学戦都市アスタリスク~歌姫との絆~   作:璞毘

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とりあえず一巻の内容は終了です



十二話

その声に驚いて目を開けばそこには本来ここにいるはずのない少年の顔が映った

右手には純白の大剣を持っている

天霧綾斗・・・つい最近アスタリスクにやってきた特待生だ

話によればクローディアが推薦したらしいが詳しいことはユリスにもわかってない

 

「綾斗!?」

 

ユリスが声をあげたのと同時に綾斗が先程一刀両断した人形とは別の人形が襲いかかってくる

だが、綾斗は焦った様子もみせず純白の大剣を振りまたしても両断して見せる

その切れ味は一般的な煌式武装とは比べ物にならないくらいの切れ味だ

そう、特殊な煌式武装・・・・純星煌式武装と呼ぶにふさわしい・・・

 

「これが・・・《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》・・・」

 

ユリスは静かに呟いた

ユリスも綾斗が《黒炉の魔剣》の適合テストにて合格ラインの数値をたたき出したことは聞いている

それを聞いてもなおその切れ味は流石としか言えなかった

《黒炉の魔剣》もそうだが、あの大剣を片手で振るっている綾斗も相当な力量だ

 

「ではなく、おまえどうしてここに・・・」

 

「クローディアのおかげかな」

 

「クローディアの・・・?」

 

「まさか、私を助けに来たなどとぬかすなよ?」

 

「いやいや、どうみてもそうなんだけど・・・」

 

やっと振り向いた綾斗は困ったように笑う

 

「これは私の問題で、おまえとはなんの関係もないはずだ

それなのにわざわざ危険な目に遭いに来たと言うのか!?」

 

「・・・・・関係ない・・・か

ねぇ、ユリス、人と人が関わってる以上関係ないなんてことはないと思う」

 

「なに・・・?」

 

「オレはもう君と関わってしまっている

その上で関係ないなんてことはない・・・

まぁ、受け売りだけどさ」

 

綾斗はそれだけ言うと、ユリスから視線をはずし正面を向く

綾斗の目線にはサイラスがいる

 

「お話は終わりましたか?

いやはや、思わぬ飛込ゲストですね

天霧綾斗くん」

 

サイラスは芝居がかかった仕草で肩をすくめる

一瞬で人形が数体一刀両断されたというのにサイラスの表情に焦りはない

まだ余裕があるということだろう

 

「今のが《黒炉の魔剣》の力ですか・・・・

なるほど少々厄介ですね・・・」

 

《黒炉の魔剣》・・・星導館学園が誇る最高峰の純星煌式武装にして四色の魔剣の一種だ

黒とつくわりに刀身は白い純白の大剣だ

綾斗はそれを片手で構えている

 

「しかし、使い手が二流だと折角の純星煌式武装も宝の持ち腐れというものです

綾斗くん、あなたの戦いぶりは拝見しましたが、正直この学園に置いて凡庸の極みです

今は不意打ちがうまく行ったようですが、百体を超える僕の人形たちになにができると・・・・」

 

「黙れ、不意打ちしかできないのも、二流もあんただろ

サイラス・ノーマン」

 

まだ綾斗にあってそんなに日がたっていないユリスだが底冷えするような冷たい声だった

そんな風にユリスは感じた

 

「言ってくれますね

でしたら試してみますか?」

 

サイラスが合図をすると百体以上の人形体がそれぞれ煌式武装をかまえ一斉に綾斗に襲いかかった

 

「綾斗!!」

 

ユリスは声をあげた

なにせ数体でも苦戦を強いられたユリスだ人形の戦闘力は今現在ユリスが一番よくわかっている

いくら戦闘能力が低い人形でも数で来られれば対応しきれなくなる・・・そうそれは一般的な場合だ

綾斗に一般的な・・・・は

 

「数でくればいいわけじゃないよ・・・

八葉一刀流・・・弧月一閃」

 

綾斗は《黒炉の魔剣》を腰に構える、いわゆる抜刀の構えだ

《黒炉の魔剣》に鞘はないため抜き身で構える

そして一瞬の抜刀・・・黒い焔の斬撃ととも人形たちが一斉に両断される

 

「なっ・・・・!?」

 

サイラスの先程の余裕の表情が顔から消え、明らかに焦っているのがわかる

 

「サイラス・ノーマン、この程度かい?」

 

「ぐっ・・・

多少はできるようですが、侮らないでください!

次はちらも本気でいかせていただきますよ!」

 

と、今まで乱雑だった、人形たちが整列をし、綺麗に並ぶ

前衛は槍などの長柄武器、後衛は銃やクロスボウなど遠距離武器、ところどころに剣の煌式武装を手にした人形も並んでいる

そして、その最後尾にサイラスが立った

 

「これぞ我が《》の精髄!

一個中隊にも等しいその破壊力、凌げるなら凌いで見せろ!」

 

サイラスは勝ち誇ったように高らかに言う

 

「はぁ・・・・」

 

綾斗は大きくため息を吐いた

サイラスがあまり綾斗の戦闘スタイルが分からないから仕方ないかもしれないが自分の周りに人形を置いただけで勝ったような気でいるのだ

溜息も吐きたくなる

それにあれだけきれいに並ばれれば綾斗にとっては好都合だ

 

「八葉一刀流、二の型、疾風」

 

サイラスの視線から綾斗が消えた

 

「な・・・

何処に行った!?」

 

サイラスはきょろきょろと辺りを見渡すが綾斗の姿は見当たらない

そんなことをしてる間に一体の人形が両断される

更に一体、もう一体と次々と人形たちが両断されていく

サイラスはその光景に動揺したようにあたりを見渡すがそんなことしても見つかるはずがない

そんなことをしているうちに前衛の人形がすべて両断される

前衛の次は後衛の人形だ

綾斗は高速で移動しながら後衛の人形も両断していく

《黒炉の魔剣》の巨大さのせいか綾斗自身いつもの綾斗が使う疾風より速度が落ちてると感じていた

いつもは太刀を使う剣術の技だ速度が落ちても不思議ではない

それでもサイラスは捕えれないようだが・・・

キョロキョロと翻弄されている

そして綾斗は最後の一体を両断する

 

「馬鹿な・・・、馬鹿な・・・」

 

「終わりだよ、サイラス・・・」

 

綾斗はすべての人形を両断し終えるとサイラスに《黒炉の魔剣》を向ける

 

「まだだ、まだ僕には奥の手がある!」

 

サイラスは腰砕けになりながら大きく合図をした

すると背後にあった瓦礫の山が吹き飛び中から巨大な人形が出現する

もしかしなくてもこれがサイラスの言っていた奥の手だろう

綾斗ほどの実力者からしてみればなんてことはないただ大きくなっただけで先程の人形と同じだ

 

「は、ははは、さぁ、僕のクイーンやってしまえ」

 

巨大な人形はサイラスの命に従い綾斗に向かってその巨大な腕を振り下ろす

 

「八葉一刀流伍の型、残月」

 

その瞬間巨大な人形の腕が瞬時に落とされた

 

「は・・・?」

 

サイラスはぽかんとその光景を見ていることしかできなかった

攻撃を仕掛けたのはサイラスの人形の方だ。

まだ鍔競り合いになるのならサイラス自身も理解ができる

だが、先程の一撃はそれさえも許さなかった

まさ一閃だった

 

「まさか、一切の防御が許されない剣

それが、《黒炉の魔剣》」

 

ユリスは静かにその光景をみながら呟く

《黒炉の魔剣》の噂は耳でしか聞いたことがない万物を焼き切る純星煌式武装・・・

今までしっくりこなかったが今目で見たユリスならその意味がよく分かった

一切の防御を無視しそれごと焼き切るのだと・・・

 

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

 

サイラスはその光景を見て叫んだ

綾斗の剣士としての実力派疑いようがない達人級の実力だと・・・

ユリスはそう感じた

 

「八葉一刀流、螺旋撃」

 

綾斗は《黒炉の魔剣》を上段に構え右上からの斬り下げ横に一閃そして体を捻り一回転し更に一閃それを最後に斬撃とともに炎の竜巻が巨大な人形を切り刻む

 

「・・・・・・」

 

サイラスはこの光景が信じられないからか未だに呆然とみている

 

「今度こそ終わりだよ、サイラス」

 

綾斗はサイラスに向き直りそう告げる

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃい」

 

サイラスは悲鳴を上げると綾斗が両断した人形の中でマシなのに乗りそのままフワーと浮いていく

 

「本当往生際が悪いなぁ・・・」

 

綾斗は溜息を吐きながら追いかけようとすると・・・

 

「ん?」

 

綾斗の端末に連絡が入った

クローディアかなと思い緊急だったが綾斗は端末を操作し、通話状態にする

 

「綾斗、久々だな」

 

そこには一年半前に私用があるとかで綾斗の前から姿を消した、綾斗の修めている剣術

八葉一刀流の兄弟子・・・

そして・・・《灰塵の剣聖》の異名を持つ、武の世界では知らない者はいないリィン・シュバルツァーだった

 

「リィンさん、久々ですけどすいませんが今こっちは立て込んでて・・・」

 

久々の憧れの人からの連絡はうれしくないわけじゃないが綾斗に急ぎの用がある

逃げたサイラスを追わなければならない

そのことを伝えようと口を開きかけた時最初にリィンが口を開く

 

「あぁ、サイラス・ノーマンだろ?

その件で連絡したんだ」

 

「え・・・?」

 

「なに・・・?」

 

まさかリィンがサイラスの件で連絡してくるとは思いもしなかった綾斗は目を丸くする

今回のサイラス件は知っているもいのは今この現場にいる、綾斗たち、そしてクローディアぐらいだろう

まさかリィンが知っているとは思いもしないだろう

 

「その件、オレに任せてくれ

例の機械人形を操ってるって聞いてな

そこで聞きたいことがあってな・・・」

 

「いえ、リィンさんなら任せても大丈夫です」

 

綾斗自身疑問はかなりあったがあこがれる兄弟子だ

もしかしての線はないとみていいだろう

 

「あ、でも逃げられて・・・」

 

「わかってる、逃がしたのを分かったから連絡したんだ」

 

それを最後にリィンは通信を切った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、多分ここら辺に降りるとは思うが・・・」

 

通信を切った綾斗の兄弟子、リィン・シュバルツァーは再開発エリアの路地裏でターゲットが来るのを待っていた

ある人物の伝手でここに来ることはわかっている

あとは現れるのを待つだけだ

 

「リィンさん、先にきていたんですね・・・」

 

「えぇ、少佐も早いですね・・・」

 

少佐と呼ばれた女性はリィンに微笑む

顔立ちは整っていて美人の分類にはいるだろう

 

「例の人形どう思います?」

 

「今回は外れだと思います

多分バックはアルルカント、オレたちが追っている“蛇”ではないでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

綾斗にこっぴどくやられたサイラス・ノーマンは重い体を無理やり動かしながら再開発エリアの路地裏に入っていた

サイラス自身今すぐにでも休みたいがそうはいかない統合企業財体の特務部隊《影星》が動いている

今足を止めれば確実に捕まりサイラス自身が持っている情報を聞き出そうとするだろう

それだけは阻止する必要がある

 

「くそ!、くそ!、何故でない」

 

サイラスのバックであるアルルカントにさっきからなんども連絡しているがまるで応答がなかった

そのことに苛立ちを覚える

一刻も早くアルルカントに保護してもらいたいサイラスだが肝心のアルルカントが出ないのであればどうしようもない

こうしてる間にも追っては迫ってきてるというのに・・・

 

「僕が捕まって困るのはあっちも同じだろうに・・・」

 

「ハハ、それは見当違いだと思うけどなサイラス・ノーマン」

 

「ひっ!?」

 

闇の中サイラスの行く手を阻むように現れたのは、黒髪の青年に軍服を着た女性だ

 

「か、灰塵・・・

それに、氷の乙女・・・」

 

サイラスは二人の姿を見て完全に腰が抜けてしまった

武の世界ではもちろんこの二人は裏の世界でも名が上がるほどの要注意人物とされている

サイラスも曲がりなりにも裏に足を踏み入れた人間この二人を知らないはずがない

 

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁ」

 

サイラスは叫びながら路地裏にあるものを操りそれをリィンたちに投げていくだがそんなもの時間稼ぎにもならない

黒髪の青年は一瞬でサイラスの目の前まで移動する

 

「がっ・・・・」

 

黒髪の青年は自身の武器である太刀の柄の部分をサイラスの溝にいれ、気絶させる

 

「あ、聞き出すんだったけどはずれっぽいですね」

 

「えぇ・・・」

 

軍服の女性も近くまで寄ってきて気絶したサイラスをみる

 

「流石は綾斗の兄弟子ですね」

 

暗闇の中さらに声が聞こえる

今度は金髪の少女だ

 

「で、彼は拷問して聞き出すより外交カードとして使うそんなところか?」

 

「おや、鋭いですね

流石は剣聖といったところですか」

 

「そしてそこの《影星》も隠れてないで出てきたらどうですか」

 

軍服の女性が銃をそこに向けると姿を現す

 

「いやぁ、うまく隠れてたつもりなんですけどね・・・」

 

現れたのは綾斗とそう同級生の矢吹だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこの件は内密に」

 

「えぇ、わかってますよ」

 

そして誰も知らないところで事態は動き出す今回の件がかわいいと思えるほど深刻な事態が・・・

だが、それはまだ先の話、今はつかの間の平和を楽しもう・・・・

 




次巻の内容は多分リィンさんとか例の少佐さんとかでないです
内容的にもwww

ではチャオチャオ

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