魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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前回と同時刻のお話で帰って来たコダイが巫女服になっていた理由が明かされます。
区切ると変な風になりそうだったので纏めるとこんなに長くなりました……


特別編『どんなに強くても怖い物は怖い』学校side

 私立聖祥大学付属中学校―――小学校から大学までエスカレータ式の進学校であり、それゆえに他の学校と比べ充実している―――

 だがそんな所でも連日の猛暑の脅威が降り掛からない例外では無かった………

 放課後―――節電と生徒達の体調を考えて気温より少し低いだけの教室から生徒達が手早く支度を済ませ次々と出て行く。

 

「肝試しやるで!」

「「「「――――――は?」」」」

 

 教室に生徒が殆どいなくなっていた頃。

 突然立ち上がったはやてに呆けた声を出したのはコダイを除く全員だった。

 

「理由を言え理由を―――」

「夏の定番やろ!」

 

 理由になって無い……と思ったコダイだが。

 

「………面白そうだから乗るが」

 

 その考えを一変して話に乗った。 

 

「まあ、こんだけ暑いしちょうどいいかもね」

「夜だとちょっと涼しくなるし快適かもね」

「あ、そう言えばここの七不思議を最近聞いたんだけど……」

「いいねそれ!じゃあ夜の学校を探検って事で」

 

 アリサ、なのは、すずか、アリシアと次々に参加が決まり話が広がっていく………

 その後、どこを周るかをすずかの家で作戦会議をし、遅くなると家族に連絡をし、そしてどこで聞きつけたのか忍がコダイを捕まえてどこかに連れて行ったりと準備は進み。

 日も暮れて完全下校時間を過ぎた頃、ノエルの車に送られて校門の前にやって来たコダイ達。

 

「さて、誰にも気づかれない内に校舎に入るか……」

「待ちなさい!」

 

 コダイが校舎に向おうとした時、アリサに肩を掴まれて止められた。

 

「どうした?」

「どうしたじゃないわよ!車に乗った時に言わなかったけど言わせてもらうわよ。何で巫女服着てんのよアンタは!」

 

 アリサが勢いよくコダイを指す。それに周りに気づかれない様に小声で叫んだ。

 指されたコダイは改めて自分の姿を確認する……白い小袖と緋袴(ひのはかま)、髪型は首の後ろで白いリボンで結んだ簡単な物。

 更に左手には長い木の棒に神社で見かける紙垂が取り付けられた御幣(ごへい)――通称お祓い棒を握っていた。

 

「女装はオシャレだ………忍に連れてかれた時に着せられた。『怪談とか霊能関係ならこれ着ておかないと』と……」

「さすが忍さんやな~……でもそのお祓い棒、長すぎない?」

 

 そんな巫女服姿のコダイを携帯の写真で収めながらも、はやては違和感を感じた一部を指す。

 コダイが左手に持つお祓い棒が一般的に見るものよりも倍近く長かった……

 

「ん?これは仕込みだ」

 

 コダイがお祓い棒を両手に持ち、左右に引くとその間から鈍く光る刃が現れた。

 

「刃は付いてないから鈍器だな――そんな事よりアレはどうすればいい」

「「アレ?」」

 

 コダイがお祓い棒を指した方に視線を向けたアリサとはやてに映ったのは。

 

 

 アリシアの後ろに隠れて小さくなろうとしているフェイトだった……

 そのフェイトの傍により落ち着かせているなのはとすずか……

 

「そう言えばフェイト、学校の七不思議を話した時からだんまりだったわね」

「いや、私が肝試ししようって言った時からも静かやったで?」

「まさかフェイトにここまでホラーに耐性が無かったとは………」

 

 目の前の状況を呆然と見ているアリサ、はやて、コダイ。

 だがその頃、フェイトと双子とも言って良い存在が同じようにビビッている事はまだ知らない……

 

「だだだだだだだって幽霊だよ?!魔法効かないんだよ?!」

 

 怖い理由って物理(ソレ)

 

 フェイト以外の考えが一致した。

 

「だったら私、最近出る変質者のほうがマシ!魔法効くし!」

「だから管理外世界(ココ)で魔法魔法言うな。そんなの全員同じ条件だから。ほら行くぞ―――」

「いや~!!」

 

 埒が明かないと判断したコダイはフェイトの襟首をつかみ引き摺り校舎に向かった―――

 

 

 

 

 

 

 

 七不思議その1『音楽室独りでになるピアノ』

 

 

「将来名ピアニスト間違いないと言われた生徒が発表会の前に事故で無くなり……それ以来その子が毎日練習してた音楽室のピアノが誰も居なくなるとか勝手に鳴り出す――――ってお話よ」

 

 夜の校内をコダイ、アリサ、すずかが懐中電灯を持ち先頭を歩く、そのすぐ後ろにはやて、更に後ろにアリシア……の後ろに隠れているフェイトの隣になのはがいる。

 最初の目的地に向かう道中、忍に連れ去られて七不思議を聞いて無いコダイにアリサが怖さを誘うような声で語った。

 

「典型的だな―――と言うよりも。何で将来名ピアニスト間違いない奴が何で家にピアノ無いんだ?」

「貧乏だからだったじゃない?ほら、グランドピアノって大体百万はするし……」

聖祥(ココ)にいる以上それは無いんじゃない?」

「お~い、その3人もうチョイ夢持った方がええで~」

 

 先頭を歩くコダイ、アリサ、すずかの夢の無い考察に呆れながらツッコミを入れたはやて………その時。

 

 

――ポロロン♪

 

 

 突然ピアノの音が響く……

 コダイが音の発生源に光を向けると『音楽室』と書かれたプレートが現れた。

 

「ひっ!」

 

 短く悲鳴を上げたフェイトがアリシアの肩に顔を埋める、それ頭をアリシアは優しく撫でた。

 

「いつの間にか着いたみたいだな……この曲はベートヴェンの月光か?」

「恐怖誘うにはもってこいだけど―――」

 

 と少し溜めてもう一度ピアノの音に耳を傾けたアリサは……

 

「―――下手ねぇ」

 

 と溜息混じりに呟いた。

 

「あ、それ私も思った……何かこう平たいって感じ……」

「それはあれよ、ただ楽譜のまま引いてるとか。何て言うか………」

「棒読み大根役者?」

「「それよ!」」

 

 どう表現すればいいか悩んでいたすずかとアリサにコダイが答えを出すと、それしか思い浮かばない位的確だったので思わず声が大きくなった。

 

「全く、ただ引けばいいってもんじゃ無いわよ。名ピアニストが聞いて呆れるわ」

「そうだよ。ちゃんと表現しないと人が感動する曲にならないもの……」

「もしかして下手くそで聞かれるの恥ずかしいから毎日こんな時間に練習してて、それが色々あって話が歪曲したとか―――あ、今ミスしたな」

 

 

 

 

「≪……3人とも聞こえとる?≫」

「≪あ、私だけじゃないんだ……≫」

「≪私もバッチリ……≫」

「≪………聞きたくないけど≫」

 

 先程から後ろで見てたはやてが振り返り後ろにいるなのは達に念話で話しかけた。

 それになのは、アリシア、フェイトが頷いた……4人が聞いたものは……

 

――~♪ グス ~~♪ グス ~~~♪

 

 月光の曲に混じりすすり泣く声が聞こえた……

 

 

 『音楽室独りでになるピアノ』――――音楽経験者達による酷評に撃沈?

 

 

 

 

 七不思議その2『魔の13階段』

 

 

「やっぱりこんな物だったな……」

 

 そう言うコダイの手には小型のCDプレーヤーがあった。

 あの後、全員で音楽室に入るとそこにはやはり人はいなく、代わりにピアノの下にCDプレーヤーがリピート再生をしていた。

 それを回収して、次の七不思議の階段へ向かった。

 

「フェイトちゃんもう大丈夫なの?」

「少しね……誰かのイタズラだって分ったから」

 

 ピアノのネタが分った後、フェイトは落ち着きを取り戻し、今はなのはとアリシアと並んで歩いている。

 

「でも意外、なのはってこう言うの怖いのかと思った」

「にゃははは……苦手だけど、今はそんなに怖くないよ?それに―――」

「それに?」

 

 言葉を止めたなのはにフェイトが聞き返すと。なのはは言って良いのか微妙な顔をしながら……

 

「フェイトちゃんが凄く怖がるの見てたら何か逆に冷静に成っちゃって……にゃはははっ」

「あぅ……」

 

 誤魔化す様に笑うなのはだが、フェイトはただ真っ赤になって俯くだけだった。

 

「……問題の階段はココだよな?」

 

 コダイが懐中電灯で階段を照らしてアリサに聞くと、小さく頷いたアリサ。

 

「夜になると1段増えてるって話よ………」

「これはさっきのイタズラは出来ないからな。全員で上るか」

 

 コダイを中心に全員が横に並び、一段一段ゆっくりと上って行く。

 

「……10……」

 

「……11……」

 

「……12……」

 

 

「「「「13!」」」」 

 

 そして踊り場までたどり着いた……

 

「………え?うそ本当に?……数え間違いな訳無いわよね……」

「最後の1段上がるとどっかに連れてかれるやったけ?」

「でも何も起きなかったわね……」

「まあでもそれが本当ならこんな階段にはならんやろ?当事者全員引きづり込まれるわけやし……」

 

 アリサとはやてが上って来た階段を見下ろしながら辺りを懐中電灯で探り始めた………

 

「―――昼間も13段だったしな」

 

「「「「それを早く言ってよ!!!!」」」」

 

 踊り場の先の階段に足を掛けて、何気なく呟いたコダイの一言でなのは達が場所も弁えず大声でコダイに詰め寄った。 

 

「いや、別に『1段増える』とは聞いたけど『増えて13段になる』とは聞いて無いぞ?」

 

 そんななのは達を見ても微動だにせず冷静に返すコダイ。それを聞いてアリサは思い出した。

 

「しまった……13って数字に気を取られてたわ……」

 

 確かに13段に増えるとは一言も言って無かったと……自分の失念に頭を押さえたアリサ。

 

「でも何で13って数字が不吉なんだろう……日本では4と9が死と苦を連想させるというのは分るけど……」

「それはやなフェイトちゃん。13が不吉と言われとるのは海外の方でキリストの13番目の弟子が裏切った事からそう言われとるとか色々あるんやで」

「あ、海外の方から来てるんだ……」

「まあ本から貰った知識やけど……だからといって特に気にする事無いで?そう思われるだけやし」

「更に補足させてもらうと日本の建築で階段が13段あるのは多い方だ、上り下りを考慮してな。だから13段は気にしなくてもいい」

「そっか……13段は安全なんだ」

 

 はやてとコダイの説明を聞いて、安堵して胸をなでおろすフェイト。

 階段はただ13と言う数字に気を取られてたと言う結論に至り。コダイ達はそのまま2階に上り次の階段の場所に向かった―――

 

「――――ん?」

 

 2階に付いた途端、ふとコダイが振り返り階段を照らした。だが直ぐに向き直り歩き始めた……

 

 

 『魔の13階段』―――13という数字による錯覚?

 

 

 

 

 七不思議その3『歩く骨格標本』

 

 

「はい、デマ決定」

 

 怪談を聞いた直後、間を開けず言ったコダイの感想である。

 

「そうね、私も大方誰かが夜中に運んでいるだけとは思っているわ。だって一番胡散臭いもの」

 

 話したアリサ自身も呆れている。この2人だけでは無く全員が苦笑いを浮かべている。

 前2つの怪談も事もあり、今回の怪談はアリサの言う通り運んでいるのを目撃されただけだと思っていた。

 

「ここは無視でいいわね……次は……『トイレの花子さん』よ」

「さっきよりも胡散臭さ増しとるで……さっきからゾクリともしとらんし」

 

 アリサの次の怪談を聞き退屈そうに溜息を着いた提案者のはやてだった。

 

「―――え?」

「―――あれ?」

 

 全員が次の場所に向かった時、視界の端にぼんやりと淡い光を感じたフェイトとアリシア。

 消灯されている校舎の光源は自分たちが持つ懐中電灯のみ。そして先程のイタズラの様な怪談に立て続けに合い恐怖心は薄れてしまった―――

 だから2人は躊躇いも無く振り返った――――

 

 真っ暗な廊下の真ん中にぼんやりと輪郭を成す骨格標本が立っていた……

 

 2人がそれを理解するのには数秒掛かりそして―――――

 

 

「「で―――でたあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」

 

 理解した瞬間、2人の悲鳴が響いた。

 

「一体何が――――」

 

 その悲鳴を聞きつけてやって来たコダイは振りかった勢いをそのままに飛びついて来たフェイトとアリシアに押し倒された。

 

「ガガガガガガガガガイコツがうごいてたあああああああああ!!」

「そそそそそそそのままはははははしてたたたたたたたたた!!」

「は?……ガイコツ?走って?」

 

 震えで上手く話していないアリシアとフェイトの言葉にコダイは聞き取れる単語を口にした、直後凄い勢いで首を縦に振ったフェイトとアリシア。

 

「何よ今の悲鳴?!どうしたの!?」

 

 そして少し遅れてアリサ達がやって来た。

 

「どうやら動く骨格標本に出会ったらしい」

 

 震えるフェイトとアリシアの代わりにコダイが簡潔に答えると全員の動きが止まる。

 

「う、ウソでしょ?」

「嘘だったらフェイトならともかくアリシアの反応はどう説明するんだよ」

 

 若干震えながら聞くなのはにコダイは飛びついている2人を見て答える。

 怖がっているフェイトもそうだが、今まで怖がる素振りも無かったアリシアもコダイに抱き着き震えている……

 

「ここは一本道だし誰ともすれ違わなかったと言う事はガイコツは俺達の目的のは反対側に逃げた訳か……」

 

 ならいっその事次の怪談に向かった方が安全だなと思いつつ。コダイはフェイトとアリシアを持ち上げて立たせると、ある事に気づいた……

 フェイトとアリシアの持っている懐中電灯に明かりがついていなかった。

 

「フェイト、アリシア何で懐中電灯つけてないんだ?」

「え?私達後ろにいるし……」

「皆の後ろを照らしたら……ほら迷惑かな~って」

「気遣いは有り難いが足元は照らしておけ。それに位置確認にもなるし」

 

 付ける様に促した後、全員で1つに固まる様に次の場所へ向かう、その足取りは若干重くなっている……

 

 

 『歩く骨格標本』――――目撃者少数の為保留。

 

 

 

 

 七不思議その4『トイレの花子さん』

 

 

「2階の女子トイレで花子さんと呼ぶと女の子の声で返事が返ってくる?……折り返しなのに一気に陳腐さが増したな」

「コダイ君、それ言ったら七不思議が全部陳腐になってしまうで?」

 

 コダイとはやてが先行して女子トイレに入る。

 フェイトとアリシアの動く骨格標本の目撃によってコダイを除く全員に緊張が走る。

 

「スゥ―――は~ムグっ!」

 

 早速呼ぼうとしたはやてにコダイ以外が一斉にはやての口を塞いだ。

 

「馬鹿!もっと間を持って――と言うか心の準備をさせなさいよ!」

「ムグ~!」

 

 アリサがはやてに顔を寄せて耳元で話す。

 口だけでなく抱き着かれているので身動きが取れずもがくはやて。

 

「中学校に子供って自体おかしいだろ……あ」

 

 そんな光景を無視して懐中電灯で辺りを捜索しているコダイが何かを見つけた、それも花子さんが出ると言うトイレの所から……

 

「件のトイレの場所から黒いのが出てる……髪の毛か?」

 

 コダイからそれを聞いた瞬間コダイ以外が入り口付近まで後ずさった。

 

「まさかホンマに出たんか?!中途半端に呼んだから中途半端に出てきよったんか?!」

「呼んですら無かっただろ。と言うかはやて、結構余裕だな……」

 

 コダイはお祓い棒の仕込み刀を抜き、切先を髪の毛に引っかけて持ち上げた。

 

「髪の毛―――と言うよりこれはカツラだな」

 

 黒い髪の毛の正体はカツラだった。サイズは大きく髪の毛はキッチリと切り揃えられたおかっぱと言う髪型だった……

 

「………まさか」

 

 それを見て何かに気づいたコダイは躊躇なく個室トイレに入った。

 

「「「「コダイ(君)?!」」」」

 

 その行動に驚きを隠せずなのは達は急いでコダイの元に駆け寄るが、数秒もしない内にコダイがトイレから出てきた。

 

「花子さんを見つけた」

 

 そう言ってコダイは手に持っている物はなのは達の前に出して自分の懐中電灯で照らす。

 手に持っていたのは赤いスカートだけたった……

 

「確か花子さんの容姿はおかっぱに赤いスカートだったな。さっきのカツラを合わせれば暗がりなら間違いなく花子さんと勘違いするな」

「な~んだ、結局ただのイタズラやったんか」

「にしてもスカートもカツラもサイズが大きいな……かなりの少女や女性が穿くよりも男性が穿いた方がしっくりくるサイズ――――」

 

 その言葉を最後に全員黙り込んでしまった……

 

「―――次行くか……」

 

 コダイ達は何も見なかったことにした……

 女装はオシャレだ……似合わなければ意味が無いと思いつつもコダイは口にはしなかった。

 

 

 『トイレの花子さん』―――何もなかったby目撃者達

 

 

 

 

 七不思議その5『女子更衣室の死のロッカー』

 

 

「その昔、いじめらっ子がいじめで女子更衣室のロッカーに閉じ込められてそのまま放置されて死んでしまい。夜中になるとうめき声が聞こえて、右奥のロッカーを開けてしまうとあの世に引き込まれてしまう―――」

「何でいきなり生々しい上に現実味あるものになっているんだよ……」

 

 はやてが懐中電灯を顔の下から照らして怪談を話すが。コダイは今まで通り夢も無い感想をもらす。

 

「む~もうちょい怖がってもええやん」

 

 そんなコダイの反応に不満を漏らすはやて。

 

「と言うかすずかちゃんやアリサちゃんもあんま驚かんな。ホラー得意なん?」

「アタシはなのはと同じ、苦手だけど怖いって訳じゃないし―――第一そんな物より生きてる人間の方が何倍も怖いわよ」

「アリサちゃん……一体何見て来たんや?」

 

 しれっと答えるアリサに苦笑いになるはやて。

 此処に居る全員が役職、または家柄なので社会を肌で感じているので妙に納得してしまった。

 

「私は平気かな?良くお姉ちゃんがホラー見たりするから巻き添えで」

「それはそれで嫌な慣れやな~でも忍さんホラー好きそう……」

「理由は多分別だと思うがな……」

 

 すずかとはやての会話をきいて呟いくコダイ。

 恐らくすずかとメイドのファリンの反応を見たいのが7~9割の理由だと理解した。

 

「あ、そう言えばコダイ君って昔からお姉ちゃんにホラー借りてたよね」

「今でも借りてるぞ」

「へぇ~意外……アンタの事だから『そういう』人物の言動は虫唾が走るとかで毛嫌いしてるかと思ったわ」

「まあアリサの言う通りキャラクターの言動は虫唾が走るけど………人間が救いも希望も無いまま絶望に落とされて終幕を迎えるとか最高だろ」

「怖っ!世界広しと言えどそんなにドSにホラー見る人見た事無いで?!」

 

 恐ろしい発言にはやてがツッコミを入れる。周りも若干引きつっている……コダイの性格を知らなければ確実に引かれている発言だった。

 

「そう言えば、忍に貰ったのまだ見て無いな……今度見てみるか」

「え~っと……どんな話や?」

「ん?『恐怖、百物語』」

 

 恐る恐る聞くはやてに軽く答えたコダイ――――

 それがトキガワ家を恐怖(2名を除き)に貶めたのはまだ、誰も知らない……

 

 

――………うぅ………うぅ………

 

 

「……アレ?コダイ君、何か聞き間違いやろうか」

「心配するなはやて、俺達もバッチリ聞こえる」

 

 そんな話をしながら歩き目的地の女子更衣室に近づいた瞬間、微かに聞こえたうめき声がはやて達の耳に入った……

 

「……前の怪談見たくイタズラって可能性もあるな……それにロッカー開けへんかったらええんや」

「計画案出した奴が怖がるなよ」

「コダイ君……人間ちゅーもんは『押すな』って言われると押しとうなるんやで?」

 

 震えながらコダイにサムズアップをするはやて。

 

「要は怖いもの見たさかよ」

「涼しくなるための肝試しやで?怖く無かったら意味無いやろ?………こうなったら関西人らしく何が来てもツッコミ入れたるわ!」

「気合の入れ所違うけどがんばれ~」

 

 ズンズンと更衣室に向かうはやてにやる気ないエールを送るコダイが後に付いて行き、その他も後ろから着いて行った。

 

「よし……」

 

 扉の前で1つ気合を入れたはやてがドアノブを回し、ゆっくりと音を立てず扉を開いた………

 

「「……………………」」

 

 更衣室を見た瞬間、2人の視線がある1点だけを見ている……いや、見るしかなかった。

 黒いタイツ来た大柄……と言うよりは余計な肉が付き過ぎたデ……もといふくよかな男性らしき人物がロッカーに顔を突っ込んでいた………

 

「≪ほら、はやて出番だ出番。関西人の腕の見せ所だぞ、ツッコミツッコミ≫」

「≪できるかアホー!関西人でも限度があるちゅーねん!!てかあちらさんが突っ込んどるやろ!?≫」

 

 コダイが振るも念話で返すのが精一杯といった感じで恐怖で青ざめている……

 

「――と言う事は……」

 

 そう言いながらコダイが振り返ると、すぐ後ろにいた全員が恐怖で青ざめていた。

 それを見てコダイは何か納得して小さく頷き……

 

 

「「「「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」

 

 

 全員の絶叫が(コダイはノリで)響いた。

 それにようやく気付いた男は慌てて更衣室の別の出入り口から出て行った………

 

「結局誰かのイタズラだった訳か……」

 

 男が逃げた後を見ながら、女子更衣室に入り男が顔を突っ込んでいたロッカーを調べていた。

 他は恐怖でその場から動けないでいた。

 

「見事に荒らされてるな………コレだけか?」

 

 コダイが他のロッカーも調べると先程のロッカー同様に荒らされていた。

 

「これは何か物色してたみたいだな………」

「ぶ……物色してたって何を?」

「そんなの女子の方が知ってるだろロッカーにある物だよ……」

 

 恐る恐る聞くアリサに目も向けず、他に何か無いかとロッカー以外を調べ始めるコダイ。

 

「運動前後に必要な常備品とかじゃないの―――――――」

 

 コダイの言葉が途切れる……周囲の空気が一変した。振り返るとなのは達の表情が恐怖から怒りに変わっていた。

 

「――――捕まえるわよ!!!」

 

 アリサの号令と共に走り出すなのは達……この瞬間、先程の男=女の敵と認識された……

 

 

 『女子更衣室の死のロッカー』―――それどころじゃないわよ!!by女性陣

 

 

 

 

 七不思議その6『増える石膏像』

 

 先程の男を全力で追いかける女性陣……コダイも直ぐに後を追い女性陣と合流した。

 

「え?!今までの怪談のイタズラは全部あの変質者の所為なの?!」

「全部とまでは行かないが、あの男の体型はトイレにあったスカートのサイズと一致してるしな」

 

 先頭を走るフェイトに並走して話すコダイ。

 

「コダイ!そのお祓い棒で斬りなさい!」

「斬っても良いがその後はどうするんだよ……」

「そんなものこっちで何とかするわよ!」

「分った。金は払うから任せた」

 

 後ろにいるアリサがコダイと物騒な会話をしているが止めるものはいない。それほど女性陣の怒りが強い事が分る。

 

「―――あ!」

 

 先頭を走るフェイトが何かを捕える、当然先頭にいるコダイも同時に見つけた。

 美術室の前にある黒いタイツ。それを見た瞬間フェイトは一気に加速して美術室の扉を開け放った―――

 

「見つけた!!!―――――え?」

 

 開け放ち、直ぐ美術室内を懐中電灯で照らすがそれらしき影が見当たらなかった。

 

「どうした?」

「人がいないの。ここにいると思ったんだけど……」

 

 直ぐに追いついたコダイ達に事情を説明するフェイト。

 

「ここに置いたのはカモフラージュか?でもここでタイツ脱ぐ必要あるか?脱がない方が見つかる確率が低い気がするが……」

 

 コダイがお祓い棒の刀の切っ先で黒タイツを持ち上げる。

 

「………なあアリサちゃん。確か美術室の怪談って夜中に石膏像が増えるって話やよね?」

「ええ、それがどうした―――」

 

 そこで考え込むアリサ……その直後頭を押さえた。

 

「はやて、アンタの言いたい事が分ったわ」

「あ~やっぱり?今迄からしてそう考えてしまうわな」

「――――成程」

 

 何も言えない様な顔をしているアリサとはやてを見て何かを理解したコダイ。

 それを見て首を傾げるその他。

 

「え?コダイ君、はやてちゃんが言った事分ったの?」

「実に下らない事だ……ほら行くぞ」

「え?ちょっとコダイ君?!」

 

 分っていないなのはがコダイに聞くが、流されてコダイに後ろから押されて美術室の近くの曲がりカドに押し込まれる。

 他もアリサとはやてに押されて着いて行くように曲がり角に入りそこから美術室を覗き込んだ……

 

 

――ガラッ……

 

 

 隠れてから少し経つと美術室から扉が開く音が聞こえた。

 そこから現れとのは先程の男……しかも黒では無く全身白だった……

 

「見つけたわ!」

 

 それを見た瞬間、アリサが飛び出して男を指した。

 男は驚きその場から一目散にその場から走り出した……

 

「待ちなさい!」

 

 逃がさないとアリサも駆け出す。すかさずコダイ達も飛び出してアリサの後を追う……

 

「し……白く塗って隠れてたんだ」

「つまりあの黒タイツの下に塗ってたって事だよね?」

 

 コダイとはやての後ろを走るすずかとフェイトが苦笑いをしていた

 

「もう何か驚くのに疲れちゃった……」

「それにもうここまで来るとバカにされてるとしか思えないんだけど……」

 

 その後ろにいるなのはとアリシアは驚きを通り越してあきれていた……

 

 

 『増える石膏像』―――察しの通り、ただのイタズラ。

 

 

 男の後を追い掛けるも。階段を下りた踊り場付近で目標を見逃してしまった。

 

「しまった。逃したわ!」

「見た目の割にすばしっこい奴やな……」

 

 アリサとはやては悔しそうにしながら辺りを探し始めた―――

 

「待て。どうせすぐ見つかる」

 

 だが、それはコダイに肩を掴まれて止められた。

 

「取り敢えず全員一階にいろ」

 

 言われるまま全員が一階に下りて、残って階段にいるコダイを見る。

 コダイはお祓い棒の刀を抜き上段に構えてそのまま一気に振り下ろした。

 

――ドガァン!!!

 

 それにより階段の一番上……13段目が踊り場ごと吹き飛んだ。

 木材、ゴム材……階段の材料のなれの果てをみてコダイはゆっくりと刀を鞘に納めた………だがコダイの持っている刀には刃は付いて居ない。

 

「―――ってコダイ!いくらなんでもこれはやり過ぎ!!」

「問題無い。それに見ろ……コレが『魔の13階段』の正体だ」

 

 呆気に取られていたアリサだが直ぐに我に返りコダイの下に駆け寄る。

 コダイは何事も無くお祓い棒である方向を指す、そこに視線を送ったアリサが見たのは。

 木材の瓦礫に埋もれてそこから白塗りの脚が出てピクピクと痙攣をしていた…………

 

 

 

 

 その後警察に連絡、男はあっけなく逮捕された……

 コダイ達は簡単な事情説明の後、帰宅を言い渡された。

 

「まさか階段の中にいた何て……」

「踊り場の上に重ねたもう一つの踊り場。床にのぞき穴もあったしな……それに踊り場から先の階段が一段少なかったからな。トイレにも似た様な物があってカツラと服は見られた時のカモフラージュだな」

「それで気付いたのね……」

 

 帰宅途中の道でコダイはアリサ達に怪談のネタばらしをしていた。

 

「ピアノに関してはパソコンのソフトで打込んでそれを流してたみたいだな、アリサとすずか達が感じた違和感はそれだ」

「そっか……確かに弾くとなると相当時間かかるし……」

「なのは達が聞こえたすすり泣きは反応が見たいから隠れてたらしいな……」

 

 それを聞いてホッと安堵するなのは達。あの後CDプレーヤーを流してもすすり泣きが一切入っていなかったのに驚かせた。

 

「……あれ?じゃああのガイコツは?犯人と体型違うよ?」

 

 そこで思い出してコダイに聞くアリシア。

 アリシアとフェイトが見た動く骨格標本と犯人の体型が全く違っていた。

 

「それはまず自分の体型に合わせた作った紙粘土とかの台にタイツを着せてその上に発光塗料を塗ったガイコツのシールとかを張れば、着てた時に伸びずに済む。それにガイコツに発光塗料を塗れば暗闇での黒タイツと相まってガイコツがハッキリ見えて黒タイツは見えなくなる……人間の明暗の錯覚利用したんだ」

「原理を聞けば分るけど……よく発光塗料を塗ったって分るね」

「だって……アリシアあの時懐中電灯切ってただろ……その状態で見えるとしたらガイコツ自体発光して無いと」

「あ――――付けて無かったね」

 

 それを聞いて思い出したアリシアだった。

 

「……あれ?これで怪談は6つ目だけど7つ目は?」

「それこそ信憑性が無いものよ……『7つ目を知ったまたは知ろうとする者は不幸に見舞われる』って」

「確かに……」

 

 指折り数えてたコダイに呆れる様にアリサが答えてそれに同意したコダイだった……

 

「う……」

 

 その時、小さなうめき声が全員の耳に入る。全員の目の前には電柱の傍でしゃがんでいるコートを着た女性だった。

 

「うぅ……」

「あの、大丈夫ですか?」

 

 それを心配してなのは達が女性の下に駆け寄った。

 

「大丈夫です……胸が少し」

「救急車呼びますから待ってください!」

 

 つらそうな声で返す女性になのはが急いで携帯を取り出すが。女性に腕を掴まれて止められた。

 

「本当に大丈夫です……大した事ではないので」

「でも………」

「でしたら……ちょっと見ていただけませんか?」

 

 そう言った女性は立ち上がりコートに手を掛けて脱ぎだした……

 

「「「「――――――っ!!!」」」」

 

 その瞬間、女性陣の顔が固まった。

 コートの下は何もなかった……つまり生まれたままの姿だった………

 

 

 

「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」

 

 

 今までの中で一番と言って良い程の大きな絶叫が夜の道に木霊した………

 

 

 『7つ目を知ったまたは知ろうとする者は不幸に見舞われる』――――変質者は必ずしも男だけとは限らないbyコダイ

 

 

 その悲鳴と同時にコダイが刀で女性を気絶させて、警察の前に放り投げたのであった……




龍雅0118様、武御雷参型様、ミラ ランドラス様、頭翅様、ゆっぴー様、つらら@ゆき様、異夢様、シラカンバⅡ様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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