魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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本当にアイツて分り易いなbyコダイ

『後、3年位で――――アイツは壊れる』

 

 そう言ったが、それは予想よりも早く訪れた。それから約1年位経った時だ。

 原因はあいつの無茶の仕方だ……負担が重なる度に無茶の度合いが酷くなる。お人好しのアイツだから理由は1つだろうけど……普通躊躇うだろ、どれだけお人好しなんだ。

 それに周りにも気づかれてない位隠すの上手いし……確か士郎が怪我した時に心配させない為に1人で家に居たんだしその影響か?

 

「何ボーっとしてんだ!!任務中だぞ!!」

 

 ヴィータに怒られて思考を戻す。現在武装対と合同任務中だ、ヴィータの他になのはと同行している。

 右腕のキープした魔法を発動させる。

 

≪スローナイフ・フォートレスシフト!!≫

「バースト」

 

――ドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 巨大な魔法陣上に敷き詰められたスローナイフを爆発させて辺りを全て一掃した…… 

 

「相変わらず怖ぇ魔法だな」

「ただスローナイフを大量に置いただけ、子供騙し見たいな物だ」

「けど、その子供騙しで粗方片付いちまってるけどな……そう言えばお前、新しい部隊に入ったって聞いたけどどうなんだ?」

「まだ人員が揃って無いから動いて無い。だから今日の任務に同行した」

 

 ミゼットの許可の元、クロノと新しく部隊を作り上げる事となったが希望の『高ランク且つ自由に動ける人員』が無く始動すらしてない。

 一応、アインと嘱託魔導師になったマテリアルズを引き入れたけど。動くにはまだ危険すぎるのでまだ民間協力者として動いている。

 

「その気になれば、なのはの砲撃も何とか出来るんじゃねぇの?」

「なのはの魔王砲撃をか?」

「そんなこと言ってるとまた拗ね―――なのは?」

 

 何時もならセリフに割って入るほど突っ込みがあるのに今回はソレが来ない。

 

「ふぇ!?………ヴィータちゃん?何!?敵がいたの!?」

 

 少し遅れて気づき、立ち止まって辺りを見回し始めたなのは。

 

「あ、いや敵はもうコダイが倒したから」

「そ……そうなんだ」

「それになのは良いのか?」

「え……?」

 

 ヴィータの問いに首を傾げだした。

 

「コダイにまた魔王って言われてんだぜ?」

「酷いよコダイくん!私は魔王じゃないの!」

 

 そう言ってなのはは頬を膨らませて怒り、踵返して飛んで行った。

 

「≪……コダイ。なのはの奴おかしく無いか?何時もならコダイに磨かれた突っ込みが来るのにソレが無い≫」

「≪ボケているならまだしも任務中にあれが呆ける様な性格では無いしな≫」

「≪お前みたいに真面目なのかふざけてんのか分らねー奴じゃねーしな≫」

 

 なのはの後ろをヴィータと並走しながら念話で話す。

 ………もう潮時だし言っておくか。

 

「≪少し考えれば分る事だ。まだ体の成長しきって無いなのはがあんな砲撃を撃つんだ、負担はかなりある。それに加えこの何年かハイペースで仕事しているから何時壊れてもおかしくはない≫」

「≪おいウソだろ?!だってアイツ出撃前も何時もの様に笑ってそんな様子一切無かっただろ!≫」

「≪隠してたのだろ。周りの為なら無茶するような奴だし≫」

「≪仲間に隠す必要ねーだろ!馬鹿じゃねーのか?!≫」

「≪貴様らが言うな≫」

 

 貴様らもその一軍だろうが。

 

「≪今回の任務に参加したのもそれが理由だ≫」

「≪は?……なのはと?≫」

「≪なのは見たいな頑固者は口で分らせるより体で分らせた方が良いんだ――――≫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の任務もなのはにも特に何もなかったから帰還する事に――――

 

「なのは!!後ろ!!!!」

「え?」

 

 ヴィータの声に振り返ると、銀色の爪の様な物がなのはに襲い掛かろうとしていた

 

「あれ?………」

 

 突然なのはの動きが鈍る……負担がついに限界に来たか。

 

「≪ヴィータはなのはと逃げろ。後、シャマルに見せるのもな?≫」

 

――バキィン!!!

 

 念話で伝えた後、出撃前に口に仕込んだカートリッジを噛み砕く。

 口の中に薬を仕込むにしては大きかったが。形態が全身装甲のブレイザーばれる事は無く、会話も腹話術で成立した。

 激痛と高熱が全身を襲い、凶悪なまでの魔力の奔流と同時に全身が灼熱を帯びた金色に染まる装甲を纏った。

 

 

――ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 

 一瞬でなのはと爪の間に割り込み。それを掴んで一気に溶解した。

 

「…………コダイ君?」

「何やってんだよ!!早く逃げるぞ!」

「でもコダイ君が…!!」

「今のコダイといても巻き込まれるだけだ!!コダイ!コイツ戻したらすぐ戻ってくるから死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

 ヴィータがなのはを引っ張って行く。

 溶かした爪の先を見る…………そこは何もなかった、この形態でも見えないと言う事は魔法以外の何か。

 爪を飛ばしてきた辺り機械と考えていいかもな。

 

 

――キィィィン……

 

 

 駆動音、予想通り機械系統だった。

 音のする方に飛びかかり、何も無い空間を殴る。

 

 

――ジュアアアアアアッ!!!

 

 

 空間に手応えを感じると、見えなかった物が姿を現す。

 前半分は溶けて原型を留めていないが、昆虫の様な足が付いてる多足歩行の機械………こんなのがあったのか?

 

 

――キィィィン…

 

――キィィィン…

 

――キィィィン…

 

――キィィィン…

 

 

 周囲から聞こえるいくつもの駆動音、一斉攻撃なら近い順に潰すま―――

 

 

――ピキピキピキピキ………パリンッ!!

 

 

 次の瞬間、全身の装甲に罅が入り、金色の装甲は一瞬で砕け散った――――

 

 

――ザシュザシュザシュザシュザシュ!!

 

 

 それと同時に周囲から飛んできた爪が全身に突き刺さり。

 

 

――ドシャッ!!!

 

 

 飛んで居た為、そこから地面にたたきつけられた。

 

「やはり時間が――――」

 

 ………闇の書の事件の後もこの形態に何度もなった事があるが未だに慣れない……なる毎に出力が上がっている気がする。

 更に不明なのが発動させる度に有効時間が短くなっている。

 表示される画面を見ても未だに『????』の部分が理解できない。

 

「……このまま逃がしてたまるか」

 

 

――グシュッ!!

 

 

 抜けようとする爪の内1つを更に深く突き刺さるように押し込んだ。

 これなら正確な位置が分る……そこだ。

 

 

――グシャァッ!!!

 

 

 機械を殴り、姿が現れると同時に隙間に両手を貫手で突いてそのまま突き刺した手を左右逆に引き千切る。

 

「……次は」

 

 俺の血の臭いが付いた爪からすると、まだ逃げていない。正確な位置はコレで……

 

「スローナイフ……バースト」

 

 血の臭いの位置にスローナイフを投げ飛ばして爆発される。その時に生じる爆炎と煙の揺らぎで正確な位置を特定した。

 

 

――ゴキャァッ!!

 

 

 1体の機械の上に乗り踵落としの様に脚を振り下ろして踏みつぶした。

 そのすぐ近くの機械が俺に飛ばしてくる爪を掴み、お返しとばかりにその爪を脳天に押し込んだ。

 最後の機械はさっきのスローナイフで正確な位置を掴んでいる、先回りして透明なままの機械を持ち上げた。

 

「コレで終わりだ」

 

 

――グシャッ!!

 

 

 持ち上げた機械を容赦なく地面へ叩き潰した。

 

「コレで全部だな。正直ここまで喰らうつもりは無かったな」

≪すか~すぴ~≫

 

 相変わらずあの形態になるとレイは寝るな……

 それにあの形態の副作用が少しの間、体が発熱したままになる。

 まだ魔法に慣れてないのか、またはデバイスにはまだ秘密があるとか……

 

 

――コダイ~!!

 

 

 

 あ……ヴィータの声だ。

 

「コダイ、大変だ!なのはが――ってコッチも大変だー!!」

 

 血まみれだしな、おまけに副作用で何か痛いし熱いし……もう慣れたけど。

 

「なのはがどうした?」

「帰還した途端倒れたんだよ、今シャマルが診て……ってそんな事言ってる場合じゃねぇ!!さっさと医務室に行くぞ!!」

 

 ヴィータに横抱え……確か桃子が言う『お姫様抱っこ』をされた。

 

「って軽っ?!お前ちゃんと飯食ってんのか?!」

「3食しっかりと」

 

 1年経っても身長と体重はあんまり変わらない……

 むしろなのは達が成長期に入り差が開いた。

 

 

 

 

 

 その後、血相を変えたシャマルにより治療されて傷はほぼ回復、逃がさない為にと傷を深くし過ぎた所為で治りは遅いらしい。

 現在、包帯グルグル巻きの状態でなのはの所に向かった。

 

 

――コンコンコン

 

 

「入るぞ」

 

 ノックしてから入るとそこにはフェイト、アリシア、はやて、ヴィータ、シグナム、リインもいた。

 

「なのは、目が覚めたのか」

「コダイ君………」

 

 なのはは一度俺を見た後、顔を伏せギュッと拳を握っていた。

 

「ゴメンね……コダイ君……私の所為だよね」

「そうだな、なのはがあそこで避けていれば、こんな事にはならなかったな」

「っ―――!!」

 

 なのはの肩が震える。

 

「コダイてめぇ!!」

「そんな言い方は――!!」

 

 ヴィータとフェイトがコッチを睨んでくるが無視。

 

「怒られると思ったか?恨まれると思ったか?」

 

 コクンとなのはが頷く。

 

「じゃあ、怒ってやる―――」

 

 俺は指でなのはの額を押して無理やり顔を上げさせる。

 

「…………」

 

 その顔には恐怖しか無かった―――

 

「なのは………」

「ッ!」

 

 再び肩が震えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと周りを見ろ」

「…………………………え?」

 

 恐怖から一瞬、キョトンとした顔になった。

 

「はい、怒るの終了」

「え?……え?」

「ん?どうした?」

「だって……怒るって」

「怒っただろ?説教しただろ?」

「でも「でもじゃない」にゃ!?」

 

 なのはの両頬を引っ張る。

 

「お、伸びる伸びる」

「にゃにゃにゃにゃにゃ~!!」

 

 両腕をバタつかせる……面白い。

 

「大方――」

「にゃっ!」

 

「迷惑を――」

「にゃっ!」

 

「掛けたくないから――」

「にゃっ!」

 

「1人で――」

「にゃっ!」

 

「頑張ろうとか――」

「にゃっ!」

 

「考えてたんだろ――」

「にゃっ!」

 

「分り易いんだよ――」

「にゃっ!」

 

「貴様は――」

「にゃぐ!」

 

 引っ張るのをやめて1言づつ区切りながらその度に手刀でなのはの頭を叩く。

 最後は噛んだか?

 

「自己管理が出来なくて自滅したのは別として、なのはがやった事がどこが悪いんだ?強い奴が前に出て自分の被害を最小限に抑える……部隊としては当たり前だろ」

 

 全部自分の為とは言え、コッチも自滅してるし言える様な物では無いしな―――

 

「悪くは無いがやり方に問題が―――ハッキリ言うと、どのみち迷惑になるのなら最初の方が負担は少なくなる。1人では無い……だから『もっと周りを見ろ』と言う事だ……以上」

 

 なのはは周りを見始めた。そこに居たのはなのはが寝ているベットを囲んでいる。フェイト、アリシア、はやて、ヴィータ、シグナム、リイン。

 

「なのは、何で言ってくれなかったの?」

「言ってくれたら、力になれたのに……」

「でも、フェイトちゃんとアリシアちゃんは執務官の試験が――」

「別に試験は一生に1度って訳じゃないし、半年に1度なんだから」

「言ってくれなきゃ、寂しいよ」

「フェイトちゃん……アリシアちゃん」

「なのは……何で同じ武装隊の私を頼らねーんだ!おめーに何かあったらはやても悲しむだろうが!!」

「確かに1人で頑張ろうって気持ちはよう分るけど、今は皆いるんやからもうチョイ頼ってくれてもええよ?」

「ヴィータちゃん、はやてちゃん…………みんな……ゴ「おい待て」みにゅ!?」

 

 なのはの鼻をつまむ。

 

「いいか、今なのはは謝らなくて良い、皆に助けて貰うのだからここは言うべき事が違うだろ?」

「みんな…………ありがと――うぅ……ひっく」

 

 なのははポロポロ泣き始めた。

 

「怖かった……魔法が使えなくなると……ひっく……みんな離れて……グスッ……また一人になるんじゃないかって………そう考えると……怖くて……」

「こいつらがそんなんで離れるほど馬鹿では無いだろ……」

「コダイ君………う…うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

 なのはが抱き付いて―――て………

 

 

――ギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!

 

 

 何だろう、3年前位のアルフのアレを思い出す……

 

 

「なのは!今すぐコダイから離れろ!!怪我してんだぞ!?」

 

 

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

 

「ダメや!!耳に入っとらん」

 

「ト、トキガワがダランと力なく―――!?」

 

「なのは落ち着いて!!フェイト、なのはお願い!私はコダイを――」

 

「分った姉さん!なのは!コダイが死んじゃうよ!!」

 

「とーさま~!!死んじゃ嫌ですぅ~!!」

 

 

 

 

 

 あ~……病院では静かにって言いたいがもう意識が………

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 意識が回復した頃にシャマルが検査結果を発表した時……皆の目が点になった。

 

「シャマルどう言う事や?」

「ですかからなのはちゃんの検査結果が『過労』なんですよ」

「ちゃんと調べたのか!?ヤバい倒れ方だったぞ!?」

「そうなんですよ!!どう調べても何処にも異常は無くただの過労の症状しか出ていないんです!!」

 

 状況が追いついていないはやて。

 それにヴィータがシャマルに掴み掛り揺する。体格差であまり揺れてはいないシャマルはヴィータに検査結果を見せた。

 

 

「まさか……コダイに散々魔王って言われた事で知らぬ間に魔王の身体に――」

「ヴィータちゃん酷いの!!」

「大丈夫だよなのは!例え魔王になっても友達だよ!」

「フェイト~そう言う意味じゃないと思うけど」

「フェイトちゃんもひどいの~と言うかアリシアちゃんも否定してよ~!」

 

 さっきの空気はどこに行ったのやら……どうやら俺が死んでいる間に解消されたらしいな。

 なのはが魔王は今に始まった事じゃないけど……コレはそろそろ言っておいた方が良いか。

 

「その事なんだが、やったの俺」

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 こいつ等一々声を揃えるな……打ち合わせでもしてるのか?

 

「俺が何のために訓練したと思っているんだ?なのは、フェイト、アリシア、はやて……この4人は性格上『絶対』無茶するだろうし『絶対』人の話聞かないだろうから、ある程度無茶が効く体に改造したんだ」

 

 あえて絶対の部分を強調する、その度に胸を押さえる4人。

 

「そ……そう何か?コダイ君」

「ミッドやベルカを使えない俺が魔導師の訓練何か出来るかよ。どんな強力な魔法を使っても使う土台が脆いと意味が無いから基礎体力向上と肉体強化を短期間で行った。因みにこの訓練の意図をリニスは感づいてたみたいだしな」

「あ、リニスが推してた理由ってそれなんだ……何回も死に掛けたのに」

「確かになのはのアレを見せられたら、納得するしかないね……何回も死に掛けたけど」

 

 かなり暗い顔で落ち込んでいるフェイトとアリシア。

 

「シ……シグナム知ってたん?」

「いえ、そこまでは……ただしあの鍛え方は非常に効率的だったので敢えて止めませんでした」

「流石コダイ君や―――軽く地獄片道切符みたいな扱きにそんな意味があったとわ……と言うかアレで死んだらどうするんや!!」

「そんなの死なない程度に加減してるから大丈夫に決まってるだろ?」

「最低やこのドS!!!」

 

 褒め言葉ありがとう。

 

「でも……この訓練はこれで終わりだな。なのはが自滅したのみて分った様に俺が事前に仕込まないとこれ以上の怪我になっていたと言う事だ」

 

 こいつらは自分より周りが傷つくのを嫌う奴らだから、こいつらに限界が来た時に死ねない俺が割り込んで怪我をする。

 そうすれば自分の所為で俺が怪我をしたって事で釘指しには十分すぎるからな。

 

「今のなのはなら、全快状態でエクセリオンモードでカートリッジロードしたフルパワーの砲撃を連発しても全く影響は無い……が」

「アグッ!!」

 

 なのはの頭を掴みこっちに向かせる、そしてついでにアイアンクローをしておく。

 

「今度やってみろ………貴様をバインドで縛り上げて強制的に『想像を絶する苦痛を伴う代わりに見返りが良い行為』を行うからな」

「名前で言ってよ!!凄く怖いんだけど?!」

「そんなの面白くないだろ」




頭翅様、松影様、ガデラーザ様、アキ様、感想を有難うございます。

~次回もお楽しみにしてください~

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