granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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次の目的地への補足回と言ったところです。

現在ガロンゾ編の添削中。
見返すたびになんだか納得いかない部分が見つかります。
成長した自分に見えてくるものがあるのか、見直すたびにコロコロ感性が変わっているのか
後者だとまずい(^^;;


それではお楽しみ下さい。





幕間 現状把握とお仕置きと

 夜の空の世界を騎空艇グランサイファーが翔ぶ。

 アマルティア島を脱出した一行は、グランサイファーの甲板でひとまず訪れた静寂に長かった一日の疲れを癒しながら、お互いの無事を確かめ合っていた。

 

 「はぁ・・・長い一日だったなぁ~アマルティアに着いたかと思えば、帝国が侵入してきて、撃退してセルグと再会したかと思ったらまた帝国が攻めてきて。」

 

 「うん・・・今日は戦ってばっかりだったよね。おかげで強くなれた気はするけど。一伐槍も使いこなせたし・・・でも、疲れた~。」

 

 グランとジータが手足を伸ばして座り込むと円を描くように仲間たちもその場に座り込む。

全員が無事なことに皆は柔らかな雰囲気で笑い合うが、流石にその表情には疲労が見え隠れしていた。無理もない、着いたかと思えば激闘に次ぐ激闘でその日にそのまま艇で脱出してきたのだ。疲れが溜まらないわけが無かった。

 

 「私も戦ってるわけでもないのに疲れました・・・」

 

 「オイラもなんだか疲れちまったぜぃ・・・」

 

 ルリアとビィも体を投げ出し今にも眠りにつきそうな様子を見せる。

だが皆が疲労を露わにしている中で一人だけ元気な者が存在していた。

 

「おい、いつまでそうしているつもりだ。早く進路を決めるぞ。」

 

一行のだらけた姿に不機嫌さを隠そうともせずアポロが口を開いた。そんなアポロの様子にセルグが呆れた様子で反論する。

 

「最後にちょっと戦っただけの癖して、一人だけいい気なもんだ全く・・・少しは皆を労ってやれよ。」

 

「何か言ったか?大きな口を叩いておいてあっさりと抜かれてきた使えない男が・・・」

 

「なっ!?この・・・言ってくれるじゃねえか。いい年して反抗期な七曜の騎士さんよ!」

 

「・・・貴様。牢屋の時といい。どうやら死にたいらしいな。」

 

「ふん、上等だ。やってみな。返り討ちにしてやる。」

 

アポロに反論したセルグの言葉がきっかけで何故か一触即発な雰囲気にまで発展する二人。

だがそんな二人の雰囲気を気にせずにゼタが割って入る。セルグの頭を槍で小突いて服を掴んで後ろへ引っ張った。

 

「も~やめなさいよセルグ。疲れてるんだから余計な問題起こさないで・・・」

 

ゼタが窘めてアポロとにらみ合うセルグを引き離す。引き離されたセルグは若干納得のいかない顔を浮かべたが大人しく引き下がった。

あっさりと場を収めたゼタに仲間たちから驚きの視線が注がれるがゼタはそれに気づかず黒騎士へと向き直ると口を開いた。

 

「黒騎士さん、ごめんね。多分セルグは、オイゲンを敵視する貴方が気に食わないだけなの。アイツ、本当に言いたいことを言わないで回りくどい気遣いばっかりするのよ。本当は黒騎士さんとオイゲンが仲良くして欲しいって思ってるだけだから気にしないで・・・」

 

ゼタはセルグの想いを読み解きアポロへと誤解が生じないように説明をしていた。

そんなゼタの言葉にセルグがまた反論の口を開いた。

 

「おい、ゼタ。余計な事は言うな。別に俺は反抗期士なそいつがオイゲンと仲良くなろうが知ったこっちゃ」

 

「はいはい、強がりはいいからアンタは後ろのジータに怒られてなさい。」

 

「え、は?なんだって・・・」

 

ゼタの言葉に後ろを振り返ったセルグが見たものはこの世のものとは思えない怒りの表情を見せて立っていたジータだった。

 

「ふふ・・・セルグさん。ちょぉっとお話があります。できればみなさんも混じえてお話をしたいのでこちらの輪の中心に来てくれませんか?」

 

ジータの言葉に緊張を解いていた皆も何かを思い出したように一斉にセルグを睨みつける。

思い当たる節がすぐに脳裏によぎったセルグはその瞬間に己の軽率な行動を呪った。

 グランサイファーにセルグを責めるジータの怒声が響き渡ることになる。

 

 

「貴方は!!私たちが!!どれほど心配したのか!!わかって!!いるのですか!!」

 

一語一語強くセルグに言葉を浴びせるジータ。その怒りの大きさは彼女の不安の裏返しであろう。

魔晶兵士に剣を叩きつけられた瞬間に、二度目のセルグの死を想像してしまった仲間たちの怒りは落ち着いた状況となった今、一斉にセルグに向けられる。

 

「手枷を壊すだけなら他にもやりようはあるだろ。ていうか壊す必要ないと思うし。普通に外してもらえばいいだけじゃん。」

 

「本当にセルグさんが死んだかと心配しました。もうあんなことは止めてください・・・」

 

「今度あんなことしたら噛みつくからな!!」

 

「悪ぃなセルグ。流石に今回は同情しきれねえよ。俺もこっち側だ。きっちり怒られな。」

 

「君は余りにも皆に心配をかけすぎだな。後で私が騎士としての心構えというものを懇切丁寧にみっちりと座学で叩き込んでやろう。なぁに半日ほどで終わるし、その間は眠らない様椅子に縛り付けて叩き起こしてやるから安心しろ。」

 

「フフフ、お姉さま。このような愚か者には騎士のなんたるかではなく、まずは己の立場から教え込ませなければいけません。己の立ち位置がどこなのか、私と一緒に調教から始めましょう。」

 

「セルグ・・・お前の気遣いはありがてぇが、人様の家庭事情を気にする前にまずお前は自分の事をよく省みるんだな。」

 

「私の魔法で少し、頭冷やそうか・・・・」

 

「あらあら、皆の怒りにお姉さん流石に怖くなってきちゃうわぁ。まぁ仕方ないわね。きっちり怒られなさい・・・」

 

仲間からの怒りに徐々に縮こまりながらセルグは申し訳なさそうに言葉を受け止める。全ては己を心配するが故の言葉に流石のセルグも今回ばかりは反省をしているようであった。

大の大人が叱られた子供の様にごめんなさいと呟きながら反省する様は何とも言えないシュールな光景だったと、後に元エルステ帝国最高顧問は語った・・・

 

こうしてこの夜は、セルグのお仕置きだけで時間が過ぎていった。

仲間達は次々にセルグを責めるだけ責めて、スッキリとした面持ちで疲れた体を癒すため就寝していく。

ジータ達の余りの怒り振りにアポロも今は何も言わない方が良いと判断しグランサイファーの一室で休みを取った。

 アマルティアの長い一日が終わり、セルグの終わりの見えない長い夜が幕を開けた・・・

 

 

 

 眩しく太陽が照らす朝を迎えたグランサイファーの甲板で死んだような目をしている男。昨晩心身ともに擦り減らし、ぐったりとしているセルグの姿がまるでみえていないかのように仲間達はこれからの方針をアポロと話し合っていた。

 

 「まずは確認したい。黒騎士、貴方と敵対しルリアとオルキスを狙っている人は誰だ?」

 

グランがアポロへと問いかける。アポロを秩序の騎空団へと売り、まんまとアポロからオルキスを奪った今回の騒動の黒幕が誰なのか。

 

「奴はこれまで私と手を組んでいた。無論、あの人形を狙っていることは明かしてこなかったが・・・少し考えればわかるだろう?私以外の誰がエルステ帝国軍に指示を出せる?」

 

「それは当然・・・エルステ帝国のトップ。皇帝さんなんじゃないの?」

 

「その認識は間違っちゃいない。その皇帝がいるという前提があればな・・・」

 

ロゼッタの問いに答えたアポロの言葉は仲間達に疑問符を浮かべた。帝国と名乗るエルステに皇帝がいないことなどあるわけがない。疑問の消えない仲間達は次のアポロの言葉を待った。

 

「私ですら、その皇帝様を見たことがないんだ。隠れて命令を下している気配もない。つまり現在のエルステ帝国の実質のトップは宰相のフリーシアということだ。」

 

 ガロンゾで一行が遭遇したエルステ帝国の宰相フリーシアが黒幕だと述べるアポロの言葉は一行に驚愕の顔をつくらせた。

 

「そんな・・・それじゃあの人がルリアとオルキスを狙う黒幕だって言うの?」

 

「ほう・・・もう奴とは会っていたのか。いけ好かない女だったろう?」

 

 小さく笑みを見せながらイオに返すアポロの言葉には、フリーシアを決して快くは思っていない彼女の心情が見え隠れしていた。

 

「あの人の傍にオルキスちゃんがいました。悲しそうな顔をしたオルキスちゃんが・・・」

 

「あの女が私を捕縛させたのには、これまでの帝国の悪事を全て被せ処刑する以外に、私を人形と引き離す目的があったのだろうな・・・まんまとしてやられたわけだ。」

 

ガロンゾでの一幕を思い出したルリアの言葉に悲しみが乗る。ルリアの声に反応を見せなかったオルキスの様子は正に人形と呼ぶにふさわしい悲しい姿だった。

ルリアの言葉の中にオルキスの所在を知ったアポロもフリーシアの思惑通りに事が進んでいることに苦渋の顔を見せる。

 

「バルツでお前たちに警告したとおり、奴は人形とルリアを自らの目的のために利用しようとしている。人形を手に入れた今、奴はルリアを手に入れるために手段を選ばず手を出してくるだろう・・・今回の魔晶兵士にしたってそうだ。魔晶も魔晶の粉も全てはあの女の計画で動いていたものだからな。」

 

 更に一行に告げられるのは、アポロの罪状として挙げられていた魔晶についての事実。

 フリーシアによって流通していた魔晶にまつわる罪状は全てアポロへと着せられていた。全てはアポロを誅殺し、自らの望みを叶えるためにフリーシアが仕立てたシナリオだったのだ。

 アポロは再度グラン達の意思を確かめるように一行を見回す。

 

「猶予はあまりないぞお前達。人形を取り返すためにも力を貸してもらう。」

 

アポロの言葉に力強く頷くグラン達。やることは見えてきた。そこに一層の力をこめて注力しようと誓う。

 

「大体の事情は分かってきた。ルリアも黒騎士もオルキスって子を助けたくて手を組んだって所か?それにしてもお前たち。話を進めるのは良いけど、先にオレにも事情を説明してくれよな・・・昨日だって追いついたと思ったら出航だったから、なんで黒騎士の手枷が外れてるのかとか、態々アマルティアを脱出する必要あったのかとか。結局わからずじまいで、オレだけ置いてけぼりじゃねえか。」

 

いつの間にか復活していたセルグが話に入ってくる。若干拗ねてるような姿を見せるセルグに仲間達は小さく笑うも、心優しき我らがジータ団長がセルグに丁寧に経緯を説明し始める。

ジータからこれまでの経緯を聞いたセルグは改めて少し思案した後改めて口を開いた。

 

「・・・黒騎士、フリーシアの狙いって何かわかるか?あるいは奴の計画がどの程度進んでいるか。」

 

「詳しくは私も知らん。というよりは調べてもわからなかったというべきか。奴は巧妙に隠していてな、一つだけはっきりとわかったのはあの女が人形とルリアを犠牲に、何かを成そうとしていることだ・・・現状はルリアがまだここにいることを考えても計画は半ばといったところか・・・」

 

「犠牲って・・・それじゃオルキスちゃんは今!?」

 

「危険な状態にあるかもしれない。そしてそれは私の計画にとっても思わしくない。私なら奴の行きそうな場所がわかる。だから進路を」

 

「まぁ、落ち着けよ。少なくともルリアとオルキスの両方を欲しているなら、現段階でどうこうできるってわけでもないだろうさ。それより黒騎士、もう一つ聞きたい事がある。」

 

 セルグが焦燥に駆られるアポロを止めて真剣な面持ちで問いかける。ガロンゾよりずっと胸にしまいこんでいた不安の種を明かす。

 

 「皆には黙っていたんだがな・・・ガロンゾで帝国の戦艦に連れ去られた時に奴から力を貸せと話を持ちかけられたんだ。」

 

 「な!?セルグそれはどういうことだよ。僕たちは聞いてないぞ!」

 

 「落ち着いてくれグラン。ちゃんと断ってるし、オレにその気は更々ない。別段言う必要が無いと思っただけだ。それでその時、奴の目的を聞いたんだが・・・黒騎士、“歴史への反逆”。この言葉が意味することはなんだ?」

 

 セルグが告げる言葉に仲間達に動揺が走るもセルグはすぐさまそれを制して、アポロへと再度問いかけた。

 アポロがセルグのもたらした言葉の意味を考えて思考を巡らしていく。

少しの時間で考えがまとまったのかアポロは小さく口を開き答えを告げた。

 

 「歴史への反逆・・・か。本当に奴がそう言ったのなら、奴が何をする気なのかはわからないが、奴が何をしたいのかは見えてくるかもしれんな。」

 

「何をしたいか・・・?」

 

 「ああ、手段はわからない。だが、奴は取り戻したいのだろう。エルステ帝国ではなく、エルステ王国をな・・・」

 

 「エルステ・・・王国?」

 

 「ああ、奴の出自に関わる事だ。あの女は本来、エルステ王国に仕える宰相だったのだ。今でこそエルステ帝国の宰相となっているが奴の家系は代々エルステ王国に仕えていた。その過去を取り戻したいのだろう。だからこそ奴の行先は見当がつく。」

 

「へぇ、宰相さんはいったいどこへ?」

 

「ラビ島、旧エルステ王国のあった場所。メフォラシュだ・・・」

 

「メフォラシュ・・・エルステ帝国の正式な領地だったか?なんでまたそんなところに?」

 

「メフォラシュはエルステ王国の首都だったところだ。・・・まぁそのへんは行きながらおいおい話すとしよう。まずは進路をラビ島へ向けろ。」

 

フリーシアの行先に見当のついていたアポロはそれを確信へと変えて行先を告げる。

 

「うぅ・・・なんだか黒騎士に偉そうにされるのはちょっとだけ納得いかねえけど仕方ねえか・・・さっさとラビ島に向かおうぜ。」

 

進路をラビ島へと向けるようアポロが命令するのを聞いてビィが若干嫌な顔をするが我慢して皆へと号令をかけた。

グラン達はさほど気にしていないのか表情に変化を見せずに口を開くとラカムに呼びかける。

 

「行先は決まった。ならあとは動くだけだ、ラカム頼むよ!」

 

「おう、任せとけ。お前たちはもう少し休んでな。それなりに時間は掛かるだろうからよ。」

 

「お願いします、ラカムさん。さぁ、セルグさん。一緒に食事に行きましょう。ローアインさんが待ってますよ・・・セルグさん?」

 

ジータが昨日から何も食べていないはずのセルグを食事に誘うもセルグは思案したまま話を聞いていない素振りを見せていた。

 

「・・・ん?ああ、ジータ。すまない行こうか。そんなに時間は開いてないが、アイツの料理も久々な気がする。楽しみだ・・・黒騎士もどうだ?味は保証するし、これからの事を考えたら食事はしっかり摂っておくべきだと思うぞ。」

 

「ふん、いいだろう。お前とはもう少し話をしておきたいからな。まずは戦力の把握からしたい。付き合ってもらおうか。」

 

「そういうのはグランに頼む。戦闘指揮はグランの役目だからな。」

 

「えぇ、そこで僕に押し付けるの!?」

 

思わぬセルグの無茶振りにグランが慌てた声を上げた。そんなグランに仲間達は笑い合う。

久しぶりにのんびりとできる仲間との会話に顔を綻ばせたセルグは、その胸中で未だ燻り続ける不安の火種から目を逸らし続けるのであった・・・

 

 

 

一行はラビ島へと向かう。

渦巻く陰謀と消える事のない不安を抱えながら、物語は更なる動きを見せてグラン達を巻きこんでいく。

 




如何でしたでしょうか。
そろそろ話の流れが難しくなってきて矛盾点とか出てきそうですね・・・

それでは、楽しんでいただければ幸いです。

次回より物語が動き出すラビ島編。お楽しみに(^^)


追記 twitterフォローしてくれた読者様がいてくれてスゴく嬉しかったです。
名前は明かさない方が多分良いのかな。3名の方がフォローしてくれました、ありがとうございます(^^)
この嬉しさを糧に頑張って良い作品にしていく所存です。

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