立間際にモニカに頼まれたからな・・・面倒をみてくれと。何を面倒をみる必要があるのかと思っていたが、多分こういう事だろうな。」

 

「べ、別に貴方に面倒見てもらわなくても私は大丈夫ですよ!!」」

 

 抗議の声を上げるリーシャは拗ねたように視線を逸らした。

 

「ま、オレから言うことは一つ。ここにいる間は背負う物が無いんだ。余計な事を考えないでリーシャとして過ごしたらどうだ?」

 

 言葉と共に頭へポンと乗せられた手のぬくもりに、リーシャは僅かな思い出しかない、父親との記憶を思い出す。

 無遠慮で不躾に頭に手を置くセルグへ厳しい視線を返すものの、思い出に浸った心は、否応なくリーシャを安心させその表情を和らげる。

 

「・・・そうですね。少しだけ、秩序の騎空団のリーシャではなく、ただのリーシャとして。ここにいようかと思います。」

 

 小さく呟いた言葉によって、リーシャは心を守る鎧が剥がれ落とされていくような妙な危機感と、心を優しく包み込まれるような幸福感を覚えた。

 船団長として張り続けていた緊張の糸を解されたリーシャの姿に、グラン達は秩序の騎空団のリーシャではなく、ただのリーシャとして彼女を迎え入れた。 

 

「何この気遣い?回りくどくない・・・こんなのセルグじゃないじゃん・・・」

 

 セルグの言葉で柔らかな雰囲気になったリーシャをみてグランから少し刺々しい声が上がる。

 セルグから普通に気遣いの言葉が出るのはおかしいとでも言いたげなグランの口調に、セルグはグランへと一瞬で詰め寄りその肩に手を置いた。

 

「・・・どうやら王宮内で言った事を実現する時の様だな。グラン!特訓の続きをしようか・・・ゼタとヴィーラに協力してもらおう。とりあえず課題は無傷でクリアだな。なぁに安心しろ。如何に無茶な特訓であっても半日も甚振られたら嫌でもできるようになるさ。」

 

 セルグは言葉と共にグランの服を掴むと甲板の広い所へと引きずっていく。その表情は実に嬉しそうな笑顔であったと、間近で見たリーシャは後に語った。

 

「のおおおお!!」

 

 口は災いの下である・・・・グランの悲痛な悲鳴がグランサイファーに木霊するのだった。

 

 




如何でしたでしょうか。

原作とは違うタイミングと形でのリーシャの加入。
理由付けとか果てしなくご都合感が・・・なんとかしたかったんですけどね

ちょっとした呟きなんですが、最近評価で星4を頂きました。
星4ってどういう位置づけの評価なのか激しく気になります(;´д`)
伸び代あるからもっとがんばれ的な?それとも単純におもしろくない?
1とか2ならその人に合わなかったんだろうなってなるんですが、4ってわからない
とりあえず精進していきます。

それでは。お楽しみいただけたら幸いです。



次回からルーマシーまでの間の幕間と過去編。
そして待望の(そんな人いるのか分からないですけど)イベントシナリオを一つ挙げたいと思います。


というわけで次回、グランブルーファンタジー その手が守るもの

 ”救国の忠騎士”

ご期待下さい


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