granblue fantasy その手が守るもの   作:水玉模様

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本当はまとめたかったけど切りが悪くて小出しに。
多分、これ入れて後3幕……もしかしたら4幕。

どうぞお楽しみください。


メインシナリオ 第77幕

 ──世界が揺れていた。

 

 

 終わりへと近づく最中。

 事象の改変によって歪められていく……その引き裂かれんばかりの痛みに悶え狂う様に、世界は終焉を察知して震えていた。

 

 

 

 

「この揺れ……いよいよを以て限界と言ったところですか」

 

 緋色の騎士が呟く。

 その声音には一分たりとも焦りがないが、その言は間違いなく世界の終わりを指していた。

 

「貴様。先は私を引き留めておいて今更何をふざけたことを」

 

 対して黄金の騎士は彼の言葉に怒りを露に。

 すぐさま飛び出さんばかりの勢いで歩き出そうとするが、緋色の騎士は落ち着いた様子のままそれを再び引き留めた。

 

「まぁ落ち着いて。いくら慌てようと、もはや我らにできることはありません。

 大人しく見守りましょう……この空の行く末を」

 

 暢気が過ぎる……いくら冷静で起伏の少ない彼とは言え、世界の危機に何故もそう無関心な様子を貫いているのか。

 黄金の騎士アリアは緋色の騎士バラゴナの変わらない態度に訝しんだ。

 

「その落ち着き……貴様はこの状況でもまだ、疑っていないのか?」

 

「えぇ、もちろんです。あのお方の御子達が、この程度の苦境乗り越えられないなどとは、欠片も思っていないですよ」

 

 さらりと返された言葉にアリアの怪訝は深まる。

 本当にこの状況を意に介していない。その彼の本心が声と口調からも見て取れる。

 

「今更ですが、バラゴナ様は一体何を根拠にあの小僧どもを信じておられるのですかネェ? 確かに吾輩も下し、小僧どもは強くはありますが……それほどの全幅の信頼。

 寄せられる真意を図りかねますネェ」

 

「はっはっは、それは確かに今更ですね。ですが、お二人は少し誤解をしておられる……」

 

 アリアの疑念を代弁してくれたポンメルンの問いに、珍しくバラゴナが声を大きくして笑う。

 気持ちの良い高笑いというべきか、バカにされたような感じは取れないが、やはりこの状況でのそれは少しだけアリアの癪に障った。

 

「誤解……だと?」

 

「誤解、ですか?」

 

 同じ返答を返されたバラゴナは、たっぷりと間を置いてから口を開く。

 

 

「あのお方の御子達だから、ではありません──御子達の父君があのお方だから、ですよ」

 

 

 一瞬狐につままれた様な表情となる二人。

 バラゴナの返答の意を理解できなかったのだ。

 

「はて? 同じ意味ではないのですかネェ?」

 

「意味の分からないことを──貴様はそうやってまた人を小馬鹿にする」

 

「いえいえ、滅相もない。そんなつもりは毛頭ありませんよ。

 ただ、この言葉の意味は知っているものにしかわからない……とは思いますがね」

 

 再び不機嫌を露にしたアリアがそっぽを向き、ポンメルンが慌てたように宥めに行く。

 そんな二人を尻目に、タワーの上層へと視線を向けながらバラゴナは一人ごちる。

 

 

 先程の言葉……バラゴナは何もおかしなことは言っていない。

 あのお方とバラゴナが述べる、グラン達の父親を知っているか否かによって解釈が変わってくるのだ。

 

 彼の子息であるからグラン達を信じているわけではない。

 グラン達の親が彼であるから何も疑う事がないのだ。

 

 バラゴナが信じているのはグラン達ではない────あくまでその父親であった。

 

「そう、貴方様の御子です。ならばきっと……」

 

 

 

 

 一片の憂いを見せない瞳は、まるで勝負の見えた賭け事をするかのように確かな光を帯びて、タワーの頂上を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ────世界が揺れる。

 

 ザンクティンゼルが。

 

 ポートブリーズが。

 

 フレイメルが、アウギュステが、ルーマシーが。

 

 全ての島と空域が、揺れていた。

 

 

 

 

 ────空を見上げる。

 

 アガスティアに住む人々が。

 

 避難の誘導に奔走する秩序の騎空団が。

 

 各所で人命救助に当たる十天衆が。

 

 

 組織の戦士達が。艇に残っているローアイン達が。

 

 モニカが、リーシャが、シェロカルテが、アダムが。

 

 空の世界に生きる全ての人達が今……何かを感じて空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 静かで、穏やかな。

 

 まるで子守歌の様な……(うた)が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────―

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あれ、僕は?」

 

 暗闇の中、グランは意識を覚醒させた。

 どことなく朧気な感覚。ふわふわとした足元の感触に自身が屹立していないのだとわかる。

 

 ──いつまで寝ているつもりだ。仮初の主よ。

 

 ふと、何も分からない空間で響く音が耳を揺らす。突然の声にグランは意識を向けた。

 暗闇の中視界は頼りにならず、聞き取る聴覚だけに集中すると、すぐに次なる声を捉えた。

 

 ──最強たる我を使役しながら、敗れることなどあってはならない。例え仮初の主であろうともだ。

 お前には……最強で在る義務がある。

 

「お前は……まさか七星剣なのか」

 

 投げられる言葉。その意味からグランにはこの声の主の想像が着いた。

 否、もっと正確に言うのならばこの声には僅かではあるが聞き覚えがあったと言える。

 

 アガスティアでの戦いが始まってからずっと。天星器を解放してからずっと、グランの脳裏に微かによぎっていた声なのだ。

 

 ──然り。現実で意識を飛ばしたお前と、深層意識での疎通を図っている。

 して、再度問おう。いつまで寝ているつもりだ? 

 

「いつまでって……そんなことを言われても」

 

 自身がどうなってるかも分からない。

 意識を飛ばす前の事もどこか朧気でグランは七星剣の問いに曖昧に返した。

 

 ──では別の問いに変えよう…………力が欲しいか? 

 

「力?」

 

 ──垣間見ただろう。我の力は今だ全てに非ず。お前はまだ天星器である我の十全たる力を発揮していない。

 

 重ねられた問い。そして紡がれた言葉に、グランの心が揺さぶられる。

 七星剣の言葉の意味をグランは理解していた。

 ポンメルンとの戦いの時にもより強く感じ取っていたが、未だ天星器は底の見えないチカラを秘めている。

 ザンクティンゼルで初めて解放に至ってからこれまで、その深度こそ深めてきてはいるがそれでも……まだ足りない。

 

「──わかってる。お前達天星器には、まだ先がある事くらい……僕もジータも、まだ全然引き出せてない事くらい、わかってるさ」

 

 力なく答えるグランは自身の不甲斐無さにうな垂れる。

 世界の命運を握るアーカーシャとの戦いに於いて尚、グランもジータもまだ力不足であるのだ。

 

 ──なれば問おう。十全足る天星器の力、その手で振るってみたくはないか? 

 

 どくんと、グランは鼓動が高鳴った気がした。

 十全足る天星器の力──七星剣の口振りからも察せるそれは、今のグランでは辿り着けないであろう領域の力であろう。

 グランとて一人の戦士。戦況を考えても七星剣の提案は抗い難く魅力的なものであった。

 

 何かを求め彷徨うかのように、グランの手が暗闇へと伸びた。

 

 ──それでいい、我の力を求

 

 

 

 だが、その手は僅かに停滞した後、元の位置へと戻る。

 

 

 

 

 ──どういうつもりだ? 

 

 声音に怪訝な様子を乗せて、七星剣が再び問う。

 伸ばしかけた手を引っ込めたグランの真意を、七星剣は図り兼ねていた。

 

 

「──力は、いらない」

 

 (かぶり)を振り、グランは静かに七星剣がいるであろう暗闇を見据えた。

 

 ──ほぅ? 

 

「セルグが教えてくれた……人は、想いこそが戦う原動力なのだと」

 

 ガロンゾで聞かされた、グランとジータの可能性。

 団長の仮面を被り、自身の想いを抑制した二人にはまだ先があるはずだと。

 願い、求め、想いを解放した時、グランとジータは更なる強さに至れると。

 

 だから、差し出された“力”に手を伸ばすことはできなかった。

 

 

 ──想いだと? それで強くなる等と絵空事だ。現にお前は今死の淵に立たされている。それはお前が弱いからに他あるまい。

 

「うん、僕にはまだ足りなかった。想いが……戦う意思が……」

 

 ──ならばどうする? 

 

 

 

 

「──声が、聞こえたんだ」

 

 焦れてきたのか、矢継ぎ早になってくる七星剣の声に、大きく間を空けてグランは口を開いた。

 

 ──声だと? 一体何の

 

「ルリアが、助けを求めて叫んでた。いや、本当はずっと叫んでたのに、僕達は聞き逃しちゃってたんだ」

 

 垣間聞いたルリアの叫び……微睡(まどろ)みの中で垣間見た、無垢な少女が内に溜め込んでいた悲愴。

 

 そんなことは無い。少女のせいじゃない。

 幾ら言葉で伝えようとも、それは少女にとっての贖罪にはなってくれないのだろう。

 あまつさえ世界を滅ぼす一旦を担いつつある今、少女の嘆きはいつまでも残る傷と成りかねない。

 

 そう思い至った瞬間、グランは初めて気が付いた。

 少女の存在の大きさを。少女が皆にもたらすものを。

 

 ──彼女を助けたい。彼女とまた共に旅をしたい。

 これが、嘘偽りなく。そして最も強い、自身の願いなのだと。

 

 だから──

 

「伝えなくちゃいけないんだ。僕達はルリアと一緒に居たいんだって」

 

 共にいるから……近くで少女が笑顔で居てくれるから──自分達は強くなれるのだと。

 

 

「ルリアと一緒に居るから、僕達は戦えるんだって!」

 

 少女がいるから、辛く苦しい戦いも乗り越えられる。仲間と共に戦い抜けるのだと。

 

 

「それを伝えるためなら、求めるさ……お前の力では無く、あの子を助け出す絶対的な意思を!」

 

 そのために求めるのはこんな甘い言葉でもたらされる“力”ではない。

 願い、求め、想いを解放したその先で得る──自身が掴み取る力だ。

 

 

 目を見開いたグランは、七星剣を求めて今度は躊躇なく暗闇へと手を伸ばす。

 そこに在ることを確信したかのように……開かれた手はそれをつかみ取った。

 

 ──これは!? 

 

 瞬間、暗闇を打ち消す光が溢れ出す。

 出所はグランが掴み取った七星剣から。

 

「甘く見るなよ天星器。力を使うのはお前ではない、“僕達”だ」

 

 ──小僧、貴様っ!! 

 

 もはや隠す気の無い怒気に塗れた声が、七星剣から発せられる。

 甘い言葉で誘い良いように利用した剣は今、仮初の主と見下していた少年に取り込まれようとしていた。

 否、まだあどけないはずの少年に、従わされようとしていた。

 

 

「守るんだ……僕達の手で……ルリアを!」

 

 暗闇を切り裂く光と共に、グランは声を上げる。

 

「助け出すんだ! 泣いてるあの子を!!」

 

 燻っていた想いを吐き出すように────それは強く高く、光で埋め尽くされていくこの空間へ響き渡っていく。

 

 

「だから、七星剣!! お前の力、全てをよこせ!!」

 

 

 極光と共に振り下ろされた七星剣が、暗闇の世界を切り砕く。

 同時にグランは、胸中に宿った想いと共にその意識を浮上させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、うぅ……」

 

 

 騒がしい戦闘の音が耳を揺らし、グランの意識は覚醒する。

 すぐ視界に映るのは見慣れた双子の片割れの、心配そうな表情。

 あぁ、これはあとでどやされるかもな──などと場違いな懸念を抱きながら、グランは身体を起こす。

 

「グラン!? 良かった、気が付いたんだ」

 

「ジータ……状況は?」

 

 ここにいる自分とジータ。二人の分で戦力は激減のはずである。

 直ぐに過った質問に、ジータは不安を隠さずに返した。

 

「今はカタリナと、それからセルグさんの仲間のユーステスさんが駆け付けてくれて戦ってくれている。私達も早くいかないと……グラン、もう動ける?」

 

 予想外な増援の知らせに、グランは僅かに心の余裕ができる。

 何故ここにいるかなどと気にするまでの余裕は無いが、二人の参戦で持ち堪えてくれているのなら、目の前の妹には先に伝えなければならないことがあるのだ。

 

「大丈夫、ジータのおかげですぐにでも動けるくらい回復してるよ────それよりジータ、七星剣を握ってくれ」

 

 のんびりしている暇もない。グランは言葉少なに七星剣を差し出した。

 

「え? なんで……」

 

「いいから早く。握ればわかる」

 

 意図のわからないグランの提案にジータは惑うが、グランに圧されジータは差し出された七星剣を握った。

 ジータとて七星剣を何度か握って戦ってきている。その感触を覚えているはずであったが──

 

「──これは」

 

 握った瞬間にわかる、記憶にあるものとは別の感触。

 異質? 変質? いや、そういう感じではない。

 これは進化というべきか。手に馴染む……そんな程度では形容し難い程に自身の手を介して、七星剣との符合を感じ取った。

 そして同時に、瞬間的に流れ込む情報。

 今の七星剣が完全にグランによって掌握されていることも、グランがどうしてその境地へと至れたのかも、七星剣を握ることでジータは悟った。

 グランの想い、そして気づかされるジータの想い。

 半身とも呼べる双子故か、グランとジータの想いに齟齬など見当たらなかった。少しのずれもなく、二人の想いは一致していた。

 

「ジータもわかっていただろう。天星器にはまだ先がある……そしてそれを使いこなす必要があるってことが」

 

「うん……そして今なら分かる。私達ならそれができるってことも」

 

 グランの伝えたいことを理解してジータは僅かに笑みを浮かべた。

 確信したように腰に差している四天刃へと視線を向ける。

 なにも変わっていないはずのそれが今は殊更輝いて見えた。

 

 その領域へと──双子が共に扉を開いた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「グラン、気が付いていたか……良かったこれでまた勝機が見えた」

 

 ユーステスに託して、二人の元へと駆け寄ってきたセルグとゼタは、健在な様子のグランを見て安堵を漏らした。

 無惨にも空虚となっていた体の欠損は、ジータのリヴァイブとポーションによって無事に再生へと至っており少なくとも見た目の上では怪我の影響は無い所まで回復したと見える。

 

「セルグ、ゼタもごめん。二人とも大丈夫?」

 

「当たり前でしょ。グランこそ大丈夫なの?」

 

「あぁ、もう大丈夫……だからさ、二人に頼みがあるんだ」

 

 ゆっくりと立ち上がり、七星剣を握り締めるグラン。

 そのグランの様子に……並び立つジータと共に輝く天星器の姿に、セルグは何かを察した。

 この世界の命運を決める戦いの最中。ほんの僅かな時間の間に、二人の気配はまるで別物へと変わっていた。

 強くなったというわけでもない。強いて言うなら、大きくなったように思えた。

 そして二人が今からやらんとする事。それがその気配から伝わってくる。

 

「──奇遇だな。丁度オレも、お前達二人に頼みがある」

 

 互いに僅かな笑みを浮かべて口を開く。

 それは言葉にする必要がないが、敢えて声を重ねて見せた。

 

 

「二人でルリアの元に行きたいんだ」

「二人にルリアを取り戻してもらいたい」

 

 

 

 重なる言葉は予想通りで、思わず二人は笑った。

 世界が終りかけてるこの状況。上手くいくか分からないというのに、それでも確信をもって笑って見せた。

 

 

「予想は的中だな」

 

「そのようだね。具体的な方法は全部任せるよ」

 

「任せろ、必ずオレとゼタで、お前達の道を切り開いてやる」

 

「ちょっと何なのよグランもセルグもしたり顔になっちゃって」

 

 振り返りアーカーシャを見据えて臨戦態勢のセルグに反して、少しだけ面白くない様子のゼタ。

 余計な言葉を無しに、通じ合えている二人に対してどこか納得いかない気がした。

 

「ゼタさん、私からもお願いします」

 

「わかってるわよ、二人をルリアちゃんの元へ……要するにアーカーシャから奪い返すんでしょ」

 

「うん。何としてもね」

 

「これはきっと、私達がやらなきゃいけない事だから」

 

 いつもと違う様子の二人にゼタも何かを察した。

 今までにない決意の強さ。想いの強さを感じ取り、釣られるようにゼタも笑みを浮かべて意気が上がっていく。

 既にアルベスは炎を噴き上げ主の声に応えるように臨戦態勢。器用に槍をくるくると弄ぶと、振り返ったゼタはその切っ先をアーカーシャへと向けた。

 

「OK、露払いは任せなさい。やるわよセルグ!」

 

「上々。腹部の治療も済んだ……ここからは正真正銘、オレとお前の最後の全力だ」

 

 セルグの声に合わせて分離する黒と白の鳥達。

 調停の翼として覚醒した時に生み出したセルグの分身体ヴェルとリアス。

 人一人を包み込むこと容易な大きさをもつ二鳥を前に、セルグは最後の優しい声音をかけた。

 

「ヴェルはオレと共に……リアス、お前はゼタを助けてやってくれ。

 ──お前ならゼタに最高の助力ができるはずだ」

 

 アルベスの解放に合わせて没入するゼタを見やりながら、セルグはリアスへと視線で促す。

 ここから先、セルグだけの力では及ばない。共に戦うゼタにもまた、相応の助けが必要だろう。

 そしてそれはリアスにしかできない事だと、言外に伝える。

 

 “──ありがとう、セルグ。じゃあ久しぶりに、あの子と一緒に戦ってくるね”

 

 その主の意を汲み取り、嬉しさを露にしたリアスは軽やかな足取りでゼタの元へと向かった。

 

 “ならば若造の助力は我のみと言う事か。これで少しはやりやすくなると言えるな”

 

 皮肉を言いながらも、この状況を嬉しそうにする相棒へと、セルグは再び笑った。

 

 思えばこの相棒との出会いが、これまでの戦いの始まりだと言える。

 画一しながらも消せなかった。二つの魂を閉じ込めた分身体。

 生まれ変わった意味も込めて呼び名は変わったものの、その本質はなにも変わらない。

 変わらぬ相棒に感謝をしながら、セルグは天ノ尾羽張で頭上に真円を描いた。

 

 裂光の剣士──その真骨頂を見せるべく。

 

「行くぞ────“ヴェリウス”。今一度、オレとお前のチカラを見せてやろう」

 

 何も変わらず、二人は唯一無二の友であった。

 

 

 

 

 辿り着く、アルベスの全開解放への境地。

 声に出さず、魂でもってアルベスと対話を果たしたゼタが気炎を上げようとした所で、ふと何かが首元に擦り寄ってきていた。

 

「ん? セルグの白い鳥……何よ私の所に来て」

 

 そこにいたのは随分と大きな白く輝く巨鳥。

 セルグが生み出した分身体のリアスである。

 

 “ふふふ、セルグからのお願いでね。私に貴方と一緒に戦えって……だから久しぶりに、一緒に戦いましょ()()

 

「──その声、口調。まさか」

 

 この土壇場の状況を忘れる程の驚愕がゼタを染める。

 それもそのはずだ。今や聞けるはずの無い声、言葉を交わせるはずのない相手である。

 

「嘘でしょ.本当にアイリス、なの?」

 

 “今は細かい事気にしない。そんな事より叶わなかった私達のタッグ、とうとう復活だよ!! ”

 

 記憶に残るまんまの声音。掛けられる言葉の一音一音がゼタの疑念を払拭していく。

 変わらない──見た目がどんな姿であろうとも、明るい彼女の気配は変わらない。

 ゼタの脳が、魂魄の奥底からそれを理解していた。

 

「は、ははは……粋な事してくれるわね。上等、アンタとならどこまでも強くなれそうだわ。行くわよ“アイリス”!!」

 

 意気揚々と、ゼタはアルベスを一薙ぎ。自身を中心に円を描いた。

 切っ先が描く炎の真円。吹き上がる火柱の中で、迷わずリアスへと手を伸ばす。

 

「しっかりついてきなさい! 

 

 “うん、いこうっ! ゼタ!! ”

 

 この旅が始まるよりもずっと以前から、二人は唯一無二の友だったのだから。

 

 

 

 セルグとゼタ。

 二人の気配が膨れていく中……グランとジータもまた、最後の戦いを前に己を高めていた。

 

「四天刃は持ったね、ジータ?」

 

「大丈夫。後は出たとこ勝負だね」

 

 中枢タワーの頂点。空の世界を見下ろせるこの場。

 視界には、立ち込めていた暗雲すら眼下に至り蒼い空が広がっている。

 

 そして、その光景を塗りつぶすように存在を主張する、ルリアを取り込んだアーカーシャの姿。

 

 気に食わないとジータが唸る。

 調子に乗るなとグランが嗤う。

 

「できるさ、僕達なら」

 

「うん。私達なら至れる……至高の領域、“極み”へと」

 

 脳裏に描くは、豊かに表情を変え皆を笑わせてくれる無垢な少女の姿。

 目に映るは無機質で冷たいものへと変わってしまっている少女の姿。

 世界の終わりとか、相手が何かなんて関係ない。大切な仲間である少女にそれを強いることなど我慢できなかった。

 

 立ち昇る青い闘気。

 金色から蒼穹へと変貌していく気配とチカラは、覚醒したセルグが用いたコスモスと酷似し空に負けない青へと染まっていく。

 

「──行くぞ」

 

「うん!!」

 

 

 準備が出来上がったのは奇しくも同時。

 

 異種でありながらも同じ色を纏い、四人は最後の力を解き放った。

 

 

 

 

「「「「全開解放!!」」」」

 

 

 

 

 

 木霊する。世界に轟くその声は。

 

 

 

 

「「ルリアーーーー!!!」」

 

 

 

 

 生命(いのち)を守る、(うた)となる。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか。

もうほぼほぼプロットはできてます。
あとは納得いく文体になっているかどうか。
年内完結させますので、もう1週間ちょい、お付き合いください。

それでは、お楽しみいただければ幸いです。

もうすぐ終わりだからあれだけど、感想お待ちしております
m(__)m

本編完結間近という事で今後の参考に。完結後読みたいと思うのは

  • 色んなキャラとのフェイトエピソード
  • 劇場版。どうして空は蒼いのか連載
  • イベント。四騎士シリーズ連載
  • 次なる舞台。ナルグランデへ、、、
  • その他(要望に応える感じ)

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