魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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え?戦闘中に成長ってありなの?byコダイ

「悪いな、あげ足を取りは特技の一つだからな」

 

 詫び何て入れるつもりは無いので軽く返す。

 

「碌でもない特技ね……」

「貴様の趣味の人形遊びよりマシだと思うが?」

 

 皮肉を皮肉で返す。

 別にフェイトを人形と思ってはいない。

 

 

「後、図星も突くのも得意でな………いくつか核心を突いてやる」

 

 俺は一本目の指を立てる。

 

「まずは、プロジェクトF.A.T.Eについてだ。これは貴様オリジナルでは無い、恐らく誰かの基礎理論があって、それを発展させた。違うか?」

「えぇ………その通りよ。よくあの日記だけで分ったわね………」

「オリジナルなら何度も実験をした筈――なのに確認されたのは明らかに少ない。つまりある程度の確証があるから何度も実験する必要はない。次に二つ目だ」

 

 二本目の指を立てる。

 

「次にアルハザートについてだ。これは俺も分らないが、アルハザートは実在していたのかもしれないという事。プロジェクトF.A.T.Eは死者蘇生の秘術の基礎理論を貴様が発展させたもの、そしてある仮説が考え付く。この秘術の理論はアルハザートの人間が考えたのでは――と」

「……………………………」

 

 無言の肯定と捉え、三本目の指を立てる………………

 

「次……いや最後に。これはフェイトの事だ」

「っ!!」

 

 クローンの持っているデバイスが、ミシッっと軋んだ。

 

「………何故廃棄しない?」

 

――ギリッ!!

 

 

 クローンの歯軋りの音がクリアに聞こえる……

 

「アリシアが蘇らなかったら、そのクローンを廃棄して基礎理論を見直して誤差を修正して、再実験すればいいだろう?フェイトの事を人形と思っているなら尚更にな……何故アルハザートやジュエルシードなど可能性の低い物に縋ろうとする?」

「―――なさい………」

「俺の予想は2つ……まず、単に予算などが無かったから……そして……」

 

 無視して続ける。

 

「貴様は既に―――」

 

「黙りなさい…………」

 

「アリシアが………」

 

 止めるつもりはない。この女の精神を徹底的に揺さぶる。

 

「どうやっても蘇らないと分ってしまったから」

「黙れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

――ズガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!

 

 

 クローンの叫びと同時に大量の魔力弾が俺に目掛けて降り注ぐ。

 

「そう焦るなよ。大魔導師がきいて呆れるぞ?」

 

 バク転で全てかわし、右腕に巻いてある包帯を取ると、右手に付いてる俺のデバイス……レイが輝いてた。

 

「こっちはまだ言いたい事があるのだが。それは貴様を殴ってからだ。アクセス」

≪も~おこった!≫

 

 レイを起動して、全身に漆黒の装甲を纏う。

 俺はクローンに向かって、一気に走りだした。

 

「消えなさい!!フォトンランサー!!」

 

 フェイトとは比べ物にもなら無い程の魔力弾が部屋を埋め尽くした。

 

「ファイア!!」

 

 その詠唱と共に一気に降り注いだ。

 

「おいおいどうした?………狙いが定まってないぞ?」

「しまっ!!」

 

 さっきの精神攻撃が効いていたのか、狙いは殆ど逸れて簡単に近づけた。

 

「まずは一発」

 

 振った拳は……………

 

――ギィンッ!

 

 

 障壁によって防がれた。

 流石に堅いな……なら。

 

「ならこうだ」

 

――ギィンッ!!

 

 さっきより強く殴る………まだ壊れない。

 

――ギィンッ!!!

 

 さらに強く………まだだ。

 

――ギィンッ!!!!

 

 もっと―――

 

――ギィンッ!!!!!

 

「これで………くっ」

 

 前方の殺気に反応して後ろに飛び退くと同時に紫の落雷が落とされた。

 

「これは………サンダーレイジ」

「ふっ…………あの人形が使えて、私が使えない筈ないでしょ?」

「それにしては外れたな……………」

 

 更に煽ってみる。

 

「チッ…………でも貴方も人の事は言えないわよ?さっきから一撃も「障壁を見てみろ」?――っ!そんな馬鹿な!!」

 

 クローンの障壁には俺の殴った所に罅が入っていた………5回目で僅かに手ごたえが変わっていた。

 

「これで――」

 

 その隙を狙い、更に強く殴る。

 

 

――パリィン!!

 

 

 クローンの障壁がガラスの様な音を立てて砕け散った。

 

「一発目」

 

 クローンの顔面を殴り飛ばす。

 

「グハッ!!」

 

 殴り飛ばされたクローンは数メートル後ろの地面に叩き付けられた。

 

「後4,5発、ついでに蹴りも追加だ」

≪コダイ~それはさすがにいじめっこだよ~≫

 

 え?そうなの?…………

 

「この!!」

 

 すぐ起き上がり、再び無数のフォトンランサーを放つ。

「だから」

 

 バーニアで、頭上に移動して。

 

 

――パリィン!!!

 

 

 踵落としで障壁を砕いて。

 

「狙いが」

 

 着地と同時に蹴り上げて、クローンの体を浮かせて。

 

「定まって」

 

 蹴り上げたその足で、蹴り飛ばして。

 

「いない」

 

 

――ゴシャッ!!!

 

 

 吹き飛ばされるクローンに追いつき、頭掴んで地面へ叩きつけた。

 

「グッ――――ア……」

 

 クローンは二、三度痙攣して力無く倒れた。

 

「やり過ぎた…………わけ無いな、かなり手加減したし、息もしているから死んではいな…………?」

 

 気絶したクローンが紫の光に包まれ光が消えるとそこには…………

 

「傀儡兵?……………しまった、これは変身魔法か」

 

 一体いつ……………俺が目を離した時は…………一度目の障壁が壊れた時…………

 

「何処だ…認識阻害のせいで居場所が………っ……これはライトニングバインド…………まさか」

 

 上を見上げると、先ほどのフォトンランサーよりも大量のスフィアが部屋を埋め尽くしていた………

 

「今度はあの時の様にはいかないわ!フォトンランサーファランクスシフト!!」

 

 何処からか声が聞こえたと共に、紫の雨が大量に降り注いだ……………

 

 

――ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

 

 降り注ぐ紫の魔力弾の雨の着弾して爆ぜる音で聴覚が麻痺し。

 紫の光と雷光で視界を防がれて。

 それで装甲が壊される事を分かったのは貫かれ、雷で焼かれる激痛が感覚を支配した時だ。

 魔法も使えない俺がバインドを解く術も持たない俺は、唯受ける事しかできなかった……

 数秒か数分か……紫の雨が漸く止んだ。

 

「――驚いたわ。本当は形も残さず消すつもりだったけど…………本当に頑丈の様ね……」

「だから言っただろ………体は頑丈だって」

 

 とは言っても限界が近いな。短いペースで血が流れ過ぎたか……意識が朦朧としている。

 フェイトのファランクスシフトとは違って終わってもバインドは解けずにまだ俺を拘束している。

 おまけに装甲がもう手足の一部しか無い。

 

「その血まみれの姿で言っても虚勢にしか聞こえないわ…………」

「虚勢かどうか試してみろよ………」

「――フン」

 

――ヒュン!!

 

 紫の光が一瞬で俺の胸を貫いた。同時にバインドも解かれて支えを失った俺はその場でで崩れ落ちた。

 

「どんなに頑丈でも心臓を潰せば嫌でも死ぬでしょ?――フフフ……アーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 

 

 

 

 ………だからもう……

 

「その笑い方やめたら如何なんだ?」

 

 体はまだ動く。

 力を入れて、体を起こす。

 

「う、嘘よ…そんな……確かに心臓を貫いたはず!なのに何で…何で生きているのよ!!!!!」

「文字通り、死ぬほど痛かったし、1回死んだから。胸の辺りの風通りが良いなこれ……」

 

 胸に手を当てると感触は無い、風穴空いているからな。

 

「な、何でそんな姿になってまで立ち上がれるのよ!!一体何なのよ!!」

「そんなの俺が知りたい」

 

 産まれた時からこんな感じだったし、理由なんて知らないし……

 

「けど……言える事はたった一つ……自分の為だけだ」

 

 『守る』何て俺に出来る訳が無い。

 

「負けるのは嫌いだからな……例えそれが―――自分でも」

≪わたしもいやだ!コダイがきずつくのいやだ!それでアリサもなのはもすずかもかなしむからいやだ!まけたらコダイがきずつくからまけたくない!≫

「その為なら何でもしてやる―――心臓だろうが命だろうが幾らでもくれてやる。勝つのが奇跡なら―――――その奇跡でも起こしてやる」

 

 

 

 

 

≪―――デバイスとのシンクロ率の初期設定を突破しました……『Extend(エクステンド)』を起動します≫

 

 

 

 

 

 突然レイの口調が変化した瞬間、俺は巨大な虹色の光に包まれた。

 

「クゥッ!な、何が起こったのよ!」

 

Extend(エクステンド)……機能拡張」

 

 

≪容量20%増加、装甲強度30%上昇、増加に伴い再構成機能と封印機能を追加しました。その他の能力全て15%上昇、形状変化――完了。『Extend(エクステンド)』を終了します≫

 

 

 機械的な流暢な声が終わると、光も収まった。

 

≪ん…………ほぇ?どうしたの?≫

 

 口調はいつものレイに戻っている…………けど。

 

「レイの形が変わってる………」

 

 右手首に付いてる様だったレイの形状が右手を覆う様に金の管が伸びていた。

 

「ふっ………何かと思えばデバイスが変わっただけじゃない、こけおどしもいい所ね………」

 

 クローンが何か言っているが聞いてる暇は無い。

 

「レイ………再構成」

 

≪え?……あっ!リコール!≫

 

 体が虹色の光に覆われると次の瞬間には傷一つない真新しい装甲が体を覆っていた。

 そして、新しく出来た兜からウィンドウが出て来た――

 

 

 

『疑似神経との伝達――30%上昇』

『装甲強度状態――30%上昇』

『装備者の状態――不明』

『機能の状態――〈バーニア〉・New〈リコール〉・New〈シーリング〉』

『シンクロ率――281%』

『現在の形態――ブレイザー』

 

 

 

 え?シンクロ率100%超えて無い?と言うかまだ先があるのかコレ?

 リコール、再構成機能……装甲の回復には時間が掛ったのにそれを一瞬で……

 

 

「まさか封印の方は………レイ」

≪うん!シーリング!≫

 

 レイから魔力波が発生した………

 クローンは咄嗟に障壁を張った。

 

「…………何も起きない………」

 

 クローンの障壁には何も変化は無かった。

 

「いや、そんな筈は………まさか!」

 

 何かに気づいたクローン、だがもう遅い。クローンの後ろにあったジュエルシードは淡い光を放ちレイに吸い込まれるように取り込まれた。

 

「特殊な波動で封印して同時に回収か――意外と便利だな」

「くっ――よくも私のジュエルシードを!!!」

 

 いや、元々ユーノが見つけた物だから。

 

「心配するな。それにチャンスだぞ?ほら」

 

 バリアジャケットを解除して。

 手を開くと20個のジュエルシードが現れた、実は庭園に来る前になのはからジュエルシードをくれるように頼んでおいた。クローンの標的を俺に集中するために。

 

「さて、全てのジュエルシードは全部俺が持っている。俺を殺せばジュエルシードは全て貴様の物。それに俺を調べればロストロギアを制御出来るかも知れない、一石二鳥だろ?」

 

 再びジュエルシードを収納する。

 

「あらら?仕事取られちゃった」

 

 突如として現れたのは言葉とは裏腹に残念そうではないリンディが映っているモニターだった。

 ……何か羽が生えてるのは触れない方が良いのかな?

 

「そのつもりは無かったんだが………」

 

 触れない事にした。

 

「いいのよ、ありがとうございます。さて、プレシア・テスタロッサ。終わりですよ。駆動炉もじき封印、あなたの元には、執務官が向かっています。忘れられし都アルハザード。そしてそこに眠る秘術は、存在するかどうかすら曖昧な、ただの伝説です!」

「アルハザートは存在するわ!次元の狭間に……時間と空間が砕かれた時、道はそこに!」

「随分と分の悪い賭けだわ。アナタはソコに行って、いったい何をするの?失った時間と、犯した過ちを取り戻す?」

「そうよ。私は取り戻す。アリシアを、こんなはずじゃなかった世界の全てを!!!」

 

 

――ドコオオオオオン!!!

 

 

 何かお約束的な言葉クローンが並べたその時。水色の砲撃が部屋の壁を貫き、そこから現れたのは頭から血を流しているクロノだった。

 

「世界はいつだって、こんな筈じゃない事ばっかりだよ!ずっと昔からいつも、誰にだってそうだ!こんな筈じゃない現実から、逃げるか、それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間まで巻き込んでいい権利は――どこの誰にもありはしない!」

「お互いに大した事無さそうだな≪どうだ?≫」

「君のそれは大した事だろ!≪上手くいったよ。タイミングは任せてくれ≫」

「そうか?≪分った≫」

 

 念話で確認をとっていると、なのは、ユーノ、アルフ、そして…………フェイトがやって来た。

 

 

 

「―――何しに来たの」

 

 フェイトに気付いたクローンはフェイトを睨みつけた。

 

「―――貴女に言いたい事があって来ました」

 

 しかしフェイトは臆せず話し始めた。

 

「私はアリシアじゃありません。確かに母さんにとって私は人形でしかなかったかもしれません。ですが、私はあなたに生み出されて、あなたに育ててもらったあなたの娘です――」

「だから何?今更貴女を娘と思えとでも言うの?」

「貴女がそれを望むなら――私は世界中の誰からでも、どんな出来事でも―――貴女を守る。私が貴女の娘とかじゃなく、貴女が私の母さんだから!」

「下らないわ………」

 

 クローンはフェイトの意志を一言で切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

――そう………下らないわね………貴女にはね。

 

 

 

 

 

 

「ガハッ!!」

 

 クローンの一言で静まり返った部屋に声と共にクロノが開けた穴から紫の雷がクローンを飲み込み向こう側の壁に叩きつけた。

 

「ゴッホ!ゴホッ!――――ふぅ、流石に大技は無理だったかしら」

「当たり前です」

 

 穴から出て来たのは……山猫の使い魔のリニスに支えられてる、プレシア・テスタロッサだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「え………ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」」」

 

 なのはとユーノとフェイトの声が部屋中に響いた…………




~次回もお楽しみにしてください~

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