魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
家に入る前に怪我の事バレない様に包帯を服の下に巻いて、血の処理をしてから入った。
「来たか……早かったな」
「場所が場所だったから少し飛ばした」
「そうか……コッチだついて来てくれ」
リビングにいたクロノの後について行く。
クロノに連れられてやってきたのは変哲もないアースラの一室だった。そこにはユーノがいた。
「久しぶりだね」
「確かに、最近すれ違っていたな。無限書庫での働きはどうだ?」
「ぼちぼちかな?まだちゃんと整理して無いからアリアさんとロッテさんに手伝ってもらってるけど……」
「あ、だからあそこにいたんだ……と言うか管理局なのに書庫の管理もしないって完全に名前負けだろ?」
「いやいや、上手い事言ったつもりだけど。アレは整理できる代物じゃないから」
そうなんだ……今度見てみよう。
「で、クロノ話って「待ってくれ今認識阻害の結界を張る」?」
一体なんだ?クロノに言われたとおりに待つ事にした。
「……よし、もういいぞ」
「クロノ、仮面の男の正体が分ったって言ったよな?」
「仮面の男の正体は……………リーゼアリアとリーゼロッテだ」
「それって確かクロノの師匠の……」
クロノが苦しそうに言った………
「消去法から考えても一番妥当かもな。クロノ以上の戦闘力に複数人、そして闇の書に恨みがある人間………実行犯はアリアとロッテだが、首謀者はその使い魔の主、ギル・グレアム」
何か納得したな。
あの仮面の男達が妙に闇の書に詳しいのは前回の被害者。そして俺の事を妙に監視慣れしていたのは、はやての事を随分前から監視していたから。
主を特定していたからあの計画に踏み込んだのか……ん?そう言えばはやてが電話で話していた支援してくれてる親戚の名前も同じだったし……ようやく線で繋がったって感じだな。
「ちょっと待ってよ確かにコダイの言う通り今までの事件を見れば闇の書に恨みを持っている人は沢山いる。だけどよりにもよってあの2人なんて!」
確かユーノは無限書庫で手伝って貰っていたんだよな?近い人間が犯人ってショックは相当大きいな。
「僕もそう思った……けど調べれば調べるほどその線が強くなった」
「クロノ何時から気付いた?」
「君が仮面の男はこの中にいるって言った時だ。薄々勘付いていたけどその後に本格的に調べてみた」
「……復讐だな」
俺があえてそれだけ言うとクロノは小さく頷いた。
何で人間って復讐何てしたがるんだろう?
「ん?そう言えば何でユーノが居るんだ?何も聞いてないぞ?」
「そうだった……実は一つ頼みがあるんだ。ユーノ」
切り替えるために気になっていた事を聞いてみた。
「あの情報だね、コダイ」
ユーノに渡された情報にはこう書かれていた。
「………『夜天の魔導書』?」
「うん、今のところ分かってるのは。闇の書ってのは本来の名前じゃない、古い資料によれば正式名称は『夜天の魔導書』本来の目的は各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究する為に作られた『主と共に旅する魔導書』だったんだ」
つまり…………今まで『闇の書』と検索したから駄目だったんだ。
「いや待て、じゃあ何で守護騎士達はその魔導書の事を『闇の書』って言ったんだ?」
「破壊の力を振るうようになったのは、歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したからだと思う、多分ヴォルケンリッターもその時記憶をすり替えられたからだと思う」
結局、人間の考える事は今も昔も変わらないな………
「一番最悪なのが。持ち主に対する性質の変化、一定期間蒐集が無いと持ち主自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる、無差別破壊の為にだから………これまでの主は完成してすぐに―――」
はやては実質10年間蒐集をしていない、だとすると時間が残り少ない。
それに関してもう1つ気になるのは守護騎士達が闇の書を完成した時の記憶が無い事。聞きそびれて結局分らなかった事だ……
「頼み事とは『夜天の魔導書』についてシードで調べて欲しい」
「確かに『夜天の魔導書』と調べれば上手く出るかもな……期待するなよクロノ?どっかの検索エンジン並みしか働かないからな?」
≪よ~し!久々のシード展開!≫
シードが数個出現して、以前の闇の書を検索した時よりも巨大なモニターとキーボードが出現した。
「検索ワードは『夜天の魔導書』」
キーボードに打ち込むと、モニターから大量の情報が表示される。
モニター1つでは処理できないと判断して、更にシードを数個投入。モニターを複数に切り替えた。
≪ん~と……ふぇ!?5万件以上!?≫
「似た様な物は削除、歴史と性能などが載っている物を重点的にだ」
≪うん!………半分に絞れたよ!≫
「全部出せ、こっからはシラミ潰しで探す」
気が遠くなりそうだな。
「どうだ?」
「さっぱり」
「こっちもだ………」
情報をユーノとクロノと分担して端から端まで見てみたが、コッチには当たりが無く二人に聞いてみると同時に首を横に振る………
≪うぅ~ゴメン………≫
「謝ってどうする」
本当に使い勝手悪いな。
「………頼みの綱は無限書庫だな」
「うん、もうちょっと頑張って知らべて見るよ」
「俺も別方向から調べてみる」
別方向から検索して……後で見れるように纏めてと。
「ありがとうユーノ、コダイ、レイ。後、あの二人には気を付ける事」
「うん」
「当然……あとギルもな?」
ユーノは頷いて、俺は最後に一言付け足した。
「そう言えば………」
あの後、すぐ家に帰った――と言うより。怪我がバレて強制送還された。
「家に居るのって凄い久しぶりな気がする」
ん?それは言ってはいけない?大丈夫だ、問題無い。
「研究は無理だな」
怪我の事は絶対プレシア達に伝わってるし、無理だな。
「………何か作ろうかな」
少し家を空けてるから冷蔵庫の中身が心配………危なそうなのは全部使うか。
「野菜は刻んでソースとか常備菜にするか」
野菜を適当に刻む。
リズミカルな包丁の音だけが響く………
『コノッ!!………大切な物を奪われる悲しみを…子供の何が分る!!』
ふと、頭に思い浮かんだのは仮面の男の言葉だった………
「そんな物………とっくに無いよ」
悲しみは無かった……奪った対象に怒りも感じなかった。あったのはたった1つ――――
「――――ッ」
指先に小さい痛み、指を切った様だ…………
『貴様の悲しみなんか知らない………大切な物が無くなって悲しいのは誰だって同じだ、悲劇の主人公ぶるな………』
「どっちかって言うと………私は悲劇のヒロインかな?」
誰にも救われなかった、誰も助けてくれなかった、誰も見てくれなかった―――
自分で言った事に自己嫌悪。
傷口を洗い流し再び作業を再開した………
――~♪
ソースと常備菜を作り終えて、『夜天の魔導書』について情報を整理していると、携帯が鳴った。
携帯を開くと『はやて』と書かれてる、はやては入院中だから恐らくシャマルだろう。
「どうした?」
「コダイか!?頼む、すぐ家に来てくれ!!」
電話の主はヴィータだった………何か凄い慌てている。
「蒐集から帰ってきたらシャマルが料理してんだよ!今シグナムが止めてんだけどよ……お前だけが頼りなんだよ!お前だけがシャマルのアレを平然と食えるし料理もギガウマだし……私達を助けてくれ!!ザフィーラは毒見させられて気を失っているんだよ!!」
大丈夫なのそれ?生きてるの?
「料理は経験が物を言う………シャマルの腕を上げて欲しければ大人しく実験台になれ」
「そこを何とか~」
涙声になっている。
「…………分った、今手土産と一緒にそっちに向かうから、それまで生きてろ」
「うぅ………コダイ~」
もうちょっと聞きたかったけど、死なれたらはやてが何て言うか…………
先ほど作った常備菜を鞄に入れて、はやての家へ向かった。
~おまけ~
はやての家に着くともう手遅れだったらしく、シャマルの料理は完成されていた。
「アム……前より少し良くなった」
シャマルが作った泡が立った緑色の何か食べて一言。
「本当ですか!?」
「「分るのか!?」」
「後、味付けは少し薄めにして火は弱火で煮込んだ方がいい。その方がより美味しくなるぞ?……このシチュー」
「「シチューだったのか!?」」
だって僅かにホワイトソースの臭いが……………
ちなみにこのシチューは俺が手を加え、普通のドリアにした。
後、ザフィーラは家に来た直後に全部吐かせて治療した。
桜日紅葉雪様、liqueur様、シーザス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~