学戦都市アスタリスク~歌姫との絆~   作:璞毘

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ついにこの回を書けましたw
いやぁ、やっとシルヴィを出せた・・・
もう感激です


九話

「えっと、ここでいいんだよね・・・?」

 

すかっり晴れた日曜日、綾斗はクローディアから渡された紙のとおりに正門前に来ていた

時刻は9時と50分約束の時間の10分前だ

クローディアは懐かしい人物と言っていたが誰なのか綾斗は検討もつかない

 

「えーっと天霧綾斗君だよね?」

 

相手のほうも調度来たようで綾斗の後ろから声が聞こえた

 

「うん、天霧綾斗だけど・・・」

 

綾斗は後ろを向き相手方の姿を確認した

相手は女の子だ

栗色の髪に大きめの帽子を深くかぶり

ジーンズにブラウスといった格好だった

 

「本当に綾斗くんだ・・・」

 

目の前の少女はまるでこの出会いが信じられないかのように綾斗をまじまじと見つめた

 

「えーっと、君は・・・」

 

綾斗の方はこんな知り合いいたかなと必死に思い出そうとしてるが、まるで思い出せないが、だがどこか懐かしい感じはしていた

そしてこの少女から感じられる雰囲気といいどこかで会ったことがあるかのようだったがまるで思い出せなかった

 

「ごめん、懐かしい感じはするんだけど・・・

君、どこかで会ってたっけ?」

 

「え・・・?」

 

少女のほうはまさか忘れっちゃった!?とショックを受けるが今の自分の格好をみてああと納得する

今、自分は変装しているんだったとそれではわからなくても仕方ないと思うが気付いてくれても・・・と内心綾斗に毒づく

 

「あー、これじゃわからないか

あれから数年だもんね

じゃあ、綾斗くんちょっとこっちにきて」

 

少女は綾斗の手を引っ張り人気のない所まで連れていく

 

「綾斗君、これならわかるよね?」

 

そういうと少女は、帽子を脱ぎヘッドフォンについているスイッチを押すと

髪色が栗色から紫色に変わる

 

「シ、シルヴィ!?」

 

綾斗は驚いたように声をあげた

実際、驚いてるのだが・・・・

そこには数年前、とある事情で綾斗の住んでいた実家から引っ越した幼馴染

シルヴィア・リューネハイムの姿だった

数年前と比べたら背が伸びてたり、雰囲気が多少変わってたりしてるが

面影があった。数年前のシルヴィアの姿と重なる面影が・・・

綾斗の幼馴染、シルヴィア・リューネハイム

今やクインヴェール女学院序列1位

そして世界に名を轟かせる歌姫

別名《戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)》・・・

 

「本当に久しぶりだね、シルヴィ

元気だったかい?」

 

「うん、綾斗くんも久しぶりだね

本当に会えて嬉しいよ!!」

 

シルヴィは綾斗とさらに距離を詰めて本当にうれしそうな表情をした

 

「ってことはクローディアが言ってた懐かしい人物ってシルヴィのこと?」

 

「うん、そうだよ

綾斗くんが特待生として星導館に入学してことは《千見の盟主(パルカ・モルタ)》に聞いててね

あ、《千見の盟主》ってのはクローディアのことだから

それで、クローディアと相談して綾斗君に会う機会をもらったんだ」

 

「ああ、そういうことか・・・」

 

綾斗は納得したように頷いた

 

「それに綾斗くん、市街地はまだ足を向けてないみたいだし折角だから幼馴染の私が案内しようかなっと思ってね」

 

「じゃあ、シルヴィが案内してくれるんだね

頼もしいよ

ほら、紗夜だと・・・」

 

「あ、うん・・・」

 

シルヴィは綾斗の言わんとしてることがわかったらしく微妙な表情をする

綾斗とシルヴィと紗夜は幼馴染だ

紗夜の極度の方向音痴も知ってておかしくない

紗夜も案内してくれようとするのはありがたいのだがあれでは逆にこっちが色々調べて案内することになりそうだ

幼いころ三人でかくれんぼをしたら最後、紗夜が自分で今どこに隠れてるかわからなくなり姉の遥にも協力してもらい探したのを今でも覚えてる

 

「学園内の案内の時はユリスがいて助かったよ・・・」

 

綾斗は紗夜もついていくと言ってついてきた数日前の実質ユリスと紗夜ではなくユリスに案内してもらっていた

 

「そっか、リースフェルトさんに学園内は案内してもらったんだ」

 

綾斗がユリスの名前を出した途端シルヴィはあらかさまに機嫌が悪そうにむっとする

綾斗は綾斗でそれに気づいた様子はない

シルヴィもユリスの名前は知っている

星導館の序列5位だ

決闘の動画を見たこともあるが結構な実力者だというのがシルヴィの見解だ

 

「そういえば、遥さんは元気?

今度、挨拶に行きたいんだ」

 

「ああ、シルヴィは知らなかったね・・・

姉さん、今は行方不明なんだ」

 

「え・・・・?」

 

この時、シルヴィは自分がどこから声をだしてるかわからなかった

それくらい自分の声がかすれてるということが理解できた

 

「うーん、シルヴィが引っ越してすぐだったかな

姉さんは行き先も告げず去ったんだ」

 

「そう・・・なんだ・・・」

 

シルヴィは自分が思っていた以上に遥の失踪にショックを受けていることを理解した

シルヴィにとっても綾斗の姉―遥は姉さんみたいな人だった

一人っ子だったシルヴィに姉弟の感覚はなんとなくでしか感じられなかったが遥と話してるとそれが感じられた

シルヴィにとって姉替わりだった遥の失踪はよっぽどショックだったのだろう

 

「でもね、シルヴィ

姉さんが姿を消したのには理由があると思うんだ

だから、シルヴィも姉さんを信じてあげて欲しいんだ」

 

「・・・綾斗くん

そうだね、綾斗くんがそういうならそうしようかな

ちょっとしんみりしちゃったけど行こう綾斗くん!!」

 

「うわ、ちょっと

引っ張らないでよシルヴィ!!」

 

シルヴィは再び髪色を栗色にし、帽子を深くかぶりなおすと綾斗の手を引っ張って市街地へ繰り出した

 

 

 

 

 

 

 

アスタリスクの市街地は主に外縁居住区と中央区に別れる

外縁居住区にはモノレールの環状線が通っていて、緑の部分にあたる港湾ブロックと移住エリア、そして六つの学園を繋いでいる

それに対して中央区での移動は地下鉄が中心だ

これは学生同士の決闘が交通機関に影響しないように配慮されたものだ

中央区はさらに商業エリアと行政エリアに別れている

シルヴィと綾斗はその中央区《星武祭(フェスタ)》の総合メインステージ前にいた

 

「ここは、アスタリスク最大の規模を誇るメインステージだよ

星武祭(フェスタ)》の決勝は全部ここで行われるんだ

綾斗くんがもし《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出場するつもりならここに来ることになるね」

 

「ハハハ・・・

決勝まで生き残れればだけどね・・・」

 

「またまた、綾斗君に対応できるって言ったらそれこそ限られてくるでしょ

ガラードワースの《聖騎士(ペンドラゴン)》かレヴォルフの《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》くらいでしょ

まあ、《聖騎士》は《獅鷲星武祭(グリプス)》に絞ってるし、《孤毒の魔女》も《王竜星武祭(リンドブルス)》に絞ってるみたいだしね

だけど、《王竜星武祭》に出るつもりなら手加減しないから」

 

シルヴィに封印のことを話してないため

シルヴィはこんなことを言ってるが“今の状態”で綾斗自身どこまでいけるかわからなかった

 

「手加減しないって・・・

もしかして、シルヴィ・・・」

 

綾斗は何かを察したらしくシルヴィを見つめた

シルヴィは意味ありげに微笑んだ

 

「うん、私は《王竜星武祭》に絞ってるんだ

だから、もし出場するなら覚悟してね」

 

「そうなったら、お手柔らかに頼むよ・・・」

 

昔とはいえシルヴィと立ち合いしたことのある綾斗はその強さを身をもって知っている

そして彼女の《魔女(ストレガ)》としての能力の恐ろしさも・・・

そして確実に目の前の幼馴染は数年前とは比べ物にならないくらい成長していることが綾斗は確信できた

 

「それはこっちのセリフかな

さて、じゃあ、説明を続けるよ」

 

巨大なドーム状の建物を前にシルヴィが脱線した話をもとに戻して説明を再開する

収容人数はおよそ10万人≪星武祭≫の期間中はここがギャラリーで埋め尽くされるらしい

 

「ローマのコロッセオをモチーフにしてるらしいけど、最早別物だね。

このほかにも大規模なステージが三つ、中規模ステージが七つ存在するんだけど

野外の小規模ステージに関しては数え切れないなぁ・・・」

 

「へぇ、そんなにあるんだ」

 

「市街地の決闘でも、原則的にステージを利用するのがマナーになってるんだ

だけどあくまで原則は・・・あまり守られてはいないみたいだね・・・」

 

「それは街中でも決闘が・・・?」

 

「おっ、流石綾斗くん察しがいいね

その通りだよ」

 

「どう考えても危険なんじゃ・・・・」

それは綾斗が口にするまでもなくアスタリスクに来たばっかなら誰でも思うことだ

だがこのアスタリスクに来て長い人間はその状況に慣れてしまっているのが今のこのアスタリスクの現状だ

 

「ここの住人はそれも承知の上なんだよ綾斗くん。

観光客もね・・・

それに・・・住むにしろ観光にしろそういう危険性について書かれた誓約書があるんだけど、それにサインしないとこのアスタリスクには入れないしね

 

「無茶苦茶だね

それでもここに来たがる人がいるんだからわからないなぁ・・・」

 

「企業からしてみればアスタリスクに出店するってことはステータスであり、宣伝にもなるからね

それにイベントによってはこの中央区そのものが舞台になることもあるからね」

 

「オレは住みたくないなぁ・・・」

 

「ハハハ・・・

綾斗くんはそういうよね・・・

だけど私も同感かな」

 

「じゃあ、次はどうしようか

まだここら辺見る?」

 

「いや、ここはもういいかな」

 

「だったら、行政区に行って治療院をみてみる?

綾斗くんもこの先決闘とかする機会が多くなると思うし、それに≪星武祭≫に出るかは知らないけど出るなら知ってて損はないよ

まあ、出なくても知っておいたほうがいいと思うけど・・・

あそこには治癒の能力者がいるから

大けがとかしたときは便利だよ」

 

とは言ってもちょっとしたケガで来られては手が回り切れないので命の関わるケガでないかぎり治癒能力者による治癒は受けられない

 

「あとは・・・そうだね

一度、再開発エリアを見ておくのもいいね。

あの辺りは一部がスラム化していて治安的には問題があるけどね

知らないで、迷い込むのはもっと危険だから

まあ、綾斗くんの実力ならなにかあっても問題なさそうだけどね」

 

スラムには様々な事情で学園に居られなくなったものや、外から逃げ込んだ≪星脈世代≫の犯罪者などが巣食っている

なんとも物騒な話だが、このアスタリスク内ではこういった影の部分があるのは仕方がないことだ

 

「そういえば、紗夜が買い物に行こうとして怪しげな場所に迷い込んだことがあるとか言ってたなぁ・・・

なんか古くてボロボロのビルやら潰れたお店やらばっかりが並んでたって」

 

「・・・・それは再開発エリアだね

紗夜ちゃんの方向音痴は相変わらずだね・・・」

 

幼いころにもこの二人は紗夜の方向音痴に悩まされたものだ

見つからないときはその時はもうシルヴィの<魔女>の能力を使って探し出したりもした

それほどにまで紗夜の方向音痴はすさまじかった

シルヴィは時間を確認した

時刻はもう昼を過ぎたあたりだった

 

「おっと、もうこんな時間だね

綾斗くん、お昼にしようか」

 




シルヴィとのデートは続きます
次で一旦シルヴィのデートは終了になります

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