granblue fantasy その手が守るもの 作:水玉模様
そして今回はセルグチート化現象もまっしぐらです。(でも実は全然チートっぽくなかったりする)
今回から少し文章の区切り方などを変えてみました。
読みやすさや伝わりやすさ、間の捉え方などが変わって来るかと思われます。
それでは、お楽しみください。
空域 ファータ・グランデ アマルティア島
風が吹き砂塵が舞う。
アマルティア島で対峙するは一人の男と、圧倒的な数の軍隊。
先を行く仲間達の背後を守るため、敵を食い止めることを買って出たセルグと、何としても突破し目的を達成しようとする、ポンメルン率いるエルステ帝国軍の戦いが始まっていた。
先に行った仲間達は別れ際にセルグを心配する表情が見えていた。セルグを襲う帝国の兵士は数知れず。心配するのは無理もないことだった。だが・・・・
「なんだよ!なんだよアレは!?」
「動きが・・・見えない!?」
「ふざけるなよ!あんなのと戦える訳・・・うぁああ!!」
戦いが始まってからわずか数分で、帝国兵士の目の前に広がるのは悪夢のような光景だった。
戦闘開始と同時にセルグへと殺到する兵士たちは全てセルグに近づくことすらできずに切り捨てられていく。見えない剣閃によって放たれた光の斬撃は何をされたかもわからないまま兵士達が倒されていく光景を作り出していた。
セルグは続いて足に力を込める。強靭な脚力によって生み出される初速は、同時に動いた黒い翼によってさらに加速する。その場から弾丸の如く飛び出したセルグはすれ違いざまに呆然としていた兵士達を何人も切り捨てていく。
限界まで己の力を高めたセルグの力は常軌を逸していた。天ノ羽斬が一度振るわれれば一人飛び、一度動けば幾人も崩れ落ちる。普通の兵士には手の出しようがない圧倒的な実力差は、帝国兵士達に恐怖を伝搬させていく。
「落ち着くのですねぇ!攻撃力自体はそこまでではない様です。魔晶部隊で足止めをして、奴が止まったところに遠距離からの攻撃で畳み掛けるのですねぇ!!狙撃、砲撃、投擲、できることをせよ!!」
常軌を逸したセルグの動きに、ポンメルンは落ち着いて対処をする。切り捨てられた兵士も吹き飛ばされた兵士もそこまで強い攻撃を受けているわけではなかった。ならば、耐久力のある魔晶兵士で動きを止め、遠距離からの攻撃で圧倒的な殲滅攻撃をすれば戦えるだろうと考える。
「(流石にこの数での遠距離攻撃は厄介だな、迂闊に止まれば、畳み掛けられる。)」
セルグも状況は理解していた。圧倒的な戦況に見えるがその実、動きを止めればすぐに潰されるだろうと。ギリギリの綱渡りな戦いに胸中では冷や汗を流しながら戦っていた。
「(流石に、強い。このままでは時間を取られすぎる・・・何とかしなくてはいけませんねぇ。いや、今は彼を倒すことが目的ではありませんでした。ふっふっふ、貴方がそう来るならこちらも動き出しましょう。)」
次々と兵士達を屠るセルグは、できるだけ捕まらない様に魔晶兵士を避けて戦っていた。そのセルグの思惑に気づいたポンメルンが小さく嗤う。
「魔晶部隊!!先に行った黒騎士を追うのですねぇ!!こちらは私が引き受けます。なんとしても黒騎士を抹殺するのですねぇ!」
ポンメルンの指示に魔晶兵士で残っていた4体が動き出す。先に行ったグラン達のいる方へとその巨体を走らせ加速していく。
「な!?行かせるわけないだろ!!」
兵士を切り捨てていたセルグが反転、何としても行かせないと飛翔して先回りした。魔晶兵士の前に立ちはだかったセルグは天ノ羽斬に力を注ぐ。
「絶刀招来・・・」
「それこそさせませんねぇ!!」
セルグが奥義で食い止めようとしたところを頭上からポンメルンが飛びかかる。驚異的な跳躍力で頭上を取ったポンメルンは落下の早さも加えて巨大な槍を振り下ろした。
不意を突かれたセルグは奥義を撃つこともできずギリギリで回避をする。
しかし、ポンメルンの攻撃は地面を爆発させんとする勢いで放たれ、その衝撃はセルグを軽く吹き飛ばした。
「今です、行くのですねぇ!!他の者は、動きの止まった奴を畳み掛けよ!!」
「イェッサー!!」
ポンメルンの指示が飛び、帝国兵士は一斉に動き出した。走り出す魔晶兵士と、狙いもつけずとにかく足止めの為にとセルグに放たれた遠距離武器の数々。ポンメルンの攻撃に吹き飛ばされたセルグは命の危機を感じてすぐさま体勢を整えた。
「ヴェリウス!!」
ヴェリウスに呼びかけ融合深度を深めたセルグは、黒い翼で防御を選択。己の身を翼で包み込み、闇のオーラを広げて全てを受け止める体勢に入る。
一点集中して放たれた攻撃はセルグの周囲の地面を削りながらしばらく続いた。一人の人間に放たれるには異常な攻撃だが、セルグを普通の人間とは思えない帝国兵はむしろ攻勢を強めていった。
攻撃が止んで砂塵が風に消えたとき、そこにはもうセルグの姿は無かった・・・跡形も無く消えた敵の姿に帝国兵達は歓喜の声を上げる。
あっけなく終わった戦いにポンメルンは安堵と勝利の余韻に浸る。あとは黒騎士を全軍で追い詰めて抹殺すればいいだけだと笑みを浮かべた。
「やってみれば、あっけないものでしたねぇ。いくら強くとも所詮は一人。数で押せばこうなることは自明の・・・」
「そうだな、普通であればそうだったかもしれないな。」
ポンメルンの耳に頭上から声が聞こえた。聞こえるはずのない声が・・・
見上げるポンメルンの表情は絶望に染まる。
「バカな、そんなバカな!!」
ボロボロの翼を動かしながら、セルグは生きていた。翼は崩れ落ちそうだが体に傷はほとんど見られず、感じられる力に衰えは見えない。ゆっくりと地上に降り立ったセルグは大きく息を吐く。
「ふぅ、さすがに危なかったかもな・・・途中で空中に逃げてなかったら死んでたと思うぜ。一人の人間に向けるには少し過剰な攻撃じゃないか?」
「・・・あれで死んでいない貴方が人間と名乗るのは少々無理があるますねぇ。」
ポンメルンと帝国兵の余りの驚き用におどけて見せるセルグ。そんなセルグにポンメルンは皮肉を混じえて返した。とても生きていられるような攻撃ではなかったはず。セルグの姿が消えたことに跡形もなくなったと考えてもなにも不思議に思わない攻撃であった。それでも彼は生きていたのだ。
目の前の現実はポンメルン以外の帝国兵の戦意を喪失させるには十分だった。
「無理だ・・・あんな化け物に勝てるわけがない・・・」
「大尉!!もはや勝ち目はありません!撤退の指示を!!」
次々に届く部下からの泣き言にポンメルンは彼らを糾弾することはできなかった。自分だって気持ちは同じである。撤退できるのであれば撤退したかった。だが彼にその選択肢はない。そして部下を無下にすることもできなかった・・・決死の覚悟で一つの決断がポンメルンから下される。
「全部隊、これが吾輩からの最後の命令です・・・速やかにこの場を去りなさい。帝国の為に貴方たちがこの場で出来ることはありません。であるなら黒騎士を追うなり、秩序の騎空団を叩きのめすなり、できることをしなさい。判断は各々に任せます。怪我をしているものは邪魔なので撤退しなさい。それが帝国の為です。良いですね?
この者は最後まで吾輩が相手をします。邪魔はしない様、お願いしますねぇ。」
セルグの知らない優しい声音で放たれたポンメルンの言葉に部下の兵士達が動揺する。ともすれば全ての責任を負うから自由に行動しろともとれる言葉だった。
これまで不遜な態度で部下たちを使っていたポンメルンだったが、兵士の間では決して悪い評価はなかった。
彼は悪役に徹し、帝国の悪評は全て己の身で受けることを信条としていた。兵士たちは皆命令で動いているに過ぎないという体にしていたのだ。
相対する敵のいない時、彼は部下を想う優しい上司でしかなかったのである。
そんなポンメルンの言葉と想いを理解した兵士達から否は出ることは無かった。動ける者はセルグの突破を狙い、動けないものは何とか撤退をしようと身構える。
そしてポンメルンは背水の陣の心構えでセルグと相対した。
「大尉殿・・・アンタ、実は部下思いの良い奴だったのか。なんだかこっちが悪い奴みたいじゃねえか。」
「事実でしょう?吾輩にとって貴方は大切な部下を次々と屠る悪い奴ですねぇ。さぁ、最後まで付き合ってもらいますねぇ!!」
セルグの軽口にポンメルンも飄々と返した。だが既に命を捨てる覚悟でいるポンメルンの覇気はこれまでとは比べ物にならない位に高まっている。
セルグの危機感知能力が警鐘を鳴らす。負けることは無いが簡単に倒すことはできない事がポンメルンの雰囲気から察することができた。
「(さすがに、覚悟が違うとガラリと変わるもんだな。特に部下の命を背負ってるとなると、並々ならぬ覚悟だ・・・状況的には時間はあまりかけられない。本当は仕留めておきたかったが、仕方ないか・・・)」
ポンメルンの姿にセルグも一つの決断をする。天ノ羽斬へと力を注ぎ技を放つ準備をした。
「残念だが大尉殿の思惑通りにはならないぞ。既にこっちも約束を破っている身なんでな・・・すぐに終わりにしてやる。」
セルグの言葉と雰囲気に身構える帝国軍。
次の瞬間、セルグはため込んだ力を解放する。放たれた光の斬撃はポンメルンへと向かい、その足元へと着弾した。
「な!?しまったぁ!!」
足元で起きる爆発に情けない声を挙げながらポンメルンが宙を舞う。それと同時に巻き上がった砂塵に隠れセルグは飛び立つ。後ろを振り返って・・・・
宙を舞ったポンメルンがドシャリと音を立てて地に着いた頃、彼らの目の前にはもう誰もいなかった。
「くそ!逃げやがった!!ですねぇええええ!」
行き場のない怒りの声がポンメルンより響き渡った。
「(魔晶兵士を4体も通してしまったからな・・・すぐに追いかけないと。それにしても・・・今回はこっちを優先したが次こそ仕留めないとまずい。魔晶の力は脅威だし、ポンメルンの実力は侮れないレベルだった。)」
飛翔しながらセルグは、胸中で呟く。まんまとしてやられ魔晶兵士を後ろに通してしまったし、覚悟を決めたポンメルンの気迫は恐ろしいものがあった。感じた力はガンダルヴァと並んでも遜色がないほどだった。
「というか結局4体も通してたら、オレは何のために残ったって話だよな・・・はぁ、ゼタあたりが文句を言ってくる姿が目に浮かぶようだ。」
折角残って敵を抑えようと思ったのにあまり役に立ててない事に気づいたセルグは少しだけガッカリしていた。そんなセルグの身体に痛みが走る。
「ッツ!?融合の反動が結構重たいとこまで来てるな・・・深度3までいったのは失敗だったか?逃げといて正解だったな。」
ヴェリウスとの融合の反動が思いのほか大きくなってることに気づきセルグは地上に降り立つ。グラン達の事を考えて撤退を決めたが、むしろ戦いきれなかった可能性もあったかもしれない。
「仕方ない・・・走るか。」
痛みを押し殺しながら、セルグは融合を解除して走り出す。
もし追い着いた時に魔晶兵士に襲われてたら、なんて言い訳をしようかなどと下らないことを考えながらセルグは全速力で走りぬけて行った。
セルグと別れ走り続けていたグラン達は、近づいてくる帝国兵士を迎撃しながら秩序の騎空団の隊舎へと急いでいた。
その最中でモニカが叫ぶ。
「リーシャ!お主は先に行って部隊の編成をしてきてくれ。後ろから追い付いてくる兵士が増えてきた・・・・・・急ぎ戻り、部隊の編成をして守りに入った方が良さそうだ。私はここで殿を務めよう。グラン殿、最後の手段として艇で逃げだせるように停泊所に向かうのだ!」
「わかりました、みんな!グランサイファーに向かおう!!」
言うや否や、グラン達はグランサイファーへと向かいリーシャ達と別れた。
モニカも後ろから向かいくる帝国兵士を迎撃するべくその場に止まる。そんなモニカの背にリーシャから声が掛かっ。
「モニカさん・・・彼らだけに黒騎士を任せるわけには・・・・」
「彼らなら守り通してくれるだろう。何よりも第一にすべきは彼らの安全だ。来客である彼らと重要参考人の黒騎士。彼らに危害が及んではいけない。お主は部隊を動かさなくてはならないのだぞ。彼らを信じるしかあるまい。」
モニカの強い言葉を聞き、リーシャも納得の顔を見せる。行動を決めたリーシャの動きは早かった。
すぐに隊舎へと向かいグラン達とは別の方向へと駆けていく。
「さて、少し私とも遊んでもらおうか。昨日からの連戦で疲れているが、簡単に通れると思うなよ!!」
残ったモニカは気合いと共に帝国兵士を迎撃すべく戦闘態勢を取った。アマルティア最強の騎空士が今、戦場で吠える。
隊舎へと戻ったリーシャはすぐに部下たちを見つける。
「リーシャ船団長!?お怪我はありませんか?」
すぐさま部下の一人がリーシャを気に掛けるが、リーシャの表情は固い。部下たちはどこか怪我をしたのかと脳裏によぎるが部下達よりもはやくリーシャは口を開く。
「部隊の編成は?状況はわかっていますね?」
「え、あ、はい!戦闘部隊の準備はできております。警備部隊は既に対応に出て戦闘に入っているとも。」
有無を言わさぬ確認に、部下が答える。
その答えに僅かばかり思案した後リーシャは命令を発する。
「貴方たちの中から20名を選定して騎空艇停泊所に回しなさい。来客と黒騎士がそちらに居ますので何としても守り抜くように。残りは私と共にモニカさんの救援に向かいます。それから警備部隊に伝令を、あくまで守ることを念頭に置き、施設や街の防衛に努めるようにと。」
「承知しました!」
リーシャの命令にすぐに動き出す部下。20名はすぐに選ばれて停泊所へと向かい、命令を直接聞いた一人の部下は伝令に走っていった。
「残りの皆さんは私と行きます。モニカさんが危険な状態です、急ぎますよ!!」
その場に残った者に告げリーシャは先頭を走る。
その表情には僅かにモニカを心配する憂いの表情が垣間見えていた。
「はぁあ!!」
長刀が閃き、また一人兵士が崩れ落ちた。
モニカが肩で息をしながら次に迫りくる兵士を見据えて走り出す。先手を打たせずその長い間合いを生かし、有無を言わさぬ一閃でまた一人倒した。
「はぁ、はぁ・・・全く・・・セルグは、何をしているのだ。どんどん来るじゃないか!?」
セルグに悪態を吐くモニカの目の前には次々と走ってくる帝国兵士が居た。うんざりとした顔をしながら、モニカはまた刀を振るう。
更に数人を斬り伏せたモニカに今度は地響きが聞こえる。視線を向ければそこには魔晶兵士が2体こちらに向かってきていた。
「あいつ・・・・なにが引き受けるだ・・・・でかい口を叩いたくせに思いっきり抜かれおって。」
モニカが目の前の惨状に苦笑する。兵士だけでなく魔晶兵士も向かってきている光景は、モニカにとってもかなり厳しいことがその表情から窺えた。
仕方なく刀を構え、魔晶兵士へと向かうモニカ。走り込んできた魔晶兵士の一人に相手の勢いも加えたカウンター気味の突きを放つ。そこから、引き抜いた瞬間にモニカは次の標的に向かう。
モニカが持つ刀に紫雷が迸る。
「紫電一閃!!」
そのまま、もう一人の魔晶兵士を深々と切り裂いた。流石は秩序の騎空団のエースといえる手際で二人の魔晶兵士を食い止める。
だが、魔晶兵士がこの程度で倒し切れるわけもない。すぐに起き上がった魔晶兵士はその巨大な剣をモニカに向けて振り下ろす。
「ええい!タフなやつだな・・・」
愚痴を言いながらも剣を躱してモニカは再度魔晶兵士と対峙した。そのモニカの横を帝国兵士が通り抜けていくもモニカにそれを食い止める余裕はもはやなかった。
「あとは・・・彼らの力を信じるしかないか。頼んだぞグラン殿、ジータ殿。」
モニカは呟くと魔晶兵士へと向かう。
その後、秩序の騎空団第四騎空艇団の最強の実力者はその名に恥じぬ戦いで、リーシャが応援に来る前に、魔晶兵士を沈黙させる。
「はぁ・・・はぁ・・・もうこれ以上は戦えないな・・・」
ボロボロの様相を呈すモニカは沈黙した魔晶兵士を見やりながら空を仰ぎ見る。
いつしか夕暮れ時に近くなっていたアマルティアは、わずかながら赤みが掛かった太陽に照らされていた。
そのままモニカは後ろに倒れる。力を振り絞ったのだろう。いくら実力者といえど前日から続いた連戦は彼女の身体に着実に疲労をため込んでいた。
「っと、随分なりふり構わずで戦ったようだな・・・モニカ。」
倒れ込みそうになったモニカの身体を追いついてきたセルグが支えていた。
魔晶兵士が沈黙している姿を目にし、華奢な身体に宿る力を目の当たりにしたセルグはモニカの身体を壊れ物を扱うように優しく抱き留める。
「遅いぞ、バカ者。おかげでこんなに無理をしてしまったではないか。ちゃんと責任はとってくれるんだろうな?」
「ああ、すまなかった。あっさりと抜かれてしまってな。割と相手が強かったこともあって、駆け付けるにも飛べずに走ってくる有様で・・・お詫びに休日の酒盛りにはとことん付き合うから許してくれ。」
「そうか、楽しみにしているからな。約束は守ってもら・・・う・・ぞ・・・」
責めるようなモニカの愚痴にセルグは優しく答える。その答えに満足してか、セルグの姿に安心したのか、モニカは疲れ切った体を休めるため眠りについた。
「ホント、こんなになるまでアイツラを守るために戦ってくれたのか・・・秩序の騎空団としての矜持もあるんだろうけど・・・感謝するよ、モニカ。」
セルグはそう呟くとモニカの背中と膝の裏へと腕を回し、抱きかかえる。俗にいうお姫様抱っこというやつだ。
そのまま秩序の騎空団の隊舎まで運ぼうと思ったセルグが歩き出す。振り返ったセルグの正面には部下を引き連れ駆けつけたリーシャが居た。
「セルグさん、モニカさんに何をしてるんですか・・・ご丁寧にお姫様抱っこをしてるなんて、本当にモニカさんと仲がよろしいようですね。後で騎空団の方々に言いつけてあげますよ。泣いて喜んでください。」
出会いがしらに辛辣な物言いをするリーシャにセルグが冷や汗を流す。他意は無かったはずが言いつけると言われた瞬間になぜか罰の悪いものを感じたセルグは、慌てて弁解をする。
「倒れそうになったところを支えてやっただけだ。他意はない・・・あとは約束を守ると言ったぐらいだ。別に変なことはしていないしやましい気持ちも無い。だから頼むから、あいつ等に余計なことは言わないでくれ・・・」
情けないことこの上ないセルグの言葉は逆にリーシャの疑惑の目を鋭くさせた。
「ふぅん・・・まぁ良いですけど。とにかく貴方は一度彼らの下へと向かってください。貴方が居ればいくらでも敵には対処できるでしょう・・・彼らは今、騎空艇停泊所にいますから。あ、モニカさんはこちらで隊舎の方に運びます。誰か、お願いします。」
「わかった・・・一先ずは守り通せればいいか。モニカの事は任せたぞ。」
リーシャの言葉に部下の一人がモニカを背負って隊舎へと向かっていく。それを見送ったセルグはすぐに停泊所へと駆け出していく。
リーシャもセルグを見送るとすぐに戦闘態勢に移行し、指示を出した。
「私たちはここで帝国の行く手を遮ります!防衛は警備部隊に任せているので心配せず、目の前の敵に集中してください。魔晶兵士も来るかもしれません。決して無茶はせず臨んでください。行きましょう!!」
リーシャの言葉に従い団員達が帝国兵を迎撃していく。指揮官の指示の下戦う秩序の騎空団は、指揮官のいない帝国兵とは動きが違い、次々と帝国兵を撃破していった。
しかし、帝国兵の数は衰えず、リーシャ達の戦いは終わることが無かった。
数えることが億劫になるほどリーシャが帝国兵を倒した頃には、リーシャにも疲労が色濃く出ていた。
「(このまま戦い続けていては・・・いずれ数に押しつぶされる可能性も・・・)」
ふとリーシャが空を見上げると、空は茜色に染まり太陽が沈み始めている事を告げていた。
そんな中に一隻の騎空艇が空を駆けあがっていくのを目にする。
「あれは、グランサイファー・・・?そんな、まさか!?」
目の前の光景にリーシャは何が起きたかを予測した。グランサイファーを見つめるリーシャの表情には苦渋が満ちていた・・・
如何でしたでしょうか。
今週は過去の分を添削していたのであまり話は進みませんでした。
アマルティア編は次で終わる予定ですね。別に話数は変わらないのにやたら内容の多い島だった気がします。
それでは。お楽しみいただけたら幸いです。