魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
「―――そう……だったんだ」
「うん……」
隣に座りマテリアルC………いや、ツキトにツキトの過去を話した。
「それで、コダイはどうしたの?」
「……力を手に入れた。腕力、知力、学力。力になるモノは何でも取り込んだ………」
殺して、奪って、盗んで………力を得るためならどんな事でもした。
私はあの子と一緒じゃなく、ものが狂って見えないから、人を人として見える……だけどあんなの普通に殺せる。
「力が欲しかった。誰にも負けない強い力、誰にも負けない強さがあればどんなモノでも救えると思った……死んだ人………ツキトでさえ」
「―――コダイは……ボクが死んでからも、ずっとボクを守ってくれたんだね」
「けど……結局はこの様よ、あなたどころか私でさえ守れない。どんなに強い『力』や誰にも負けない『強さ』があっても結局は何も出来ない……私はただ『殺す』だけの
『力』は誰がどう使おうと……殺す事しか出来ない…それで誰か守ろうとか救おうとか思った時点で結局は殺しにつながる。
あんなに綺麗だった白い服と髪が敵と私の血で染まり、長い時間を掛けて――――血が黒くなるまで殺してようやく気付いた。
――ポフッ!
一瞬、何か起こったのか分らなかった……だが、時間が経つにつれ再起動し、理解した――
「アリガトウ―――今まで守ってくれて」
ツキトが私の足を跨いで真正面から抱きしめていた。
「ゴメンネ―――ボク、あの時自分の事しか考えれなくて。コダイがこんなにボクを思ってくれてたなんて気付かなかった……」
抱きしめているツキトの腕が震えている。
「ボクは今までこんな風にした人間達を皆殺しする事で一杯だったのに……コダイはずっとボクの心を守ってくれた………アリガトウ……アリガトウ、コダイ……」
ツキトの腕の力が強くなった。
「守ってなんかない。私はあの時までただ話す事しか出来なかった、触れられたら止めたかった……壊れるあなたを抱き締めたかった……それを出来なかったのは。私が弱いからだ……」
「………………守るよ」
ツキトが小さく呟いて、体を話した………
「今度はボクが守るよ……ボクのこの体で」
私の体に手を添えるツキト……
嫌な予感がして離さないと、抱き締めようとした腕が動かない………こんな時に怪我がぶり返して――――早くしないと……
「君を傷付けたり、苦しめたりするモノ……全部何もかも……例えボクを忘れても―――ボクが身代わりになって君を守るよ」
ツキトが純白に光り、その粒子が私の体に入ってくる。
体が動かない………まさかツキトが?……何で?
「ボクの全てを賭けて……絶対守るよ」
ツキトは頭に巻いてある包帯を解く……そこには私と同じような青い瞳があった―――
「私は「ダメ」っ!!」
言おうとした時、ツキトに指で口を塞がれた。
「ボクが男だから―――大好きな君を守りたいんだ」
そう言って、優しく微笑む―――
「
「――――バカ。子供のクセにカッコ付けないでよ……」
ようやく絞り出せた言葉はコレだった。
「だからだよ………コダイ、頑張って」
そのままツキトは光りの粒子になり私の体に全て入っていった………ツキトがいた所には刀が突き刺さっていて。目の前に残っていたのは純白に光る半分に割れたリンカーコアだった。
それに反応して私の体からも半分に割れたリンカーコアが出てきて、2つが空中で重なり……1つになった。
「純白の………魔力」
これが……私の本当の魔力光。
元々肉体と精神が違っていたからリンカーコアが2つに割れて、闇の書に蒐集されたのは肉体側……つまりツキトの方だった。
だからマテリアルもツキトの時の記憶しかなかった。元に戻ることでリンカーコアを1つにした。
「それに………」
そして目の前にある刀も―――
全身に力を入れて立ち上がる……痛みは殆どなく難なく立ち上がれた。
刺さっていた刀を取って鞘から抜いてみる。
「やっぱり……あの子ったらこんなお土産置くなんて」
私の身長よりもずっと長く――拵えは使い古されてボロボロだけど対して刀身は刀にしては頼りない細さで白く、美しい刀身が特徴的な刀だった……
「さて、あの子にここまでされたら私も頑張らないと。まずは脱出ね……………」
刀を鞘に戻して樹の下から出ようとしたのをやめた。周りが急に変化をしていく―――
「あ…………そっか」
直ぐに理由は分った。
「ここはあの子の世界………あの子が消えた今、私にはあの子が見ていた物が見えるって事ね」
あの綺麗だった景色は血肉と臓物が蠢く『地獄絵図』……風の音はは耳も塞ぎたくなる『不快音』……草花の匂いは吐き出してしまう程の『異臭』……そして。
「そうそう………見た目は違うけど何時もこんな感じだった」
私の周囲には見渡す限りの人と言う『肉塊』………
――ポタッ
鼻先に感じた水滴、次第に多くなってやがて雨となって降り注いだ。
今の私にとっては気色の悪い粘液が浴びている様にしか感じない………
「
刀を引き抜く……どんな世界でも白くあり続ける、私があの子を思って創った刀―――
「
肉塊に向かって走りだす。
――頑張ってね。
分ってる。だから私はこれからも殺して……殺して……殺して……殺し続けるだけ。
――――殺人姫として。
~オマケ~
「暴走まで後10分!」
「クソッ!!……一体どうすれば!」
エイミィのカウントで焦るクロノ……未だにコダイの反応が確認されてない。
「このままプラン通り進めてアルカンシェルを放てば、防衛プログラムは消滅するけどコダイがどうなるか――」
「かと言って、コダイさんを助けようとすれば防衛プログラムが暴走して被害が……」
「それに、はやてちゃんが言うとおりだとコダイ君が無事かどうか……」
ユーノとリニスとシャマルが頭を押さえ必死に考えてる……
その周りでは今まさに飛びだそうとしているなのはとフェイトをアルフが、はやてをシグナム、ヴィータをザフィーラが止めていた。
――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
突然、闇色のドームから純白の光の柱が登った。
「な、何だアレは!?」
「クロノ君!あの光の柱からコダイ君の魔力反応が!」
「何だと!コダイが!?」
光の柱から一筋の光が飛び皆の中央で止まる……
「…………あ、戻った?」
普段と変わらない感情が無い声で、コダイが戻って来たと確信した……と思った、だが違和感があった。
今までの声とは違い、大人の女性を思わせる声だった……
そして光が消えると同時に………
――ピシッ!!
全員固まった…
今、そこに居るのはコダイで間違いない……あの光の無い青い瞳はコダイしかあり得ない………
だが今目の前に居るのは、コダイの黒ずくめと全く正反対の白ずくめに白い髪……そして今までヴィータより少し高いぐらいだったコダイの身長は周りの子供組の身長を越している、それでも周りの大人組よりは小さいと判断できる。
人形の様と言われた顔立ちは絶世の美女の様な妖艶な顔立ちに、服越しでもわかる体型は男らしさを一切感じない括れがある小柄で華奢な細さ―――
つまりどういう事かと言うと―――
「「「「「お、大人になってるううううううううううううう?!?!?!?!」」」」」
静寂を破った第一声が答えである。
アマデウス様、桜日紅葉雪様、liqueur様、シーザス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~