明日、というか今日からしばらく執筆が出来ないので、焦りました。
バイトから帰ったら、強制イベント『母方の祖父母の家に2泊3日』が発生します。ついでに海に行ってきます。
感想とかも見れないので申し訳ないです。
暫くしたら合宿もあるんですよね…………。
まぁ、何はともあれ、どうぞ。
誤字訂正や、後半部の書き足しなどの改稿を行いました。 2016/8/16
ごめんなさい。もう少し直しました。 2016/8/17
目の前の男を見つめる。
母親譲りの碧眼と少し伸ばした黒髪と父親譲りの恵まれた体格。
年齢は少年と青年の重なる、いわゆる青春とやらを謳歌する時期の19。
シンプルなデザインのシャツとズボンの上に、特徴的な紅いロングコート。
─────名は
時計塔の門をくぐってから二年目にして、
時計塔の魔術師には階位が存在する。
詳細は省くが、その中に『祭位』という特殊な階位が存在する。
この階位は魔術師の実力ではなく、特殊な技術や実績などの特別に考慮しなくてはならない事情を持ったものに与えられる名誉階級。
…………例えば私のように、講師として卓越しているなどという事情が有れば、魔術師としての実力が低くても貰えたりする。
そして、目線を合わせている男の場合は遠坂という家系、父親の存在、卓越しすぎた戦闘能力──────謂わば聖杯戦争との因果、だろう。
そう、遠坂晶という男は今回の聖杯戦争に──────否、これから起こる聖杯戦争すべてに関わらざるを得ないのだ──────。
私はこの男、いやコイツを呼び出した理由はただ一つ。
それを理解しているのか、表情は緊張を隠し切れず、互いに緊張したまま。
意を決したのか、そいつは口を開く。
「強面の男に見つめられる趣味はないので、美少女に生まれ変わってください」
「いつも通りとはいえ、やはり心配した私が阿呆だったか…………」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やだなぁ教授、いつも通りの冗談じゃないですか。え、私の心配を返せ?またまた、ドアをノックして、返事を聞いてから突入したら、教授と見つめ合う羽目になった私の身にもなってくださいよ。あれ?教授。俺の頭に手を伸ばして何をってイタイイタイイタタタタタ──────。
普段から面倒を見てもらっている教授の私室。
指定された時間よりほんの少し早めにて入ったら暴行───詳しくはアイアンクロー───を受けています。
面白い冗談も言ったのに。ナゼダロウ。
というか、痛い。結構痛い。
「ギブっ、ギブですっ教授ッ。もうそろそろ……限界です……!
少し早めに来ちゃったことなら謝罪しますからっっ」
「そこではない、この阿呆が」
「っっっ──────。やめてください、ロンドンビックベ…………あ゛」
─────悲鳴が響く。
閑話休題。
「さて、お前を呼んだ理由だが──────」
分かっているよな、と言いたげな視線に、俺は隠蔽の魔術を解いた右手の甲を見せ───
「──────これですよね」
───と返す。
「そうか───」ため息「───やはりお前に、
「はい、その通りなんです教授」
令呪が宿った時期を説明し、聖杯戦争のルールは全て頭に入っており、尚且つそれが信用できないということを述べる。
こちらが話している間、教授は相打ちを打つぐらいで自分から積極的に話すことは無かった。
そのことに僅かな疑問を抱きながらも話し続ける。
─────その疑問の答えを確信しつつある中、次の言葉を紡ぎだす。
「─────本当は、時計塔の誰にも言わないで、勝手に参加するつもりだったんですよ」
「そうだろうな。だからこそ、今のうちにお前を呼んでおいた。お前が乗る予定の飛行機のフライトの前日の、しかも早朝に呼んだならば、お前は必ず来るだろうからな」
「まぁ、そうですね。昨日以前なら隠れるでしょうし、今日の昼以降なら逃げる、と言うか空港の側のホテルに泊まるつもりなので、時計塔にはいなかったでしょう」
「そう、機会は今日しかないのだ。──────まったく、お前の飛行機とホテルの予約を把握するのは簡単だったが、余計な手間ではあった」
─────やっぱり、目の前の男──────第4次聖杯戦争から生還した
「─────やっぱり教授は、俺を聖杯戦争に参加させたくなかったんですね」
「─────あぁ、そうだ」
口を噤む。
目の前に佇む初老の域に足を踏み入れつつある男が今まで以上に大きく見える。
其れは彼が今までに体験し、背負ってきた物の重みがそう感じさせるのか。それとも──────。
「─────少し前までは、令呪が宿るのはお前の母親だと思っていたのだがな」
重い口が開く。
聖杯戦争において大切な
一つは聖杯そのもの。
次に、これを設置する優秀な霊脈を持つ土地。
この二つを満たすことで、英霊を呼び寄せる───召喚することが可能になる。
─────しかし、もう一つ必要な
それは、令呪。
これこそ、
そして礼呪こそが、アインツベルンにとっては唯一用意できない
仕方なくアインツベルンは、冬木で行われた聖杯戦争のシステムを流用することにした。
その結果、冬木の聖杯戦争のルールの一つ──────
───
──────が働き、第6次聖杯戦争において、二陣営に分かれての大規模な、いわば聖杯大戦において、急造の若干劣化した聖杯を用いて新たに7騎の
未知の参加者が減ることを良しとしたのか、それとも単純に聖杯戦争を復讐の舞台にしたかったのか──────。
その理由はアインツベルンではない者には判らない。
──────いや、アインツベルンにも、──────第6次聖杯戦争において八代目当主ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンを失ったアインツベルンにも判らないかもしれない。
「─────俺もそう思っていました」
正直、疑問なのだ。
今更だが、という前置きの後「聖杯戦争に参加したいかのか」という問いに、「勿論参加したいです」と即答する。
だが、その思いは母さんの方が強い。
魔術師としての実力も同じく。直接戦闘なら話は変わるが──────
「そこからか」
「…………はい、教授」
全く、溜め息をつきながら続ける。
「間違えるな。私が疑問に思ったのは、魔術師としての実力とか聖杯に託す願いの強さとかではない。単純に順番の問題だ。
間桐に魔術師は一人しかいない。ならば、遠坂よりもはやく令呪が宿るだろう。
しかし、間桐の魔術師は聖杯戦争に参加する理由を失っている。
今までの聖杯戦争では、間桐の令呪をお前の父親に転写していたが、第八次聖杯戦争の直後に死亡している以上、この手は使えない。
ならば、この令呪をどうするのか」
「そうか──────」
それを聞いたとき、なぜ令呪が俺に与えられたのかが解った。
「──────そうか成程。そう…………だったのか」
正直それは、少し考える時間が欲しくなるような
「─────落ち着いたか」
「…………はい。もう大丈夫です」
結局、落ち着くまでに5分ほど掛かってしまった。
─────その間、教授は静かに俺を見ていた。
「─────やっぱり、思うんですけど教授」
「ん?どうした」
「ホントになんで、美少女じゃないんですか」
「くっ、ははは。もう大丈夫そうだな」
…………一瞬で強がりを見抜かれた。
……………………穴があったら入りたい。
「──────さて、やはりお前は今回の聖杯戦争に参加するのだな」
「はい。俺は第9次聖杯戦争に参加します」
「そうか」教授は、まるで遠くを切るかのように、まるで昔を思い出すかのように、一瞬目を閉じてから「行ってこい。
「Eです。Eをつけて、アキラ=E=トオサカって呼んでください」
「フッそうだったな。アキラ=
「鼻で笑わないでください、教授がいつもⅡ世を付けろって言うのとは、似ているようで違うんですよ」
「オイ。この大馬鹿者」
「しまっ──────ちょっ、怒らないでくださいよっ!と言うかですね、俺にとっては─────────」
この時、とっさだったので、何を言ったのかはよく覚えてはいない。
ただ、覚えているのは、教授が一瞬面食らったかのような顔をした後、「そうか」と小さく呟いたことだけだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
─────参加するのはいいとして、触媒はどうする?
─────用意してません。でも、大丈夫です。
─────よし、正解だ。
─────聖杯戦争に参加する理由は?
─────単純に
─────
─────………………4年ぶりです。
─────うん?…………あぁ、そうだったな。
─────教授はいいんですか?
─────………………墓参りは先日行った。
─────……申し訳ありませんでした。
─────現在判明している参加者の情報だが…………
─────教えてくださいっ。
─────よし。先ずはだな──────…………──────
─────…………もう、
─────あぁ、確かにそうですね、教授。じゃぁ、そろそろ……。
─────行ってこい、
─────了解です教授。
─────じゃぁ、行ってきます。帰ってくるまでに……
─────最後まで、言わんでいいわっ。
…………バタン。
「行ったか」
妙に静けさを感じられる部屋に一人。
思いだされるのは、あの騒がしい教え子。
いや、
──────そもそも、俺にとっては貴方こそがエルメロイなんですよ。貴方が二世を付ける理由については敢えて知らないようにしているけど、俺がミドルネームにEを付ける理由とは近くても遠いはずでしょう──────
不意に、あの馬鹿者がとっさに口走った世迷い事が脳裏に浮かぶ。
「フン」鼻息を鳴らす。
あの馬鹿者に言われなくても分かっている。
だが、”これ”は私が───いや、この場合は”僕”が、と称するべきかもしれないが───背負わなくてはならないものであり、背負うべきものであり、──────そして何より、背負うと決めたものである。
あの馬鹿者の言を返すようで少し気に食わないが、Ⅱ世を付けろ、と私が言うのと、Eを付けろ、とあの馬鹿者が言うのは似ているようで違うのだ。──────当たり前の事だが、人が背負っているものはそれぞれ異なるのだから。
物理的、魔術的に鍵を掛けられた戸棚の奥には、とある
何時の間にかそれを手に取っていたことに気付いた彼は、先ほどまでと同じように自然に鍵を開く。
そこに仕舞われているのは──────微かな焦げ跡があり、擦り切れたような朱い布。
ただの布切れだが、彼にとっては、彼の知る全ての物よりも価値が重いものだ。
目を閉じる、思い起こされるのは、豪放磊落な大男と駆け抜けた、とある”戦争”。短い間の事だったが、彼にとっては千秋にも感じらるだろう。
今抱えていることをあの大男に話したら、どのような反応をするだろうか?
一喝されるだろうか?
大笑いされるだろうか?
それとも──────。
いや、あの馬鹿者と合わせてみたらどうなるだろうか?
…………間を置かずに意気投合する二人。それに嫉妬する自分。そして、嫉妬していることを、つまらないこと、と言われ平手打ちされる。
そこまで考え、彼はそれがあまりにも真に迫っていたことも有り、また、真に迫っている、と感じたことも含めて、それが可笑しくてたまらなったのか笑い始める。
──────目頭が少し熱くなり始めているのを笑いすぎたからと誤魔化した。
何時の間にか、部屋は夕焼けに染まっている。いくら今が冬とはいえ、時の流れは非常に速いことを感じる。それを思うと、今まで自覚していなかったが、ここ数日の無理のせいか激しい疲れと眠気を感じる。
眠ってしまう前に、と彼は、何事にも変え難い思い出を呼び起こしてくれる呼び水であるそれを元あった場所に戻し、今までと同じように厳重に保管する。
彼は椅子に深く腰掛け、今ここにいない教え子が、何をしているのかを考えたが、アイツは馬鹿だから、私が言おうとしたことに直感で気付くだろうと思うことにして、放置することにした。
─────ただ一言「帰らなければ許さんぞ」と彼は呟いた。
眠気が限界に達していた彼は、襲い続ける睡魔に身を任せることにした。
いい夢を見れそうだと思いながら、在りし日の大男を思い浮かべながら──────。
「教授!いや絶対領域マジシャン先生!教授の様子がおかしかったので、アキラ君本人から聞いたんですけど聖杯戦争に────────────」
「お前はもう少し、
遠坂晶(トオサカ アキラ)
聖杯戦争に参加する魔術師。
少年と青年の重なる時期は、年上から見たら少年、年下から見たら青年に見える、という都合の良い…………中途半端な感じな時期なイメージです。
”教授”
これを読んでいる人のほぼ全員が知っている、時計塔の名物講師
『最後の闖入者』
これを読んでいる人のほぼ全員が(ry