granblue fantasy その手が守るもの 作:水玉模様
誰が望んでいるのか捏造100%の組織関連のお話。
しかも今回は少し長くなるという 。なぜか知らないけど 描きやすい?気がするのです。
それでは、お楽しみください。
グラン達から逃げるように別れたゼタは一人、メフォラシュの寂れた街並みを歩いていた。
周囲に魔物の気配は無く、本来であれば喜ばしい状況であるにも関わらず、歩いているゼタの表情は固い。
「はぁ、全く迷惑よね。こんなタイミングで呼び出してくるとか・・・」
苛立ちを隠すことなく、ため息と共にこぼれた本音には彼女の心情が表れていた。
そのまましばらく歩き続けたゼタがたどり着いた場所は、栄華を誇ったエルステの王国であれば、多くの民がそこを行き交いしていたであろうと思われる、今は無人の広場だった。
「来たわよ!・・・出てきなさい!!」
傍から見れば急に大声を上げたゼタの行動は不可解極まりないが、広場にはその声に応える者がいる。
周囲の建物の影からのっそりといった具合に姿を現すのは半裸に近い鎧を付けた大男。
その後ろから続いてエルーンの男とヒューマンの男も姿を現した。
アマルティアにてセルグを襲撃した部隊。バザラガ、ユーステス、そして秩序の騎空団に捕らえられたはずのクロードである。
「ゼタ・・・セルグはどうした?」
開口一番、バザラガはゼタへと問いかける。その声には僅かながら怒りが見えた。
「バザラガ、見てわかるだろう。コイツは一人で来た。理由は定かではないが・・・」
「バザラガ、ユーステス。ってことはそいつがクロードか・・・」
3人を順番に見回してゼタは確認した。ゼタの知らない唯一の戦士、クロードはそのゼタの視線に吠えるように声を上げる。
「おい、ゼタとかいったな。あの化け物はどうした?ここに連れてくる話だったんだろう?」
「バザラガ、ユーステス。アンタ達がアマルティアでセルグを襲撃したって言うのは本当?」
しかし、ゼタはそんな声を意に介さず、そのままバザラガ達へと問いかけた。まがりなりにも今はチームを組んで任務に当たる面子だ。その二人がセルグを始末しに来たことをゼタは信じたくは無かった。
「おいてめえ、俺の話を」
「そうだ。俺達がアイツを始末するために送られた部隊だ。」
「可能であれば連れ戻せと言う指令だった。見ての通り失敗に終わっているがな。」
発言を流されたクロードの抗議を遮り、バザラガとユーステスはゼタの問いかけに答えた。彼らも今この場に於いて、クロードの存在は不要な存在としてゼタとの話を優先させる。
「なんで!?セルグはアンタ達の仲間じゃなかったの!?何でそんな簡単にセルグを切り捨てることができるのよ!」
声を荒げたゼタの言葉に非難が混じる。
先のセルグとの会話で嘗ての友であり師であると答えた時のセルグの表情がゼタの脳裏に思い浮かぶ。
なんの感慨も無く、表情に変化も見せずに答えたセルグの表情は、悲しさを無理やり押さえてる裏返しだとゼタは感じていた。
「我らとてそうしたくない。だからお前に頼んでセルグを連れ戻せないかと打診をしたのだ。セルグと共に旅をしているお前ならばと・・・なぜ連れてこなかった?」
ゼタの声音にバザラガの声にも力がこもる。
簡単に切って捨てる事などできるはずもない。バザラガにとってもユーステスにとってもセルグは大切な友であった。
だからこそ昨夜、ゼタへと打診をしてセルグをこの場に連れてきてもらい、説得をするつもりだったのだ。
目論見を覆されたバザラガがゼタに非難の声を上げるのも仕方ないことだろう。
「・・・セルグはもうアンタ達を何とも思ってない。もう元には戻れないって。今は団長さん達がいるから大丈夫だって。顔には出なくても、心で泣いてるってはっきりわかるような声で・・そう言ってた。
二人ともわかってないよ・・・セルグを連れ戻したところでもうアイツは組織の中には仲間がいないと諦めてる。
それなのにまたアイツを辛く悲しい過去へと引きずり戻すの?誰も頼る者が居なくて、誰にも助けを求められない。一人で抱えてずっと泣いてきたアイツを。」
瞬間、二人は呻く。
ゼタが告げる言葉は深々と二人の心を抉った。
セルグが怒りではなく悲しみに声を上げている。二人は今でもセルグを友だと思いたくても、当のセルグは既に二人との縁を切り捨てていると言うのだ。
「だから、私は一人で来たんだ・・・」
珍しく表情に変化を見せた二人を前に、ゼタは冷たく声を張る。冷たい声と裏腹に彼女が持つ槍は熱く猛る炎を吹き出し始めた。
ザンクティンゼルでセルグに向けた時と同じように、ゼタは躰を巡る激情に身を委ねる。徐々に増していく炎の渦はあの時より精錬され、熱を増していた。
「アイツは今、団長さん達と会ってやっと前を向いて生きているんだ。あの子が守ってくれた命と向き合いながら、前を向いて生きているんだ!絶対に邪魔はさせない。あの子が命を賭して守った未来を・・・あの子が守ったものを犠牲にさせるもんか!!セルグの未来は私が守って見せる!!」
叫ぶゼタの声に呼応して巻き上がるのは、セルグに向けた時とは違う決意の炎。
ヒトは誰かの為に強くなれる。そんなありきたりな言葉を体現するように。過去の自分を置き去りにするようにゼタの炎は勢いを増していく。
目の前に佇む3人の戦士を射抜いた彼女の淡く青い瞳は、ただ力強い光を放っていた。
臨戦態勢ではなく、戦闘態勢でもない。己の全てを出し切るようなゼタの姿勢は決戦態勢とでも言うべきか。
「はは、血迷ったか!行くぞ二人とも!馬鹿な女にお仕置きの痛みをプレゼントしてやるぜ。」
そんなゼタの姿に、いつもの調子を崩さない愚か者、クロードは腕に愛用の武器を装着し愉悦の笑みを浮かべながらゼタの前へと躍り出た。
「ユーステス・・・」
「わかっている。」
バザラガとユーステスは言葉なく視線だけの会話を行う。もはや戦闘は避けられない状態だと判断し各々武器を取った。
「アルべスの槍よ!我らが信条示し、貫くための牙と成れ!!」
「滅爪イビルレギオン。我が眼前に仇名す愚者に、絶望の痛みを与えたまえ。」
言霊の詠唱。光り輝くアルべスの槍と、黒く鳴動するイビルレギオンが力を解放した。
「ゼタ、はやまるな!お前と言えどその武器相手では」
「うるさい!!」
バザラガの忠告を聞く耳持たぬと一閃。ゼタはクロードの立つ地に向けて槍を振り下ろす。
大振りな攻撃を難なく回避したクロードだが爆音と共に地面が爆ぜた。
その余りの威力に戦慄するもそれは一瞬、すぐにゼタへと接近しクロードは攻撃を繰り出す。
槍のリーチの内側にスルリと入り込んだクロードにゼタは、対セルグの為重ねた特訓の成果をありありと見せつけるようにその攻撃を捌いていく。
「・・・やむを得ない、ユーステス。一先ずはゼタを抑えるぞ。」
「仕方ない・・・か。」
気構えの違いもあるだろうが、ゼタとクロードの差は明白に見えた。このままではすぐにクロードが倒されると読んだ二人は援護の為に戦闘に参加していく。
「チッ、さすがに3人相手は・・・」
「オラオラ!どうしたゼタぁ!」
数的不利に立たされたゼタを容赦なくクロードが攻め入る。間断なく攻めたて、生まれる隙はバザラガとユーステスが埋めていた。
「くっ、案外やるわね。仕方ない・・・」
人数の差で形勢が不利だと悟ったゼタは一気に攻勢に出る覚悟を決めた。
大きく踏み込んできたクロードの爪を紙一重で避けカウンターを放とうと身をよじった。
だがその瞬間
「つぅううあああああ!?」
僅かに掠ったイビルレギオンによってゼタの悲鳴が響き渡る。
「ひゃっはー!イイ声で鳴くじゃねえか!この間の秩序の騎空団の女も良かったがお前はもっとイイな。最高の声じゃねえか!もう一回聞かせてくれ・・・。」
ゼタの悲鳴に昂るクロードの言葉は仲間のバザラガ達から見ても胸糞悪くなる言葉であっただろう。
激痛を放ち続ける斬られた箇所を押さえながらゼタは戦意に怒りを乗せてクロードを睨み付けた。
「ぐっ、噂には聞いていたけど、ホントクソみたいな奴ね。上等、掛かってきな。ぶちのめしてやるわよ!!」
再度激突する両者の動きは先ほどとは真逆になる。
いくら強がろうとも激痛に集中を乱され、本来の力を発揮できないゼタは徐々に捌き切れなくなってくる。
ゼタにわずかな隙が生まれた瞬間をクロードは見逃さない。
「くっ!?」
「ほうら、鳴け!!」
再びゼタの身体へわずかにイビルレギオンが届く。深々と斬らずに掠らせるように斬りつけるのはクロードが楽しむために他ならない。痛烈な悲鳴を期待してクロードがそのまま動きを止めた瞬間。
「ぐっうう・・・ざっけんじゃないわよ!!」
「何!?ぎゃああ!?」
体勢を崩しながらもゼタが放った”サウザンドフレイム”がクロードを焼いた。
「はぁ、はぁ・・・きっついわねこれ。アタシとしたことが痛みで涙を流すなんて何年ぶりかしら。」
理不尽な痛み。それを受けた時、人の反応は二つだ。何かに体をぶつけて唐突に大きな痛みを感じた時、痛くて辛いと思うか、痛みをもたらしたものに怒りを覚えるかである。
本来であれば怒りを覚える事すら困難なイビルレギオンの激痛に、ゼタの怒りが勝った。
振り切れた怒りが痛みに呻くよりもクロードへやり返すことを選んだのである。
座り込んだゼタの瞳に滲む涙は、その激痛の程を物語る。
「ぐぅ、ぐぞう。やりやがったなこのアマ!!」
炎に焼かれながらも立ち上がったクロードは、遊びは終わりと言わんばかりに狂気の目でゼタを見据えた。
「もう許さねえ、深々と斬りつけて地獄の痛みを味あわせてや」
クロードの言葉が止まる。言葉の途中で彼は背後から絶大な殺気を感じ取った。
「先にお前が地獄に逝け。」
小さく背後で呟かれた言葉。クロードが言葉の意味を理解する間もなく、小さく金属質な音が鳴る。まるで金属と金属をこすり合わせたような・・・
その瞬間クロードの視界が反転した。上を見れば地面があり、下を見れば空が見える。どうやら宙を舞っているようだ。
「え、なんでおれ・・・とん・・で・・」
受け身を取ろうとするが体の感覚が無い。腕も足も動かせず、なすすべなくクロードは地面にボトリと鈍い音を立てて落ちた。
徐々に閉じていく視界の中で彼は最後に、動きを見せない己の身体を見つめるのだった。
「二度と喋るな。」
もの言わぬ姿となったクロードを見下ろし、セルグは絶対零度の瞳を見せる。
「セ、セルグ・・・なんでここに?」
驚きと共にセルグへ声を掛けるゼタを視認したセルグはいつもの表情に戻り、呆れたような顔でゼタへと歩み寄った。
「隠し事が下手すぎる。あれじゃ何かあるって言ってるようなもんじゃねえか。みんな怪しんでたぞ・・・まぁこいつらが島に来ているのはヴェリウスのおかげでわかってたからな。ホントはすぐにでも追いつくつもりだったけど、何故か魔物にやたらと絡まれて遅れてしまった。すまない。」
すぐに駆けつけられなかったとセルグが悔やむも、ゼタから見れば折角一人で来たのに台無しにしてくれたと怒りが湧きあがる。
目の前に歩いてきたセルグに向かい、立ち上がりながらゼタは声を荒げた。
「なんで、ここに来たのよ!?こいつらはアンタを」
怒れるゼタの言葉が途中で止まる。
ゼタの顔の横にはセルグの顔があり、背中と後頭部に添えられた手と全身に伝わる温もりは彼女がセルグに強く抱きしめられてることを認識させた。
「な、え、ちょ!?せ、セルグ!?」
驚くゼタを余所に、セルグはその存在を確認するようにゼタを抱きしめる腕に力を込める。
「悲鳴が聞こえた時は血の気が失せた。足元が崩壊していくような心地だった。生きていてくれてありがとう・・・ゼタが一人でオレの為にこうして戦ってくれた。それだけで本当に嬉しい。もう十分だ、あとは任せてゆっくり休んでくれ、ゼタ。」
ゼタを解放しながらあとは任せろと告げるセルグの姿はいつも通りだ。抱きしめられて内心、心臓がはちきれんばかりにドキドキしていたゼタとは雲泥の差である。
だが、ゼタの不安の種は尽きない。セルグと彼らを戦わせるのは酷ではないかと心配で仕方なかった。
そしてなにより、彼らを戦わせてはいけないと心が告げていた。
「で、でもいくらアンタでもアイツら相手は辛いんじゃ・・・」
「約束、だろ?」
何があっても守り抜く。不安を感じさせないセルグの自信のある表情に、セルグの誓いを思い出したゼタは急に瞼が重くなったのを感じる。セルグの言葉に安心を感じてしまったゼタの身体は休息を求めて意思とは関係無しに彼女を眠りへと誘う。
身体に備わる全てを使ったゼタの身体は激痛と疲労で既に一杯であった。
「あ・・・セルグ・・・お願い・・だ・・か・・ダ・・」
彼らを戦わせてはいけないと眠りに抗おうとするゼタの抵抗も虚しく僅かな言葉だけを発して眠りについてしまう。
「・・・・おやすみ。」
ゼタの言葉をセルグは聞いていた。だが、その真意は伝わり切らなかった。
ゼタの願いとは裏腹にセルグの瞳は冷たく、目の前の戦士を射抜く。
「確かアイツは秩序の騎空団が捕らえていたはずだったが?」
今はもの言わぬ亡骸を一瞥してセルグは問いかけた。
何故ここにこいつがいる?と言外に伝えるセルグの声に今さっき命を刈り取ったばかりの感慨は無い。罪悪感などありえない。
「帝国襲撃の混乱に乗じて連れ出した。放置すればいずれ組織にも不利益を与える。」
簡潔に答えるユーステスは罰が悪そうな表情であった。状況だけ見ればクロードを連れ出した彼らにもゼタが傷ついた要因の一端がある。
そんなユーステスの答えにセルグは笑みを浮かべた。
「じゃあこれで問題は無くなったわけだな。死人に口なし。もはやアイツと組織の関係を調べることもできないだろう。次はお前らだ・・・」
目の前に立つ男にどれだけの力があるのか・・・計り知れない力を感じてバザラガとユーステスは恐怖した。
膨れ上がる存在感と、身を切るような殺意が二人を襲う。
「セルグ我らは」
最後の弁解をしようとバザラガは向けられる殺意を振りほどき口を開くも、それは最後まで言い切ることは適わずセルグに遮られる。
「今更言葉はいらない。ゼタに向けられていたその鎌と銃・・・もういいよな?宣戦布告と受け取って。言ったはずだ・・・来るのなら容赦はしないと。
失敗したな・・・お前たちはあのクズを援護するために武器を取ってしまった。お前たちが丸腰となっていたならオレも止まっていたかもしれない。結局のところお前たちは初めから戦うしかないと諦めていたんだろう?オレを連れ戻すことなど不可能だと諦めていたんだろう?まぁ実際その通りではあるが・・・その気が無いならそんな言葉吐くんじゃねえよ。」
ゼタの死を幻視した時感じた恐怖はそのまま彼らへの怒りとなってセルグより溢れ出す。
「今日は逃がさねえぞ。お前たちは許されない事をした。オレの大事なものを傷つけた。」
臨戦態勢となったセルグは天ノ羽斬へと手をかける。柄を握る手は力の入れすぎで震えていた。
「ユーステス、何とか撤退をするぞ。最悪はオレが囮となってでも・・・」
「難しいだろう。ここは広い屋外、逃げ出すには障害物が足りない。それに、奴の力なら二手に分かれて逃げたところで逃げ切れないだろうな・・・」
かつてアマルティアで見せたセルグの動きを思い出しバザラガとユーステスから焦りの声が上がる。撤退すら困難なほどの絶対強者となった目の前の男に、もはや倒される未来しか見えなかった。
「・・・ではどうする?」
「ふっふーん。困っているようだな?バザラガ、ユーステス!」
この場に状況に余りにもそぐわない、少々抜けた声が広場に響き渡った。
「あ・・・?」
怒りが僅かに露散し、呆けたセルグの声は二人の戦士とも重なる。
3人の視線が声の出所へと向かうとそこには、少し離れた家屋の屋根に立つ人影があった。
「とう!!」
大きな跳躍で彼らの間に降り立ったのは一人の女戦士。
長い茶髪は後ろで束ねられ、スラリとした手足でありながら細すぎない体格は戦士として鍛えられたものだとわかる。
ゼタの鎧と酷似した藍色の鎧と腰に下げた剣。一目で組織の戦士であることは明白だった。
「私が来たからにはもう大丈夫だ。どんな敵でもなんとかしてやるぞ!!さぁ、かかってこい!!」
発せられた声と言葉にその場の空気が固まる。
冷たい怒りの空間の中にブチ込まれた、明るく揚々とした声は3人の時を止めるには十分であった。
「ベアトリクス・・・空気を読め」
流石に流し切れなかったバザラガが小さく苦言を呈した。
「バザラガ、コレはなんだ?戦士にしちゃアホ面過ぎる。というかアホだろ。」
「な、おまえ!?初対面でいきなりアホとは失礼極まりない奴だな!私はベアトリクス。ある男を超えていずれ組織最強の戦士となる女さ!」
鎧の癖に大胆に開かれて、露わになっている胸元へ拳を当て女戦士、”ベアトリクス”が名乗りを上げた。
「とりあえず事情の知らない小娘はすっこんでろ。」
珍入者に呆気にとられたもののセルグはすぐさまバザラガに向けて接近。不意を突いたセルグは刀を振り抜く。
「なに!?」
だが、それは割り込んできた藍色に輝く剣に止められる。
「こんな悪そうな二人でも私の大事な仲間なんでね。悪いけどやらせるわけにはいかないな!」
止めていた剣で押し返しセルグを後退させるベアトリクスは余裕の表情を浮かべてセルグと対峙した。
「チャンスだ。ベアトリクスの能力があればここを切り抜けられるかもしれん・・・」
ベアトリクスが持つ剣に集まる藍色の光を見てユーステスは可能性を示唆する。
バザラガもユーステスの思惑に気づき、セルグと対峙したベアトリクスへと指示を出した。
「ベアトリクス!その男はとてつもなく強い。全力で行け!」
「へぇ、そうなのかおもしろいじゃないか・・・エムブラスクの剣よ!我が前に渦巻く因果を喰らい、勝利への道を切り拓け!!」
バザラガの言葉にニヤリと笑う。強者であると聞かされてこんな笑みを浮かべるのは彼女かガンダルヴァ位だろう。 だが、そこには裏付けされるだけの彼女の実力がある。
言霊の詠唱と共に解放されたエムブラスクの剣は、ゼタの炎の様にベアトリクスを藍色の光で取り巻く。
「(アホな雰囲気に騙されたがオレの攻撃をあっさり防いだ・・・強いのか?そうは見えないが。解放による変化は光による剣の肥大化・・・単にリーチを変える武器とは考えづらいな。特殊な能力がありそうだが。さて、どうするか。)」
目の前で藍色の光に包まれた剣を見てセルグは落ち着きを取り戻し思考する。
動き出さなければ始まらないと結論に至るとセルグも天ノ羽斬を構えた。
「悪いが邪魔をするなら関係ない小娘でも手加減はしないぞ・・・覚悟しろ。」
「上等、来な。」
ベアトリクスの言葉が終わらぬうちにセルグが動く。
一足で接近。一撃で終わらせようと、油断している彼女の不意を突いて首元を狙い一閃。
「うっわ!?っぶな。」
ギリギリのところで切っ先から延びる藍色の光で防いだベアトリクスは驚きのままに一度間合いを取った。慌てた様 子でギリギリの回避を見せたベアトリクスにバザラガから叱責が飛ぶ。
「ベアトリクス!全力で行けといったはずだ!」
「悪い悪い、ちょっと予想外だっただけ。もう油断はしない!」
「(なんだ・・・剣の肥大化が大きくなってる?)」
己の一撃を防いだ、剣を包む光にセルグは考察していく。
だが、セルグの思考を待つほど対する彼女は気長ではない。
「おりゃああ!!」
接近して振るわれる剣はセルグの予想を超えた速さで振るわれた。
「(さっきより早い!?)」
虚を突かれ回避を選択したセルグ。ベアトリクスの持つ剣の能力が不明確すぎて本調子に成りきれないセルグの様子にバザラガは確信の声を上げる。
「目論見通りだ。セルグのあの強さ・・・ベアトリクスとの相性は最悪。これなら撤退もできるかもしれん。」
「ああ、ベアトリクスにとってセルグの強さは格好の餌みたいなものだ。このまま上手く隙をついて撤退するぞ。機を逃すな。」
二人は言葉と共に目の前で善戦を繰り広げるベアトリクスの援護を開始していく。
「チィ!?徐々に能力が上がってるのか?また意味の分かんない武器を・・・」
3対1となったセルグが予測のできない剣の能力に僅かに動揺した姿を見て、ベアトリクスは気分を良くする。
「へっへーん、アンタは相当強い様だがアタシには関係ないのさ。このエムブラスクの剣は窮地に陥れば陥るほど強くなる。つまり、アンタが強くて私がピンチになるほど、私は強くなれるのさ!!私はこの剣でドンドン星晶獣を倒して、いつかあの最強の戦士、セルグ・レスティアを超える!」
「愚か者が・・・」
わざわざ自分から種明かしをするのは圧倒的な強者か、圧倒的なバカかのどちらかであろう。
どうだと言わんばかりベアトリクスの様子にバザラガは心底残念そうに呻く。
ベアトリクスの言葉に一度動きを止めたセルグは僅かな思考の中でそこにチャンスを見つけた。
「なるほど、道理でさっきからどんどん動きが良くなるわけだな。ちなみにそれってどう強くなってるんだ?」
「ん?具体的には剣が軽く感じたり、このオーラが大きくなって威力が上がったりだ。ふふん、凄いだろう?」
セルグは確信する。コイツアホだ・・・と。
「おう、お前のアホさ加減は確かに凄いな・・・つまりあくまでお前が剣を振るうってのが前提か。それだけわかれば十分だ。お前が反応できない攻撃をすればそれで済む話だな。」
「え?」
予想外に余裕そうなセルグの答えに、今度はベアトリクスが呆気にとられた。
エムブラスクの剣はどんなに強大な敵でも、互角には渡り合える。少なくともこれまでのベアトリクスの経験上はそうであったし、苦戦することはあっても敗北など一度も経験したことが無かった。
「喜べ、お前が超えたがっている最強の戦士の最高の剣技を見せてやる。」
「へ?な!?」
さらに続いた言葉にベアトリクスは僅かな驚愕と恐怖を浮かべた。
目の前にいる男は今何と言った?
告げられた言葉を徐々に理解してきたベアトリクスは、セルグが頭上に掲げる刀を見て目を見開く。
「絶刀天ノ羽斬よ、我が意に応えその力を示せ。立ちふさがる災厄の全てを払い、全てを断て・・・天ノ羽斬、解放!」
天からの裁きの如き、圧倒的な奔流に晒され天ノ羽斬とセルグを光が包む。
収束する光は、ベアトリクスの脳裏に初めて圧倒的なまでの敗北を予感させた。
「な、ははは・・・なんだよソレ。アンタまさか・・・」
ベアトリクスから乾いた笑いが漏れた。目の前にいる男が持つ刀、そして感じる威圧感。その全てが自らの予想を正しいと思わせるものだった。
「そうだ。お前が目指す最強の戦士だ。残念ながらお前の野望はここで終わりになるかもしれないがな。」
セルグは言葉と共に一閃。光の斬撃を飛ばす。最大解放の天ノ羽斬がもたらす見えない剣閃がベアトリクスへ、次々と襲い掛かった。
「な!?くっ、うわ!早すぎて見えない!?」
ギリギリのところで剣のオーラに守られながら受けきっているベアトリクスにもう余裕はどこにもない。
「裂光の剣士の由来を知らないのか?オレを超えるつもりでそれはお粗末すぎる!」
そんな慌てふためいた様子のベアトリクスに僅かな失望を感じながらセルグは接近。隙だらけとなった彼女の懐へと飛び込みケリを付けるべく力を溜めた。
「終わりだ。絶刀招来・・・」
あと数瞬。それだけあればベアトリクスはセルグの斬撃で体を真っ二つにされていたかもしれない。
「セルグ!ダメ!!」
そんな絶妙なタイミングでセルグの耳にゼタの叫びが届く。
切羽詰まったようなゼタの声に反射的に動きを止めてしまったセルグはベアトリクスの目の前で大きな隙を見せることになった。
「ッツ!?ここだぁ!!」
藍色の光が肥大化、巨大な剣となったエムブラスクの剣がセルグへと振り抜かれた。
すんでのところでガードできたもの、セルグの腹部にはその威力がありありとわかるほど大きな衝撃を残す。
「ぐっ!?ゼタ、何故止めた!」
痛みに顔を歪めながら声を荒げてゼタを見るセルグだったが、彼女を見た瞬間にその怒りは消える事となる。
「セルグ・・・お願い。今回だけ剣を納めて。その子には手を出さないで・・・お願い。」
焦燥に駆られた表情。不安が頭から離れず、心を締め付けられてるようなゼタの表情にセルグは戸惑う。
「ゼタ・・・コイツはとんでもないアホの子だぞ。今ここで逃がしたら間違いなくオレの情報が組織に」
「それでも!私とあの子にとって大事な妹みたいな子なの・・・」
「ゼタ!?なんだよ、妹みたいな子って!!いつから私はあんたの妹になったって」
「うるさい!!ちょっと黙ってなさい!!」
「ひぃ!?」
妹分と言われたベアトリクスが反論しようとしたところをゼタは恐ろしい剣幕で一喝。有無を言わさずベアトリクスを黙らせた。
「セルグ・・・お願い。」
懇願するゼタの目を見つめながら逡巡するセルグだったが、あっさりと天ノ羽斬納める。ゼタの言葉の中にあったある存在を告げられては、セルグにもう刀を振るう選択はできなかった。
「・・・はぁ、わかったよ。」
ベアトリクスを倒せなくては後ろに控えるバザラガとユーステスも無理だとセルグは怒りを露散させる。
落ち着いたセルグの様子に大きく息をはいて安堵したゼタは、セルグへ歩み寄っていった。
ちゃんと伝えなきゃいけない事があると・・・
「ねぇ、セルグ・・・もう一度だけ、二人を信じることはできない?セルグが私の為に怒ってくれたのはその・・・正直嬉しかった・・・ありがとう。
でもバザラガもユーステスも私の事を止めようとしただけ。殺意も敵意も無かった。二人が今ここでクロードと共に居た理由はたった一つ。セルグとまた仲間だった時に戻りたかっただけだと思うの。」
大切な相棒たちと、大切なヒト。お互いがいがみ合う姿をゼタは見たくなかった。
だがゼタの言葉を聞いたセルグの表情には悲しみが浮かぶ。
「ゼタ・・・お前はこいつらと共に組織に戻れって言うのか・・・」
「違う!そうじゃないよ。そんなのはアタシだって許さない。ただ・・・二人が組織の為ではなくセルグの事を想ってここにいるってことは確かなんじゃないかってこと。きっと3人はどこかすれ違ってるだけで、ホントは歩み寄れるはず。」
ゼタはセルグの言葉を強く否定しながら優しく諭すように言葉を紡ぐ。
「セルグ、今となっては信じてもらえないかもしれないが、オレはただ裏切り者の烙印を払拭し、お前が堂々と組織に戻れるようにしてやりたかった。それだけだ。その為に本来であればクロードだけ向かうはずの任務に同行したのだ。」
そんなゼタの言葉に同意するように、バザラガは心の内を明ける。呟かれた声音に取り繕う様子はなく、それが本当の気持ちだと思わせる、真剣な様子が伺えた。
「バザラガ・・・・」
急に告げられた胸の内に戸惑うセルグの前に、今度はユーステスが立つ。
表情の変化に乏しい彼には珍しく、思いつめてる事がはっきりとわかる、苦悶の表情だった。
「・・・俺はお前に何ができた?一人でいなくなってしまったお前に・・・上層部になにを訴えようと取り合ってはもらえなかった。思いついたのは俺が上の立場になることでお前を見つけ出すことはできないかと考え、必死に任務をこなすことだけだった。
教えてくれ・・・俺はお前に何をしてやれたんだ?」
「ユーステス・・・」
ユーステスの言葉も思いつめた表情も、セルグが驚くには十分であった。
セルグの思考も様々な考えが渦巻き、戸惑いが生まれ始める。
「わかったでしょ?セルグはもう元には戻れないって言ってたけど、二人とも本当は仲間に、友達に戻りたかった。その為に動いたことで誤解が生まれてしまった。」
「い、今更そんなことを言われて簡単に信じられるわけが・・・」
狼狽えるセルグの様子をみてゼタはセルグの手を取った。落ち着かせるように手を握りしめたままもう一度優しく言葉を紡ぐ。
「信じられない?組織であの子以外にセルグが心を開いていた数少ない人達でしょ・・・?」
「それは・・・そうだが。」
何を信じていいかわからない。視線を彷徨わせ、思考が纏まらないセルグと答えを待つ3人。
落ち着かない沈黙が広がる中で、それをぶち壊すものが表れる。
「なぁなぁ、話してるところ悪いんだけどさ、アンタ本当にセルグ・レスティアなのか!?」
先ほど殺されかけたというのに現在進行形で割り込みにくい空気の4人の中に、興奮した面持ちでベアトリクスが入り込んでくる。
「ちょっとベア!いま大事な話の」
「いや~バザラガとユーステスから聞いてたからどんな化け物染みた奴かと思ったら、全然普通のやつじゃん!驚いたよ~二人の無二の友だなんていうから、二人と似て愛想のない、ブスっとした顔してるかと思ったら普通にカッコいい感じだし!あれ、そういえばアイリスさんの」
「ちょっとベア!?いい加減に・・・」
空気を読まないベアトリクスを黙らせようとゼタが怒りの拳を握ったところで、セルグから落ち着いた声が漏れた。
「なんだ・・・似たような事が最近にもあった気がするな・・・・」
ベアトリクスの明るい声に落ち着きを取り戻したセルグはこの状況に既視感を感じた。
「ベアトリクスだったか?お前、組織からオレがやった事を聞いていないのか?」
「ん?ああ~まぁ、お偉いさんからも情報公開されてて一応知ってはいるけど、別に信じてないし。大体その話するとバザラガもユーステスもすっげー不機嫌になって近寄り辛くなるからさ~・・・私の勘がこれは何かあったんだなって確信してたからね。全然気にしてないよ。」
明るく話しかけてくるベアトリクスに疑問を抱いた、セルグが尋ねるも、彼女の態度は変わらない。
更には彼女の答えの中には、バザラガとユーステスのセルグへの想いも読み取れた。
「ふふ、だってさ・・・セルグ。」
ゼタもそのことに気づいたのか笑みをこぼし始める。
「ふぅ・・・そっか。また一人で空回りか・・・・」
ため息と共に空を仰ぎ見るセルグの声には穏やかな温かさが感じられた。
彼らの間にもはや険悪な空気は漂うことが無かった。
「はぁ・・・ホント、ケインの時もそうだが、オレって空回りしてんな・・・」
「セルグ・・・我らは」
何かを告げようとするバザラガの言葉をセルグは手を翻して遮る。
「とりあえず二人とも。今のオレに組織へ戻る気は無い。」
「今は?どういうことだ?」
疑問を即座に返すのはユーステスだ。セルグはそれにすぐさま答えていく。
「グラン達の旅が優先だ。アイツ等の目的の為に力を貸すと決めている。」
「それが終われば?」
「ケインにも話を付けてある。機を見て組織に戻る気ではいた・・・あの事件に関わった奴を処分し、全てを公表して一から組織を建て直す。そして星晶獣の脅威から空の民を解放し、星晶獣による悲劇を撲滅する。それがオレの目的だ。」
次々と答えるセルグは最後に己が目的を明かした。
「何故そういうことを先に言わないのだ。それを聞けば我らも」
「それでもしオレと志を共にしたとき、間違いなくお前たちが消される。それが怖かった・・・すまない。」
バザラガが怒り露わに苦言を呈するも、申し訳なさそうにセルグも返していく。だが、それでバザラガとユーステスがおさまることは無い。
「愚か者が・・・・お主はいつもそうだ。すぐに自分の胸の内にだけ留めようとする。なぜ周りを頼らない?」
「お前が俺達の身を案じている様に、俺達もお前の身を案じている。いい加減一人で何でもしようとするのはやめろ。」
「・・・なんだか、それも最近言われたような気がするな・・・フッ、二人ともありがとう。」
小さく笑みを浮かべながら答えるセルグが妙にしおらしく見えたゼタが、ニヤニヤしながらセルグへと声を掛けていく。
「ふーん。随分素直になったわね・・・なんだか今のアンタならなんでも言うことを聞いてくれそうな気がするわ。」
「なんだ?何かしてほしいのか?今だけはゼタ姫様のご要望に応えてやってもいいぞ。お前のおかげでまた、救われたからな。」
からかい混じりではあるもののセルグは本気でそう思って言葉を紡ぐ。するとセルグの返答にゼタが慌て始めた。ゼタ姫と呼ばれた瞬間に脳裏によみがえるザンクティンゼルでの誓いの夜。突如訪れた気恥ずかしい記憶にゼタの顔が熱を持ち始める。
「え、何?ゼタ、自分のこと姫とか呼ばせてるの?うわぁいいな~セルグに姫って呼ばれてるのか~」
何気なくからかうつもりだったセルグの言葉にベアトリクスが大きく反応した。
「はぁ!?ベア、あんたなにバカな事言ってんのよ。そんな事させてるわけないでしょ!!」
「え~でも今セルグがゼタ姫様って呼んだだろ。なぁなぁ、セルグ~。私も姫って呼んでくれよ!ベアトリクス姫ってさ~」
セルグの周りを飛び交うように、半ばくっつきながらねだるベアトリクスの姿に彼女が怒らないわけがない。
「ちょっとベア、調子に乗るんじゃない!」
「ふっふーん。別にゼタのオトコってわけでもないんだろ?なぁセルグ、1回だけでいいからさ!」
ゼタの一喝を受け流し、さらりとセルグの腕を取る当たり、アホの子と見せかけて実はヴィーラみたいに思慮深い奴なのか・・・などと渦中のセルグはあさっての思考を回していたが、纏わりつくベアトリクスを若干うっとうしいと感じ始め、仕方なく要望に応えようと口を開きかけたとき
「フ、フフフ。どうやら今度は私の番のようね・・・ベア!そこに直りなさい!!」
槍からではなく口から炎が吹き出そうな形相でゼタがベアを追いかけ始める。
「うぇえ、ゼタがマジになった!?やっばっっ!!」
「待ちなさい、ベア!全く誰のおかげで生きてられると思ってんの!!」
ギャーギャーと命がけの鬼ごっこが目の前で繰り広げられる中で、何してるんだ・・・と小さく呟いたセルグはバザラガ達ともう一度向き直る。
「一先ずはそういうことだ。今は大人しくしておいてくれ。オレとケインが繋がっていることが知られればケインに危害が及ぶ可能性もある。悪いが二人ともケインとの接触は禁止だ。」
「ふむ、しばらくは大人しくしておこう。」
「わかった。」
「それから、あのアホの子の口止め・・・は難しいだろうからしばらく拠点に戻れない位任務を与えてやっておいてくれ。あれは絶対に隠し事ができない、というか全てを曝け出すタイプだ。」
言いにくそうに頼み込むセルグの言葉に同意しかできない二人は頷く。
セルグの推察通りベアトリクスは隠し事ができないタイプであることは二人も重々承知であった。
「・・・善処しよう。」
「・・・頼んだ。ゼタ!急いで戻るぞ!!大分時間が経ってしまった。そして今度は・・・モニカの相手か。」
次なる恐敵(誤字に非ず)の事を考えてしんどそうな表情を浮かべるセルグがグランサイファーへ向けて歩き出す。
「全部自分のせいでしょ!ほらウダウダ言わないで早く戻るわよ。」
隣に並んだゼタは、少しばかり嬉しそうな顔をしながらセルグの背中を叩いて早く戻るように促した。
揃って駆け出す二人が視界から消える頃、バザラガとユーステスの元に息を切らせながら頭を押さえたベアトリクスが戻ってくる。
「はぁ、はぁ・・・いってぇ~ゼタの奴本気で殴りやがった。あ、なぁ二人とも。セルグってどのくらい強いんだ?いつかアイツを超えたいと思っていたけどちょっとレベルの差が桁違いな気がするんだよな~」
先ほど確かに感じた圧倒的敗北の予感。実際ゼタが止めなければそのまま自分は死んでいたかもしれない。
そのことが理解できないほどベアトリクスは馬鹿ではなかった。
「さぁな・・・オレ達にもわからん。」
言葉少なに返すいつも通りのユーステスの反応を予想していたのか、それ以上追及することは無かったが、代わりに湧き上がった疑問がまたベアトリクスの口から飛び出る。
「でもさ・・・アイツ戦ってるときすっげ~辛そうな顔してたんだ。特に言霊の詠唱の後から・・・天ノ羽斬ってそんなに反動きっついのか?」
光の斬撃を飛ばすセルグの顔は苦悶に歪んでいたとベアトリクスは記憶していた。確かに威力が高すぎるあまり、使用者に反動がある武器もあるにはある。
そういった反動がある武器なのかとベアトリクスが尋ねるが、答えるバザラガには戸惑いが浮かぶ。
「なんだと・・・?そんなはずはない。奴は昔から天ノ羽斬を使い続けていた。そんな症状は一度も・・・」
「そうなのか?じゃあ見間違いかな~動きほとんど見えなかったしな。きっとそうだろう!」
そう言って自己完結したベアトリクスが見間違いだったと結論付けるが、告げられた事実にバザラガとユーステスの胸中には言い知れぬ不安がよぎるのだった・・・
如何でしたでしょうか。
今回で一応の結着というか、組織関連は終いとなります。(終盤でちらっと顔をだすかもしれませんが
描いてて思ったのが、この流れゼタ姫ヒロインまっしぐらじゃないかと
で、でもモニモニもリーシャも当然ジータちゃんにもチャンスはありますよ
まぁそもそもイチャイチャする系男子ではないですし、どこからどう見ても未練タラタラな主人公なのでまだ大丈夫です。
ではでは。お楽しみいただけたなら幸いです。
追記 更新は週一ぐらいになるといったな、、、あれは嘘だ。
ということで来週は更新できなそうです(シゴト ダイジデスヨネ