魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
飛来して来た巨腕を破裂させた俺の両腕はどんな原理か知らないが全く違う物に変化していた。腕を覆っているのでは無く、
両腕を触れると鉱石の硬質さと植物の繊維の感触が返ってくる。触角は普段と変わらない様だ。
「宝石に変化は……無いな」
変化してもなお健在な青い宝石は、変わる事無く光を灯している。
あの赤黒い光の痕跡も無い………触れても、何も感じない。あの声の正体も何も分からなかった。
「………あ、レイ」
これの事で忘れてた。
あの場から動かなかったから多分余波は受けて居るはず……
「――――――――」
振り返ると。その場でへたり込む無傷のレイがいた。
無傷?あの爆発のほぼ、中心地にいた筈なのに………いや、そう言えば俺もあの爆発で衝撃が来なかったな………
――ドンッ!!
その時、やや強めの衝撃が前から来た。まあ、誰なのかは前に居たので分かっている様な物だが。
「ひっく…………えっく………死んだ…………ともった……」
レイが真正面から飛びついて、肩を震わせて泣いている。
「逃げろって言っただろ…………」
「だって……コダイ………ナナみたいに」
完全にナナの事がトラウマになっているな。
「はぁ―――――っと」
何時もの様に頭を撫でる手を伸ばしてふと、止める。
………果たしてこれで、何時もの様に触れて良いだろうか?
あの巨腕を一瞬で溶かす程だ。自身に熱は一切感じないが不安材料が多過ぎる……
「コダイ~!!」
突然呼ばれて上を見上げると、上空からエルが降りて来た。
「ゴメン!守るの遅れ―――――――ってその腕?!」
降りて来たエルが早速、俺の腕に気づいた。
「…………何か、チョーカッコイイ!!」
…………うん、知ってた。
エルなら間違いなくそんな反応だろうと。
そして、遠慮無く触ろうとするエルの手を避ける。
「良いじゃんケチ~!」
「いや、お前見た?あの腕を一瞬で蒸発させたんだぞ?触らせる訳ないだろ」
それでも触ろうとするエルの手を躱す。レイがまだ抱き着いてて動きづらい。
早く常識人来い……って
「ひめー!!」
「無事ですか!」
そこにアリサとすずかを其々抱えた、サクラとアンズが降りて来た。
「姫の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「無事なんですか?!」
「一々騒ぐな、鬱陶しい」
アリサとすずかを丁寧に降ろして、こちらに駆け寄る2人。
エル同様触ろうとするので避ける。
「だ、大丈夫なの?………それ」
「俺には特に。熱くも無いし痛くも無い」
アリサが恐る恐ると俺の腕を指す。隣のすずかも青ざめている。
さすがに見た目が宜しく無いので、触れはしなかった。
「――――大丈夫だよ」
その時、ここに居る全員の疑問に答えたのは、さっきまで泣いてたレイだった。
「この子は大丈夫……怖くないよ」
そう言ってレイは、俺の右腕の宝石を優しく撫で始めた。
「………ちょっと待て、レイ。これの正体が分かるのか?」
「ううん。だけど………この子、すごく辛そうで、悲しそう………自分自身を怖がっている」
レイの言う通り、あの声の正体は分からないが、今にも悲しみに押し潰されそうな声だった。
……どうやらユグドラシルとは全く違う系統の能力見たいだな。
「っ!コダイ!」
「分かってる。次から次へと――」
エルの叫びに振り返る。
大分間引きした筈の偽物が次々と集まってくる。幸い全員が近くに居たのでサクラとアンズがレイ、アリサ、すずかの護衛を再開。
エルが再び飛翔して空に居る偽物達を狩る。
俺も目の前の偽物を殺す作業を再開する。
「ガンブレイズ―――」
――ドパンッ!!!
次の瞬間、巨大な破裂音が目の前で起きた。
そしてこの腕同様に自分の魔法にも変化が起きていた。放たれたのは極小の魔力弾ではなく、小さな杭の散弾――――
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
杭が刺さる。頭、胸、腹、腕、脚……本来破裂するはずの魔力弾は杭となって、偽物達の障壁を意も返さず通過して突き刺さる。
前半分をほぼ杭だらけにされた偽物達は地へ落されその体を痙攣させている。
「あらら……スマートボールの打ち台見たくなってる。ってピンが多すぎて玉が通る場所が無いか………」
やがて、痙攣すらしなくなった偽物達はあの時の巨腕と同じく内側から沸騰して、パンっと小さな破裂音の後に杭ごと跡形も無く消え去った。
魔法の性質が変わっている?いままでのガンブレイズからは撃つ時にあんな衝撃が無かったはず。
「―――バニシングバスター」
偶然かもしれないので、次は別の魔法を放つ。
――ドンッ!
砲撃が放たれると同時に拳から肩へ突き抜ける衝撃が襲う。そして現れた砲撃はもはや別物だった。
螺旋に渦巻き、夥しい数の返しが付いた巨大な杭だった………と言うかドリルに近い。
その禍々しい杭は偽物達の体を突き刺し、抉り、削り取って行く。その偽物達も先程と同じく、内側から沸騰して小さな破裂音と共に消え去った。
砲撃が撃ち終わると同時に杭と言うかドリルは徐々に細くなり、消えて行った。
これで間違いない、魔法を発動した時に来る衝撃は反動だ。
と言う事は………
「エル、下がれ」
「へ?うん」
命令変更に驚くも直ぐに下がるエル。
「ナイトフェンサー」
手を掲げ魔力を集束させる………と同時に魔力刃が完成する。
やっぱり完成が速い。そしてやはり形状も変化している。噴射していた魔力が巨大な魔力刃となり、回転ノコギリから巨大な手裏剣になっていた。
――ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
耳を劈く気味の悪いな音が高速回転する魔力刃から響く。
それを偽物の集団に目掛けて投擲……速度は基本変わらない様だ。
このまま偽物達を2分割にしてもいいが、それじゃあ変わらない。だから………
「バースト」
追加詠唱を唱えた。
――バキイィィィィィィィンッ!!!
「…………は?」
起きたのは爆発では無く、ナイトフェンサーを起点に放射線状に広がる赤黒い、今の自分の腕と同じ物質の発生だった。
発生した赤黒い物質は周囲の偽物達を呑み込み、その内部で沸騰させ溶かして、跡形も無く消し去る……
「成程………俺はこういう事か……」
サクラ達の言う様に湧き上がる力は感じなかった。
ユグドラシルを取り込んで、レイとマテリアルが成長したにも関わらず、俺に何も起きないのはおかしいと思ったが、やっぱり変化はあったのか。
魔力の物質化………ユグドラシルが魔力を取り込んで龍の姿を成した様に、俺の両腕を魔力に変換して物質化。今、俺の両腕は魔力の塊になっている。
………それだけじゃ無いよな。それだけなら物が溶ける理由に説明が付かない。あれはカートリッジの大負荷が前提だからな。
「エル、もう前に行っていいぞ?」
「えっ!今の見せてそれ!?巻き込まれそうなんだけど!!」
「放出系は使わない。俺にも弊害が出たようだ」
「使わないでね!絶対使わないでね!!フリとかじゃないから!」
俺と俺が造り出した惨状を交互に見るエル。
再び飛び出すエル、今度は『フリじゃないからー!』と叫びながら……
魔力の物質化に溶解する魔力……なんか矛盾に近い能力を得た様だが。これだと攻撃手段が限られてる。
そう考えていると偽フェイトと偽アリシアがこっちに来てる……
放出系はアウト、溶解する魔力もあってデバイスも持てない。使える魔法はスローナイフのみ、後は素手………
まてよ?確か俺の腕は魔力の塊だよな?なら―――
「――――借りるか」
――ヒュン!
目の前まで迫る偽フェイトと偽アリシアに向かい、左手を軽く横に払う………ただそれだけ。
直後、偽フェイトと偽アリシアが横に数個の肉塊に輪切りにされ、各肉塊から、俺の魔法を受けた時同様に沸騰し破裂して消え去った。
「ん、意外と使いやすいな。これ」
左手を見ると指が倍以上に伸びて爪へと変化していた。
「あ!ナナと同じだ!」
当然、ナナが元だからレイが反応した。
これ本当に便利だ。さっき切った時もそうだった、抵抗が無かった。
それはもう温めた包丁でバターを切る様に………表現的には間違ってないと思う。何せ溶かしているし……
「さて、解体作業だ」
とは言っても飛ぶ手段は無いのでやって来る偽物を輪切りにするだけ。
後、防御に関してだがここでも効果を発揮した。振り下ろされる偽物のデバイスを思わず掴むと、そこから沸騰してデバイスが破裂して綺麗に消えた。そのあと当然持ち主も輪切りで消滅させた。
作業が簡略化して当初の目的地に向かう動きは速くなった。
まあでも………そう簡単にはいかないよな。
結界の端にさっきより向かってくる、いや
上からの大きな魔力反応に空を見上げる。
「おいおい……これ、闇の書の事件の再現か?」
上空からギガントフォルムのアイゼンを構える偽ヴィータとボーゲンフォルムのレヴァンティンを構えている偽シグナム。
魔法発動秒読み前、狙いは俺しかも護衛組に直撃コース。なら標的をずらして撃たれる前に殺す――――
「へ――――?」
そう動き出した瞬間だった、自分の視界が結界で覆われた空一色に埋め尽くされていた。
それに踏ん張りが効かない、踏み込もうとした足が力なく動く、これは………
―――宙に浮いている?
それなら視界の空も納得が行く。けど何で
それに上空に居る筈の偽ヴィータと偽シグナムはどこに……?
答えは魔力が教えてくれた。2つの魔力反応は――――
――ヒュンッ!!!
俺の真後ろだった。
理解より行動が速かった。反応を見つけると体を捻り、右手の爪で2体の偽物を横に切り裂く。
背を向けたままの2体は何が起きたか分からず、構えた状態のまま沸騰して破裂。攻撃は不発に終わった。
「さてあいつ等は―――」
偽物を殺したのを確認したあと護衛組の方に視線を向ける―――
――ガシャン!!
「――っと」
瓦礫か何かを踏みしめる音と共に体が重くなる。僅かに体勢が崩れた時に違和感に気づいた。
今、地面に立っている。さっきまで宙にいたよな?
「…………?」
「「「「――――――――――――」」」」
ふと、視線を感じて前を見ると。すぐ目の前にいるレイ、アリサ、すずかだけで無く、護衛のサクラとアンズまでもが口を開けて呆然とした顔でいた。
もしかしてさっきの一部始終を見ていたのか?
「何が起きたんだ?」
「それはこっちのセリフよ!」
「コダイ君が消えたと思ったら、凄いに行って、行ったと思ったらここに戻って来て―――私も何が何だが!」
は?………俺が消えた?アリサとすずかの話を合わせるとそうだよな?
確認のためにサクラとアンズの方を見ると小さく頷く。どうやら本当の様だ………
「一体何が――――って」
アリサ達の真後ろ、10メートル以上離れた距離で偽サクラが砲撃体勢に入っていた。直ぐに2人の頭上を飛び超えて迎撃しようと―――
「は――――?」
「―――――!」
した時だった。アリサ達を飛び越えようとした瞬間。突然、偽サクラが目の前に現れた。
目の前に現れた偽サクラの目が見開いた。でも都合がいい―――
――ドスッ!!
目の前の偽サクラの首に爪を突き立てる。
爪は首を貫き延髄部分の金属パーツを溶かし、次に体を沸騰させて破裂した。
「さて――」
確認して、直ぐに戻るため後ろに飛ぶ―――
「――っと」
直前に5人が目の前に現れてそれをやめた。
5人は未だに呆然として口を開けている…………もしかして、また?
「…………冗談じゃないぞ」
つまり俺は瞬間的にあの場所にいたのか?そこまで移動した覚えは無いぞ……むしろ、そこに行こうとしたら、もうそこにいるって感覚だ。
どうなっているんだ………と言うか本人に自覚させない移動法なんてデメリットにも程があるぞ。制御も不明、発動条件も不明、原理も不明。
「使えるけど、使いたくない………」
この謎能力に対する感想だった。
「姫!エルが―――!」
「今度は何だ………」
アンズの指す方を見ると、偽物の集団がエルを取り囲んでいた。
「あ~も~!!コラー!!僕の偽物がいるのなら正々堂々勝負しろ!」
いや、偽物だから通じないと思う………
「姫、ここは我等に任せて、エルの援護に――!」
「分かった」
偽物の数も大分減ったし……いいか。
ここをアンズに任せて、エルの援護に向かう、手始めに一番近い偽物を――――――
「――――って」
またかよ……
1番近い偽物に狙いを定めた瞬間、いつの間にか偽物の後姿が目の前に―――またあの移動をしていた。
「ああもう……」
こうなったらもう面倒臭い。どうせ買ってに発動するんだ………手当たり次第に殺してやる。
――ザシュッ!!
目の前の偽物を両手の爪で突き。
――ザシュッ!!
次に視界に捉えた偽物の目の前にまた移動して、爪で切り裂き。
――ザシュッ!!
また移動して、目の前にいる偽物を殺し。
――ザシュッ!!
移動して殺す。
――ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!!
目の前に現れる偽物を殺し続け。そして今、エルを取り囲んでいた最後の偽物を殺し終えた。
その後は、何もせず落ちるのを待つ、あの移動はもう嫌だ。
「っと―――未だに発動の条件が分からないな……」
何事もなく着地して、一息つく。
「凄い!スゴイスゴイ!コダイ凄い!」
そこに興奮気味にエルが降りて来た。
「コダイがヒュンヒュン現れて、偽物達をシュパパーンって!あっという間に偽物達を倒しちゃった!」
エルの頭の悪い説明からすると、あの移動にタイムラグは殆ど無いって事か……
「コダイ見て!端っこまでもうすぐだ!」
エルの指した方を見ると、結界の端が肉眼で捉えられる程に近くまで来ていた。
「速く行こう!もう偽物もいないし!」
そういってエルが飛び出して行った。
周囲を確認しても偽物らしい反応は無い……もう打ち止めの様だな。
――ドクン!!
突如、右腕に這いずる様な寒気が襲った。
「エル、防御だ」
「へ?おわっ!!」
――ガキャン!!
エルが咄嗟に前に障壁を張った直後、それはいともたやすく切られ。エルは後ろに飛ばされた。
………まあ、そのおかげで先走ったエルと全員合流出来た。
「何?!今の何!?」
突然襲ってきた攻撃に理解が追い付いて無いエル。
それにこの突然現れる見えない攻撃………ここに来てようやくか。
「エル、向こうから来たぞ……今回の黒幕にな」
「――――やはり、気づかれるか」
「「「――――――!!!」」」
その声と同時に俺達の前に現れたのは、1人の男……スラリとした長身に癖がない黒髪、シャツ越しでも分る細く引き締まった肉体。
そして左手だけに黒い手袋をはめている男……転生者の1人アスカだった。
突然の出現にマテリアル達がデバイスを構える。
「その様子だと、そっちも気づいていた見たいだな……」
「ああ、俺達はお前はある意味同類だからな……」
嫌そうにため息を吐くアスカ……
同類?転生した者同士って事か?
カミサマに泣いて縋って強請った
「―――大抵の事は受け流せるけど……同類扱いは正直不愉快だ」
「ああ、俺もだ」
「………喧嘩売ってる?」
「元よりそのつもりだ」
よし、殺そう。もうこんなのと顔を合わせるだけでイライラする。
「さっきは良くもやったな!!」
かなりご立腹の様子でバルフィニカスを構えるエル。
もう少しで出れると思った矢先の横槍に相当頭に来た様だ。
「止めておいた方がいい。君じゃ俺に勝てない……それに俺の目的は目の前の男だけだ」
「なん……だと……姫を一目で男と見抜いた?!何者なのだ!」
「以前に1回あってバラしただけだ……」
アンズが変な驚きに訂正を加えてやる………言いたい事は分かるが。
「そんなの、やってみないと分からない!」
大地を蹴り、高速移動魔法を使い、目にも止まらぬ速さでアスカに向かって肉薄するエル。
――ブォンッ!!
その勢いのまま大鎌形態のバルニフィカス・スライサーを振り下ろす。
肉体が成長し全体的に能力が増した一撃は以前と比べ速く、鋭かった。
「…………」
だが、その一撃もアスカには意味を成さなかった様だ。
奴は焦らずゆっくりと半歩ずれて攻撃を躱しす。動きからかなり手慣れてる……素人くささは無い、生前に実戦経験があるのか?
エルは勢いを殺し切れずアスカの後ろまで通り過ぎた。
「へ?……え?……っ――たあああああああっ!!」
自信のある一振りだった様で一瞬、驚いていたが、背後にアスカいると分かると振り向き様にバルフェイニカスを薙ぎ払う。
だがそれも薙ぎ払うのに合わせて動き、今度はエルの背後を取った。
アスカは背後を取ったにも関わらず反撃もしてこない。本当に相手として見てないな……
「やああああああああああ!!」
気合いの裂帛と共にバルフィニカスを振り続けるエル。そんな連続攻撃も何事無く躱し続けるアスカ。
しかし何だこの寒さは、それに時々周囲の音が消える、まるで雪の降る冬の様に音が消え去っている……この時折来る寒さと静けさに不快感を感じた。
「しかし、制御がしづらくなっているとは言え、あのエルの速度に着いていけるとはな……」
「「えっ!!」」
呟いた言葉に、サクラとアンズがあからさまに大きな反応をする。
「姫―――
「………は?ちょっと待て。そっちは見えて無いのか?」
「ええ………正確には、彼は
あの動き………つまり俺以外の目にはあいつは消えたり現れたりを繰り返してるのか?
「こう………なったら!!」
攻撃を躱され……エルからすれば目の前で消えるアスカの動き苛立って、バルフィニカスを掲げて上空に巨大な環状魔法陣が形成される。
「姫!我の後ろに!!」
次の攻撃を察知してアンズが前に出て、エル以外全員を囲う障壁を展開する。
「
――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
次の瞬間、空から蒼い雷が10数条にわたり、アスカの周囲に降り注ぐ。
本来この魔法は対象以外には当たらないが、制御不能になっている魔力によって。少数の落雷と、その余波が此方にもやって来た。
「「きゃああああああああああああああっ!!」」
目の前に落ちる雷にその場にしゃがみ込み、耳を塞ぎ目を閉じるアリサとすずか。
「エルの奴……制御も出来ぬのに無茶をしおって!!」
「でもエルの行動も理解出来ます。私があの場にいたなら同じ方法を取ります。範囲攻撃で逃げ場を無くしてからの奇襲……あの不可解な動きに対抗するにはこれしかありません」
落雷の余波を防ぎながらエルの心配をするアンズ。
サクラはその傍に立ち静かに状況を分析している………確かに俺には見えているが広範囲攻撃は得策だな……
「もら――――ったああああああああああああああああ!!!」
雷鳴に紛れて聞こえるエルの声。
見上げると
アスカもそれに気付いたがもう遅い、先程より速くなったエルの大鎌がついにアスカに喰らいついた。
――ガギィンッ!!
甲高い音が響き、落雷も止んだ。
エルの攻撃はアスカに当たった――――アスカが左手の甲で防ぐ形で。
アスカは防いでいる手を捻り大鎌の軌道を反らした。
魔力刃を逸らされて体勢を崩すしたエルだが、即座に空中で体勢を整えて後ろに下がった。
「…………っ―――――――――!!!!」
体勢を整えて地面へ着地し、再びアスカを視界に捉えたエルの顔が驚愕に歪む。
「お前の………お前の
叫び近い声と共にバルフィニカスでアスカを指すエル。
突き出されたデバイスが震える、それほど強く力が込められていた。
「ん?…………ああ、破けたのか」
叫ばれたアスカ本人は少し疑問を持ったが直ぐに自己完結し、左手を見る。
左手にのみ履かれた黒い手袋が破けその下が少し露わになった―――――――いや、なってしまったと言うべきか。
「なっ………まさか―――!!!」
普段表情が変わらないサクラが驚愕に歪み青ざめる……
「馬鹿な―――!!!あり得ぬ!こんな事は決してあり得ない!!!!」
血を吐く様に叫び現実逃避をするアンズ。
「何これ………すごく寒い」
自分の体を抱き締め震える体を抑えようとするレイ……
「う、うそ………え?……だって……」
後ずさり、呆然とした表情で俺とアスカを交互に何度も見るアリサ。
「………………似てる」
その場で座り込み、小さな声で呟くすずか。
「だから、さっきも言っただろ………」
そんな事も気にする事無く、アスカは破れた手袋を脱ぎ捨て、左手を見せる。
手の甲には紅い宝石、その周りを金色の管が木の枝の様に手首まで伸びている。
「俺とお前は――――ある意味同類だからな」
アスカの左手には俺と同じタイプのデバイスがあった………同類ってそう言う事かよ。
コダイはTOSのコレットのクルシスの輝石。アスカはプレセアのクルシスの輝石がモデルです。
更識 天様、ミラ ランドラス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~