魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
「――――――ハァッ!!」
シグナムの突進と同時に振り下ろされる剣を後ろに下がってかわす。
「まだだっ!!」
息も付かせぬ連続の斬撃をかわす。
速いし――多分重いだろうな、それに手数も多い。ただの魔導師では無いな……あんな戦い方はしないし。
「よし、もう覚えた」
「なっ?!」
適当に振らせて覚えたタイミングで懐に潜り込み、それと同時に貫手を目に向かい突き出す。
シグナムの体が後ろに飛んだ―――だが手応えが無い、寸でで後ろに飛ばれたか。
「……躊躇無く目潰し――子供のする事では無いな」
上空で俺を見下ろすシグナムの顔には焦りなどは無かった。
コレは相当手馴れてるな。
「――そっちも子供『に』する事では無いな」
しかし上に飛ばれたら少しやり難いな、俺はデバイスが無いと飛べないし。
あ、それって結構致命的?
「少しはやる様だな………レヴァンティン!」
≪
レヴァンティンの刀身の付け根の一部がスライドし、刀身が炎を纏う…………一体何をした?
「紫電…………一閃!!」
落下と共にレヴァンティンを振りかぶるシグナム。
これはかわせ無いか………なら。
「迎え撃つ―――」
――ズガアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!
「ッ――――貴様、それは!?」
シグナムの一撃を俺が『ある物』で受け止めた。驚いているのは受け止めた事か、受け止めた物かどちらかだろうな。
「こっちが丸腰なのはどうかな?と思って……少し拝借させてもらった」
俺が受け止めた物はシグナムの剣型のデバイス、レヴァンティンを収めているだろう鞘だ。
「何時の間に――」
「目潰しの時に同時に。だけど鞘とはいえさすがデバイス、頑丈だな」
だが………熱い、炎を纏った剣を受けとめたし当たり前か、炎熱の魔力変換資質もちか。
――カラン…
レヴァンティンの刀身の一部がまたスライドし、何かを出した……コレは空薬莢?―――
「余所見をするな!」
――ギィン!
「忠告どうも」
再び来るシグナムの剣をまた鞘で受け止める。
「焦るなよ。熱いのは二つ名と剣だけにしておけ」
「まだ減らず口を!!」
――ギィン!
「あ――」
もう一度鞘で受け止めた時、手応えが変わった事に気づいてすぐ距離を取った。
「受け流せば良かったかな?返す」
拝借した鞘に罅が入っていた。
他人の物だし別に良いかと持ち主のシグナムに投げ返した。
返した鞘は、シグナムが受け止めると直ぐに修復された。
「その身の熟し……やはり唯の子供では無い見たいだな」
「それに関しては結構自覚している――どうする?だったらさっき言っていた仲間とやらを呼ぶ時間を空けようか」
その方が早く済むし、むしろそっちの方が
「それには及ば無い。ベルカの騎士に一対一で――」
シグナムが言葉の途中で止まった。
「済まない、急用が出来た。決着はいずれ付けよう」
シグナムの足元に三角形の魔法陣が展開して……………転移した。
「…………は?」
挑発するだけして途中退場か。
「しかしベルカの騎士か」
足元に残っている空薬莢を拾いあげる。
この薬莢にベルカの騎士―――まさか、そんなアンティーク染みた物に生でお目にかかるとはな。
「どうでも―――」
…………あ。
「よくないな。この結界があると帰れない―――仕方ない、シグたんミ☆を探すか………」
右腕を掲げ、指先を上空に向ける。
範囲はこの結界内だし直ぐに見つかるか……
「レイ」
≪シードてんかい!≫
右腕のレイから、青い菱形の宝石が遥か上空に打ち上げられた。
「さて、どこにいるか」
掲げた腕を下ろし、先程と同じ宝石を今度は4個取り出す。
宝石はそれぞれが光の線でつながると半透明のモニターへと変わり。俺を中心に頭上の映像を映し出している。
これがジュエルシードが生まれ変わった情報干渉機能『シード』。20個のシードを使い様々な事が出来る。例えば此処の地理を知りたければさっきの様に使いナビにも使える。
だが結構……いや、非常に使い勝手の悪い。
「えっと………あ、何か光ったり動いたりしてるな」
気になった場所をモニターに触れて拡大する。
≪あっ!?さっきのひともいる!それになのはとフェイトもいるよ!!≫
「他には?」
≪ん~………ユーノとアルフいがいは………ふたり?さんにんかな?………≫
「分った…………」
打ち上げたのとモニターのシードを回収する。
フェイトも来ていると言う事は、間違いなく戦闘になるな。フェイトではシグナムには絶対勝てないだろうし。
それにシグナムの仲間達もいるようだ。試すのはいい機会だ。
「さっさと行くか」
≪うん!≫
レイを起動して、目的地へ飛んだ。
「フェイトは……見つけた」
俺が見つけた時にはフェイトとシグナムが対峙している。けどフェイトのバルディッシュは大破している。
「レイ、最大出力…………急降下だ」
≪バーニア!≫
バーニアを一気に噴出して、その勢いでシグナムを蹴り飛ばす。
「久しぶりとさっきぶり」
「何っ!?グッ―――アアアアアアアアアアア!!」
――ドゴォォンッ!!!
……勢い付け過ぎた?かなり煙上がって見えないけど。
「コダイ!?」
「ん?フェイト久しぶり」
「久しぶり………じゃなくてどうやってここに!?結界が張ってあるのに」
「結界?最初から巻き込まれたから」
対結界破壊用の魔法でも考えておくか。
「ぐっ………貴様」
戻ってくるの早いな………
「コダイ………あのデバイス」
「分ってる……フェイト下がってろここは俺がやる」
「え!?一人じゃ危険だよ!私も「デバイス壊れている奴が何言っている」うっ――」
それもあるけど、本当はアレを試したいだけ何だけどね………
「と言う訳で選手交代だ」
何か言ってるフェイトを無視してシグナムの方に向く。
「貴様は………」
あれ?予想していた反応と違う……あ、デバイス姿見せて無かった。全身甲冑って不便だな。
「さっき鞘を貸してもらった奴だ。コレはバリアジャケットの姿」
「あの時のか……随分と顔に似合わないな」
十分自覚している。
「先ほども言い掛けたがベルカの騎士に一対一で挑むつもりか?」
「ん?それなら余裕で倒せるから却下。えっと……そこの、赤い子供と青い狼。ついでに倒すから3人まとめてこい」
「「「何だと!?」」」
俺が指名した二人と一匹が凄い睨んでくる……全然怖くないけど。と言うか釣られ過ぎだろ。
「≪と言う事だ、ユーノとアルフはフェイトを連れてなのはの所に行ってろ……アレを使う≫」
「≪アレ?……アレってなんだい?……アンタの事だから心配ないと思うけど≫」
「≪多人数相手は初めてじゃない?頑張ってね!≫」
アルフは首を傾げながら、ユーノは応援しながらなのはの元に向かった。フェイトも二人の後を追った。
……さて。俺の目の前には、かなり殺気を込めてこっちを睨んでる大人一人と子供一人と狼一匹………
「ベルカの騎士三人相手に一人で挑むとかいい度胸じゃねーか………」
子供がハンマー型のデバイスを構えた。
「その傲慢が死を招くぞ!」
狼が吠える………
「吠えるなら勝手に吠えてろ」
足元に六角形の魔法陣を展開する………
「ベアトリスに多勢も無勢も関係無いからな――」
「舐めんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
子供が突っ込んでくる。
「≪まずは様子見だ≫」
≪スローナイフ!≫
両手からナイフ状の魔力刃が四本現れて、それを指に挟むように両手に二本ずつ持つ。その内の二本を子供に向かって投げる。
「へっ!そんなモンぶっ壊して「じゃあその前に壊す」ッ!!」
≪バースト≫
レイの追加詠唱と共に投げた魔力刃は………爆発した。
――ドガアアアアアアアアアン!!
「ウワァッ!!」
「「ヴィータ!!」」
仲間の二人が叫ぶ。ヴィータって言うのか……ついでにそっちの狼の名前も教え「このやろおおおおおお!!!」あ、突破された………
残った魔力刃を両手一本ずつに持ち変え、ヴィータの振り下ろしたハンマーを片手で防ぐ。
「大した威力だけど私には効かねーよ!」
試作段階だからね。
「じゃあ、ホイ」
残った一本の魔力刃をヴィータの目の前に放り投げる。
「ヤバッ!爆発「するわけ無いだろ」グハァッ!!」
避けるために体勢を崩した隙をついてヴィータを蹴り飛ばす。
「あ……やり過ぎた?」
最近加減が聞かなくて……ん?
――キィイイン!!
「何!?」
後ろからシグナムの奇襲攻撃をさっき放り投げた魔力刃を持ち直して、後ろ向きに交差する様に魔力刃で防いだ。
「実はまだ試作段階でね。スローナイフはまだ射出出来ないんだ、だから投げて飛ばすけど設置の範囲は死角は無いぞ………ほら」
≪スローナイフ≫
シグナムの背後にも三本のスローナイフが設置された。
≪バースト≫
「しまっ―――」
――ドガガガガガガアアアアアアアアン!!
スローナイフは連鎖する様に爆発した、持っていたのも放り込んだから………6本?
「コレじゃあ、あんまり変らないな………「オオオオオオオオオオオオオ!!」お?」
狼が銀髪の褐色の肌の男になって、突っ込んできた。
「全く、ベルカの騎士は突貫志向か?」
その突進に合わせてカウンターを打ち込むが………
――キィイイイイイイイイイイイイイン!!!
とてつもなく強固な障壁で防がれお互いに弾け飛んだ。
「堅いな」
「盾の守護獣ザフィーラの盾がそう簡単に壊せるものか!」
アルフの時もそうだけど狼系って障壁が得意なのか?
「≪レイ、合図したら対障壁魔法≫」
≪オッケー≫
「じゃあこれならどうだ」
≪スローナイフ――バースト!≫
「ぬおっ!!」
スローナイフをザフィーラの足元で爆発させ、その隙に突っ込む。
「クッ………甘い!」
煙の中と抜けると気配に気付いたザフィーラが障壁を張る。
「≪今だ≫」
≪プラス・ブレイク!≫
全身装甲に薄く虹色の魔力光が覆う………
「身体強化か」
「いや………」
――パリィイイイン!!
「障壁破壊だ………」
「な………に………」
俺の拳はザフィーラの障壁を突き破り腹にめり込み、ザフィーラの体を軽く浮かせた……
そしてもう一度振りかぶりザフィーラを殴り飛ばした。
「グオオオ―――ッ!!」
流石守護獣と言うだけあってタフだな。
障壁を壊すために結構強めで殴り飛ばしたのにもう体勢を整えたよ。
「その魔法も試作段階か…」
「その通りだ」
ただ攻撃に障壁破壊だけが付加されるだけ、壊すのは自分の力次第。
「流石に我ら三人を相手にすると言うだけの実力はあるようだな………」
無くても俺なら言ってるけどな………あ、シグナムとヴィータが戻ってきた。
「ったくふざけた魔法使いやがって………」
いやいやヴィータ、
「じゃあ今度はもっとふざけた物だ」
≪ガンブレイズ!≫
左手を前に突き出し、そこからソフトボール位の魔力弾を射出する。
「クソッ――今度は何だよ!」
「何が起こるか分らない、距離を取るぞ!」
「分かった!」
シグナムの指示で距離を取る三人――――だがその瞬間魔力弾は極小の魔力弾に無限に分裂した。
「「「何っ!?」」」
――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
ガンブレイズは少し進むとショットガンの様に散弾する射撃魔法。
あんな風に距離を取ると地獄を見る、なんせ無限に分裂するからな………相手から遠ければ遠いほど逃げ場が無くなる。
≪あ、コダイ!もうひとりいるよ!≫
もう1人……つまり仲間か、恐らく参謀的な役割か………
「≪何処にいる?≫」
≪とおくにあるむかいのビル≫
「≪じゃあ…………砲撃だな≫」
体を半身にして右腕を引く………空手の正拳突きに近い構え、砲撃に放つ魔力を込める。
「させるか!」
≪
ガンブレイズの弾幕から抜けたシグナムが衝撃波を放つ…………これ、撃ったら当たるな………よし。
「レイ………」
≪ディレィスペル≫
右手にあった砲撃のための魔力は消え、代わりに右腕に環状魔法陣が現れた。
「まずは…………動きを止めるか」
左手からガンブレイズと同じ大きさの魔力弾を放つ。
「同じ手は二度通用しない!」
「ぶっ壊す!」
ガンブレイズを警戒して突っ込んでくる三人――だがそれは………ガンブレイズでは無い。
≪ウェブバインド!≫
魔力弾はシグナム達の目の前で網状に展開して三人をまとめて拘束した。
「これは………バインド!?」
「くっそ~何処までふざけてんだ!」
さて……三人がもがいてる隙に…………
「ディレィスペル・アウト」
右腕の環状魔法陣が消えて、その直後に右拳に魔力が込められた。そう、さっき撃ち損ねた魔法だ。
「≪レイ………≫」
≪バニシング……………バスター!!≫
右拳を突き出すと同時に放たれたのは銃弾の様にジャイロ回転を描く虹色の砲撃、それは一直線に進む――だが
「あ――」
これも試作段階―――実はコレまだちゃんと撃った事ない、撃てたとしても途中で体勢が崩れて………
――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
ほら、狙いがずれた。
「如何しよう……」
≪かいりょうする?≫
「これだけもう20回以上改良したんだけど………」
初めの頃は右腕のありとあらゆる骨があり得ない方向に折れ曲がると言う衝撃映像が起こったからな。
――ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
ふと後ろを見ると、桃色の光の柱が昇った………アレって。
≪スターライトブレイカーだよね………≫
「半年前より凶悪になってないか?」
近くにいるだけで蒸発しそうだな………あ、結界が壊れた。
≪なのはだいじょうぶかな?≫
「なのはよりコレを放つレイジングハートが心配なんだが――」
アレで壊れてないよな?
≪ん~…………あっ!コダイ!あのさんにんがいないよ!≫
「バインドブレイクされたか……」
3人がかりでバインドブレイクしたらな。強度を改良する必要があるな。
「この事は後にして………なのはの所に向かうか」
≪そうだね≫
俺が皆の元に着くとそこにはボロボロのレイジングハートを杖にして(元々杖だが)立ってるなのはが………
「さっきのか……さっきの砲撃でついにガタが来たのか」
「にゃあ!違うの!これは襲われた時に壊れたの!」
「成程――正当防衛の砲撃でか……レイジングハート、良い奴だった」
「にゃああああああああああああ!違うってば~!」
不屈の心様、シーザス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~