魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

48 / 156
見て聞くより体で覚えるbyコダイ

 前回のあらすじ―――

 

「女装はオシャレだ」

「違う!!!目を覚ませ!!」

 

 オシャレを否定された………

 

「………ダメ?」

 

 今の姿をここぞとばかりに利用して。

 上目づかいに涙目、さらに可愛く握った両手を顎に置いて小首を傾げてみる。

 

「そ…………そんな顔をしてもダメだ!!!」

「何だ詰まらない」

 

 目を逸らされた。

 と言うか一瞬揺らいだな。

 

 

「さて」

 

 意識を足に集中、足をゆっくりと上げたり下げたりすると、意識した場所に足がピッタリと止まる。

 これが『エアーシューズ』か。踏ん張りも利くし、足場の悪い所でも十分利用できそうだな……おまけに魔力の消費がバーニア寄り遥かに少ない。

 

「よし」

 

 シグナムに向かって一気に駆けだす。

 

――ゴゥッ!!!

 

「何っ!?消えた!」

 

 シグナムでも追えない速さって……フェイト以上か?ならこのままシグナムの背後に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行き過ぎたああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」(ドップラー効果)

≪きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!≫(ドップラー効果)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 

 とにかく緊急停止、両足を揃えてブレーキを掛ける。

 

――ガツッ!!!

 

「あ」

 

――ザシャアアアアアアアアアアア!!!!

 

勢いを殺せず、前のめりになって崩れる。そしてそのまま砂漠にヘッドスライディング。

 

「…………大丈夫か?」

「砂が熱い……」

 

 戦闘中のシグナムに心配された。

 それだけ派手に転んだ。

 

≪うぇ~砂まみれ~≫

「速いは良いがバーニアの様に微調整が利かないのか……」

 

 被った砂を手で払っていく。

 何時もの様に動いたらさっきの様になる。直線的に―――立体的に動いた方が良いみたいだな。

 それに―――全速力は控えた方が良いみたいだ。

 

「速さは抑えて……」

 

 地面を強く蹴り上空に跳躍。

 速度はかなり抑えているからシグナムにも気づかれるはず……

 

「ッ!そこか!!」

 

 思った通り、シグナムがレヴァンティンを振るい、鞭に付いている刃が不規則に動きながら迫ってくる。

 ブレイザーの時は最小限の動きでかわしたが、イレイザーはそれが出来ない……なら大胆にかわすだけ。

 エアシューズで空中を蹴る。

 ある程度跳んだら向きを変えて再び空中を蹴る。

 一直線では無く、あえて大きくジグザグに動いて、シグナムの頭上から一気に強襲を掛ける。

 スローナイフを逆手に持ちシグナムの頭上から振り下ろす

 

「速い?!―――ッ!」

 

 まずは先手―――っ

 

――ガキィン!!!

 

 見えているだけあってシグナムの対応も早かった。頭上からの強襲は右から来た鞭をスローナイフで軌道を逸らし右肩を少し抉られ、空振りに終わった。

 

「っと、もう少し引き付けないとダメか……」

 

 体勢を戻す直前、体を捻りその反動でスローナイフを投げ飛ばす。

 

≪バースト!≫

 

――ギィン!!

 

 爆発する追加詠唱と同時にレヴァンティンで跳ね上げられたスローナイフは目標よりも上で爆散した。

 もうスローナイフは効かないか………なら成功だな。

 

「レヴァンティン!」

Schlangebeißen angriff(シュランゲバイセン アングリフ)

 

 鞭にシグナムの魔力光が覆われ、再び俺とシグナムの空間を囲んで行く。

 

「さっきの上位系統……取り敢えず逃げる」

 

 襲いかかる鞭からエアシューズで立体的に角張った螺旋を描く様に駆ける。

 

「逃がすか!!」

 

――シュアアアアアアアアアア!!!

 

 

「速い――もう追いついた」

 

 先程よりも早い蛇の刃は回り込んで俺の前に向かって来る。

 当たらない様に余計に動いたのが不味かったか………

 横を強く蹴り飛ばして、蛇の刃から一気に遠ざかる―――

 

「あ、やば」

 

 加減を間違えた、次の瞬間に目の前にあったのは俺たちを囲っている刃の鞭の壁。

 アレに引っかかったらボンレスハムの出来上がりだ。

 

「肉が無いから遠慮したいけど……」

 

 体勢を反転して素早く鞭を蹴り、ぶつかる様に地面へ着地した。

 

 

――ズシャアアアアッ!!!

 

「ぅ……また砂まみれ」

 

 絶対中に入り込んでいるよコレ………あ、デバイスだから問題無いのか?でも砂漠の粒子って結構細かいから傷口に入ると面倒くさい……

 

「最初に見せた速さ――あれは間違いなくテスタロッサ以上、私の目にも捉えられなかった。だが振り回されているようだな」

「それは初めて使ったからな。初回で使いこなすとかあり得ないから……」

 

 振り回されて以来のシグナムと対峙する。

 いや、確かなのはとフェイトはカートリッジ付きのデバイスを使った初戦闘で簡単に使っていたよな?………何か凄いイラっと来た。

 

「姿はどうであれ、鎧を捨てて速さに全てを置いたか。緩い攻撃でも死ぬぞ……正気か?」

「何度も言っているだろ―――女装はオシャレだ」

「姿の方では無い!!」

 

 そのセリフの後に『正気』とか聞かれると、捨身の事か姿の事かどっちか迷った。

 

「別に……俺には『守る』何て事は出来ないからな」

 

 体質上、どんな攻撃も危険だし。俺は死ねないし……

 

「1つ注意だ……忠告でも警告でも無く注意だ」

「………聞かせて貰おう」

「――――俺を斬る時は殺す気で来い。でないと………気後れするぞ」

 

 さっきから……いや、初めからシグナムや他の守護騎士の攻撃は致命傷を避けている。まるで死んで欲しく無い様に。

 

「不義理とは言え我が主の未来は血で汚したくは無い……その話は、聞けん!」

 

 再び蛇の刃が襲ってくる。

 

「口で言っても分らないよな……なら」

 

 

――ガシッ!!

 

 

 頭上から急降下してくる蛇の刃を右手で掴んだ。

 掴んだ刃が手に食い込み血が刃を伝う。

 

「連結刃を掴んだ?!……一体何を!」

「実践だ」

 

 そのまま連結刃を左手首に持って行き。

 

――ザシャッ!

 

 何も躊躇いも無く引き裂いた。

 深く裂かれた手首から、連結刃を掴んだ右手とは比べ物にならない程の血が噴き出して行く。

 

「なっ―――何をしているんだ貴様ッ!!!!」

 

 今までで一番大きなシグナムの怒声が響いた。

 

「何って実践だよ。貴様が殺す気で来ないからな………ほら、この傷を見て何か気づかないか?」

 

 その怒声に即答して。シグナムに連結刃を掴んだ右手とそれで引き裂いた左手首を見せる。

 

「―――傷が深すぎる?!デバイスにはそんな設定を………」

「体質だよ体質。俺の『幻痛(ファントム・ペイン)』がそうさせるんだ」

「ファントム………ペイン?」

「簡単に言えば強制殺傷設定体質、俺が受ける魔法はどんな魔法でも必ず殺傷設定になるんだ。実は言うと二度目の戦闘の際、そっちの魔法で一度死んでいるんだ」

「そんな体質があるわけ……一度死んだ?!………なら、何で貴様はココに―――!!」

 

 一気に説明しすぎたか………

 付いていけて無いみたいだ。だが―――

 

「言っただろ……殺す気で来ないと気後れすると」

 

 この隙を逃さない。

 手にスローナイフを3本づつ形成、それと同時に新魔法を付加。

 

≪ア・サンブル≫

 

 両手のスローナイフは通常の3倍程の1つ魔力刃となった。

 新魔法ア・サンブルは同じ魔法を重複させる事で威力を増し、重ねるごとに二重(デュオ)から十重(デクデット)まである。

 現段階でこれが出来るのはスローナイフだけ。最大重複数は三重(トリオ)

 3本づつ重ねてスローナイフ・三重(トリオ)をシグナムに向かって投げた。

 

「………ハッ!!このままではっ!!」

 

 

――ギィンッ!!

 

 

 一瞬、遅れてシグナムが連結刃でスローナイフを弾いた。

 

 

「弾くだけか?」

≪バースト!≫

 

 

――ドォン!!ドォン!!

 

 

 弾かれた巨大なスローナイフが同時に爆発。

 そこから軌道を変えて、先程より小さいスローナイフが跳び出してシグナムを挟んだ。

 

「爆発から魔力刃?!っ――アアアアッ!!!」

 

 シグナムがレヴァンティンを振り上げると、連結刃が竜巻の様にシグナムを囲い防いだ。

 

「そうだよこれを待っていた」

 

 その連結刃はシグナム自身の意思で操れる所為か、それ以外に殆ど手が回らない。

 証拠に連結刃にしてからシグナムはあそこから一歩も動いていない、さっきの魔法も連結刃の防御より魔法の方が早かったはず………

 上空に一気に跳躍、連結刃で作られた竜巻の唯一の死角、台風の目にあたる真上か侵入して、竜巻の内側をジグザグに蹴りながら速度を落としつつシグナムの懐に着地した。

 

「しまっ―――!」

「気をつけろよ?」

 

 シグナムに触れるか触れない位に手を翳す。

 

「―――『ココ』からだと相当痛いから」

≪ガンブレイズ!≫

 

 翳した手から何時もの分裂する魔力弾が分裂する前にほぼゼロ距離のシグナムに直撃して吹き飛ばした。

 

――ドォン!!!

 

「グッ……アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 数メートル飛ばされ、砂地に2,3回跳ねて止まったシグナム。

 吹き飛ばされると同時に連結刃の魔法が消えて、シグナムに引き寄せられる様に元の長さに戻った。

 

「ゲッホゲホッ―――!!何だそれは………以前よりも遥かに威力が違う」

 

 シグナムがよろめきながら立ち上がる。頭と口元から血が流れている。

 多少ダメージがあったみたいだな。

 

「当たり前だ、ただ俺が範囲だけが広い魔法を作ると思うなよ?」

 

 散弾と言うのは距離が遠ければ範囲は広いが威力は低い。逆に近ければ全ての散弾を一点に受ける事になる。

 

「私達やテスタロッサ達とは違う魔法体系か……そんな物は今まで見た事が無い」

「それは当然だ、半年前に俺が創ったものだからな。俺、ミッドとベルカの資質無かったし」

「そういう事か………」

Schwertform(シュベルトフォルム)

 

 連結刃の刃を引き戻されて長剣になった。

 

「形態を戻した?」

「貴様の魔法―――遠くにいても近くにいても厄介となると先程の形態では不利だ」

 

 シグナムがレヴァンティンのカートリッジを補給する。

 

 

 

――ザンッ!

 

 

 

「………止血しろ」

「は?」

 

 補給し終えたレヴァンティンを砂地に突き立てたシグナムが突然言い出した。

 

「何言っているんだ?どうせこのまま戦っても出血多量は免れない。それとも何だ?また同じことでも言うつもりか。なら今度は首を掻き切ってやろうか?」

 

 スローナイフを一本チラつかせる。

 

「蒐集の為だ……死なれては魔力も取れない」

 

 特に反応は無い……動揺している様でも無さそうだ。

 

「だが断る。蒐集されたら闇の書の完成に近づけるからな……」

「そうか―――なら仕方ない」

 

 再びレヴァンティンを抜いて構える。

 

「此方には治療魔法のエキスパートがいる。その傷を治療してから蒐集させてもらう!」

「あくまで初志貫徹ね……」

 

 もう一本スローナイフを形成して、両手に逆手に持つ。

 両手の血も少し乾いて流れが遅くなっている。

 お互いに構えて、じっくりと、徐々に間合いを詰めて行く。

 

 

「やっぱり……」

「やはりな……同じ考えだったな」

 

 俺とシグナムが間近に接近した。

 間合いは占領済み、互いの刃はそれぞれの顔の横に来ていた。

 

「ミドルレンジはベアトリス式の得意距離で俺が有利」

「ロングレンジはこちらが不利な距離と貴様が火力不足で引き分け」

「なら残りはこれしか無いな―――」

 

 

「「クロスレンジ」」

 

 

 シグナムと声が揃う。

 

「……こちらも1つ良いか?」

「……何?」

「名前は何と言う?」

 

 そう言えばこんなに会っているのに名前言ったこと無かったな。

 

「コダイ………トキガワコダイだ」

「トキガワか……改めて言わせて貰う」

 

 レヴァンティンのカートリッジがロードされる。

 

「お前の注意は確かに受け取った……だがその上で私お前を殺さずに我らの覚悟を貫かせて貰う!主の為に―――闇の書の完成を!!」

 

 準備は整った。

 後は切っ掛けを待つだけ……………

 

 

 

「―――――――」

「―――――――」

 

 

 

 先の先とか後の先とか考えるのは無駄だ。動くなら同時………

 

 

 魔力刃を握る手にも自然と力が籠る。

 その所為かは知らないが右手から血が滲み、雫が一粒落ちて行く―――

 

 

 

 

 

――ポタッ

 

 

 

 

 

 雫が落ちたと同時に左手のスローナイフで顔の横にあるレヴァンティンを上に持ち上げて、右手のスローナイフをシグナムの喉元を狙い付ける。

 

――ギャリッ!!

 

 だが喉元には届かず、シグナムがもう片方の手に持っていた紫の魔力光を纏ったレヴァンティンの鞘に遮られた。

 剣と鞘、この2つを防いだら後の攻撃手段は――

 

――ヒュッ!!

 

 それと同時に来たのは下からの膝。

 素早く膝に足を乗せて、その勢いと同時にシグナムから距離を取る。

 

――ダッ!

 

 間髪入れずに突進。

 そして間合いギリギリのところでシグナムの頭上に跳躍、上を蹴り最短距離でシグナムの背後を取り。

 スローナイフで切りかかる。

 

――ガキンッ!!

 

 背後からの攻撃を剣で受け止められた……剣?しま―――

 

――ゴシャッ!!!

 

 気づいた時にはシグナムの鞘で右側頭部を殴り飛ばされた。

 だけどそれだけでは終わらせない。

 

≪バースト!≫

 

 砂地に叩きつけられる直前に、殴り飛ばされた時に置いてきたスローナイフを2本とも爆発させる。

 

――ドォオンッ!!!

 

 2つの爆発がシグナムを包んだ。

 さっきはやられた、レヴァンティンと比べて軽量で小回りの利くスローナイフで懐に入るつもりが。逆に誘い込まれたとは―――

 剣を囮に本命の鞘での攻撃……最初の戦闘の際に俺が見せた鞘との応戦を利用したのか。これは手数が倍になったと考えていいな。

 だけど取り入れた期間が短い、付け込む隙はいくらでもある。

 爆風で舞い上がった砂煙から、シグナムが上空に飛びあがった。

 

≪ア・サンブル!≫

 

 すぐさま3本のスローナイフを重複してスローナイフ・トリオを形成して槍投げの容量でシグナムへ投げ飛ばす。

 

――ガギィンッ!!!

 

 シグナムは炎を剣に魔力を鞘が纏ったレヴァンティンを振り下ろしてスローナイフ・トリオを叩き落としす。

 その直後に駆けだして、叩き落とされて砂地に突き刺さったスローナイフ・トリオを駆け上がり、再びスローナイフ・トリオを2つ形成してシグナムの目の前で振り下ろす。

 

――ギィンッ!!!

 

 剣と鞘を交叉して受け止められた。

 すぐに回避、別方向から一度切りかかる。

 

――ギィンッ!!!

 

 防がれたなら速度を上げるだけ。

 間合いに誘われているなら喰らい付くまでそれしか手段は無い。

 狙う所はたった一つ―――

 

――ギィンッ!!!ギィンッ!!!ギィンッ!!!ギィンッ!!!ギィンッ!!!ギィンッ!!!

 

 前後、左右、上下、全方位に移動して攻撃を繰り返す。

 少しずつだが攻撃が通る手応えを感じながら手を緩めない

 

――チャキ……

 

 その攻撃の最中にシグナムがレヴァンティンを鞘に納めた、その一瞬―――

 

 

――ゴオオオオウッ!!!

 

 再び炎を纏った剣を抜き放ち、周囲に炎の壁を作った。

 

――ガガキィン!!!

 

 それで一瞬足を止められて、持っていた二つのスローナイフ・トリオは下に落とされた。

 その直後、炎の壁から現れたのはレヴァンティンの切っ先――

 

――ザシュッ!!

 

 切っ先は迷う事無く俺の左肩に刺さる。

 炎が消えると、目の前にいたのはバリアジャケットの端々が切れて所々に血が流れている……一番多いのは右腕。

 剣速を倍にする居合で捉えられたか………なら、もう動く意味がない。

 

―――ズシャ……!!

 

 シグナムが引き抜こうとするレヴァンティンを掴み更に深く左肩に押し込む。

 右手でしっかりと抑え込んで、空いている左手でスローナイフ・トリオを形成してシグナムの空いている脇腹に力任せに振るい、体を捻りそのまま叩き落した。

 

 

――ドォォォォン!!!

 

 

 叩き落した近くにスローナイフ・トリオ突き刺してその上に屈む。

 左肩は深く突き刺したにも血はそんなに出ていなかった……

 

 

Sturmwinde(シュトゥルムヴィンデ)

 

 

 僅かに聞こえた音声、それに素早くスローナイフ・トリオを形成して、飛んで来る斬撃を刃を寝かせて軌道を後ろに逃がした……

 スタイル・イレイザーの特性で魔法発動時間が短縮されなかったら危険だった。

 乗っていたスローナイフから跳び上がり、真上から急降下しながらスローナイフを槍の様に構えて突撃した。

 

――ガギィンッ!!!

 

 シグナムが振り上げたレヴァンティンが炎を纏いぶつかり合い拮抗する。

 気づいていない今の内だ―――

 シグナムを中心には弾かれたり、突き刺したりしたスローナイフ・トリオが対角線上に等間隔で並んでいる。

 ア・サンブルはただ重ねて効果を重複する魔法では無く、重ねた魔法を1つ、または重ねていた魔法を別々に扱う事も出来る――

 

≪バースト!≫

 

 四隅のスローナイフ・トリオをナイフ1本分だけ爆発させて、残り2本分をシグナムに向かって飛ばす。

 同時に持っているスローナイフ・トリオが強く光を放ち始めた。

 それを見たシグナムが目を見開いた。俺が何しようとしているのか分ったみたいだがもう遅い―――

 

 

≪バースト!!≫

 

 

 残り全てのスローナイフを爆発させた。

 

 

 

 

 

 

 

――ザザァァァァァァァァァッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 視覚も聴覚も一瞬で麻痺して気づいていたら砂漠を数メートル滑っていた。

 立ち上がった瞬間、眩暈を起こしフラついた。理由は血を流しすぎただけじゃ無いけどな………

 流石、超高速戦闘形……俺じゃなかったら死んでいたかも。

 

「ハァ……ハァ……ッ!」

 

 爆風が晴れた向こう側、シグナムは片膝をついてるシグナムはレヴァンティンを杖にして立ち上がった。

 

「フッ―――強いなトキガワ」

 

 久しぶりにシグナムの声を聞いた。お互いに喋る暇のなく高速で繰り出していたからな………

 と言うか何でそんな楽しそうな顔しているんだこの戦闘狂(バトルジャンキー)が………いや、それだからか?

 

「流石だ………お陰で右腕に力が入らない――」

「こっちも左腕が使い物にならない……半分自業自得だけどな」

 

 シグナムの持っているレヴァンティンがずり落ちる。怪我は俺に比べたら大した事は無いが、その中でも一番ひどいのは右腕だ。

 俺が高速で切り掛かった時に集中して狙っていた場所だ。

 対してこっちは左肩と頭部が一番深くて、脚や胴体を軽く切られただけだ。自傷だと両手の切り傷とスローナイフの爆発による全身の火傷と裂傷、これだけでは無いがな……

 

「魔法はともかく、クロスレンジはテスタロッサ以上だとは―――やはり得物は剣だったか」

「ベアトリス式は試作段階だと言っただろ。それに鞘も攻撃手段に入っていたなんてな」

「お前の読みにくい動きに対する為の……お前専用の切り札だ」

「褒めてくれてどうも……トリッキーがベアトリス式の基本だからな」

 

 いつの間にかこんな軽口を言い合える位になっていた……つまりアレか?『拳は口ほどにモノを言う』と言うやつ?冗談じゃない、俺はそこまで脳筋じゃない……

 

「ゲホッ……」

 

 喋り過ぎたか、咽て咳き込むと共に血を吐き出した。

 

「………お互いに、時間は無いようだな」

 

 シグナムがレヴァンティンを左手に持ち替える。

 

「ディレィスペル」

 

 右腕に環状魔法陣が一つ現れる………

 バニシングバスターのゼロ距離射撃………もつか?

 

 

 

 

 

 

「――――っ」

 

「――――!」

 

 

 同時に踏み込んだ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ズシャッ!!

 

 

「がぁ……あ……」

「な……………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ………奪え」

 

 後ろから胸を貫かれ、冷酷に言い放った仮面の男によって止められた…………………




『ア・サンブル』
ディレィスペルと同種の魔法で。同じ魔法同士を重複させる魔法。
重ねた魔法を1つ、または重ねていた魔法を別々に扱う事も出来て。重複する数に応じて二重(デュオ)から十重(デクデット)まである……予定。
現段階でこれが出来るのはスローナイフだけ。最大重複数は三重(トリオ)まで。


アマデウス様、龍賀様、アキ様、プー坊様、liqueur様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。