granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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久しぶりの連日投稿!

でも説明回となっており、グランジータの影が薄く以前の砂神イベントのようになってきているかもしれません。(作者が成長していない証拠ですね

それではお楽しみください。


メインシナリオ 第16幕

空域 ファータ・グランデ ラビ島

 

 

 老婆の窮地を救った一行は老婆の案内で洞窟のように岩をくり抜かれて作られたような街並みを歩いていた。

 

「さぁさぁ、こちらですよ。」

 

「い、いや・・だから私達にはこれから予定が・・・」

 

「まぁそう言わずに!アポロちゃん達に命を救われて何もお礼しないなんてできませんよぉ。それに・・・申し訳ないけど家までの道でまた魔物が出たらと思うと・・・」

 

 助けられたお礼をしたい。だが帰路の途上ですら危険が溢れているこの街に不安をみせる老婆を見せられては、先を急ごうとするカタリナも強くは言えないでいた。

 

「ううん・・・それもそうですね。グラン、ジータ!送ってあげましょう。」

 

「そうだな、この街じゃいつ襲われるかわかったもんじゃない。ここで無理に別れても気になってしまうだろうし安全な家まで送っていこうか。」

 

「うん、そうだね!」

 

 そんなカタリナを見て、ルリアの言葉に答えるグランとジータは老婆を家まで送り届けることにした。

 

「ふふ、ありがとうね、お嬢ちゃんたちも。」

 

「な、なぁこれは何かの罠って可能性は・・・?」

 

 トントン拍子に話が進み老婆の家へと向かうことになった一行の現状にラカムは僅かな疑問を呈した。だが可能性を示唆するラカムの言葉を今度はセルグが否定する。

 

「それはないだろう。先ほどの魔物に襲われている状況は間一髪だったし。周囲に人の気配もない。油断させて誰かがオレ達を殺すにしたってそれができそうな存在は確認できない。ヴェリウスにも探らせたが特に不審な人物は見当たらないとのことだ。最悪食事に毒物という可能性もあるが・・・」

 

「それこそないな。あのご婦人は私も知っている。そういうことはできない優しい方だ。それに私は”黒騎士”として過ごしている間鎧を外したことがない。今の私をみて帝国の黒騎士だと気づき何かを仕掛けられものは多くはないさ。ここに来ていることも予定されていたことではないしな。情報を流して準備するのは不可能だろう。」

 

「それなら・・いいんだが。」

 

 セルグの言葉にアポロも補足を加えて老婆の歓待は罠ではないと述べた。老婆のことを知るアポロが否定したことからラカムも納得をみせる。

 

「黒騎士さん・・・そんなことより先ほどの話。詳しくお聞かせ願えますか?あの人形のような幼い少女であるオルキスちゃんが10年来のあなたの無二の親友であるとはどういうことなのか・・・」

 

 先程から皆が思っていた疑問。老婆によってもたらされた新たな真実について、ヴィーラはアポロへと問いかける。

 アポロとオルキスに関する真実はこれから共に戦っていく上で知っておかなければならないことだと、仲間の誰もが感じていた。

 

「案ずるな。お前たちには全てを話す。だが今はその時ではない。今は話を合わせておけ。下手に騒いだほうが面倒なのでな。」

 

「さぁさぁ、こちらですよ!家に着いたらご馳走を振る舞いますからねぇ。」

 

 老婆には聞こえないようにアポロはその場でお茶を濁すだけにとどまる。その視線は笑顔で一行を案内する老婆に注がれたままであった。

 

 

 しばらく無言で歩いていた一行。急に何かを考える素振りを見せてルリアがソワソワする。

 

「あ、あの!おばあちゃん?」

 

「うん?なんだい?」

 

「あの・・・エルステ王国の王女様って。オルキス様ってどんな子だったんですか?」

 

 落ち着かなかったのは疑問に思ったことを解消したくて仕方なかったのだろう。無言の空気を壊すように意を決してルリアは老婆へと問いかける。

 

「ん?そうだねぇ・・・そりゃあもう、元気で明るい良い子だったさねぇ。あの頃はまだ、ヴィオラ女王が国を納めていてね。その一人娘だったんだけど、気取らない良い子で女王陛下とよく一緒に街を回ったりして・・・街の人たちといつも笑い合っていた。本当に優しい子だよ。」

 

 老婆はかつて見た光景へ想いを馳せる。王国が繁栄していた懐かしき時を顧みる老婆の記憶にあるオルキスは、この厳しい環境にあっても老婆に穏やかな顔をさせるほど笑顔に溢れる光景だったのだろうか。語る老婆の表情に一行はかつてのオルキスがどんな子だったのかが容易に想像できた。

 

「オルキスちゃんがそんな子だったなんて・・・そ、それじゃアポロニアさんとは?」

 

「ああ!二人は年も近くってそりゃあもう仲良しなものだったよ。アポロちゃん、覚えているかい?お祭りの日に二人でうちの店に来て・・・」

 

「忘れたな・・・」

 

「黒騎士さん!そんなにべもなく・・・」

 

 冷たく返すアポロを避難するようにジータが声を上げるも老婆がそれを抑えた。

 

「ふふ、いいんだよお嬢ちゃん。ともかく二人は姉妹みたいでね。可愛かったものさ。」

 

 今度は目の前に居る厳格そのもののアポロに対しても優しき表情を見せる老婆。オルキスと姉妹のようだったと聞かされ、無邪気に笑うアポロを想像した彼らが驚くのも無理はないだろう。

 

「おいおい・・・こりゃあ一体どーいうことなんだよ?」

 

「わかんないわよ・・・もう私には良くわかんないってことしかわかんないわ。」

 

「明らかに私達には何か重要な情報が欠けているようだ。」

 

「そうだな・・・オルキスちゃんが王女様だったり黒騎士と歳が近いって話だったり何が何だかさっぱりわかんねぇ。これが兵士達が守るこの街の秘密だってぇのか?」

 

 ラカム、イオ、カタリナは次々ともたらされる情報に驚き、考えの整理がつかないようだった。

 

「娘のことだってぇのに俺はこんなにも知らないことがあるだなんて・・・」

 

「今は成り行きを見守りましょう。ここに来て今更隠すことも無いでしょうし、あの子も話す気になったみたいよ。」

 

 オイゲンがまたも自責の念に囚われるように俯くも、ロゼッタが今は余計なことは考えても仕方ないと窘める。

 老婆の語りはまだ続いていた。

 

「二人は本当に仲が良くてね。でもそれがある時に起きた出来事で全て変わってしまった。国が変わって大事なものをたくさん失って。だからアポロちゃんもこの国を離れたんだろう?」

 

「そう・・・だな。私にとってもあれは大きな切っ掛けだ。しかし私は失ったままでいるつもりはない。失った全てを諦めはしない・・・全てを取り戻す。有るべき姿へと戻すために私は戻って来たんだ!」

 

 老婆の言葉にアポロはまたも決意の瞳を見せる。再燃する意志の炎が瞳の中に燃え上がり、それは覇気となって溢れるようだった。

 

「黒騎士、念を押すようだが必ず全てを説明してもらうぞ。」

 

「分かっている。遅かれ早かれこうなることは覚悟していた。貴様らには全てを知る権利があり義務があるだろう。だが・・・これは私の我儘でしかないが今は話を合わせてほしい。真実を・・・全ての人間に伝えるわけにはいかんのだ。」

 

 それに気圧されることなくカタリナは情報の開示を求めた。アポロもそれを無下にすることはなく、ちゃんと話すことを約束するも今はその時ではないと口を噤む。 

 

「黒騎士・・・」

 

「別に今更疑いはしないさ。カタリナ、大人しく待とう。黒騎士の言うとおり情報はむやみに広げるべきではない。オレたちと関わったことがわかれば、あの老婆が危険にさらされることも考えられる。」

 

 アポロの懸念を代弁するようにセルグはカタリナを抑えた。セルグの言うことに一旦の理解をしたカタリナもそれ以上詰め寄ることはせずにおとなしく待つことにする。

 沈黙が再び訪れた中で老婆だけは嬉しそうに歩いていた。

 

「さぁさ、もうすぐですよ!もうちょっとだけ、頑張ってちょうだいね。」

 

 老婆の弾んだ声に導かれ、一行はその日、老婆の家で歓待を受けるのこととなる。

 

 

 

 

 その夜、老婆からの歓待を受けたグラン達一行は、老婆の寝静まったあとに一室へと集まる。

 

「それじゃあ、話してくれないか。黒騎士、貴方が知る真実を。」

 

 開口一番、グランが代表としてアポロへと促した。

 その場に集まった全員を見回しアポロは静かに口を開く。

 

「ああ、わかっている。さて、どこから話したものか。」

 

 話す内容がまとまっていなかったのか。それとも話すのが謀られるのか。逡巡するアポロは少しだけ時間を置いた。

 部屋に僅かな沈黙が流れるも誰もが耳を澄ませてアポロが語るのを待つ。

 

「まず、私がアウギュステの出身だということは既に知っているようだな。随分幼い頃の話だが・・・そうだ、ちょうどそこの小娘くらいの歳だな。その頃に私の母が亡くなった。」

 

 イオのことをみやりながら静かにアポロは語り始める。彼女が知る真実とその目的について・・・

 

「母が亡くなったとき、その男は島に居なくてな・・・身寄りを失った私はアウギュステの経済特区支援を受けて、特待生としてエルステ王国に渡ったのだ。エルステ王国はこのファータ・グランデ空域でも有数の長い歴史を持つ国だったからな。星の民襲来以前より続く王国は歴史を学ぶには最高の環境だった。といっても所詮は幼い子供。周囲に頼れるものはいなく、心を許せるものもいなかった。いつも一人でただただ学ぶだけの時間を過ごしていたんだ。

 そんな時だ、彼女に出会ったのはな。」

 

 そうして黒騎士は王女オルキスとの出会いを思い出す。

 

「当時の彼女はいやに幼くてな・・・最初は私よりも年下だと思ったくらいだ。しかし・・・それ故に純真で明るく、私に無いものを全て持っていた。歳が同じでもこうも違うのかと驚いたよ・・同時に妬ましくもな。

 だが彼女が驕ることは決してなかった。誰に対しても分け隔てなく優しかった。よく笑い、よくはしゃぎ、よく食べる。子供というものを体現するような、隣にいるだけで元気になれる。そんな子だった。

 彼女のご両親・・ヴィオラ女王陛下達も私に優しくしてくれた。私は一生をかかっても返しきれないほどの恩をあの親子から受けたよ。オルキスと過ごした年月は間違いなく、私の中で最も幸せな時間だった・・・」

 

 思い出に想いを馳せながら語るアポロはこれまでで初めて、真に優しい笑顔を浮かべていた。

 これまで刺々しく人を寄せ付けない雰囲気を出し続けていたアポロが初めて見せた表情だった。

 

「女王陛下達から受けた恩、彼女達と過ごした時間を、私は決して忘れない。だから彼女を・・オルキスを取り戻すためならいかなる犠牲も払う・・・そう決めたのだ。」

 

 僅かに見せた優しい表情を隠しアポロはまた険しい顔を見せる。再度見せた決意の言葉は先ほどの柔らかな雰囲気に蓋をするように刺々しい雰囲気に覆われていった。

 その日、それ以上アポロが語ることはなかった。

 

 

 

 翌日の朝、目を赤く充血させた一行がいた。一行は歓待をしてくれた老婆に丁寧に挨拶をしてから王宮へと歩き始める。

 

「うう・・昨日の話が気になってよく寝られなかったわ・・・」

 

「私もだよイオちゃん。そういえばゼタさんも部屋にいませんでしたけど・・・眠れなくてお散歩でも?」

 

「うん?あ、ああ。そうね、そんなとこ!さ、いよいよ今日は王宮に乗り込むんでしょう?気合入れていきましょ!」

 

 ごまかすような慌てた様子にジータは怪訝な顔を見せるがゼタは空元気を出しながら歩いていく。

 一行が目指す王宮は目前に迫っているところだった。

 

 

 王宮への僅かな道中でまたもルリアはソワソワし始める。どうやらまた何か聞きたいことでもできたのだろうか。意を決したルリアの質問はアポロへと向けられる。

 

「黒騎士さん・・・昨日黒騎士さんが話してくれたことは全て真実なんですか?」

 

「もちろんだ。オルキスについてはあのご婦人も言っていた通りだ。」

 

「じゃ、じゃあ。一体オルキスちゃんの身に何があったんですか。黒騎士さんと歳が変わらないのに見た目は私と同じくらいの年齢に見えるし。昨日聞いた通りの子ならあんな人形みたいな無表情には・・・」

 

 昨日聞いた話の中ではまだ明かされていない部分についてルリアは問いただすようにアポロへ質問を投げかけた。

 

「そうか・・それをまだ話していなかったか。だが、残念ながら私もあの日、あの場所に居合わせたわけではない。10年前のあの日、オルキスの両親は死に、彼女は人形のようになって歳を取らなくなった。成長を止め心を失った人形のようにな・・・」

 

 表情は変わらないものの声音に僅かに怒りを滲ませるアポロ。何かを後悔し、何かに怒りを向けていた。その想いをグラン達は解することはできなくともその想いの強さは十二分に理解できる声音であった。

 

「何かが・・・あったと言うのだな。10年前のある日に何かが。」

 

「一体何が・・・」

 

「十中八九、星晶獣絡みだろうな。ミスラのように無意識下に働きかけて契約を遵守させるなんて奇特な能力をもっている奴が居るんだ。ヒトの成長を止めたり心を失わせたり、なんてことができるやつがいても不思議じゃないだろう?」

 

 星晶獣に関しては恐らく一番情報を持っているだろうセルグが推測する。

 

「その通りだ。私が駆けつけた時には全て終わっていてな。後になってその場に居合わせていたフリーシアからこのように全てを教えられた。星晶獣によって事は起こったと。結果的には表向き、女王とその夫、即ちオルキスの両親は国外での事故で死亡と報じられ、一人娘のオルキス王女は行方不明となっている。」

 

「そして実際のところは行方不明ではなく今のオルキスちゃんとなって帝国に匿われているというわけね・・・」

 

「そうだ・・・そして私はあの日以来必ずオルキスを元に戻すと誓ったのだ。あとは貴様等も知っての通りだ。フリーシアに裏切られて今に至るというわけだな。」

 

「アポロ・・それがお前の成し遂げねばならないことだったのか・・」

 

 オイゲンは我が子であるアポロの知らされずにいた過去と目的を知り、ただただ驚愕するしかなかった。

 娘のために何かできないか?そんなことを考えようとも、既にアポロは力を持っており自分に何ができるかなど見えてこなかった。心の奥底に一度しまいこんだ自責の念は簡単には消せなそうであった。

 

「ん?けどよぅ、元に戻すったってどうやって元に戻すんだよ?」

 

 ビィがふと気になった点を上げる。

 これまでのアポロの話から、彼女の目的やその経緯は判明してきたが、肝心の方法については全く分かっていないことに気づいた。

 

「案ずるな、方法はある。だがそのためには今のオルキスが・・あの人形が必要なのだ。今の貴様等にその方法を話すことはできない。だが、少なくともあの人形を取り戻すことでは我々の目的は一致している。

 雌雄を決するならば、人形を取り返したあとだ。まずは進むぞ。あの王宮へとな。」

 

 それ以上の問答は不要だとアポロは切って捨て、歩き出す。その背中には明確な拒絶の意思が込められていた。

 一行はその背中を追うように後ろに続く。

 

 

 少しばかりの時間をおいて、グラン達は王宮を目の前にする。

 

「遠目からではわからなかったけど、目の前にすると大きいね。それに何というか何も知らない僕でも歴史を感じる。」

 

「先にも言ったが星の民襲来よりも遥か昔から栄えていた王国だ。長い歴史を持つのは当然であろう。」

 

「言葉では言い表せられない・・・よね。」

 

 グランもジータも目の前に佇む王宮に何か感じいるものがあるようだ。それはほかの仲間達も同様で長い歴史を感じさせる厳かな建物に感嘆を隠しきれない。

 

「ここにオルキスちゃんが・・・」

 

「そのはずだ。どうだルリア何か感じるか?」

 

「いえ、特にはまだ・・・」

 

「貴様等!この王宮に何の用だ!ん?そこの蒼い少女は、手配中の!?」

 

「流石にここには警護の兵士がいるか。悪いが通してもらうぜ、オレ達はこの王宮に用があるんでな!」

 

「時間をかけて増援を呼ばれては面倒だ。手早く済ますぞ!」

 

 王宮へと進もうとする一行を目ざとく見つけた帝国兵士が声を上げるも、数も実力差も大きいこの状況ではどうしようもないだろう。

 数分と持たずに帝国兵士は沈黙させられることとなる。

 

「ふぅ、とりあえず落ち着いたかな・・・?あとは王宮に乗り込んで」

 

 戦闘が終わり一息ついたグラン。だが、張り詰めた声でアポロが警告する。

 

「いや、まだだ・・・来るぞ。構えろ!」

 

 響く機械音。重量を感じさせる足音が一行の前に立ち塞がる。

 

「こ、これは・・・ゴーレムか?」

 

 巨大な機械人形”ゴーレム”が彼らの目の前に立ちふさがっていた。

 

「そうだ、あの兵士連中などただの威嚇に過ぎん。王宮に人が寄らないようにするためのな。本当の守護者はこのゴーレムだ!」

 

「へぇ、おもしろいな・・・かつての栄華の立役者が今でもここを守るか。」

 

 セルグの感心した声が聞こえ一行はセルグへと注目した。ここにゴーレムがいることに一体何の意味があるのか。グラン達は疑問符を浮かべることになった。

 

「なんだ、お前は知っていたのか?」

 

「この国の歴史を多少知っている程度だ。深いことは知らないさ。」

 

「あの女がここの守護を任せるくらいだ。このゴーレムは間違いなく強い。油断するなよ!」

 

 アポロの声に戦闘態勢に入った一行は、油断することなくゴーレムと相対する。

 ゼタの炎が唸り、セルグの剣閃が閃く。イオの氷の魔法が動きを止め、ラカムとオイゲンは狙いすました攻撃で敵の戦闘力を奪っていく。

 

「ジータ、止めだ!」

 

「了解、行きます!」

 

 ”オーガ”スタイルの、グランが手に装備した”マナウィダンガントレット”に水が集う。圧縮された高密度の水が拳撃と共に爆ぜる。

 同時にベレー帽をかぶった身のこなしの軽そうな服装。”ホークアイ”となっているジータは、その手に持つ銃”裁きの鳴雷”へと魔力を込めた。

 

「フルクトゥアト・マーテル!/ヴェンディダード・レビ!」

 

 圧倒的威力を孕んだ二人の奥義はボロボロとなったゴーレムを破壊する。沈黙したゴーレムを見やってジータは口を開いた。

 

「けど、どうして兵士じゃなくてわざわざゴーレムを置いていたのでしょうか?」

 

 戦闘後で口調が少し定まっていないジータが疑問を呈した。それにアポロは間を置かずに答えていく。

 

「ふん、簡単な話だ。エルステ王宮の守りは遥か昔からゴーレムが担うと決まっている。

 ゴーレムという存在はエルステの民にとって誇りの象徴だ。星の民襲来によって星晶獣が現れるまで、この国はゴーレム製造によって栄えていた。当時では最大の戦力であるゴーレムの製法を持つこの国は栄華を極めた。星晶獣に最強の座を明け渡すまではな・・・千年以上も前のエルステの古い話だ。」

 

「セルグは知ってそうな感じだったね?」

 

「ん?まぁな・・・一応はここにも訪れたことはある。任務地の情報はある程度事前に調べておくのが鉄則だ。そうだろう、ゼタ?」

 

「う・・そ、そうだね。そのくらいはしとくもんよね。あ、あはは・・・」

 

同意を求めたら微妙な顔をされてしまったセルグは疑惑の眼差しをゼタへと向けた。

 

「お前・・・さては行き当たりばったりだっただろう?」

 

「そ、そんなことないわよ!アタシだって危険な任務地かどうかぐらいは調べるし・・・」

 

「つまり、ほとんど下調べはしていなかったってことか・・・呆れた。ターゲットを探す際にも現地の情報は必要不可欠だ。少なくとも訓練ではそう教わってるはずだぞ。」

 

「う、うっさいわね!情報収集とか嫌いなの!まどろっこしくてやってられないわよ。」

 

「はぁ、アイリスとお前がなんで気の合う親友となれたのか不思議で仕方ない。アイツはそこらへん怠らなかった。」

 

「・・・別に。性格が似通ってるからって友達になれるわけじゃないじゃない・・・別にいいでしょ、そのくらい。あの子と比べたりしないでよ・・・」

 

 シュンとするゼタの表情にセルグは僅かに罪悪感を感じる。何か心の琴線に触れる部分があったのだろうか。別に比べる気はなかったが比較対象に出したのは確かであったと思い、セルグもすぐに謝罪の言葉を口にした。

 

「そうだな・・・悪かった。別に比べてどうのってわけじゃなかったんだ・・・すまない。」

 

「別に良いわよ。謝らなくても・・・私だって悪い癖だっていうのは自覚してるし・・・」

 

 素直に謝罪するセルグにゼタも気にしていないと口にするが二人の間には少しだけ気まずい空気が流れる。

 

「そうか。さて道は開けたんだ。乗り込もうか。」

 

「この先にはあの女もいるはずだ。気を抜くんじゃないぞ。」

 

「わかってます。行きましょう、皆さん!」

 

 一行はとうとう王宮へと乗り込んだ。

 その先に待つ真実と希望を求めて・・・

 

 

 

 




如何でしたでしょうか。

ラビ島編。後1,2話はこのような感じになりそうです。会話だらけの文章になりがちですね。
何度か読み返して修正を逐一加えていくことになりそうです。

それでは。お楽しみいただけたら幸いです。

完全捏造、アポロとオルキスの過去編とかすごく書きたくなってきた

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