魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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戦力、着々と強化中……byコダイ

「アイン、着いてこなくても良いんだぞ?」

「いえ、そう言う訳にはいきません」

 

 地上本部をアインと歩き3回目になるだろうやり取りをする。

 今回はレジアスから貰った情報で保護した孤児が行方不明になっていると言う話。

 動きが怪しい奴をリストアップしてもらったので鎌をかけてどう動くか……所謂『釣り』だ。

 全員に確証は無いが黒なら黒らしい行動をするし、黒でないなら功績を上げようと動くから手を出さずに済むし……

 

「先ずはココだな……ん?取り込み中だな」

「後にしますか?」

「そうだな、少しだけ待ってみるか」

 

 扉の向こうから僅かだが声が聞こえる、それほど激しい口論見たいだな……もしかして当たり?

 扉に耳を付けて、聞き耳を立てる……… 

 

 

――それが管理局の為だと言うんですか!!

 

 

 1発で当たりを引くとは運が良いのか悪いのか………

 

「どうやら誰かが不正を見つけた様だ」

 

 身内にバレるとは3流以下だな。

 しかし見つけた局員も凄いな、口封じに会うかもしれないのに啖呵を切ってるよ。

 これはこの局員に聞いて見るか。そろそろ終わるな……壁から耳を離そうとした時―――

 

「失礼しました!!って……うわぁ?!」

 

 勢いよく扉から出てきた局員とぶつかり尻餅をついた……まさか勢いを殺さないとかどれだけ怒り心頭だったんだ?

 

「えっとゴメン!君大丈夫?!」

 

 慌てて手を差し伸べた局員を見上げる。オレンジ色の髪の20代前半の好青年の男性だった……確かこの部屋にいた奴の部下だったな。

 

「いや、こちらの不注意だから気にするな」

 

 折角なのでその手を取って立ち上がる。

 

「えっと……君は」

「コダイ・T・ベアトリス……で後ろに居るのはアイン」

 

 アインが小さく礼をした。

 

「自分はティーダ・ランスター一等空尉です」

「ティーダ・ランスターね………早速効きたい事があるが……さっき口論は何だ?こっからでも聞こえてたぞ?」

「―――やっぱり聞こえてたか。じつは相談があって………君の噂が本当なら」

「噂?」

 

 何かレジアスに続いて碌でも無さそうな気が―――

 

「君の噂……特に黒い部分は良く耳にしていて。何でも顔と名前が分れば分らない情報でも手に入れられるという噂を―――」

 

 本当に碌でも無かった。

 

「それ事実、正確には人に限りだが」

「………いや、そんなまさか……」

「信じられないなら――――」

 

 懐から『DEATH NOTE Vol.91』を取り出した…………

 

「あ、それで十分!何か超えてはいけない一線の様な気がした!」

「理解が早くて助かる」

 

 バラしたかった……

 

「―――でこの事を踏まえて、もう一度同じ質問を返すが?」

「………場所を変えよう、ここじゃ聞かれるかもしれない」

 

 ティーダの言う様に道端で話す内容では無いので場所を変える事に。

 互いに相談した結果、場所を食堂に決定、俺の向かいにテーブルにティーダがいた。俺の隣にいるアインにはその周囲の索敵を頼んでいる。

 

「…………成程、確かにそれは妙だな」

 

 ティーダが口論していたのは、やはり上司が不正を行っていた事についてだった。

 

「実験に身寄りのない子供が使われている……それを『管理局の未来の為だ』って言っていたけど納得出来ない……確かに近年犯罪は増える一方で、より強固にするのも分るけど、それを子供の未来を奪ってまでする事じゃない」

「確かに人造魔導師よりもコストは遥かに抑えられるがその分リスクが跳ね上がる。普通に出来る様な実験では無いから間違いなく局が絡んでいるな……取り敢えず地上にも強い繋がりを持っているからそれとなく聞いてみる」

 

 いくら資質が高くてもたかが子供が戦力の足しになるのか?なのは達見たいな飛び抜けた才能ならすでに本局に持ってかれるしな…… 

 

「≪主コダイ、こちらを見て妙な行動している局員を見つけました。おそらくランスター一等空尉の―――≫」

「≪やっぱり動いたな―――≫」

 

 手際は良い事で……いや、知られたから焦っているのが正しいな。

 

「≪となると、このままでは彼が危険ですね≫」

「≪アインは部屋に戻ってレジアスに報告、それにクロノにも伝えて本局側でも起こって無いか調べさせろ≫」

「≪分りました、主はどうします≫」

「≪奴らのやろうとしている事は分り切っているから邪魔をする≫」

 

 念話でアインに伝えた。

 

 

「えっと……大丈夫?」

「ん?いや、それよりもこの後大丈夫か?」

「え?……予定はもうないな」

「それなら………実は飲み屋のクーポンが今日限りなんだ、今暇な奴はいないらしいから一緒に行かないか?」

「えっと………夜までなら大丈夫」

 

 時計を見て何か考え込んだ後頷いた。

 

「じゃあ、オフだし着替えて表で集合で良いか?」

「分った、じゃあすぐ準備するよ」

 

 ティーダと別れ、俺も準備を始めた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備して待ち合わせ場所に向かうともうティーダは待っていた。

 

「待った?」

「いや、大丈―――」

 

 近づいて声を掛けるとティーダは振り返り、こちらを見たまま固まってしまった―――

 

「ん?……もしかして変だった?カチューシャの位置とか苦労して」

「いやそうじゃなくて、凄く似合っているよ」

 

 それは良かった。今回は春らしく薄いピンクのワンピースに薄い水色のニットのロングカーデ、髪型は白いカチューシャで耳を少し出してみた。

 靴はキャメルのショートブーツ、財布などの必需品はかごバッグを肩にかけている。最近女装できなかった反動でかなり気合が入った物になった……

 

「さっきとは全然雰囲気が違うから面食らっちゃってさ……」

「一応学生だから制服で通しているから」

 

 出撃が無い日は中学の制服でいる事が多い、学生の礼服だし特に問題は無い。

 ちゃんと着てないのは別として。

 

「へぇ…………え?」

 

 納得したティーダだが再び頭を押さえて考え始めた。

 

「えっと………さっきまで来てたのは君の学校の制服何だよね?」

「そうだ」

「その学校には制服に対して決まりとかは?」

「一般的な学校と比べても遜色は無い筈……」

 

 押さえながら来るティーダの質問に答えていく。

 

「――――つまり君は…………男?」

「正解」

 

 あ、性別の確認してたのか。

 

「ちょっと待って?!男なのに何でそんな恰好に?!」

「女装はオシャレだ」

「落ち着くんだ!そして目を覚ますんだ!それはオシャレじゃない!!一体君に何があったんだ!?」

 

 ティーダが肩に手を乗せて真剣な目でこっちを見てくる。

 しかもパニックになって思考がネガティブな方向に行っている。俺が過去に人に言えないような過去を抱えている見たいらしい……

 実際に言いたくない過去が盛りだくさんだけど。

 

「何もないから落ち着け」

 

 ティーダが落ち着くまで数分かかった…………飲み屋の予約時間にはギリギリで間に合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はごちそうさまです……って割り勘だけど」

「こっちもクーポンが消費出来て助かった………1:9が割り勘と言うのはどうかと思うけど」

「流石にここは大人に払わせて貰わないと」

 

 夜……首都ラグナガン。飲み屋を出て夜風に当たりながら歩いている。

 会計の際に誰が払うかに一悶着があった。誘った俺が払うと言ったがティーダが自分が全部払うと断固拒否。

 口論の結果、俺1割でティーダ9割で払う結果になった。

 

「いや、それでもホント不思議だな……まさかあの有名な『新代の魔導師』と食事する事になるなんて……しかも男だと」

「え?何?……そんなに有名なの?」

「年齢不詳。そのミステリアスな雰囲気と人形の様な美しさと色気を持つ魔導師と言われてます」

「それ何の雑誌?」

 

 なるべく目立ちたくは無いが……なのは達と同じ事件を解決した以上目立つなと言うのが無理な話――――

 ん?……ヤレヤレやっと来たか。

 

 

「ティーダ、構えろ」

「え?……っ!!」

 

 次の瞬間、結界が覆われ、それと同時に魔導師が数人現れた……局員では無いとすると、雇われた犯罪者と言う所だな。

 

「何だお前たちは!!」

 

 素早くデバイスを起動、防護服を纏い銃型のデバイスを構えたティーダ。

 

「話す必要は無い…今日ここで貴様には死んで貰う」

 

 魔導師達がデバイスを構えた。

 

「うわ、聞きそうで聞かない犯罪者の常套句」

「いや、のんきに言っている場合!?」

「修羅場はもう慣れたから」

「すっごい嫌な慣れ……」

 

 死にかけない日は無かったな。

 

「そんなに話してて良いの「どうでも良い、ガンブレイズ」何っ!?」

 

 ちょうど前に固まっている集団に極小の魔力弾の弾幕が魔導師の集団を吹き飛ばした。

 

「くっ………この」

 

 やっぱりこの程度では倒れなかったか。直ぐに発動できるのはこれとスローナイフとプラスブレイク、威力は期待できないな。

 ……よし、時間はかかるが完成した集束砲撃で―――

 

「ガァッ!!!」

 

 次の瞬間、10人以上の魔導師の集団にオレンジ色の魔力弾が命中した。着弾と同時に魔導師は何度も痙攣を起こしてその場に崩れ落ちた。

 魔力弾の軌道をたどるとティーダが銃を構えたままだった。

 

「10人以上も居る目標を同時スタン。しかもあんな密集している場所に……」

「精密射撃は自信もてる魔法だから」

 

 サクラと同じセンターガードか………サクラの殲滅型を違って一つ一つ丁寧に潰す各個撃破型か。

 

「ティーダ、1つ頼みがある」

「え?……どうしたの?」

「―――死んでみるか?」

「は?……………はぁ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後……

 例の一室でニュースを見ると。ティーダが死んだ事が公表された……

 そのモニターの前で落ち着かない様子の男が1人。

 

「どうした?」

「いや、何か微妙な気分で」

「仕方ないだろ?こうでもしないと何をするか分らないからな……用心だティーダ」

 

 あの後、今回の上司についてや色々事情を話したら協力してくれる事になった……表向きには逃走中の犯罪者と交戦して死亡、犯罪者は別の部隊が拘束したと言う事にした。

 襲って来た魔導師はクロノが呼んだ部隊に引き取ってもらった。

 

「そうだよね……もしあのまま生きていたら妹にも被害が及ぶかもしれない………けどいきなり『死んでみるか?』って無いんじゃないかな?」

「いや、手短に話そうと思ったらそうなった……」

「天然なんだね」

「そうなのか?」

 

 あ、溜息つかれた……

 

「それと、ティーダの妹の様子はティーダの葬儀のついでにクロノと見に行く」

 

 その他についてはレジアスが色々してくれた………流石中将。

 

「ありがとう」

 

 さて………準備するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 葬儀は地球の外国のとあんまり変わらなかった……服は制服(女子)で出た。

 生きている奴の葬儀に参加って………何か変な感じだな。

 

「コダイ………その、元気出せ」

「いや……ただ驚いただけだから」

 

 葬儀の際にティーダの妹にあったんだけど、初対面で―――

 

 

――あの……お兄ちゃんの恋人さんですか?

 

 

 と穢れの無い目で言われた………兄を犯罪者にする気か?(年齢と性別的な意味で)

 

「女顔は知っているし、大人っぽいと言われた事もあるから良いけど恋人って……」

「近くにいた僕も流石に驚いたよ……」

 

 だってクロノ思いっきり噴き出してたし……一応、ただの知り合いと言ったけど。

 

「……で、そっちの方はどうだった?」

「黒だった……まだそっちには回せないからフェイトとアリシア達と共に一斉捜査に入った。保護できたのは少年1人……最も無事といえる状態では無いな」

「予想しやすい展開だな……」

 

 そこは全部フェイトとアリシアに任せよう。

 俺みたいな奴を改心させるなんて無理だろ。そこから更に狂っているのに……

 

「…………ん?」

 

 気が付くと葬儀の空気が一変した………終わった訳でも無い。

 ………あそこにいるのはティーダの妹と元上司だった。

 

 

「違う!!お兄ちゃんは無能じゃない!!」

「何を言う、犯罪者を捕えられなかった時点で無能だ。死んでも捕まえるべきだったと言うのに――」

 

 どうやら死んだティーダに何か文句を言ってるみたいだな。

 『死人に口なし』という言葉があるけど死んだ人間にこうも口汚く罵倒している姿は滑稽だな。

 

 

「しかも犯人を他の部隊に取られるとは……面汚しめが」

 

 しかも罵倒はまだ続いている。妹の方は最初は文句を言っていたが、次第に顔を俯かせて服をギュッと握りしめて涙を堪えている様だ。

 

「クロノ凄いぞ。あの局員、クロノより空気を読まないぞ」

「敢えて読んでも無いお前にだけは絶対言われたくない。しかし彼を無能とは見る目が無いな」

「クロノ知っているのか?」

「彼は執務官志望だったからな。それに空士としてはエリートクラス、精密射撃魔法に多重弾殻射撃―――ランクはそれほど高くは無いが各上でも優位に立てる実力を持っている」

「単騎では難しいが良い前衛と組めば問題なしだな」

 

 さて、問題と言えば。まだ罵倒を続けている局員……

 口封じ出来た安堵で一気に噴き出したのか?

 

「どのみち会うつもりだったし、早い方が良いか。クロノ(俺の)拘束任せた」

「任せろいつでも(お前を)拘束出来る準備は出来ている」

 

 それは用意周到な事で……

 中腰になり気配を消す。そして大きく回り込んで未だに何か言っている局員の後ろに回り込んで……

 

「うるさい」

 

――ガスッ!

 

 脇腹に蹴りを入れて蹴り飛ばした。

 

「ガハッ!!」

「何時まで喋っている、何度も同じ話題をだすな、いい歳こいてマナーも知らないのか、後単純に面白くない」

「な……何だ貴様は!いきなり人を蹴って置いてその言い草は何だ!!あの無能の知り合いか?!」

 

 蹴られた体勢から立ち上がり此方を睨んでくる局員。反撃してこないだけ利口か?

 

「一応……それよりも遺族を更に泣かせてどうするんだ……貴様はアレか?馬鹿なのか?アホか?」

「フン、流石無能の知り合いだけあって礼儀がなっていないようだな」

 

 蹴られてもその態度ってある意味凄いな……

 こっちはどう見てもただの小娘だし自分の立場の方が上って思っているからだろうな。

 

「礼儀って……『ご苦労様でした』……で良いのか?」

「ッ……貴様!!」

 

 ご苦労様は丁寧だが目下に使う言葉だから、気を付けよう。

 

「コッチは局員でも無いのに何で貴様見たいなのに礼儀なんか使わなければいけないんだ?」

「何だと!?」

「ただ犯罪者を捕まえられなかっただけで無能呼ばわりとわな……人の事が言えるのか?」

「何も知らない子供が………いいか!管理局は正義の組織だ!悪である犯罪者を捕えられない時点で悪以下のむの―――」

 

 

――ゴシャッ!!

 

 

 今度は顔を殴った。

 あ~もう何よこの世界の人間は、そんなにその言葉が好きならテレビで出演しなさいよ。それ言ってればお茶の間のヒーローよ。

 別にこいつはレジアスみたいに必要な訳でも無いしどうなっても良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 その後はよく覚えて無かった…………かすかに覚えていたのは。

 

 原型をほぼ留めていない男と……

 

 クロノがデュランダルを起動していたのと。

 

 ティーダの妹が目を回して気絶していた事だけだった………

 

 

 

 

 

 次に目を覚ましたのはクロノに氷漬けにされて3日後だった……




桜日紅葉雪様、黒人様、感想を有難うございます。

~次回もお楽しみにしてください~

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