granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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少し短いですかね?

セルグ蚊帳の外で今回は進みます。

それではお楽しみ下さい。


メインシナリオ 第10幕

空域 ファータ・グランデ アマルティア島

 

 リーシャは執務室で休息を終え、仕事をこなしていた。

 早朝、自分が昨晩の戦闘による疲れで眠ってしまったところにグラン達が到着していたと聞いたリーシャは急いで向かおうとしたが、モニカが応対したと聞いて向かうのを止めた。尊敬する元上司が向かったのならば何も問題は無いだろうと考えた。

 自分と同様に昨晩は強敵を相手に戦っていたというのに、早朝から動けていたというモニカに改めて脅威を感じるリーシャだった。

 

 「S級って言う位だからセルグさんも凄いんだろうけど、モニカさんも大概だなぁ。私なんてさっきまでぐっすりだったのに。ふぅ・・・やっぱり、身体に傷は無くてもあれはキツかったのかなぁ・・・かなり疲労が残っちゃってる。それでも、やらなきゃいけないことは沢山あるし・・・」

 

 一人愚痴を呟くリーシャ。だがリーシャの愚痴はすぐに止むことになる。リーシャの部屋に向かい、慌ただしい足音が聞こえてきた。

 足音が近づくにつれてリーシャの目が細くなる。

 

 「リーシャ船団長!報告です!警備隊より連絡。現在何者かによる襲撃を受け警備の半数が負傷!別の報告によると相手は」

 

 「帝国・・・ですか?」

 

 突然に飛び込んできた報告に対して、リーシャは予期していたように口を開いた。

 

 「え?あ、そうです。追加の報告によれば、帝国兵士に警備がやられているとの情報が入っております。」

 

 リーシャの落ち着いた様子に呆気にとられながらも、団員は答える。

 

 「予測はしていましたけど・・・もう1日待ってほしかったですね。私もモニカさんも万全ではない・・・モニカさんは?」

 

 「モニカ船団長補佐は現在、来訪された騎空団の者達と事態の対処に動いております!たまたま居合わせたバルツのザカ大公もご一緒だそうです。」

 

 兵士の報告に思わずリーシャが呻く。なぜそこにザカ大公まで加わってしまっているのか・・・おとなしく安全なところに居てはもらえないかと胸中で愚痴るリーシャだったが、 状況を聞いてリーシャは思考を回す。何故だか妙に落ち着いた状態の自分に不思議に思いながらも考えるのは、状況を正確に予測し、対処することだけであった。

 

 「彼らもいるのなら・・・警備隊は皆黒騎士の警護に回して下さい。騎空艇団に伝令。周辺に帝国戦艦がいるはずですので戦闘を敢行して下さい。牽制程度で十分です。上空で艇同士の戦闘を仕掛ければ、地上への増援は防げるはず。現在のアマルティアで戦闘は?恐らく主力部隊がどこかにいるはずですが・・・」

 

 「ハッ!警備隊駐屯地付近にて大規模な戦闘が行われております!」

 

 「わかりました。そちらの対処には私が行きます。それでは伝令を頼みましたよ。」

 

 そう告げると、リーシャは足早に歩きだす。愛剣を携えて歩くその表情には、憂いの一欠片もなく、自信に満ちていた。

 

 「(私が自信を持って命令しなくては団員達も自信をもって命令を遂行できない・・・私の仕事はどこまでも絶対の自信をもって命令することが第一だ。その為にも予測をしろ、状況を読み間違えるな・・・私の戦いはまずここからだ!!)」

 

 昨晩の経験が、リーシャの内面を大きく変えていた。己がすべきことから、己ができることへと思考を切り替えた彼女が、焦りや不安を表に出すことはない。

 船団長である自分ができることは、まず徹底的に団員を使いこなすこと。

 己に係る全てを使いこなす。セルグが諭したこの言葉が、リーシャの中に強く影響を及ぼしていたのだ。

 直属の部下の下へと来たリーシャは剣を抜き放つ。

 

 「いくぞ!地上の戦力を片付ける!私についてこい!!」

 

 吠えるリーシャに否を唱える者はいない。リーシャは部下を従え、グラン達が戦う戦場へと走っていく・・・

 

 

 

 

 「太一輝極衝!!」

 

 いきなりのジータの奥義が魔晶兵士に炸裂する。一足で間合いを詰め、光の奔流を放った。集中の境地へと至ったジータが戦闘の口火を切る。

だがその一撃であっても、仕留めきるには足りずにすぐさまジータは距離を取った。

 魔晶を使った兵士は5人。ここで1人でも倒せれば戦況はずっと楽になると思ったが、そう上手くは行かず、ジータは舌打ちする。

 

 「チッ、流石に簡単には落ちないか・・・ゼタさん、ヴィーラさん!1人1体足止めします!後衛の援護を利用しつつ、何としても前線を守り切ってください!!」

 

 ジータが指示を出す。前衛の目的は後衛の動きを自由にさせる事。後ろには6人控えてる事を考えれば、前衛で3体抑える事が出来れば戦闘は優位に進められるだろう。

 

 「任せて!アルべスの槍よ!我らが信条示し、貫くための牙と成れ!」

 

 「お任せください!シュヴァリエ!主の剣となり、盾となりて、我が道阻むものを斬り払え!!」

 

 ジータの言葉にすぐさま応える二人は、全力戦闘形態に移行。

 炎の息吹が槍を包み、星晶獣の力をその身に纏う。

 

 「サウザンドフレイム!」

 

 アルべスの槍が振るわれ炎を放つ。

 

 「アフェクションオース!」

 

 素早く動くはヴィーラの影・・・数瞬の閃きと共に影が敵を切り刻んだ。

 

 

 だがそれは、仲間達の予想とは全く異なる結果をもたらす。

 

 

「フッフッフ!その程度で倒せるとお思いですかねぇ・・・彼らの魔晶は出力を上げた特別性。これまでの私と同じレベルの化け物揃いなんですねぇ!」

 

一行の目の前にいるのはほぼ無傷な魔晶兵士。決して弱くないはずの攻撃を受けて、まるでダメージを与えられていない事が一行に衝撃を与える。

 

「オイオイ!あいつ等めちゃくちゃつ強ぇじゃねぇかよ!?ゼタやヴィーラの攻撃が効かないなんて・・・」

 

 ビィが魔晶兵士に恐れ慄く。

仲間たちから見ても二人はかなりの実力者。その二人の攻撃が効かないとなると、戦う手段はかなり限られてしまう。

 

「黙りなさいトカゲ!今のは本気ではありません。いきますよゼタさん!」

 

「上等・・・ここからは本気の本気よ!!」

 

 ゼタとヴィーラが冷や汗交じりに強がる。だが如何に強がろうと、状況は厳しいことを二人の背中が物語る。

 そんな二人の下へと下がってきたジータが口を開いた。

 

「気圧されちゃだめ!私達だけで倒す必要はない。グランとモニカさんも戻ってくるだろうし、秩序の騎空団も動いてくるはず。今の私たちは何としても守り切る事を考えます!」

 

ジータの言葉に仲間達の表情から恐れが消えた。

天星器を扱うジータがいて援軍も向かってきている。ゼタとヴィーラの攻撃も効いていないわけではなかった。戦える余地は十分にあると感じたのだ。

 

「ゼタさん、ヴィーラさん。数を減らして優位に立ちます!全力で1体仕留めましょう。2体を私が足止めするので、なんとしても1体倒してください・・・狙いは最初に私が奥義を放った相手です。いきます!“レイジ”“デュアルインパルス”!!」

 

 ジータが詠唱する。瞬間、仲間たちは血液が沸騰するような錯覚に見舞われる。

 力と魔力を知覚し、それを最速の速さで行使できるよう、。そんな圧倒的な強化効果がかかる。

 先に動くのは後衛の魔法組。ザカとイオが放つは大量の魔法弾。イオは杖から、ザカは拳に纏った魔力を拳撃と共に打ちだす魔法弾を魔晶兵士に向けて放つ。

 魔法弾を受けて隙ができた1体にゼタとヴィーラが肉薄。力の槍と速さの剣を見舞う。それは痛撃となって魔晶兵士を転倒させる。転倒したのを好機とみて二人はここで仕留めきろうと奥義の体勢に入った。

 

 「プロミネンスダイブ!!」

 

 「ドミネイトネイル!!」

 

 跳躍から奥義を放つゼタと剣閃で切り刻むヴィーラの奥義に1体の兵士が沈黙する。

 しかしその隙に2体の魔晶兵士が後衛へと接近していた。

 

 「いかせは・・しない!!」

 

 全力で移動してきたジータが槍に魔力を纏わせ振るう。強力な薙ぎ払いで1体の頭部を打ち据え、反転して渾身の突きでもう1体の胸部を穿つ。

 怯ませた隙をラカムとオイゲンが全力で迎え撃つ。

 

 「バニッシュピアース!」

 

 「ディアルテ・カノーネ!」

 

 限界まで魔力を込められた銃弾が2体の魔晶兵士を後ろへと吹き飛ばす。

 だが、帝国の攻勢は続く。更に2体が両翼より接近しルリアを狙う、

 

 「させるかぁ!!」

 

 すぐさま、鬼神の如き勢いで片方の魔晶兵士へとジータが追い付く。極致の集中力は、相手の攻撃を難なく見切り

 

 「レゾナンスサージ!!」

 

 強烈な突きが相手の溜めていた力を利用したカウンターとして放たれる。

 

 「ロゼッタ、援護してくれ!“ライトウォール”!」

 

 「任せて頂戴!“ダーティローズ”!」

 

 逆側ではカタリナがライトウォールで弾きダーティローズで絡め取る。更にそこをカタリナが追撃する。

 

 「アイシクルネイル!!」

 

 氷の剣に貫かれ、魔晶兵士が後方へ打ち飛ばされる。

 一連の攻防は、上手く決まったといっていいだろう・・・相手の攻勢を防ぎ切った一行はこの間にゼタとヴィーラが倒せていればと、前方を見る。

 

 「うあぁああ!」

 

 悲鳴と共にゼタとヴィーラが飛ばされてきていた。

 

 「私が、いつ?傍観すると言いましたかねぇ!!」

 

 其処には6体目の魔晶兵士が前回より強大なオーラを纏って立っていた。

 更には、沈黙したと思っていた魔晶兵士も起き上がっており、戦況は帝国側に傾く。

 

 「く、しまった・・・変身していなくて失念していた!」

 

 「申し訳ありません、仕留めきれませんでした。」

 

 ゼタとヴィーラが悔しげな声を出す。

 

 「大丈夫だ、手傷は負わせているし、先の攻防でもなんとか守り切れるのは実証できた。戦況は不利になったが、次こそ一人仕留めるぞ!」

 

 カタリナが冷静に状況を分析するも、状況が悪化したことには変わりない。

 先ほどの様にずっと守り切れる保証もなかった。

 

 「なら儂も前に出よう!女子供ばかりに前に出させてはな・・・そもそも儂は前で体を張るほうが性にあっておる、任せてくれ!」

 

 厳しい状況にザカが前衛を買って出るがジータ達は焦りの表情でそれを止める。

 

 「ザカ大公、危険です!私たちが前に出ますから!」

 

 「そうよ、ししょー、私達の武器は魔法でしょ!前にでても」

 

 「いつまでごちゃごちゃ言ってるんですかねぇ!」

 

 ポンメルンが不意をついて突撃してくる。狙うは最前列へと躍り出ていたザカ。手にもつ槍がザカを捉えるかと思われた。

 

 グシャリ、とまるで肉がつぶれるような音に思わず目を背ける。しかし、恐る恐る目を開けてジータ達が見た光景は予想とは異なるものだった。

 

 「ふん!不意打ちとはせこい真似をしよる。その程度で儂を仕留めようなど片腹痛いわ!」

 

 拳に絶大な魔力を纏わせたザカはポンメルンの体を打ち抜いていた。

 

 「バカな・・・そんなバカなですねぇ!」

 

 思わず後退するポンメルンを、庇うように魔晶兵士たちが立ちふさがる。

 

 「ししょー・・・すっごーい!!」

 

 「なにあれ・・・魔力を使って拳で殴るって感じ?」

 

 「私が五神杖でやった時のように、魔法自体は局所的に発動させてるんだと思う。それの威力を大公は拳速で跳ね上げているんです。」

 

 「うへぇ・・・大公さんも十分化け物じゃねえか・・・おっそろしい・・」

 

 イオが感嘆してジータが解説しゼタとラカムが慄きながらも、わずかな希望が見えた一行は戦闘を続行していく。

 前衛にザカも加え、上手く足止めしながら立ち回る一行は、徐々に追い詰められながらも善戦していた。しかし・・・

 

 

 

 「ハァ、ハァ・・・もう一伐槍も反応無し・・・集中切れちゃった・・・」

 

 「私もシュヴァリエの力はもう振るえそうにないですね・・・」

 

 「魔力も限界・・・もうヒールもできないわ・・・」

 

 ボロボロ、となった一行の前にはまだ、ポンメルンが立っていた。

 勝ち誇るような笑みを浮かべポンメルンは勝利を確信して声を上げる。

 

 「フッフッフ!よくもまぁここまで頑張ってくれましたねぇ!ですが・・・所詮は無駄なあがきだったのですよぉ!」

 

 ポンメルンの言葉と共に魔晶を持たぬ帝国兵士が大量に出現する。それもそのはず、まだジータ達は帝国兵を5人しか倒していないのだから・・・

 

 「そん・・な・・・」

 

 「くそっもう動けねえ・・・」

 

 仲間達に諦めが広がろうとしていた。

勝ち誇るポンメルンはカタリナに向けて口を開いた。

 

 「フッフッフ、無様ですねぇ!カタリナ中尉ィイ!!帝国に楯突かなければこんな惨めな死を迎える事など無かったのですがねぇ!」

 

 絶望的な状況、覆せない戦況にカタリナが顔を歪める。

 何か手はないかと藁にも縋るような思いで周囲に視線をやるも状況を好転させる手は見つからない。

 悔しさが募ると共にわずかに諦めが脳裏をよぎったとき、希望の音が届いた。

 

 「カタリナは無様でもなければ惨めな死を迎えることもない・・・あとルリア、やめるんだ。セルグとの約束、覚えてるだろ?僕が来たから最後の手段には、まだはやいよ。」

 

 普段の口調から比べると随分と優しい声音で、グランの声が響く。そこにいたのはダークフェンサーの鎧姿のグラン。

密かに召喚を行おうとしていたルリアはビクリと肩をすくめてグランを見やると声を上げる。

 

「グラン・・・来てくれたんですか!!」

 

 「みんな、遅れてゴメン。僕が余計な事を言わなければこうはならなかったはずだよね・・・ほんと大失敗だ・・・」

 

 ボロボロの仲間達を見てグランは悔しさに視線を伏せる。己の余計なひと言がこの状況を生んだと、唇を噛む。

 モニカはそんなグランを元気づけるように口を開いた。

 

 「グラン殿、そう自分を責めるな。お主はセルグの無事を確かめようとしただけだし、こんなことになるとは誰も夢にも思わない。」

 

 グランは、モニカの言葉に目を伏せながら納得するも、胸中では自分を殴り倒したいと思っているかもしれないほどその表情は苦渋に満ちていた。

 

「みんな、聞いてくれ。セルグに誓ってきたんだ・・・僕らはもう守られる存在じゃない、それを証明するって。だからみんな、きついだろうけどもう少しだけ頑張ってくれないか?僕らがアイツを打ち倒せなきゃ、セルグは安心してくれないんだ。きっとこれからもボクらを守るためになら自分の身を省みない戦いをしてしまう・・・」

 

グランは皆に頼み込む。勝手に決めて、勝手に誓ってきた、セルグとの約束を果たすために・・・

 

「な~にお願いなんかしてんのよ!!」

 

「そうよ!それじゃまるで私たちが、普段頼まれなきゃ言う事聞かないみたいじゃない!」

 

「共に仲間と戦う・・・そこに頼むも何もないんじゃないのか?」

 

 ゼタが、イオが、カタリナが、優しく笑いかける。わずかに呆けるもグランはつられて笑う。そこにいたのはまだ戦える事をアピールする笑顔の仲間達だった。

 

 「グラン!私はもう力尽きちゃったから、あとはお願い!!」

 

 既に動けないほどに力を出し切っていたジータはグランに後を任せた。その表情には心配等していないことがわかる確信をもった笑顔。

 

 「ジータ・・・ああ、良くやってくれた。一伐槍・・・使いこなしたんだな・・・」

 

 ジータが手に持つ一伐槍を見てグランは感慨深い声を出す。頼もしいことこの上ない双子の妹の存在が、兄であるグランの心を強くする。

 ここまで戦ってくれた妹に負けてはいられないと。

 

 「次はグランの番。今のグランならきっと簡単に使いこなせると思う。」

 

 そんなグランの姿に、ジータは明るく声を返した。

 

 「当たり前だろ、妹のジータに負けられないさ!」

 

 グランはジータに自信満々の笑みを見せて、歩き出す。向かうはポンメルンのいる方へ・・・

 

 「全く、またもや下らない仲間ごっこを見せられるとは・・・ですねぇ。」

 

 目の前で見せられた茶番に心底うんざりといったような表情を見せるポンメルン。

 

 「下らなくないさ。仲間を想う気持ちは僕らに力を与えてくれる。ま、人を駒としかみない帝国には絶対にわからない事だろうけどね・・・」

 

 ポンメルンにお返しと言わんばかりに皮肉を返すグラン。仲間たちはそんなグランをみて、少しセルグに似てきたんじゃないかと思っていたりしたらしい・・・

 グランの後ろにジータ以外の仲間が集う。

目を伏せたグランは小さく、己が武器へと語りかけた。

 

 「覚悟しろよ、ポンメルン。今日の僕は少しだけ悪い奴だからな。いくぞ、“四天刃”。」

 

 小さく呟かれた声が大きな力のうねりとなってグランの体を包む。

 覚醒した四天刃が光り輝き、その有り余る力の鼓動を見せつける。

 

 「また、それですか、キラキラうっとうしい光ですねぇ。すぐに叩き潰してやりますよぉ!」

 

 ポンメルンが走り出した。グラン目掛けその手に持つ巨大な槍を振るう。

 

 「そうか・・・キラキラうっとうしいね・・・じゃあ見えなくしてやるよ。」

 

 グランが小さく笑う。彼に似つかわしくない、悪い笑みで。

 次の瞬間には、ポンメルンの槍は振り下ろされていた。グランからわずかに逸れた場所に・・・

 

 「む、どこに行きやがったですねぇ!」

 

 ポンメルンがまるで何も見えていないかのようにキョロキョロと顔を動かす。

 グランが放ったのはアビリティ“ブラインド”。暗闇を付与する魔力を相手の顔に当てることで視界を覆う、単純明快にして強力な技だ。

 

 「ミゼラブルミスト」

 

 グランの呟きに応え、黒い魔法陣がポンメルンの足元に現れる。そこから黒い霧が吹きだしポンメルンの体内に入り込んでく。

 

 「ぐっ、なんだか力が入らないですねぇ!何をした、ですねぇ!」

 

 「ブラインドで視界を奪い、ミゼラブルミストで弱体化。ま、強いヤツには王道の技かもね・・・やってることはエグイけど。」

 

 語るグランは笑顔だった・・・それはそれはとてもイイ笑顔。

 

「言っただろう・・・今日の僕は少しだけ悪い奴だって。弱った相手をじわじわ嬲るのは流石に趣味じゃないけど。相手に何もできなくさせて攻撃するくらいならいいだろ?」

 

 そう告げるグランはポンメルンを倒すためギリギリの間合いまで入る。ブンブン槍を振り回すポンメルンを尻目にグランは力を最大限まで高める。

 余計な思考を捨て、ただ技を高めるためだけに集中していくグラン。その手にある四天刃は、力の解放を今か今かと待ち望むように光を溢れさせる。

 

 「くらえ・・・“四天洛柱斬”!!」

 

 グランが一息に接近して手に持つ四天刃を振るう。四度振るわれた短剣は斬りつける箇所で光の柱を創り出し、ポンメルンを焼いた。強大な力を解放した四天刃は最後の一太刀で大きな光柱をあげ、ポンメルンの変身を解除させる程のダメージを与える。

 

 「ぐう、くそおおお!このガキどもが、ですねぇ!!黒騎士を私の手で始末するつもりでしたが仕方ありません。お前たち!数に物を言わせてヤツラをたたむのですねぇ!!」

 

 ポンメルンの言葉に帝国兵が殺到する。最後の最後まで往生際の悪いポンメルンに悪態をつきつつも絶望的な戦力差を前にグラン達は改めて戦闘態勢に入った。

 だが、この場にいた皆が忘れていた。ここが一体どこなのかを・・・

 

 「グラン殿、安心しろ。これ以上帝国に好き勝手させるのをアイツが許すはずがない・・・」

 

 グランの隣に並んだモニカが告げると同時に背後より剣を抜く音が響き、銃を構える音が聞こえる。そしてグラン達の下には足早に駆けてくる足音が。

 

 「申し訳ありませんでした。ここまで遅れてしまうとは・・・ご安心ください。あとは何としても我らがあなた方を守ります!」

 

 グランの隣で発せられたのは聞き覚えのない、力強く優しい声。

 隣に立っていたのは、ガロンゾで自信なくモニカの隣にいた、リーシャだった。その表情に不安も恐れも全く見せず、毅然とした姿で立つ姿はグランを見惚れさせる。

 

「聞け!碧の騎士が率いる騎空団よ!我らの理念はなんだ!!今この島に攻め込み、己が野望の為に暗躍をしようとしている者達がいる。諸君らはこれを許せるか?

否!浅ましくも我らに剣を向け、戦いを仕掛けてきた者達に教えてやろう・・・ここはどこか!我らは誰か!

私に続け!秩序の騎空団に牙剥いたその罪、骨の髄にまで思い知らせてやれ!」

 

 駆けつけたリーシャは檄を飛ばす。声高らかに、兵の士気をあげる力強い声を。それに呼応するは秩序を掲げる騎空士達。圧倒的な士気の下、モニカとリーシャを筆頭に帝国兵を完膚なきまでに蹂躙していく秩序の騎空団は、そのわずか数分後には勝利の凱歌を上げていた・・・

 

 




如何でしたでしょうか。

最近見直すと描写が足りないとか気付くことが多く何度も見返して添削している作者です。
チョロチョロと細かい部分で変えてたりします。

誤字脱字や気になる点矛盾点があれば作者に是非申して頂きたいです。

それでは、お楽しみ頂けたら幸いです。


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