Fate/after Redoing   作:藤城陸月

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一章 『■■■■■■■』の後継者
0  世界の果て──────紅い背中


 初めに、一人の少年の祈りがあった。

 その願いは叶い、過去を──────否、一つの伝説を歪めた。

 本来の歴史に影響を与えないはずの『相違点』。

 だが、それは当たり前でもある。

 神話、伝説、伝承、逸話──────。それらの大部分は、所詮偽りに過ぎないのだから。

 

 神秘と幻想の向こう側の世界の存在───又は世界そのもの───は境界のこちら側に当たる我々の世界に干渉できない。

 それが当たり前──────のはずだった。

 

 

 その『相違点』は多くの因果を少しずつ歪め、──────結果的に一人の青年の人生を、運命を変えた。

 

 ─────そして、今も………………………─────────────。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 ■■■■

 

 

 ■■■■(■■■■■■、19■■年■■月■■日-20■■年■■月■■日)は■■■■■■出身の思想家、傭兵、旅人、魔術師(?)、『■■■■■』。■■■■■■戦争の終結に大きく貢献、調印式の場で暗殺された。

 

 原因不明の大災害、■■■■■の生存者。このことをきっかけに■■■■■になることを志した、後に彼はそう語っている。

 (中略)

 20■■年■■月■■日、■■■■■の■■■で行われた調印式において、左脇腹を深く刺される。その後、手当てを拒んだ彼は調印式の終了を待たずに死亡した。享年37。実行者は幼い少年であったことなどから数多くの陰謀説が存在するが、彼の遺言により捜査がされていない(とされている)。

また、逸話には不可解な点が多く、彼は魔術師であったという奇妙なものまで存在する。

 

 

 

 参考文献

 

・ 遠坂■『紅い背中』

・ ■■■■追及・保全委員会『■■■■■───天使の双翼は猛禽の模倣───』

 ……………………

 …………

 ……

 

 

 ──────────────■■■■■■■■より抜粋。(一部変更有り)

 

 

 

 

 

「私を憐れむのならば、どうか私をこのまま死なせてはくれないだろうか。

 多くのが私のことを善人であるかのように接し、私もそのように振る舞ってきた。しかしながら、私はそのような評価に値するような人物ではないのだ。

 多くの人を救うために、救えたはずの人々を切り捨て見殺しにした。

 平和のため、そう自分に言い訳をして後ろ暗いことをした回数など、もはや数える気にもなれない。

 今だから言えるが、この調印式が終わったら自首するつもりだった。

 正直、私も限界だったのだ。──────罪の意識、という物の重さに耐えるのは。

 その代わりとしては余りにも厚顔だが、私で最後にして欲しい。

 ──────私の死を持って、この戦争を清算してはくれないだろうか。

 この後、如何なる復讐、報復をしないように。

 互いに憎みあわないように。

 互いに手を取り合えるように。

 もし、些細な間違いがあっても、私の死を引き換えに大目に見てはもらえないだろうか。

 そして、私の死を惜しんでくれる人が居るのならば─────────」

 

 

 

 焦土を思わせるような赤土。

 天宙に存在する無数の歯車。

 ──────そして、墓標と見紛う無限の剣。

 

 燃え尽きた風が身をなでる。

 体から水分を奪われる感覚。

 その感覚は限りない現実性(リアル)を感じさせる。

 しかしながら、俺はそれに対して──────

 ───あぁ、これは夢なのか───

 ──────そう結論付ける。

 

 ─────────同じ(世界)なら何度も見たことがある。

 

 奇妙なことに思えるが、この何処か物悲し気な心象風景(景色)は何度も訪れたことがある。

 一人の男の終着点───より正確に述べるのならば人生そのもの───を具現した、ある種の集大成。

 この世界を夢見るということ、それは過程そのものを体験する(歩みなおす)ことに等しい。

 

 ──────だが、目の前の紅い背中が話しかけてくる───正確には独り言めく───のは初めてだった。

 余りに長い独白。否、生前の男の遺言、と言うには少し長すぎる末期の言葉。その語り直し。

 

 それはまるで─────────。

 

 

 

 紅い背中が振り返る。鷹の瞳と視線が交わる。

 

 男は口を開き何かを語るが、自分の耳に入ってこない。

 ──────いや、それは違う。

 正確には、──────()()()()()()()()()()()

 

 

 

 何時の間にか目の前にいた青年が手を差し出してくる。

 それに対して俺は、手をさし伸ばすことで応える。

 

 ──────恐怖は感じない。

 ──────それどころか、胸裏に湧くのは溢れんばかりの興奮と喜び。そして、──────。

 

 

 二人の手先が触れ合う──────。

 

 

 

 

 

 目覚めは唐突だった。

 懐かしい夢───正確には、その続き(のようなもの)も含めたもの───を見た。

 一瞬毎に薄れていくはずの其れは、不思議と、確かな温かさを伴って、思い起こすことが出来、自然と銘記される。

 

 

 

 その少年は左腕の腕時計を確認し、安堵と諦観の混ざったため息をつく。

 やれやれ、と小さくつぶやいてから、手早く身支度をし、宛がわれた部屋の扉を開く。

 

 右手に存在する()()()()()()()に隠蔽の()()が掛かっていることを確認してから、彼が恩師だと思っている一人の”教授”に会うために、少年は──────遠坂(あきら)は待ち合わせ場所に向かって足を進めだす。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 数多くの戦いがあった。

 それらのうち、大多数のものには特筆すべきことは無い。

 当たり前のことかもしれないが、職業や人生に貴賤が無いように、どの戦争、紛争、内乱、テロ、それらに満たない細かな諍いに大した違いはない。まぁ、どちらの妄言、暴論、戯言も綺麗事に過ぎないという点まで似ているのは皮肉以外の何事でもないが。

 

 さて、前振りで散々と、特筆すべきことは無い、と語ったがここで語るは一つの戦争である。

 何故、と聞かれたら、語る理由があるから、という面白みの欠片もない返答しかできないだろう。

 その”理由”とやらは登場人物──────マスターと呼ばれる魔術師とサーヴァントと呼ばれる英霊。

 我々の世界に紛れ込んでいる、神秘と幻想を操る魔術師。そして、ある程度力が制限されているとはいえ、彼らが神秘と幻想の世界の向こう側から呼び出した、超常の存在である英霊。

 そんな、文字通り常識知らずな存在が、それ以外の特筆すべきことが無い、ありふれた戦争を行う。

 その名は聖杯戦争。

 勝利条件は聖杯──────万能の釜を求めての、殺し合い。

 

 そこにあるのは、栄光と失墜、美醜、虚構の善悪、信念と建前…………。

 ありふれた戦争と、登場人物()()違わない其れでは当たり前に溢れるだろう。

 それとも─────────。

 

 

 偽物の世界で、精巧な贋作たちは自らを真作である、と主張し、追い求める。

 その定義も曖昧なまま────────────。

 

 

 

 

 

 

 

「前置きが長すぎる。没にするぞ」

「ちょっ……。報告書に没があるとか聞いてませんよ教授」 




申し訳ないのですが、予定が立て込んでいるので、しばらく不定期更新となります。

気が向いたらでいいので、感想をお願いします。

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