granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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連続投稿!

でもケルベロスとフェンリル討滅戦が始まったので4日間はそっちに集中するかもしれません。(半額の次はこれとか、少し休ませてくださいサイゲさん)

でもこれからは週1くらいのペースはできそうな気がします!

早く次の島へ進めたい~ラビ島終えたらイベント編を一つ挙げる予定ですがね(;´д`)

それではお楽しみください。


メインシナリオ 第18幕

 

「くそっ!!何故だ、何故見つからない!?」

 

 静かな王宮内で、アポロの焦りの声が響いた。

 既に王宮の探せる場所はほぼ探し尽くしたグラン達。

 だが、いくら探しても、帝国宰相フリーシアやオルキスは見つからず王宮の探索に暗雲が立ち込めていた。

 

「ここではないと言うのか・・・?そんなはずは。奴がここ以上に執着する場所など・・・」

 

 焦るアポロにグラン達は少しずつ心配の表情を浮かべ始める。取り乱し始めた彼女の姿はこれまでの雰囲気からは想像もできない状態だった。

 

「おい、落ち着けアポロ!焦ったって何も変わらねえ!」

 

「くっ、黙れ!・・・こんなはずはない。奴がここにいない等ありえないんだ。頼むお前達、何としても奴を見つけてくれ!」

 

 娘を落ち着かせようとオイゲンが話しかけるもアポロはそれを一蹴する。グランとジータへ向き直ったアポロは半ば懇願するように二人へと探索を請う。

 しかしいくら探そうとも結果は変わらず、アポロの精神は恐慌状態に陥りつつあった。

 

「バカな・・・一体なぜここにいない?ここじゃない別の場所だと。そんなのあるわけが・・・」

 

 周りの見えていないアポロの姿にグラン達は逆に冷静になっていく。取り乱しても状況は好転しない。今は落ち着いて状況を見定める必要があることを理解していた。

 

「黒騎士、少し落ち着こう。貴方と同じように僕たちもオルキスを助けたい。その気持ちは変わらない。」

 

「フリーシア宰相の事を知っている貴方が唯一の頼りなんですから、貴方が冷静になってくれないと私達は、この先どうすればいいかわからなくなってしまいます。」

 

 グランとジータの言葉はまっすぐにアポロへと届く。オルキスを助けたいという気持ちに嘘はない。その想いを感じ取ったアポロが徐々に冷静さを取り戻していく。

 

「お前達・・・すまない。確信があったのだがな・・・見事に外れて取り乱してしまった。」

 

「とりあえず落ち着いた様で何よりだ。次の目的地を考えなきゃいけないところだろうが、まずは艇に戻ろう。ここに居ないとわかった以上、長居する必要はない。」

 

「そうね・・・いつ帝国兵に見つかるかわからないし、さっさとお暇しましょうか。」

 

「ああ、そうだな。すぐに移動するとしよう。」

 

 落ち着いたアポロに安堵したカタリナとロゼッタが一先ずの行動指針を示す。

 二人の言葉に従うように一行は一度、グランサイファーへと戻るべく王宮内を駆け出した。

 

 

 

「ねぇ、セルグ。」

 

「ん?なんだゼタ・・・」

 

 定期的に顔を出してくれる帝国兵を瞬間で、迎撃していきながら、先頭をひた走るセルグにゼタから声が掛かる。

 この状況で無駄話は無いだろうと、怪訝な表情と共にゼタへの方へセルグは振り返った。

 

「アンタ、アマルティアで襲撃受けたって言ってたよね?襲撃してきたやつって誰だった?」

 

「なんで急にそんな事?知らない方がいいと思うぞ。知れば組織に戻った時自然と振舞えなくなるだろう。お前は隠し事が下手そうだからな。」

 

 唐突で脈絡もない話題にセルグは、疑問を隠しきれなかった。今必要な話でもなければ、緊張の途にある今を和ますような話題でもない。

 

「ぐっ、うっさいわねーその位大丈夫よ!むしろアンタと一緒に居るってことを気取られないためにも知って置いた方がいいと思ったの。」

 

 思わず茶化しながら返してしまったセルグに、ゼタはムッとした顔を見せながらも真剣な表情で理由を明かした。

 

「そうか・・・余り伝えたくないんだがな。来たのは3人。バザラガとユーステス。あとクロードって奴だった。」

 

「ッ!?アンタ、それって・・・」

 

 サラッと告げられた名前に動揺するゼタ。

 それもそのはず、バザラガとユーステスはゼタにとって現在進行形で、組織の任務に於いてチームを組んでいる面子だ。

 さらに、まだセルグの事を恨んでいたゼタが組織で聞き及んでいた、セルグとっての数少ない理解者だと目されていた人物でもあった。

 

「知ってたのか・・・そうだよ、かつての師と友だ。組織で数少ない、オレが心を開いた仲間達だ。」

 

「そんなのって・・・」

 

 本人の意思か、組織からの命令か。経緯は知りえないが、あまりにも悲しい話だとゼタは俯く。数少ない理解者であった友が己を始末するために目の前に現れるなどと・・・

 

「なんでお前が辛そうな顔するんだよ・・・安心しろ。確かに辛いが、あの事件以降組織の人間とはもうともに歩むことはないと、昔の様には戻れないと諦めていたから思いの他ショックは小さい。

 それに今は、アイツ等もお前もいる。新たにできた大切な仲間が。今のオレには過去の繋がりよりも大切なものがあるから・・・大丈夫だ。」

 

 そうゼタに語ったセルグの表情に悲しみは無かった。話は終わりだと言わんばかりに前を向き少し足を早めるセルグの後姿をゼタは見つめる。

 だが、ゼタはセルグの表情と声の裏に確かな想いを聞いていた。

 

「どっちが隠し事下手なのよ。そんなに泣いてる癖に・・・」

 

 小さく呟かれた言葉は誰にも聞こえることなく一行の足音にかき消された。

 

 

 

 王宮を無事脱出したところで走っていた一行は一度速度を緩める。歩きながら艇へと向かいながら話を進めるようだ。

 

「さて、どうするか・・・奴がここにいないとなると私にもどこに行ったかは見当がつかない・・・」

 

「歴史への反逆・・・エルステ王国の再建。ここら辺がヒントだが、何をしようとしているかオレ達では見当がつかない。せめてどうやってそれを成すのか手段でもわかれば良いんだが・・・」

 

「それがわかれば苦労はしないさ。密偵を送り込んではみたものの具体的な事は掴めなかった。奴は決して無能ではない。むしろ政治や、謀略にかけては奴ほど厄介な人物はいないと思える。今から探っても簡単に掴ませてはくれないだろう・・・」

 

「なぁなぁ、ちょっと聞きたいんだけどよぉ・・・」

 

 真剣な雰囲気でフリーシアの行先を考えるアポロへとビィが声を掛ける。落ち着きはしたが以前ピリピリとした空気が消えてないアポロへと声を掛けるビィにルリアが内心「ビィさん凄いです!」とか考えていたのは内緒だ。

 

「なんだトカゲ、今はお前に構っている暇は」

 

「オイラはトカゲじゃねえ!!ってそうじゃなくて、何で黒騎士はここに宰相がいると思ってたんだ?ここに来たって何かできるわけじゃねえんだろ?セルグが言うように歴史の反逆とか王国の再建が目的だってんなら普通に何かするとは思えねえんだけどよぉ・・・この島に特別な星晶獣とかいんのか?」

 

 聞く価値が無いとばかりに思案を続けようとしたアポロを、ビィの質問が止めた。だが質問の内容を聞いた瞬間にアポロは呆れと共に言葉を返した。

 

「フン、お前は私の話を聞いていなかったのか?オルキスを人形のように変えた星晶獣。それがいるだろう。そいつがカギになると踏んでいたんだ。とんだ無駄足になってしまったが・・・」

 

「だったらよぉ、特殊な星晶獣の情報でも集めればなんか見えてきたりは」

 

「それでしたらアマルティアに保管してある蔵書の中にもしかしたら何か載ってるかもしれませんね。」

 

 ビィの言葉を遮り、誰かが声を上げた。

 

「なるほど、秩序の騎空団ならいろんな書物を保管してそうだし、あり得るな。」

 

 その声に同意するようにカタリナが声を上げる。

 全空域に団員がいる秩序の騎空団。その拠点になら様々な資料が保管されてるであろう。フリーシアの手段やオルキスを元に戻せるような星晶獣の話も見つかるかもしれない。

 行先がにわかに見え始めた一行がすぐさま動き出そうとしたところでまた誰かが声を上げる。

 

「なんにせよ貴方達には一度アマルティアに戻っていただく必要がありますが・・・」

 

「え・・・?」

 

 聞えるのは彼らの誰でもない者の声だった・・・・

 

 

 

 

「リーシャさん!?」

 

 想定外の人物の登場に一行の声が重なる。

 

「数日振りですね皆さん。随分慌てているようですが、如何なさいましたか?」

 

「リーシャ殿・・・どうしてここに?」

 

 アマルティアで見た時と変わらない落ち着いた雰囲気のまま、慌てて動き出そうとした一行を見咎めるようにリーシャが問いかけるも、それに応えるどころではない一行を代表してカタリナが聞き返す。

 

「それについてはモニカさんも交えてお話しましょう。まずは皆さんここを出て艇へ。騎空艇でモニカさんも待っています。」

 

 あえてここでは話さないリーシャの答えに一行は戸惑う。何か隠す必要があるのか?意図が読めないものの秩序の騎空団であるリーシャに疑いを持つ者はほとんどおらず一先ずは従おうと歩き出そうとするが、唯一反論する者が居た。

 

「待て小娘、今の我々には時間が無い。貴様に構ってる暇など」

 

「黒騎士、貴方が何をそんなに焦っているのかわかりませんが、そんなことでは事を仕損じますよ。

 それに我々は貴方が欲している情報を持っています。聞いてみるだけの価値はあると思いますが。」

 

だが、リーシャはアポロの言葉を遮り、有無を言わさぬように交渉のカードを切った。

 

「・・・ちっ、本当に強かになった。冷静に情報をちらつかせて主導権を握るとは。あの小さい奴の方がよっぽどやりやすい。」

 

「それは光栄ですね。七曜の騎士に認められるとは嬉しい限りです。私はまた一歩、父に近づけました。それでは参りましょう。」

 

「・・・ちっ、本当にやりづらい。」

 

 もしかしたら有益な情報が手に入るかもしれない。具体的な情報は与えずにそう思わせたリーシャの弁にアポロはしてやられたと苦々しく吐き捨てる。

 以前の彼女であればあっさりと情報を抜かれて終わっていたかもしれない。確かな成長を感じ取ったアポロはリーシャの評価を密かに上げる。

 

「黒騎士さん、全部セルグさんのせいですよ。リーシャさんが変われたのはセルグさんのおかげだって、私聞きましたから。きっと仲良く色んな事を教え込んでたに違いありません。」

 

「ジ、ジータ!?急に何を言い出すんだ。オレは別に何もしてないぞ・・・というかなんでそんな怒ってるんだ?」

 

「別に~怒ってなんかいないですよ。ただ、私たちが心配でたまらなかった時にセルグさんは秩序の騎空団の方々と、とぉっても仲良しだったってことを教えてあげただけですう~。」

 

 ギロリ。そんな効果音が聞こえそうな位に鋭く視線でアポロがセルグへと振り返る。

 

「よくも面倒を増やしてくれたな・・・本当に使えない男だ。」

 

 アマルティアでジータの中に根付いたセルグへの怒りは思いのほか深いようである。蒸し返された己に向けられた怒りの前にセルグはまたも縮こまる事しかできなかった。

 

「グラン・・・」

 

 視線だけで人を殺せそうなアポロのジト目と、居心地が悪くなるようなジータのジト目が向けられたセルグはタジタジといった様子で唯一頼りに出来そうな人物へと声を掛けるが。

 

「まぁ、仕方ないんじゃない?」

 

 頼みの綱である彼女の双子の兄は苦笑と共に諦めろと告げてくる。

 

「はぁ・・・どうしてこうなった?」

 

 見るからに落ち込むセルグだが、彼の受難は続く。

 

「それはそうとセルグさん。モニカさんが大層御立腹でしたよ。約束を放り出して逃げたって・・・おかげで私までとばっちり受けるし・・・何なんですかあの過酷な訓練・・・信じられない・・・団員達は泣いて喜んでるし・・・意味わかんない。」

 

 リーシャがモニカから受けた八つ当たりにも似た何かを思い出しぼやき始めた。先程までの落ち着いた船団長としての顔はなりを潜め、以前のようにオロオロと困ったような様子が垣間見えた。

 

「あ、ああ~そのなんだ。悪かったな、なし崩し的に出てきちまったから・・・別に約束を守らない気じゃなかったんだ。落ち着いたら戻るつもりだったし。」

 

 リーシャから告げられた言葉にセルグも目が泳ぎ始める。完璧に頭から抜けていたのか言い訳がましく体の良い言葉が出てくるものの、秩序の騎空団の船団長にはそんな言い訳が通じるわけもない。

 

「そんな言い訳は別にいいですからちゃんと宥めて下さいね。じゃないと私に被害が来るんですから・・・最近のモニカさんはどうにも子供っぽいと言うか・・・なんというか・・・と、とにかく、何とかしてください!」

 

 リーシャの雰囲気からモニカが何をしたのかを察したセルグに否はない。彼の返答は、”はい”か”Yes”かの2択に絞られることとなった。

 

「お、おう。わかった。できる限りの事しよう。」

 

「本当にお願いしますよ。それではみなさん行きましょう。」

 

 気を取り直すように皆へと呼びかけてリーシャが歩き出した。

 

 

 

 騎空艇への道が半ばに差し掛かる頃。幸いにもほとんど魔物とは出くわすことなくここまで順調に歩みを進めてきた一行の中で一人ソワソワと落ち着かない人物がいた。

 今回はルリアではない。

 

「あ、あのゴメン!ちょっと昨日のおばあちゃんの家に忘れ物しちゃったみたいでさ、あはは・・・取ってくるから皆は先に戻っててくれる?」

 

 タイミングを計っていたのか意を決したように、急に大きな声を上げたゼタに全員の視線が突き刺さる。

 

「忘れたって、一体何を忘れたんだゼタ?どうでもいい物ならあとでどこかで買っても・・・」

 

「あーゴメン、大事なものだけどちょっと言えないかな・・・大丈夫だよ、すぐ戻るから。魔物も大した事ないし、心配ないから先に戻ってて!!」

 

「あ、ゼタさん!?」

 

 今は少々急いでいる身である一行。重要なものでもなければ後で買えばいいとグランが提案しようとするがそれを遮るようにゼタは言いたいことだけ言ってあっという間に駆けだしていく。

 誰が見ても怪しい。挙動不審過ぎるゼタの姿に、疑問符ではなく疑惑の眼差しをグラン達は向けた。

 

「なんか様子がおかしい感じだったな・・・?グラン、ジータ。良いのか、一人で行かせて?魔物は大した事無いとは言え安全ってわけじゃねえだろうし。」

 

「そうですね、少しだけ心配です・・・グラン、私が」

 

「いや、オレが行こう。ヴェリウスも連れて行けば合流も楽になるだろうし。悪いがリーシャ、モニカの件は後回しだ。やることができたんでな。」

 

 付いていこうしたジータの声を遮りセルグが前に出た。その表情は少しだけ固い。ゼタの様子に何かを察しているようである。

 

「それは構いませんが・・・逃げないでくださいね。」

 

 リーシャが釘を刺すように告げる言葉に苦笑しながらセルグは答える。

 

「わかってるよ・・・これ以上アイツを怒らせたくないしな。グラン、すぐ戻るから先に行っててくれ。」

 

「わかった・・・大丈夫だとは思うけど気を付けて。」

 

「ああ、ヴェリウス。行くぞ!」

 

 ヴェリウスと共に、セルグも足早に駆けて行った。

 

「なんかセルグも・・・様子がおかしかった気がしない?」

 

「イオちゃんも感じましたか?私もです。なんだか少しだけ・・・怒ってました。」

 

 ゼタの挙動不審もそうだが、追いかけていったセルグの雰囲気もどこかさっきまでの様子とは違ったものをイオとルリアが感じ取っていた。

 

「はぁ、次から次へと心配事を・・・グラン、ジータ。私とヴィーラで二人を追いかけようか?」

 

 カタリナの提案にグランは考え込む。様子のおかしかったゼタと真剣な表情をしていたセルグにグランも思うところはあった。

 少しの思案のあとグランはゆっくりと口を開く。

 

「・・・いや、帝国からの追跡が来ないとも限らないし、今重要なのはリーシャさん達から必要な情報を聞くことだ。早く次の目的地を見つけ出さなきゃいけない。ヴェリウスが居れば緊急の連絡もできるだろうし、セルグならほとんどの危険には対処できるだろう。僕たちは先の事を考えておこう。

 リーシャさん行きましょう。」

 

「はい、それでは皆さん行きますよ。」

 

 グランの結論に異を唱える者はおらず、一行はそのまま艇へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか。

ラビ島編は佳境に入ってきました。後2話ってところですかね。

今回はキリがいいところで一度切っちゃっているので短いお話となってしまいました。

次のプロットもほぼほぼできてるので時間はそれほどかからなそうですね。(長くなってしまったので途中で切った次第です。)

それでは、お楽しみいただければ幸いです。

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