魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
前回のあらすじ。
闇の書が壊れていたので殴って直すことにした。
とは言ったものは良いけど………この後どうする?
魔力はバリアジャケットを維持出来るくらい。幸いは、一番魔力の消費が少ない『エアーシューズ』を使えるスタイル・イレイザーだって事だ。
この状態で『バーニア』何か使ったら5分も持たなかったな。
「取り敢えず――――はやてを殴り起こすか」
闇の意志の腕を掴みそのまま頭上にあるデアボリック・エミッションに向かって投げ飛ばした。
「―――――――――!!」
「魔法が使えなければ相手のも利用すれば良いだけ……………あ」
これ俺も巻き込まれるな、確実に。
死ぬよな………コレ当たったら間違いなく死ぬよな?
そう思った瞬間、イレイザーの超高速移動でその場から一気に離れた。
「――――空間攻撃か、ここまで逃げて正解だな」
ビルの影からコッソリと覗くと、さっきまでの場所を中心として闇色の球体が肥大していく。
「魔導師にすれば推定ランク―――SSS以上」
≪うわ~………凄~い≫
「凄いな……」
≪どれぐらい凄いのかな?≫
「なのはが逆上がりが出来るのとかシャマルの料理とかそれ位凄い」
≪すっご~い!!≫
「…………俺はお前の方が凄いと思う」
≪うゆ?≫
「え?自覚なし?」
「「「一番凄いのはコダイ(さん)だ(です)!!」」」
後ろから聞きなれた突っ込みに振り返ると、ユーノとアルフとリニスがいた。
「……いや、一番凄いのはなのはの砲撃だろ」
此処だけは訂正させて貰う。
「いやいや!なのはの砲撃とコダイはいい勝負だから!」
「て言うかアンタは何で一々ボケ合戦しないと戦えないんだ!!」
「コダイさん!もうチョッとシリアスな空気を保ってください!!」
「仕方ないだろ?……俺は空気を読まないんだから」
「「「なら読んで(下さい)!!」」」
注文多いな――――?
「風景が変わった?」
いきなり、周囲が変化した……何だコレは?
「前と同じ……閉じ込める結界だ!!」
「完璧に閉じ込められましたね…」
アルフの言葉にリニスが呟く。
「そうだ、なのは達はどうしたの?」
「蒐集されて気を失ってる。魔力は俺が送ったから問題ない、今はクロノが守っている」
確かリーゼ姉妹は暴走が始まってとか言っていたし………時間が無いな。
「こうなったら囲んで4人でリンチだな」
なのは達はクロノが居るから問題無いか……
「その表現はチョット……」
「モロ悪党のセリフじゃんソレ」
ユーノ、アルフ……じゃあ他にどう表現しろと?
「でも………間違ってはいませんよ」
リニスが空を見上げる……そこには空に飛んでいる闇の意志が無傷で立っていた。
気づかれた……と言うかアレでダメージ無いのか?
「四人掛かりで無いと止めらないと思います…」
「そうだな………≪全員、手短に作戦を話すぞ―――≫」
取り敢えず全員に念話でたった今考えた作戦を伝える………と言っても作戦って言えるほどの物では無い。
「「「はぁ!!」」」
ユーノ、アルフ、リニスがバインドで闇の意志を拘束する。
「そこを動くなよ、綺麗に右斜め45度を狙えないからな」
その隙に俺が殴り掛かる。
伝えたのはそれだけ、全員の戦力を見ても前衛1人と後衛3人だからな。妥当なところだろ……
「砕け」
≪ブレイクアップ≫
闇の意志はいとも簡単にバインドを破壊した……3人がかりのバインドだぞ?
「構わんそのまま殴る」
「盾」
≪パンツァーシルト≫
――ギィン!!
自由になった片手を前に翳し、現れた障壁によって俺の拳が塞がれた。
「これでも結構本気何だけど」
目の前の障壁を蹴り、近くの電柱の上に着地した。飛ばない理由は単に魔力の節約の為。
「刃を以て………血に染まれ」
≪ブルーティガードルヒ≫
闇の意志の周りに血の様に赤い短剣が現れた……
「穿て…………ブラッディダガー」
その場にいる全員に放たれた……
「速いな……けど」
俺達に向かって放たれる赤い短剣……………シグナムの時に偶然できた事をやってみるか。
電柱を強く蹴り、ブラッディダガーに向かって飛び込んだ。
一番近くの短剣を踏む。
――ドォン!!
爆発する直前に別の短剣に跳び移る。
――ドォン!!ドォン!!ドォン!!
それがまた爆発する直前に更に違う短剣に跳び移る……
――ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!
『スタイル・イレイザー』は一瞬でもあれば十二分(じゅうにぶん)に動ける。高速で射出されるブラッディダガーを更に高速で跳び移り――
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォン!!!!!
一瞬で闇の意志の懐に潜り込んだ。
「――――――!!」
「右斜め45度」
ブラッディダガーの爆発を背に闇の意志の顔面目掛けて思いっ切り拳を振るい。
――ゴシャッ!!
闇の意志を数メートル先まで殴り飛ばした。
「やっぱり、広範囲の魔法を使うだけあって結構遅いな」
近くの電柱の上に着地する。
「コダイ!!」
ユーノ達が慌てて近づいてくる。
「無事か?」
「一応は……ってそうじゃ無くてさっき何をしたの!?」
「この形態は物凄く速く動けるから、あの魔力刃に跳び移りながら近づいたんだ」
「それって大丈夫なの?」
「全然『
あ、ユーノが呆れてる……
「と言うか偽婆の時もそうだったけどさぁ………実は馬鹿なんじゃ」
アルフ、それはお前には言われたくない。
「えっと………自分を大切にしてください!!」
いや、無理に参加しなくて良いからリニス。
「でもコレで少しは目を―――」
俺が闇の意志に目を向けると………
「咎人達に………滅びの光を………」
え?…効き目無し?と言うより展開してるミッド式の魔法陣に見慣れた桃色の魔力が集束されている…………
「まさか!?」
「あれは!?」
ユーノとアルフが驚いてる……無理もない、これを見るのは3度目だ。
「星を集え……全てを打ち抜く光となれ」
ミッド式、なのはの魔力光、集束とくれば………たった1つ。
「
酷い当て字だと思うが誰もが納得すると思う。アレを至近で喰らったら俺、塵も残らない自信ある………ってそんな事より。
「リニスはユーノとアルフを連れてなるべく遠くに行け、狙いは俺だけだ、死にたくなかったら……と言うか半年前のフェイトと同じ目に合いたく無ければ余波も届かないとこまで行け。迅速にだ」
「は、はい!!」
リニスはあの魔力に危機を感じて、ユーノとアルフを掴んでその場から全力で逃げる。
俺も『エアーシューズ』を使って、リニスとは別の方向に全力で逃げる……この際節約を考えてる暇は無い。
≪でも何で、なのはの魔法を使えたの?!≫
「多分蒐集だ。本来、夜天の魔導書は魔導師の技術を収集し、研究するために作られた収集蓄積型の巨大ストレージ。その機能によって蒐集した魔導師の魔法を扱えるんだ」
だとしたら不味いな。ミッドやベルカなら対処法はあるけど俺のベアトリス式は使い手次第だからな。我ながら厄介な物を作ったよな……でも良いか、今後の参考にもなりそうだし。
「今は、射程内から出ないと……蒸発する」
≪コダイ!コダイ!大変だよ!≫
「レイ、どうした?」
≪近くに魔力反応、多分アリシアでその近くに生命反応が2つ……多分アリサとすずかだよ!!≫
「あいつら帰ったんじゃないのかよ?……位置は?」
≪え~と、え~と――――ずっと向こう!≫
「……………」
こいつに聞くのが間違いだった。
「ほうが―――方向は?」
方角と言おうとしてすぐ言い直した。
≪え~っと……え~っと………お椀!≫
「だからいい加減左右覚えろよ」
≪あぁ?!≫
今度はなんだ?……嫌な予感しかしないんだが?
≪3人ともこっちに来てる?!≫
……え?ここ完全に射程内何だが。
アリシアもしかして、俺かフェイトの方に向かってるのか?
取り敢えずレイが言っていた方向を頼りに行ってみる事にした。
「この近くか?」
≪う~……うん!コッチに近づいてる!!≫
降りると同時にビルの隙間からアリシア達が……
「あっコダイ―――?!」
「コダイ!アンタも此処に―――?!」
「大変なの!町の人達が突然―――!?」
アリシアの後を追う様にアリサ、すずかと出てきて、これまた追う様に固まった。
「「「なにその可愛い服!?」」」
「え?………あ」
そう言えば、イレイザーのままだった。
「どこか変だったか?」
自分的には凄く気に入っているんだが。
「変じゃないよ?変じゃ無くて……太ももとか」
「と言うか何でそんなコスプレみたいなのを着ているのよ………太ももとか脇とか」
「えっと……似合ってるよ!すっごく…………な、生足にベルト……」
えっと……最後の辺りは聞こえなかったけど、評判は良いみたいだな……
「とにかく此処から今すぐ離れろ。質問も意見も反論も意義も許さない」
あ………アリサとすずかに魔法がバレた………なのはに全部話させるか。
「ちょっと待った!なのは達は何処にいるの!?」
アリサが突然詰め寄って来た。質問も意見も反論も意義も許さないと言った筈だが。
「少し落ち着け、さっき安全な場所に避難させたか「スターライト…………ブレイカー」あ」
だから言ったんだよ………さて仕方ない、このまま全員運んで――――――
――ピキピキピキピキピキ………パリンッ!!
「あ……ついに魔力切れか」
スタイル・イレイザーの服に突然罅が入ると瞬く間に全身に広がり砕け散って無くなった………砲撃はもうすぐそこまで来ている。
「アリシア、確か魔法の訓練しているよな。だったらデバイス無しで障壁張れるか?」
「え!?確かに張れるけどアレを受け止める程強く何か無いよ……」
「そんな物期待して無い、余波だけだ」
「それなら何とかなると思う……コダイは?」
「そんなの決まっているだろ?」
懐からカートリッジを一本取り出して口に咥える。
「1回死んで来る……」
――バキィン!!
カートリッジを噛み砕き、体内のリンカーコアが暴れ狂い瞬時に灼熱を帯びた
「―――――――――――――――――――」
そして、スターライトブレイカーに一直線に突っ込んだ。
――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
瞬間―――全身から何かが潰れる嫌な音がした………意識どころか全てを持って行かれそうな気がした。
――ゴシャ!!
だがそれと同時にスターライトブレイカーを殴った。
一発では無く何発も……この状態が魔法を溶かす事が出来るなら、溶かし切るまで殴り続ける。元々守るとか出来た事が無いんだ。
――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!
全身が……砕ける……裂ける……
それでも殴り続けると徐々に威力が弱まっているのが分る……それとも感覚が麻痺しただけか?
その直後、本当に砲撃が小さくなり、やがてただの光の筋となって消えた。
「――――」
どんな性能かは未だに知らないが、この形態がボロボロになるなんてどんな威力だ……本家本元を至近距離で喰らったフェイト……お前良く生きてたな。
「ディレイスペルアウト………ブラッディダガー……プラズマランサー……ディバインバスター」
続け様に聞こえた闇の意思の声………
あの時参考になるかとか言ってたな………前言撤回、あれはミッドとベルカが使えないと意味が無い……
――ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
魔力弾、魔力刃、砲撃の弾幕を一度に受けた俺はアリシア達の後ろまで吹き飛ばされて地面に叩き付けられた……
「――――――…………」
――ゴシャッ!!!
一瞬飛びそうになる意識を頭を地面に叩きつけ吹き飛ばす。
「コダイ!!大丈夫!?」
煙の外からアリシアの声が…………念話は……使えるか?
「≪一応……≫」
使えるみたいだな…………4,5回死んだけど。
「よか………!!」
煙が徐々に晴れアリシア達が駆け寄ってくるのが分った…………
って……何で固まってるんだ?それに顔も青くなって…………
「≪コダイさん!無事ですか!?≫」
念話?………この声はリニスか。
「≪一応………アリシア達を見つけた≫」
「≪っ!!……今すぐそちらに向かいます!≫」
後は、リニスが来るまで待つか…その前に怪我は…………
体は辛うじて形を保っている、内臓は殆ど潰れているが戦闘には支障無し……………一番の痛手は左腕が肩から無くなっている事だけだな。
「コダイ……アンタその腕――っ!!急いで病院に!!!」
アリサとすずかが急いで携帯を開く。
「アリサちゃん!圏外になってる!!」
「嘘!?そんな……!!早くしないと……」
アリサとすずかが慌てているのをアリシアが落ち着かせようとするが本人も慌てているから、逆効果だった……
「皆さん!!大丈夫でしたか!?」
リニスが空から降りて来た。
「え!?あなたは確かアリシアちゃんが言っていたリニスさん?………それよりも空から」
「話は後です!今は此処から貴方達を避難させます!」
すずかがリニスが居る場所と降りてきた空を交互に見ている。
リニスは急いで三人の足元に転移魔法を展開する。
「ちょ、ちょっと待って!コダイ君が!!!」
「動かすと危険なのでこの場で治療します!後…この事は事態が落ち着き次第必ず話します!」
そう早口で言ったリニスは3人を安全な場所まで転送した……
「≪リニス、ユーノとアルフは?≫」
「2人はフェイト達の所へ……それよりも今は傷を治しますからじっとしていてください!」
リニスは俺に回復魔法をかけてくれる。
「思った以上に傷が深くて回復が追いつかない……」
だろうな………此処までの深いと治せないよな。
≪すぅ……すぅ……≫
やっぱり、あの状態の後はレイが眠るのか。魔力はもう搾りカス位しかないから意味が無いけど……
「――――――」
――グシャッ!!
足に力を入れて立とうとしたが、膝から下が嫌な立てて潰れてしまった。
全身の力を入れてみるが微動だにしない体……………動けなければ……動かせばいい………
――『幻想』が……………
『現実』を犯す………――
「―――ァァァァァァアアアアアア!!!」
――グシャッ!!ジャララララララララララララララ!!!!
全身から大小異なる鎖が体を突き破り、体に巻き付き、鎖を操り無理やり体を起こす。
「ァァァァ………アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
――ブシャッ!!メキメキッ!!ゴキャッ!!
今度は背中から羽の様に大量に数十条にも及び背中から生え、一対の鉄の羽になった。
――ギィィィィィィィィィィィッ!!
「ァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
金属同士が擦れる特有の嫌な音を立てながら、闇の意志へと飛んだ。
「お前……その姿は」
空でまだ泣いている闇の意志と対峙した。
「≪質問。ここは主の居る世界なのに何で壊そうとする?≫」
喋れないので念話で話す。
「我が主は、この世界が自分の愛する者達を奪った世界が悪い夢であってほしいと願った。我はただ……それを叶えるのみ 主には穏やかな夢の内で
闇の意志の足元に魔法陣が現れた……
「≪まさに闇の書だな≫」
「お前も……その名で呼ぶんだな……」
いや、さっき自分で闇って言っただろ。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
突如、大地が揺れ魔力を蒐集した魔法生物の触手らしきものが地面を割り出現した。魔法生物を取り込んだらこうなるのか…………もう夜天とか言ってる場合では無いな。
「それでもいい……」
闇の書は俺の目の前に現れた。
「私は……主の願いを叶えるだけだ……」
「≪叶えるだけ叶えて放置か……≫」
「我は魔導書……ただの道具だ」
「≪そのただの道具さんが何で泣いているんだ?≫」
「この涙は主の涙……私は道具だ、悲しみなど無い……」
話が進まない……もう1発殴らないと治らないか?
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
そう考えていると、さっきよりも激しい揺れが起こり、街の至る所から火柱が登った………火事にならないのかな?あ、結界張ってあるから大丈夫か?
「早いな……もう崩壊が始まったか……私もじき、意識をなくす………そうなれば直ぐに暴走が始まる。意識ある内に、主の望みを………叶えたい」
そう言って闇の意志は俺に向かって手を翳す………
「≪そうだな………………………意識を失っては借りを返せない≫」
――グシャッ!!
一瞬の隙を付いて、右手で闇の意志の左肩を貫いた……
「グッ………何を」
「≪世界を救うとか誰かを助けるとか夢を守るとかそんな綺麗でカッコいい事は俺には出来ない………≫」
貫いてる右手に更に力を込める……
「グァッ!?………ではお前は一体何のためにそこまで抗うのだ……」
「≪そんなの決まってる…………私が動く理由は今も昔も…………自分の為にと……ただ、それだけよ≫」
闇の意志を蹴り飛ばし、その反動で左腕を引き千切る……
「グアアアアアアアアアアアアアア!!!」
かなり本気で蹴ったから、闇の意志は向こう側のビルに激突した……
「≪自分勝手だと思う……小さいと思うけど……私にはもう誰かを救う何て事は出来ないの≫」
向こう側にいる闇の書を向いて呟く……
「≪でもコレで左腕の借りは返せたわ……≫」
千切った左腕を左肩にくっ付けると、ゴキゴキと嫌な音を立てて左腕が動く…………
数秒動いた後、だらりと下がる………腕は俺の左腕に変化していた。
「≪少しぎこちないけど………贅沢言ってられないよね≫」
手を何度も動かし確認した後、ビルの向こう側を見ると。もう左腕が治っている闇の意志が居た………
――ギィィィィィィィィィィィッ!!
背中の鉄の羽が嫌な音を立てて擦り合わせて闇の意思に向かって飛んだ。
アマデウス様、桜日紅葉雪様、liqueur様、シーザス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~