魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

83 / 156
偶には見る側も良いなbyコダイ

「使用者との魔法行使のタイムラグは……この誤差なら問題ないな。性能も従来のと比べて使いやすさと頑丈さを上げてそれ以外は何時でも調整出来るし…………あ、フレームの強化。こればっかりは如何にもならない」

 

 目の前にあるポッドの中に浮いている薄紫色の宝石の首飾り。

 3提督に与えられた部屋の一室、デバイスルームでクイント用のデバイスを製作していた。

 多分起動には問題無し、性能も使用者に違和感が無い物に仕上がっている筈………あくまで推測、クイント自身が確かめないと意味無いしな。

 

「ヤッホー♪お昼に軽食持ってきたよ~」

 

 噂をすれば本人ご光臨、隣にはサクラもいた。

 クイントの怪我は予想よりも早く治った………と言うか10人前以上食べて治らないとか燃費が悪すぎる。

 

「ここに置いて置くね」

 

 空いている机に置かれたのは山盛りのトマトソースのパスタ…… 

 

「軽食?」

 

 およそ4人前はありそうなパスタを指してクイントを問いただす。

 

「軽食よ?これ位食べないと~男の子なんだから……あ、コダイ君の場合男の娘?」

「俺に聞くな」

 

 と言うか何で桃子やらリンディはそう言うんだ?意味が分からない。

 それに男だって知った時の反応は桃子と同じだった……この世界の子持ちは皆こうなのか?

 

「大丈夫です私も手伝います」

「何で貴様はおこぼれ貰う気満々なんだ」

 

 顔に出ないものの目が輝いているサクラがいた。

 

「しかし、本当に良いタイミング」

「あら?何が良いタイミングなの?」

「丁度クイントの事考えてた――」

「やだも~♪お上手~でもごめんね~私は旦那一筋だから~」

 

 意味も無くクネクネし始めるクイント。

 

「……デバイスが出来たから試運転を―――って話を聞け」

 

 ムカついたので薄紫の宝石の首飾りをポッドから取り出して、クイントの顔に向かって投げつけた。

 

 

――ベチンッ!

 

 お、良い音。

 さて、折角の軽食(クイント談)だから冷める前に食べるか。

 

「アイタッ―――っ~……ってコレが私のデバイス?」

≪そうです≫

 

 顔から落ちるのを両手で受け止めた薄紫の宝石が光ると同時に女性の声が響く。

 

「うおっ喋った?!もしかしてこれってインテリジェントデバイス?」

「―――ンク。名前は決まってないから自分で決めろ」

「そうね…………クイントキャリバーはどうかしら?」

「自分の名前付けるか?―――アム」

「だって、インテリジェント何て高くて手が付けられないじゃないの~それに、私も魔法って結構特殊だから自動詠唱の設定が難しいって言われてるし……」

 

 今度は泣き出した………

 

「別に出来ないとは言って無いだろその技師は。コッチには1から魔法を創った知識があるし、その魔法を解析しすれば組み込むのは容易だ。リボルバーナックルもソレに全部入る様に設定してある―――アム」

 

 よし、パスタ半分行った。

 

≪マスター認証『クイント・ナカジマ』―――個体名称『クイントキャリバー』登録完了しました≫

「よし!クイントキャリバー、セットアップ!」

 

 デバイスを起動して騎士甲冑を纏うクイント。

 動きを阻害する装甲は膝のみ。後は動きやすそうな全身を覆うノースリーブのボディースーツに黒いベスト。

 両腕には手首部分に歯車の様なパーツがある紫と薄紫の色合いの非人格の拳装着型のアームドデバイスのリボルバーナックル。

 両足には足首に薄紫の宝石があるインラインスケート型デバイス、クイントキャリバーの本体ともいえる所だ。

 縦に4輪、前後に分けてサスペンションをしてかかと部分にマフラーが2つずつ配置されている。

 

「うわスゴ……リボルバーナックルまで再現されてる」

「あくまで移動系の制御とその他の補助に優先してるから今までの動きでも違和感は無いと思う」

 

 それを確認するように軽くシャドーをしているクイント。

 

「うん……リボルバーナックルも使い込んだように馴染んでるし、それにキャリバーの方は当然しっかりしてる……今までの倍以上動けるかも。これの試運転ね、それならどこかの無人世界に転移して動作を確かめないと」

「その事ですが………私と模擬戦はどうでしょうか?」

「模擬戦?ん~………OK♪その方が断然良いし」

 

 サクラの案に少し考えた後、笑顔で答えた。

 

「だったら他の子達にも教えないと」

「それはコッチでやる、皿を洗うついでだ」

「全部食べたのですか?!」

 

 驚いているサクラ。やっぱり貰う気だったのか………

 エル、アンズ、レイにこの事を伝え。無人世界に転移。

 場所は砂漠地帯で、かつて大きな戦争で人々が離れて行った為風化した建物が並び、時折砂嵐が視界を塞ぐゴーストタウンの様な場所だった。

 クイントとサクラが所定の位置で準備をしているのを両者を離れた上空で2つのモニターで見ている。空中の為、俺はイレイザーになっている。

 

「良いな~サクラ。僕も戦って見たいのに~」

 

 その隣で剥れているエル。

 

「剥れるで無いエル、今度頼めばいいだろう。所で何でこんな障害物が多い所にしたのだ?模擬戦なら開けた方が―――」

 

 逆の隣で腕を組んでジッとモニターを見ているアンズ。今回の結界担当だ。

 

「あくまでデバイスの試運転を兼ねてだからな。クイントの戦闘スタイルを見るに障害物が多く、立体的な動きが出来る方がデバイスの性能を見れるしな。それに近距離(フロントアタッカー)のクイントと中距離(センターガード)のサクラでは相性は悪いから建物を遮蔽物として距離を取ったり縮めたり出来るしな」

「成程、開けた場所だと戦闘スタイルの差がモロに出てしまうからな」

「お互いにベストな環境となるとああなる。さて―――」

 

 クイントとサクラが軽くアップを済ませた所を見計らって通信を繋ぐ。

 

「お互いの魔力切れか、気絶が敗北条件だ。準備は良いか?」

「OK!」

「何時でもいけます」

「では――――始め」

 

 合図を出すと両者同時に動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、あなたの性能見せて貰うわよ!」

 

 最初に動いたのはクイント、その足元に薄紫のベルカ式の魔法陣が展開してそれを中心として複数の帯状の魔法陣が伸びて、曲がり、捻り、縦横無尽に建物の間を縫う様に複雑に伸びてサクラの周りを囲んで行く。

 

 

 

 

「これは……」

「うわっ!何アレ?!」

 

 現場にいるサクラより驚いているエル。

 

「ウィングロード、クイントの移動魔法だ。あの帯は物理的な干渉が可能であの上に乗って移動する、他の奴も乗って移動も可能だ。クイントの先天系(インヒューレント)の魔法でコレが自動化が難しかった理由だ。普通のとは違うし」

 

 因みにこちら側の声は2人には届いてない。

 

 

 

 

「設置型……では無いみたいですが」

 

 サクラは直ぐに移動を始めた、ウィングロードをサクラが知らない以上、囲まれた状態はまず不向きと判断したな。

 

「おっと、行かせないわよ!」

 

 サクラの目の前のウィングロードから駆け上がってきたクイントがキャリバーで加速した勢いに乗せて拳を放った。

 

 

――ガキャン!!!

 

 

「クッ―――アァッ!!!」

 

 咄嗟にルシフェリオンで防いだが加速された勢いは殺せず後ろへ吹き飛ばされた。

 クイントは更に追撃を狙い、ウィングロードを乗り換えてサクラの後ろに回り込んだ。

 

「させません!」

 

 サクラも直ぐに体勢を整え反撃開始、パイロシューターを4発形成して素早く発射した。

 それをクイントは気にもせずパイロシューターに向かい突っ込んだ。

 

「なっ―――正気ですか?」

「勿論、それにフロントアタッカーは最前衛の防御と生存スキルが重要――」

 

 クイントにパイロシューター4発全てが着弾、だがクイントはお構い無しにサクラに接近した。

 

「頑丈なのは当然よ!」

「これ以上は―――ッ!!バリアバースト!!」

 

 

――ドガァァン!!

 

 

 魔力を圧縮したリボルバーナックルで先程よりも加速を乗せた拳を突き放つクイント。それを障壁を目の前に展開して防いだサクラだが。

 クイントの拳が衝突した瞬間、障壁に大きな罅が入るの見て咄嗟に障壁を爆発。その隙に離脱して距離を取った。

 

「ハァ……ハァ……防御にはオリジナル同様、自身があったのですが……」

 

 サクラが爆発させた場所を見下ろすと―――

 

「今のは良い判断ね。あのまま受け切ろうとしてたらもう片方で撃ち抜いてたもの」

 

 無傷同然のクイントがサクラを見上げてた。

 

 

 

 

「えっ何!?何で?!何でサクラの攻撃受けても平気なのクイントは?!」

 

 さっきから驚いてばかりでモニターに齧り付いているエル……あ、アンズに引き剥がされた。

 

「ちゃんと防御している。バリア系の防御魔法を当たる部分に集中させる事でシールドと同じ役割が出来る――高等技術だけどな」 

「あの様な防ぎ方が有るとは―――」

「僕も出来るかな?!」

最後衛(アンズ)高速機動(エル)には必要無いだろ」

 

 アレはシグナムみたいにクロスレンジ主体の奴の為見たいなものだし……

 

 

 

「このキャリバーも結構凄い子ね。今度はもっと速く!」

 

 クイントが速度を上げてウィングロード駆け回る。今まで攻撃時に速度を乗せるために加速していた速度で移動している。

 

「流石にこの速度は捉える事は出来ませんね―――」

 

 そう言ったサクラがルシフェリオンを静かに構えて、パイロシューターを計14発を形成。

 

「なら―――動きを止めて焼き尽くす!!」

 

 その内2発を操作してクイント――では無くその少し前のウィングロードに撃ち込んだ。

 

 

――ドドン!! ドドン!!

 

 

「―――っと!……うわっ?!」

 

 目の前で魔力弾が着弾して急停止したクイントは逆走しようとしたが、時間差で後ろから来たもう2発の魔力弾によって足を止められた。

 

「今です!!」

 

 サクラがこの隙をついて残りの魔力弾を全てクイントに狙いを定めて発射した。

 

 

 

 

「おおっ!上手いぞサクラ!!」

 

 それをモニター越しで拳を握りしめているアンズ。

 

「時間差で進路と退路防いでその隙に一斉攻撃。サクラ、あの一瞬でウィングロードの弱点に気づいた見たいだな」

「弱点?」

「見てれば分る」

 

 

 

 

「やるわね……けど、コッチは殴るだけじゃないのよ!」

 

 右腕のリボルバーナックルのカートリッジを1発使い手首部分のスピナーと呼ばれる部分を高速回転させたクイント。

 

「リボルバーシュート!」

 

 そのまま打ち出した拳から衝撃波を発生させてパイロシューターを全て撃ち落とした。

 

「衝撃波ですか……」

「威力は少ないけどこんな数の攻撃には滅法強いのよ」

「そうですか―――ですが」

 

 ルシフェリオンを構え、クイントに狙いを定めると、サクラの周囲に幾つもの魔力弾が形成された。

 

「もうさせません。パイロシューター―――発射(ファイヤ)!!」

 

 先程の倍は超える量の魔力弾がクイントを撃ち抜こうと降り注いだ。

 

「流石に……これはキツイかな」

 

 クイントのキャリバーが急発進し、ウィングロードを駆けだした。

 

 

 

 

「おー!サクラスッゴーイ!ねぇねぇコダイ、ウィングロードの弱点って何?」

 

 大量のパイロシューターが動き回りあらゆる場所で爆発が起きている。

 その派手さに目を輝かせていたエルがその目のままこちらを向いた。

 

「ウィングロードは帯状の魔法陣を敷いてその上に乗って移動する、その特性上どうしても相手にも見えてしまう。つまり動きを読まれるに等しい」

「そっか、サクラはそれが分ったんだね」

「そう言う事。クイントもそれを防ぐため複数敷いて、複雑に曲げている。サクラは複数のウィングロードを頭の中で1本ずつに分解してクイントが現在乗っている道の進路と退路を魔力弾を当てて反撃をさせないようにした」

「うむ……しかしクイントの方もサクラの魔法をしっかりと避けておる、次々に別のウィングロードに乗り換えてな」

「弱点が分っているのはクイントも同じだ。対策は幾つも持っているのだろう」

 

 エルとアンズに答えながらもモニターからは目を離さない。

 一見サクラが押している様だが、クイントには掠りもしない。クイントにも当たりはしないが攻撃に転ずる事が出来ないと同じ事が言える、まさに拮抗状態。

 

「しかしこのままでは時間ばかりが経過するな……もし、姫ならどうする?」

「俺がクイントの場合―――敢えて1度攻撃を受ける」

 

 

 

 

「キャアッ!!」

 

 

 

 

 次の瞬間、モニターに魔力弾を受けたクイントが下に落ちて行った。

 

「あ!コダイの言う通りだ!」

「ひ、姫!この後は?!」

「―――落ちたと見せかけて真下のウィングロードに乗って、その先にある建物の隙間に逃げ込む」

 

 落ちた直後、素早く体勢を整えて真下のウィングロードに着地、そのまま俺の狙い通りビルの隙間に逃げ込んだ。

 

 

 

 

「このまま一気に―――!!」

 

 

 

 

「当然サクラはコレをチャンスとして追い込む―――あれ?」

「む?どうしたのだ?」

「いや……なんで態々ウィングロードをギリギリ滑走しているんだ?」

 

 サクラはどう言う訳かウィングロードを滑走している、アレではクイントの土俵に入り込む様な物なのに。

 このままでは見えないのでモニターをビルの隙間に変える。

 そこに映っていたのはサクラだけだった。

 

「やっぱりクイント、俺と同じ事を考えていたな」

「コダイと同じ事?」

 

 エルが首を傾げた。

 アンズはクイントいないモニターに目を凝らしていた。

 

「簡単に言えば誘い込んだのさ。自分の有利な戦場に……キャリバーで走れるのはウィングロードの上だけでは無い。魔法付与で壁も走る事が可能だ」

「壁?………と言う事はまさか?!」

 

 クイントの居場所が分ったアンズがモニターを見直すと。

 サクラの頭上から踵を振り下ろそうとしているクイントだった。

 

 

 

 

「ッ―――!」

「まだまだぁッ!!」

 

 クイントの踵落としを寸でで避けたサクラだが、踵落としから体勢を戻す反動で膝蹴り、その足を踏み込んで右拳、そのまま前に詰めて体を捻った左の裏拳と流れる様にコンビネーションを組んできた。

 回避と防御で何とか決定打を避けているサクラ。攻守が逆転……だがサクラが不利だ。

 建物に挟まれたほぼ一本道の空間は機動力が高いクイントが有利。

 

「くっ……!!」

 

 クイントの隙のないコンビネーションにとうとう決定打を数発貰い建物の間から飛ばされた。

 

「これで止め―――ッ!?」

 

 止めを撃つために同じく建物のから出てきたクイントだがその瞬間、赤色のバインドが発動した、それに一瞬早く気付きキャリバーを加速して通り過ぎた……だがその瞬間にクイントの両腕は新たなバインドで拘束されていた。

 

「そんな、やり過ごせたと思ったのに……」

「いえ、実際にあのバインドはやり過ごしました」

 

 サクラはクイントの一瞬で追いつく距離よりも遠くに移動していた。

 

「確かにあの1本道で、私は貴女には圧倒的不利でしょう。移動範囲と攻撃範囲が制限されます……ですがそれは貴女に同じ事」

「成程……つまり私が向かう場所が分ったからそこに設置型の拘束魔法を置いた訳ね。ウィングロードの上を飛んだのは設置の為」

「ええ、ですがそれでも捉えられるとも思ってもいなかったので、それを囮に更にバインドを使いました――」

 

 サクラがルシフェリオンを掲げるとカートリッジを消費して形態を変えてなのはの『エクセリオンモード』にあたる『ディザスターヘッド』にして、その穂先をクイントに狙いを定めた。

 

「それに、貴女にはこうも言いました―――動きを止めて焼き尽くす……と」

 

 ルシフェリオンの先に膨大な魔力が集まり膨れ上がった。

 

「ええっ?!まだそんな魔力かくしてたの!?」

「実は言うと貴女の動きを止めたりと攻撃を防いだりとで魔力は隠せるほどありません―――ですが既に『散布』は十分済んでいます………元がオリジナル故に二番煎じと言われても仕方ありませんが……ルシフェリオン――――」

 

 

 

 

「サクラの奴、集束砲撃を――これで決めるつもりか!?」

「しかも今の方法はなのはがフェイトに止めを指したやり方だ」

 

 サクラの前に集まる魔力を見て何をするのか分ったアンズと俺。

 攻撃を当てる為なら真正面から突っ込むのはなのはと同じだな。

 

「行っけー!!サクラー!!」

「応援しておる場合かエル!この範囲では我らも分らぬ!姫、今の内に撤退を!」

「そうだな、あんな集束砲撃2度と喰らいたくない」

 

 エルを脇に抱えてアンズと共に遠くへ離れる。

 

 

 

 

――ドオオオオオオオオオォォォォォォォォォ…………

 

 

 

 振り返った瞬間見たのは赤色の魔力光がドーム状になって広がり建物を次々に飲み込んでいく光景だった……

 

「ここまで逃げて正解だったな……」

「サクラめ……我らがいる事を忘れておるな」

 

 脇に抱えたエルは先程から反応していない、気絶している訳では無いみたいだが……

 

「ねぇアンズ、コダイ………クイント生きてるかな?」

「「………………………」」

 

 エルの言葉に思わず固まった……そして直ぐにモニターを再び展開、場所は最後にクイントがいた位置。

 

「ど、どこ?!」

「様変わりしているが確かこの真ん中辺りだと……」

「誰もおらんな………」

 

 殺風景な更地になった場所が映し出される。

 

 

――……………ィィィィィィィ

 

 クイントを探しているとモニター外から小さな音が聞こえた。

 

「この音……もしかしてキャリバー?」

 

 音がした方には僅かに薄紫の光が見え、やがて音も光も大きくなりその正体も視認できるようになった。

 

「あ!クイントだ!!それにサクラも居る」

 

 エルが脇から抱えてるのから抜けて光の先を指差した。

 

「いたいた!やっほ~!!」

 

 薄紫のウィングロードの先端を走りながら道を創っているクイントがこちらに向かって手を振っている。その背にはサクラが乗っていた。

 

「スミマセン。負けてしまいました」

 

 クイントに背負われているサクラが申し訳なさそうに顔を隠している。

 

「みんな無事良かったわね、怪我は無い?」

「それは此方のセリフだ!あの魔法を受けてそれで済むとかどれだけ頑丈なのだ!」

 

 アンズが指したクイントは騎士甲冑のベストが無くなって、ボディスーツも少し敗れているがクイント自身は至って元気そうだ。

 

「ああそれね。あの後速攻でバインドを殴って壊して全力で逃げたの。直撃は避けたけど余波でぶっ飛ばされてね~余波が止んだと思ったらサクラちゃんが魔力切れで落ちて来てビックリしたわよ」

 

 サラっと言っているが凄い事してるな……

 

「ちょっと待て―――今殴って壊したと言ったな?魔法では無く?」

「ちょっとコツがいるけど極めればシールドもバインドも簡単に壊せるわよ?ちょっと実践してみる?」

 

 そう言うとサクラを俺に渡してきたので横に抱えて受け取った。

 

「こ、これは―――お姫様抱っこ!」

「ん?嫌だったか?」

「いえ、むしろこのままでお願いします」

 

 ………以外に元気そうだな。

 って今はクイントの方だ。

 

「じゃあまずアンズちゃんは私の右腕にバインドを掛けて見て?結構強くても良いわよ?」

「うむ……それでは」

 

 クイントに言われた通りに右腕に3重のバインドが掛けられた。

 

「それじゃあ見ててね―――――ハァッ!!!」

 

 クイントの体から力が抜けていきその直後、体を捻り右拳を突きだす態勢に入った。

 

 

――バキィンッ!!

 

 

 それと同時にアンズが掛けたバインドは壊れ、突き出せれた拳から衝撃波が発生した。

 

「どう?これは私の得意技『繋がれぬ拳(アンチェイン・ナックル)』よ♪」

 

 突き出した拳を引いて得意げに笑うクイント。

 確かに拳だけでバインドを破壊したな………あの動きはもしかして……

 

「――――『居合』か?」

「ん~惜しいかな?脱力状態からの加速と言うのはあっているけど、炸裂点の調整は無いでしょ?」

「アレは剣速を上げるための技術だからな」

「脱力状態から加速と炸裂点を調整する様に撃つ―――コレが基本ね。さっきのは脱力状態から全身を使った加速で全威力を炸裂させる撃ち方」

 

 炸裂点の調整か……居合の要領でやるとダメだな。

 

「う~ん………う~ん?」

 

 エルはクイントから繋がれぬ拳を聞いてからずっと拳を突きだしては首を傾げた。もしかして練習しているのか?

 それを見たクイントは嬉しそうに笑いながらエルに近寄った。

 

「エルちゃん、そういう時はお風呂とかプールでやった方が効果が見えるわよ?」

「え?そうなの?」

「うん、こうやって拳を水面に付けてこう、途中はゆっくりとインパクトに向けて鋭く――」

 

 エルにも分り易く動きも加えて教えている。それを見ているエルの目が光っている。

 

「成程!クイントの言ってる事コダイと同じ位分り易い!」

「当然よ♪」

 

 それはもう、あんなに見ただけで分る様に教えられたら誰だって……いた、1人だけ。未だに右左も分らない馬鹿(デバイス)……

 

 

 

 

 

 

 その夜、エルがクイントが教えた修行方で家のお風呂のお湯を半分以上減らして、俺がO☆SHI☆O☆KIする事となった。




クイントのバリアジャケットはViVidに出ていたのを参考にしています。

松影様、頭翅様、アマデウス様、シーザス様、武御雷参型様、ファンタジーを愛する様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。