魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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レイとエリオとマテリアルズメインって言うか子供組メイン


特別編『どんなに強くても怖い物は怖い』

「では………始めるぞ」

 

 真剣な顔で此処に居る皆に告げるアンズ。

 それに頷くのはレイ、サクラ、エル、エリオの4人。5人の中央にあるのは―――

 

 

 『恐怖、百物語』と書かれたケース……

 

 

 全ては数10分前に遡る……………

 

 

 

 

「あづ~」

 

床に寝そべって半分溶けかけているエル。

 

「確かに………コレは暑いですね………」

「だらしないぞぉ………我はへいきだぁ……」

 

 サクラやアンズもエル程では無いが溶けかけている、アンズに至っては語尾が溶けかけている。

 先週から連日かなりの猛暑。部屋は蒸し風呂状態、エアコンはその暑さで修復不可能なまで大破……

 コダイは学校、アインはコダイに頼まれ新しいエアコンを買いに電気店に向かった……

 

「それに……レイとエリオは平気なんですか?」

「うゆ?」

「え?」

 

 サクラはレイとエリオ見る。

 レイの来ている服は黒のノースリーブのミニスカートタイプのワンピース、エリオは黒いTシャツに半ズボンだった。

 

「黒は一番熱を吸収するんですよ?暑く無いんですか?」

「ぜんぜんあつく無いよ?」

「そんなに暑くありません」

 

 同じように汗は掻いているが未だに元気だ。

 

「サクラって炎だよね?なのに何であついのダメなの?」

「レイ……いくら炎熱の変換資質をもってしても熱い物は苦手なんです。それにこれは違う暑さです」

「うゆ?」

 

 サクラの最後の言葉に首を傾げるレイ。

 『熱さ』と『暑さ』の違いを言おうと思ったが―――

 

「いえ……何でも無いです」

 

 レイには漢字が読めないので一切の無駄だと知って諦めた。

 

「そう言ったらコダイはどうなの?」

「コダイさんって殆ど長袖ですよ?」

 

 エリオは知らないがコダイが常に長袖の理由はデバイスであるレイがいる宝石が右腕に埋め込まれているのでそれを隠す為でもある。

 

「そう言えば何でコダイ様はあんなに平然としているんでしょう?」

 

 それでもこんな猛暑で長袖しかもカーディガンを着て汗1つ掻かず登下校をしている

 魔法で快適化?………そんな魔法を使えると聞いた事が無い。カーディガンの内に何か仕込んでいるのか?……サイズは大きいが仕込むスペースが無い――と暑さで上手く回らない頭を必死に回す。

 

「そんな事よりあ~づ~い~!!この暑さは何とかならないの~!」

 

 あまりの暑さに苛立っているエルだが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「『心頭滅却すれば火もまた涼し』と言いますから心臓と頭を消せば涼しくなりますよ?手伝ってあげましょうか?」

 

 ユラリと立ち上がり据わった目でルシフェリオンをエルに構えた。

 ………一番苛立っていたのはサクラだった。

 

「うわぁっ!?冷えた!!今ので充分冷えた!!」

 

 だらけていたエルの顔が一瞬で青ざめてエリオの後ろに隠れた。

 

「サクラ落ち着けぇ……暑ぃのは皆同じだぁ………」

「む……そうですね」

 

 サクラの肩を掴み暴走を止めたアンズ。その言葉に威厳は欠片も無いがどうにか落ち着いたサクラだった。

 

「エルさん、アンズさん大丈夫ですか?」

 

 一件落着した所でエリオは後ろの隠れているエルの方を見た。

 先程までだらけていたのが今は汗も引いていて普通でいた。

 

「あ~うん!むしろさっきのでかなり涼しくなったって言うか……ってあ~そんな話をしたらまた暑くなりそう~………あ、床つめたい」

 

 エリオから離れて、再び床に寝そべったエル。

 

「そうですね……あ、じゃあ麦茶でも飲みましょうか?」

「エリオ、氷も入れてね!」

「勿論いれるよ」

 

 それを聞いてたレイが飛び跳ねる様に手を上げる。

 

「ではエリオ、私も手伝います」

「ありがとうございます、サクラさん」

 

 エリオとサクラが台所に向った。

 

「涼しく………そうだこの手があった!!」

 

 その時、アンズは何かに閃くと部屋に戻り、数秒で戻ってきた。手には何かを持っていたのはディスクケース。

 

「以前、姫が貰ったと言う物を思い出した!」

 

 そう言って全員の前にソレを出した。

 

「おまたせ~」

「おかわりするのでポットごと……アンズどうしたのですか?」

 

 そこにコップに氷を入れた麦茶を人数分持ってきたエリオとおかわり用にポットを持ったサクラが戻って来た。

 

「あの時のサクラで体が冷えたから、怖い物を見れば皆涼しくなる筈だ!!」 

 

 そして冒頭に戻る………

 

 

 

 

「あの……アンズさん?」

「うむ?どうしたエリオ?」

「何で部屋のカーテンを閉めて暗くしないといけないんですか?」

 

 テレビの前のソファーで5人仲良く座っていて、目の前のには飲み物とお菓子、何故か部屋を暗くしている。

 位置はサクラ、アンズ、エリオ、エル、レイの順で座っている。

 

「映画と言う物は薄暗いと聞いた、この方が臨場感が出るだろう?」

「そう言う物なんですか………」

「エエエエエエエリオ?こここ怖くなったら僕に抱きついても良いんだよ!?」

「エルさん、まだ始まっていません」

 

 胸を張るエルだが顔が先程のサクラが暴走した時と同じ位顔が青くなっている。

 

「安心してくださいエリオ、どんな怪談だろうと一撃(?)ですから」

「サクラさん意味が分りません……後デバイスを持たないでください」

 

 ソファーに座りルシフェリオンをしっかりと握りしめているサクラ。

 

「フフフ安心しろエリオ、王たる我に掛れば怪談など塵芥だ(意味不明)……さすがに喉が渇く……む?さっき汲んだ筈なのだがもう空か?」

「アンズさんそれリモコンです、麦茶はこっちです」

 

 何故かリモコンを煽るアンズにコップを渡したエリオ。

 そして、恐怖を誘うBGMと共に『恐怖、百物語』が始まった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあああああああああああああああ始まったあああああああああああ!!!」

「ひっ…………!!」

 

 エルの悲鳴と、その悲鳴で驚くアンズ。

 

「ちょっと、エルさんアンズさん!タイトル!まだタイトルですから!!」

「あ、ゴメン……」

「うむ……」

「…………………………」

「アレ?サクラさん?」

「――――し……………」

「し?」

「コレは作り話コレは作り話コレは作り話これはつくりばなしこれはつくりばなしこれはつくりばなしコレハツクリバナシコレハツクリバナシコレハツクリバナシ―――」

 

 ルシフェリオンを握る手を震わせながら暗示の様に呟くサクラ、唯一の救いは弾みで魔法を使わなかった事だ。

 恐怖ですくんだかまたはエリオの姉の威厳か……

 

「………あ、始まった」

 

 エリオはこの時『本当に大丈夫だろうか?』と思った―――

 

 

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!ねこおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「ひゃぁ……っ!!」

「コレハツクリバナシコレハツクリバナシコレハツクリバナシ――」

 

 エルのオーバーアクション、それに驚くアンズ、そしてサクラの自己暗示。

 コレは『恐怖、百物語』が終わるまで続いた……

 

 

~2時間後~

 

 

「終わりましたよ?」

 

 ディスクをケースにしまいながら言うエリオ。

 振り返ると意気消沈と言ったサクラ、エル、アンズがソファーに沈んでいる。

 

「エ、エリオは……怖く無かったの?」

「ま、まあ………そんなに」

「カッコいいぞ~」

「うむ……エリオは強いな……」

「あははは……」

 

 2人の賞賛に苦笑いで答えたエリオ……

 言える訳が無かった……3人の反応が凄くて集中出来なかった事は口が裂けても。

 

「コレハツクリバナシ、コレハツクリバヤシ、コレハクリバヤシ………」

「あのサクラさん、終わりましたよ?」

「バナッ!!―――そ、そうですか。大した事無かったですね」

「そ、そうですね…………そう言えばレイはずっと静かだった様な……」

 

 エリオは途中から変になっていたサクラの自己暗示を見なかったことにしてレイの方を見ると……

 

「…………」

 

 座ったままの微動だにしないレイが居た。

 

「微動だにしないとは………流石姫のデバイスだ!!」

「スゴイぞ!強いぞ!カッコいい!!」

「………………」

 

 アンズとエルから拍手を送られたが、それでも微動だにしないレイ……

 

「あれ?………レイ?」

 

 様子がおかしいとエリオがレイの目の前で手を振って見る………反応なし。

 

「レイ?……終わりましたよ?」

 

 サクラがレイの方に手を乗せると………

 

 

――トサッ!

 

 

 そのままソファーに倒れた……………

 

「気絶している!?」

「一体いつからですか!?」

「ヤバイ、テレビに夢中で見て無かった!!」

「ええい!狼狽えるな。まずは呼吸と脈を確認して……「ただいま帰りました」アイィィィィィィィィン!!!急患だああああああああああ!!!!」

「な、何だ?!敵襲か?!」

 

 その後、アインの的確な処置により意識を取り戻したレイ。

 

「……成程、納涼の為にこの映画を観てて気が付いたらレイが気絶してたと」

「そんな所です」

 

 レイが意識を取り戻した頃、アインがこの状況を聞いてエリオが1から説明した。

 

「……で、それで何であの4人は固まっているんだ?」

 

 アインが指した方にはレイ、サクラ、エル、アンズの4人がこんな猛暑にも関わらずお互いに身を寄せる様に固まり震えていた。

 

「それはですね―――」

 

 

――カタ……

 

 

「「「「っ!!」」」」

 

 エリオが言いかけたその時、小さな物音がした。それに4人が肩を震わせた。

 

「何ていうか……全員苦手な様でした」

「そ、そうか………所でエリオは平気なのか」

「苦手ですけど、あの4人ほどでは―――」

 

 

――Prrrrrrrrrrrrrr!!!

 

 

「「「「ひゃあああああああああああ!!!」」」」

 

 

 突然の電話のコール音、固まってた4人が今度は驚いて跳び上がった。

 

「―――はい、トキガワです」

 

 アインは何事も無く電話を取った。

 

「はい………はい。…………冷蔵庫に―――分りました、ではお気を付けて」

 

 何度かの応答を終えて電話を切る。

 

「どうしたんですか?」

「ああ、主が今夜は遅くなると言っていた」

 

 電話の主はコダイだった。

 

「エリオ~!!!」

「うわぁっ!」

 

 レイが泣きながらエリオに後ろから抱き着いた。

 

「おといれ~」

「大丈夫だから行ってきなよ……」

「手が出てきたらどうするの?!」

「それは古い家の場合だから」

「花子さんは?!」

「ここ学校じゃないから」

「扉の上から誰か覗いてたら?!」

「トイレ密室じゃん……」

「おといれの前で良いから~!」

 

 次々に論破され、最終的には泣き落としに走ったレイを落ち着かせようとしたエリオだが、それはもう1人の人物によって阻まれた。

 

「そうだ~!お姉ちゃんの言う事聞け~!そして僕とトイレに行くんだ~!!」

 

 レイと同様、色々な意味で限界だったエルがエリオの右腕を抱き締めた。

 

「エルさんも?!ちょ……2人とも引っ張らない―――」

 

 エルにガッチリと腕を組まれレイと共に引き摺られていくエリオだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程……そんな事があったのか」

「ええ……私は見てはいませんが」

 

 コダイが帰って来たのは夜9時過ぎ。返って来た途端4人は弾かれるように玄関に走りコダイにしがみ付いてた。

 取り敢えず4人を引き摺りながらアインに説明を求めて理解したコダイだった。

 

「それと主、1つ質問が……」

「なんだ?」

「何故巫女の服を着ているのですか?」

 

 4人にしがみ付かれて良く見えないが、隙間から覗く白い小袖と緋袴(ひのはかま)、間違いなく巫女装束だった。

 

「女装はオシャレだ……それに事情があってな。そうだ、エアコンいつ来るって?」

「はい、希望の物を購入できました。今週中には取り付け来るそうです」

 

 電気店の店員の話だと、この猛暑でエアコンの購入が増えているらしいので運が良かったと……

 少しでも遅れてたらかなり先延ばしにされるとも言っていた事も伝えた。

 

「ありがとう、アイン」

「いえ……そう言えば電話で遅くなると言いましたが何をしていたのですか?」

「………言っても良いが。ここで話すと余計に騒がしい事になるから」

「え?」

「コッチの話だ―――」

 

 

 その日の夜はエリオを除く子供組の主張により全員でリビングで布団と敷いて寝たらしい……

 

 

 

~オマケ~

 

 

 数日後アインがマテリアルズの部屋を掃除中の時。

 

「ん?コレは……たしかあの5人が見ていた……全く、こんな魔法でも無い非現実的な物が怖いとはな……」

 

 アレ以上に怖い物は無いだろうと呆れたが……………逆にそんなに怖い物なのかと好奇心が芽生え始めた……

 

「どれほど怖いもか見て見るか―――」

 

 

 

 

 その日、コダイから離れないアインがいたとか…………




コダイの巫女服なのは次回で明かされます。

頭翅様、SD009様、桜日紅葉雪様、つらら@ゆき様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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