魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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正直に言うと八神家イベントを書きたくて仕方なかったです。


○○誕生?byコダイ

「……こんな所だな?次に気付いたら、なのはとフェイトがシグナムを睨んでた」

「ありがとうございます。なのはさんとフェイトさんとも話がかみ合っていますね」

 

 その後、転移した俺達はアースラのミーティングルームで今回の事についてリンディに報告をしていた。

 ちなみに怪我何だが、シャマルが殆ど治してくれたおかげで説教は無かったが出血が多かったので、現在包帯だらけです。

 

「3人が出動して駐屯所の管制システムがクラッキングであらかたダウンしちゃって、それで指揮や連絡が取れなくて……ごめんね、私の責任だ………」

「無理言って出して貰ったんだ、この怪我は殆ど自業自得だ……蒐集もされたし、完全に差をつけられたな」

 

 落ち込んでいるエイミィに擁護する。なのは達はともかく俺の場合は自分の責任だしな。

 それは良いとして………

 

「…クロノ、何で後ろに隠れるんだ?……それと今まさに襲い掛かろうとしているあの猫女は誰だ」

「………あれがクロスケの言っていた…ジュルリ」

 

 猫耳の女……使い魔か?そいつが目を光らせ、耳をピンと立てて、息が荒くなっている……

 隣にいるもう一人の猫女は髪が少し長い、それ以外は見た目は殆ど同じ……双子か?

 

「彼女はリーゼロッテ、そして隣にいるのがリーゼアリア。グレアム提督の使い魔で僕の師でもあった。今回、闇の書の探索に協力してくれる事になったんだ」

「リーゼロッテにリーゼアリアね……」

 

 やっぱり双子か。

 成程……あれがクロノの師匠(?)か。

 

「君は誰?もしかしてクロスケのコレ?」

 

 と言ってロッテは小指を立てた………古いな。

 クロノってクロスケって呼ばれているのか……

 

「ロッテ!!何を言っているんだ!」

 

 即反応するが、隠れたままだぞ?

 

「お~この反応……図星か!?」

「違う!!……ってアリアも何納得した様な顔をしているんだ!?」

 

 隣にいるアリアが俺を上から下までじっくり見た後、納得した顔になっていた。

 

「いや……お似合いだぞ?大人びててその年でスタイルも良いし―――」

「ねぇねぇ!クロスケの彼女じゃないなら喰ってもいい!?」

 

 何か評価しているアリア。

 更に目が肉食獣に近い目になったロッテ……あ、猫は基本肉食だ。

 どうしよう、このままバラすか――――

 

「何言ってるんだ!コダイは男だぞ!!」

 

 新パターンだ……第三者がバラす。

 

「アハハハハッ!照れない照れない♪」

「クロノも年頃何だし普通じゃないか、それにそんなこと言ったら彼女に失礼だよ。ねぇエイミィ」

 

 あ、これも新しい………冗談だと思っている。

 笑い飛ばすロッテ、その隣で少し怒った感じのアリアがエイミィに同意を求めるために視線を送った……

 

「え?……えっと……まぁ、アハハハッ」

「「?」」

 

 エイミィの歯切れの悪い渇いた笑いに首を傾げたアリアとロッテ。エイミィだけじゃない当事者である俺と巻き込まれたクロノ以外殆どの人がエイミィと同じ反応。

 唯一リンディだけはずっと笑顔だった………

 

 

――ピシッ!!

 

 

「え~………マジ?」

「本当に………男の子?」

 

 ロッテとアリアの問いは『実はドッキリ』なんて希望を打ち砕く、全員が頷くと言う形になった。

 

「嘘っ?!」

 

 ロッテに右腕を引っ張られてアリアとの間に挟まれて顔とか腕とか触られている……

 

「こんなフリフリのゴスロリ着せてずっと傍に飾って置きたい様なこのお人形さんが男!?」

「腕とか腰細っ!て言うか髪の毛サラサラ……肌も白い……」

「アリア!顔触ってみ!スベスベだよ!!」

「うわ……本当だ、それに顔も人形みたいに綺麗」

 

 そんな事ブツブツ呟きながら触っていた。

 

「男………これが男?」

「ま………負けた」

 

 ベタベタ触って数分後、アリアとロッテは膝から崩れ落ちて何か呟いてる。

 新鮮な反応が見れて凄い面白かった。

 

「あ~元気出せ……………ロッ○リア」

「略された?!しかもなんか美味しそう!?」

「その略し方は色々危険だからやめてくれる?!」

 

 我ながら良いと思ったが不評のようだ。

 

「と言うか何やってるんだ?早く起きてくれないと進めないだろ?」

「「自分で壊しといて!?」」

 

 ……面白いなこの二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもおかしいわね、向こうの機材は管理局で使ってるものと同じシステムなのに……それを外部からクラッキングできる人間なんて居る物なのかしら」

 

 弄った後はリンディがすぐに空気を戻した。さすが提督……それで今話し合っているのは通信がジャミングされた事についてだ。

 

「そうなんですよ!防壁も警報も全部素道りでいきなりシステムをダウンさせるなんて……」

 

 リンディは首を傾げる、エイミィもその時の事を思い出し、気が付いた事を話す。

 

「ちょっと、有り得ないですよね」

 

 アレックスがあり得ないと言うのも当然だ。

 クラッキングに重要なのは『足が付かない事』だ。その為に普通は外部のサーバーを何か所も―――と行う。

 管理局の同格のシステムを素通りしてダウンさせた……だがお陰で対象が限定されたな。

 

「ユニットの組換えはしてるけど、もっと強力なブロックを考えなきゃ……」

「それだけ凄い技術者が居るって事ですか?」

「うん……もしかして組織だってやってんのかもね?」

 

 なのはの質問にロッテが応える。

 

「後……もう1つ選択肢がある」

 

 俺の言葉に全員が一斉にこっちを向く。

 

「この中に―――仮面の男がいる」

 

 その一言で室内が一気にざわついた。

 

「待って!!それじゃあコダイ君は管理局の人が仮面の男だって言ってるの!?」

「落ち着けエイミィ。管理局並みの技術力を持った人間なんてそう簡単に居ない、組織だってそうだ……だとするとこう考えた方が簡単だろ?」

「確かにそうですけど……それには問題点があります」

「――闇の書に対して何らかの感情を持っている局員が多すぎる」

 

 その言葉にリンディが頷く。確かにそうなると特定は難しい……

 

「でも、一応怪しい人物がいないか確認してみます」

 

 是非そうしてくれ………

 

「アレックス、アースラの航行に問題は無いわね?」

「ありません」

「ん、では予定より少し早いですがこれより司令部をアースラに戻します、各位は所定の位置に」

「「「はい!!」」」

「後、なのはさんはおうちに戻らないとね」

「はい!」

 

 その後は何も変化は無く終了した……

 俺の予想が正しければ仮面の男は闇の書を完成させ様としている。理由を聞けなかったのは痛いな………

 ここで発破を掛けた以上、こちらから探すのは不可能と考えよう。

 もう一度会う方法は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か此処を曲がって―――」

 

 地球に帰り、適当に準備整えて、時間を見計らってから以前はやてから携帯に送られた地図を頼りに進んでる。

 以前から来いと言われて、行ってなかった。

 はやての家には恐らく守護騎士がいる―――

 

 守護騎士と仮面の男……互いの目的は『闇の書の完成』の筈だ。

 

 あの時のシグナムの仮面の男の会話は、どうも面識が無いみたいだ。協力や同盟をしている訳でも無さそうだ。

 でも仮にそうであったとしたら色々納得が行く、守護騎士を逃がしたり……応援が来ない様にクラッキングしたりと………局員が完成させる理由としては………武力が妥当だな。

 ロストロギアとは言え、守護騎士のランクはAAA以上だ人手不足の管理局に取っては鴨がネギ所か土鍋とその他食材を持って来ているものだ。

 だけど………協力者でもなかったら何が目的で完成させているんだ?

 ………いくら考えても情報が少なすぎる。情報干渉機能のシードを使いたいが、なのは達に気づいた後、すぐにレイが眠ってしまった。これだとデバイスは一切使えない。

 後俺が出来る事といえば………

 

「蛇の道は蛇……だな」

 

 考えているともう目的地に着いた。

 かなり大きく、車椅子のはやての為かバリアフリーになっている家だ。

 

 

 

 

――ピ~ンポ~ン

 

 

 

 

 インターホンを鳴らす……………が反応が無かった。

 

「事前に連絡すればよかったか?」

 

 留守だった。

 さて、これは予想外だ……どうしよう。

 

「≪―――トキガワか?≫」

 

 ふと聞こえた念話……庭の方を見ると。そこには青い毛並みの大型犬が………もしかして……

 

「ザフィーラ?」

「≪そうだ≫」

 

 いたのは盾の守護獣のザフィーラだった。

 

「≪よく俺と分ったな≫」

「≪この家一帯にはシャマルの結界が張ってある≫」

 

 それで気付いたと……だがそれにしては警戒心がない……

 

「≪一応敵だぞ?≫」

「≪今のお前は蒐集されて魔力は無い。それに蒐集は一人につき一回だ≫」

 

 つまり歯牙にもかけないって事ね……

 

「≪はやては?≫」

「≪主は入院した≫」

 

 入院か………思った以上に深刻になっているな。

 

「いや、このまま待とう」

 

 別の目的もあるし……入れ違いになったら困る。

 それよりも一番気になるのは―――

 

「所でザフィーラ」

「≪何だ?≫」

「何で犬なの?」

「狼だ……これは主が犬を飼いたいと言ったからだ」

 

 ……………今度アルフの子犬フォーム教えてやろう、はやてに。

 待っている間暇だし……

 

「ザフィーラ、お手」

 

――ポン♪

 

「ハッ!」

 

 やった後で気付くザフィーラ………面白い。

 とにかくザフィーラで遊んでよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をやっているんだ?ザフィーラ。そして何でここにいるトキガワ」

「ハッ!!」

 

 暫くザフィーラで遊んでいるとシグナム達が来て我に返ったザフィーラ……途中から何も抵抗が無くなっていたけど。

 

「え?……え?」

 

 シャマルは辺りを見回して結界の確認をしている……

 蒐集した相手が昨日の今日で自宅訪問したら、驚くよな普通。 

 

「コダイ~♪久しぶり~!!」

 

 ………で、ヴィータは満面の笑みで俺に抱き着いて来た。警戒しろよ敵だぞ?

 俺より少しでも背が低いヴィータが少し新鮮。

 

「ん~♪」

 

 ヴィータが腰に腕を回して首辺りに頬擦りしてくる……髪の毛がこそばゆい。

 

「ど……どうしてココが」

「………コレ」

 

 ヴィータと違って警戒しているシャマル……シグナムもだがその二人に携帯のメール画面にしてシグナムに投げ渡した。

 

「大分前にはやてに家に遊びに来いと言われて簡単な行先をメールで貰っただけだ。確認してみろ」

「分った…………」

 

 受け取ったシグナムがジッと携帯に目を凝らす。シャマルも隣でジッと目を凝らす…………だけだ。

 

「トキガワ………この携帯はボタンが無いのだが」

「あ、ゴメン……それタッチ式だから」

 

 シグナムに返してもらい操作する。

 

「このアドレス、はやてのだろ?」

「確かに……」

「はやてちゃんと知り合いだったの?」

「そちらと接触する前にね偶然図書館で会って初日でアドレス交換してそれ以来、電話で話したりしている仲」

「あ!思い出しました。はやてちゃんが携帯で頻繁に話しているって言うお友達……あれ?でも確か男の子って」

 

 ……あ、シャマルだけ接触が昨日が初めて(前の時は意識飛んでいたからノーカン)だ。

 性別言ってない……となるとザフィーラもか。

 

「ん~?コダイはこんなだけど男だぞ?」

 

 抱き着いていたヴィータが顔を離してシャマルの方を見た。

 第三者がバラすパターンか……

 

「ヴィータちゃん、失礼よこんな綺麗な「事実だ」……シグナム?」

 

 流石に新しいパターンでも2回連続は飽きるな……

 

「え?………もしかして知らないの私だけ?」

「いや、ザフィーラにも言ってない。接触していた時間が短かったから」

 

 今日は女装(オシャレ)して無いんだけどな……

 

「―――――――」

 

 あ、シャマルが固まった。

 

「………どうするのこれ?」

 

 固まったシャマルを指す。

 

「……取り敢えず家に運ぶか。トキガワも上がってくれ」

「いいのか?シグナム……これでも敵だぞ?」

「負傷して昨日の今日で敵地に乗り込む奴もどうかと思うが?」

「それもそうだな」

「そうだ!早く入ろうぜ!」

 

 ヴィータに腕を引っ張られてはやての家に入っていく……

 

「ザフィーラも速く来いよ~」

「――――――」

「ザフィーラ?」

 

 玄関から顔を出してヴィータがザフィーラも呼ぶが返事が来ない。

 ヴィータが不思議に思ってザフィーラの元に向かった……

 数秒でヴィータが慌てた様子で戻ってきた。

 

「コダイ大変だ!ザフィーラも固まってる!」

「あ、やっぱり」

 

 ザフィーラはヴィータと一緒に運ぶことになった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に御免なさい!私ずっと女の子だと……!」

「此方も女とばかり思っていた………」

 

 硬直から解けたシャマルとザフィーラが真っ先に俺に頭を下げてきた……ザフィーラは伏せっぽいけど。

 

「でもコレを男だって思う方があり得ねーけどな」

 

 ヴィータが頬を突いてくる。

 

「慣れている……俺に会う10人中10人が女と勘違いするし」

「嫌な慣れですね……」

「慣れては行けない様な……」

 

 苦笑いで返すシャマルに冷静にツッコミを入れてくれるザフィーラ……流石八神家、ツッコミのバリエーション多いな。

 

「しかし………」

 

 シグナムがさっきからコッチを見ている。

 

「ん……なんだよ」

 

 いや、正確には家に邪魔してからずっと左腕に抱き付いているヴィータを見ている。

 

「あのヴィータが主はやて以外に心を開くとは……」

 

 そうなのか?

 人見知りするのは知らなかった。

 

「コダイは特別だ!」

 

 何か胸を張るヴィータ何が特別何だ?

 

「何かはやてといると暖かくなるけど、コダイといると、えっと……………胸の奥がジンワリして……懐かしいんだ!」

 

 え?何が?と言うか今思いついただろソレ……

 

「シグナムだってそうだろ!コダイを家に入れる時、普段はあんな事言わないだろ!」

 

 それもそうか、敵対中の局員がここに来たら先ず主の命を最優先するのが普通だな。

 

「そ……それは……」

 

 ヴィータに指摘されて目を逸らしたシグナム。

 

「そう考えると不思議だな………敵同士であるのにな………」

 

 ザフィーラが真剣に考えてる。ザフィーラも同意見?こっちは何も感じないけどな…………

 

「そう言えばさ、お前ってあの魔導師なんだよな?」

「あの魔導師?」

 

 まだ腕に抱き付いているヴィータが突然、話題を変えてきた。

 

「ほら、あの全身が黒い甲冑の」

「そうだが……それが?」

「全然似合ってねー様な気がすんだけど……持ち主と全然一致しねーって感じ?」

 

 女性陣には不評の様だ……好評だったのはユーノとクロノとか男性陣と綺麗に分かれた。

 

「俺に言われても………あれはデバイスが勝手に決めた事だし。スタイル・イレイザーの方がマシだと思う」

「スタイル・イレイザー?」

「シグナムの時に使った新形態だ」

「どんな感じだったシグナム」

「ふざけているとしか思えなかった」

 

 即答したシグナム、バッサリ斬ったよ……

 

「何度も言わせるな、女装はオシャレだ」

「それだから女性と勘違いされるのでは……」

 

 ザフィーラが否定では無く冷静に指摘してきた……

 

「あ~……どんな姿かすぐ分った」

 

 何か納得した感じのヴィータ。

 

「髪が長いから間違われるのだろ?切るなりしたらどうだ?特にその前髪、見えづらいだろ」

 

 シグナムがそんな提案してきた……え?別に女に間違われても全然嫌では無いけど?

 

「この髪形に慣れているし……いざバッサリ切るとバランスが」

 

 それに前髪で目を隠しているのは視線を読まれないためだし……一応理には適っているんだけど。

 

「シグナムの言う通りだ。顔を出せばチョットは男らしく―――」

 

 そう言いながら俺の前に周り前髪を横に流して顔を出して……固まったヴィータ。

 

「……………この話は無かった事にしよう」

 

 シグナムが無かった事にした。ザフィーラも無言で頷いた。

 

「…………あれ?そう言えばシャマルは?」

 

 再起動したヴィータがシャマルが居ない事に気付いた。

 シャマルは確か………

 

「そろそろご飯の支度をって台所に「「「何だって!?」」」え?」

 

 何だ……この驚きよう。

 

「やべぇ!止めねぇと!コダイにシャマルの料理を食わせてたまるか!」

 

 ヴィータ、どんだけヤバいの?

 

「クソ!どれぐらい時間がたった…」

「そんなに経ってはいない筈だ!今の内に止めるぞ」

 

 シグナムはデバイス起動してるし……あの中では一番出来そう何だけど。

 

「お待たせしました~♪よかったらコダイ君も食べてってください」

 

 

「「「お、遅かったああああああああああ!!!」」」

 

 

 三人が嘆く中、ご機嫌に料理を並べるシャマル……がこの色彩は料理で合っているのか?

 紫の何かや、緑色の何かとか、虹色の何かとか…………三人が慌てた理由が分った。

 

「さ、コダイ君どうぞ♪」

「コダイ食うな!お前を死なせたくねぇ!!」

 

 ヴィータが俺にしがみついてくる。

 

「ザフィーラ薬箱を…」

「気休め程度にしかならないぞ?」

「――それでもいい!」

「皆さん酷いです!!」

 

 シグナムやザフィーラにまで酷い言われよう…………

 成程……シャマルは料理が下手だと。

 

「――――アム」

 

 取り敢えず、近くにあった虹色の何かを一口。

 

「「「あぁっ!?」」」

 

 だから、一々驚くなよ三人………ん?

 

「味は変だけど食べれない訳ではないな」

 

 不味いが特に……………これ位で何で驚く?

 

「「「何だと!?」」」

「本当ですか!!」

 

 驚いてる三人と正反対に凄く嬉しそうなシャマルが印象的だった。

 

「アム……料理は経験が物を言うからさ……アム……次に期待………ごちそうさま」

 

 近くにあった虹色の何かを平らげてから、率直な感想を言った。え?味?始めから美味しい物を簡単に作れる訳無いだろ……

 

 

 

「………勇者だ!勇者が此処にいるぞ!」

 

「やっぱお前スゲェ!!!」

 

 シグナムとヴィータの歓喜と………

 

「酷いですううううううううう!!!」

 

 シャマルの泣きそうな声が

 

 ……何か面白そうだな。

 

「いや、別に食べれないもの入れている訳では無いから食べれない訳無いだろ?」

「それはそうだが……その見た目が……」

「確かに見栄えは悪いが、それで手を付けないのは食わず嫌いだぞ?」

「見栄え『が』じゃなくて見栄え『も』だろ」

「と言うか早く食べたらどうだ……冷めるぞ?」

「我らに死ねと言うのか」

 

 いちいちツッコミを入れてくる……ちなみにシグナム、ヴィータ、ザフィーラの順番に。

 

「そんなに食べたくないのか?」

 

――コクコク!

 

 3人が寸分違わず頷く。どれだけ嫌なんだよ……

 

「うぅ………」

 

 視界の端に膝を抱えて沈んでいるシャマルがいる。

 

「仕方ない……俺が何か作るか」

「トキガワ、料理が出来るのか」

「あ、そう言えばコダイ、前にはやてと同じ家事してるって言っていた!」

 

 ヴィータが思い出したように手を叩く。

 

「そうなのか?」

「料理の腕は同年代に負ける気は無い……そうだ、シャマル」

「うぅ………はい?」

 

 落ち込んでいたシャマルがこちらに顔を向ける……少し泣いていた。

 

「材料使うの勿体無いから……シャマルの料理使わせて貰うぞ」

 

 

「「「ちょっと待てえええええええええええええええ!!!!」」」

 

 

 また3人が吠えた。と言うか近所迷惑だろ。

 

「それを使うのか!よりにもよってそれを使うのか?!」

「無理だろ!それを如何したって無理だろ?!」

「勿体無くても良い!新しく作ってくれ」

 

 また同じ順で……打ち合わせとかしてるとか?

 更にシャマルが落ち込んでいる……

 だけど………

 

「これぐらいまだ修正が利くぞ?」

 

 

~数十分後~

 

 

 

 シャマルの料理は一手間を加えてアレンジ。万人向けの料理に仕上げなおした。

 軽度の物は強い味で上書きして様々な風味が後を引く様に、重度の物は煮込んで、エグ味やアクを徹底的に取り除き、コクとうま味を引き出すしてそれを最小限の食材で別の料理に仕上げる。

 ……それだけでは足りなかったので結局2,3品追加したが、なるべく材料費を抑えた。

 

「こ、これが元シャマルの料理だと?!」

 

 食卓に座っているシグナム達の目の前にあるのは薄い緑色のソースが掛かったコロッケ、ドレッシングをかけたサラダ、鶏肉に照りをつけて炒めトマトと和えた炒め物、ご飯は漬物のきゅうりと梅干を刻んで解した焼き鮭と混ぜて最後に刻み海苔を乗せた簡単な混ぜご飯となった。

 

「俺が一から作ったのは混ぜご飯と炒め物だけだ。それ以外は全部シャマルの料理に一手間を加えただけだぞ?」

「いや、これは一手間と言うレベルでは無いぞ」

「見た目と匂いはすげー良いけど………本当にシャマルの料理から作ったのか?」

 

 じっと見ているが先入観の所為か箸を取らないシグナムとヴィータ。

 と言うか冷めるぞ………

 

 

 

「――――美味い」

 

 

 

 そんな中、沈黙を破ったのはザフィーラだ。

 

「ウソだろ?!」

「何?!正気かザフィーラ!」

「と言うかシャマルにも俺にも失礼すぎるぞ」

 

 立ち上がるシグナムとヴィータを余所に黙々と食べ進めるザフィーラ。

 

「…………いただきます!」

 

 少し間があって、まるで俺と決戦に向かうような顔つきになって、目の前にあるコロッケを一口齧った。

 

「……………う、美味い……シャマルの料理だったとは信じられない」

「マジかよ……い、いただきます」

 

 ヴィータも恐る恐るコロッケを齧る。

 

「…………ギガウマ!何だコレ?!ちょっと辛いこのソースがスゲーイイ!!」

 

 次は一口で食べたヴィータだが……その握り箸は行儀悪いぞ?

 

「それはワサビのソース、辛さを和らげるために乳製品のマヨーネーズに生クリームで伸ばしたソースだ。コロッケの中身はシャマルの料理だけどな」

「マジで?!ソース無でもギガウマなのに?!」

 

 驚き過ぎだヴィータ………

 

「トキガワ、このサラダに使っているドレッシング……これもシャマルのか?」

「そうだ、匂い消しに刻んだニンニクと生姜を混ぜて―――って聞いて無いな」

 

 そうだの辺りから食べるの再開してたし………

 

「コダイ君、この鶏の奴、甘酸っぱくて凄く美味しいです………」

「照りをつける際に砂糖の代わりにママレード……オレンジのジャムを使ったんだ、柑橘類と肉は結構相性いいからな、それだけでは甘いだけだからトマトで酸味をな………と言うか少し泣きやめシャマル」

「うぅ~……甘酸っぱいにしょっぱいが……」

 

 涙目になっているが箸は止めないシャマルだった。 

 

「……すまない、混ぜご飯はまだあるか?」

「ザフィーラ?……一応多めに作っているけど。おかわり?ご飯だけで良いの?」

 

――コクッ

 

 小さく頷いた。

 もう殆ど食べ切っている……静かだったのは食べていたのか。

 

「今持ってくる……ほかにおかわりの人いる?一応明日の朝もこんな感じだと思うから結構多めに作っているけど―――」

 

――ガタッ!

 

 それを聞いたシグナムヴィータが立ち上がった。

 

「おかわり!」

「私も頼む!」

 

 ヴィータとシグナムがお椀を突き出してきた……

 その後もヴィータとシグナムが何回もおかわりしてきた………朝の分足りるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母神だ!母神が此処にいるぞ!」

 

「お前メチャクチャスゲェ!!」

 

「救世主は―――此処にいた!!」

 

 食事後、シグナム、ヴィータ、ザフィーラは凄く嬉しそうだった。

 

「どうせ私なんか……」

 

 それを比例してシャマルが凄い影を背負った……

 

「料理は経験だから。何度も挑戦していけば何とかなるし……がんばれ」

 

 もうそれしか言えなかった……

 

「うぅ~……コダイく~ん!」

 

 シャマルが俺に顔を埋める様に泣き付いてきた。

 

「はいはい」

 

 埋めてくるシャマルが落ちない様にこっちも腕をまわす。はやて苦労してるなこれは……

 

「あ~!!シャマルズリ……じゃなくて何でコダイに抱き着いてんだ………よ?」

 

 ヴィータがこっちに気づいて何か言いかけてやって来るが。

 こっちに気づいた時は何やら怒っていたのに近づくにつれてキョトンとした顔になっていた。

 

「シャマル………顔赤くなってんぞ」

 

 ヴィータに言われて、シャマルの顔を覗き込んでみると確かに赤い、それに何かトロンとしてて……眠そうだ。

 

「えっと……何かコダイ君に抱き着いて、撫でれたら……ヴィータちゃんの言う通り、胸の奥がジンワリして……懐かしくて………眠くなって……」

 

 あ、本当に眠たかったんだ。

 

「スー……」

「って寝たよ本当に………」

 

 しかも凄い幸せそうに……

 

「起きろ~寝るにはまだ早いぞ~」

 

 軽く揺すって起こす事にした……

 

「ん~にゅ~………ハッ!」

 

 暫くして目を覚ましたシャマルが弾かれるように体を離した。

 

「えっと………寝ちゃいました?」

「ぐっすりと」

 

 そう答えると今度は羞恥で顔が赤くなっていた。

 しかし、シャマルもヴィータも何が懐かしんだ?

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「すぅ…すぅ…」

 

 えっと……どうしよう。

 その後何故かヴィータとお風呂に入ることになったり、はやての部屋らしき所でヴィータと遊ぶ事になり………空が暗くなる頃に帰ろうと思ったら………

 腕にしがみついたヴィータがそのまま寝てて動けない……幸いベットの上だったからよかったけど。

 

「すまない……トキガワ、今日は…」

 

 その時、様子見にやってきたシグナムが申し訳なさそうにしていて……

 

「あ~言いたい事は分った………」

 

 泊まる事になった………あ、闇の書について聞くの忘れた。




liqueur様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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