魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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これから一気に進むと思います。


やっぱり危険だったロストロギアbyコダイ

 一騒動あった洋服選びも買い終えて、店員から泣きながら感謝されながらショッピングモールを出た。

 

「多少問題が起きたが、これで目的は終えたし帰る―――」

「ハイハーイ!何か食べて行こう!」

 

 話の腰を折る様にエルが手を挙げた。

 

「さっきカレーパン10個完食したばっかだろ」

「あれじゃあ足んないよ。僕を何だと思ってるの!?……あ!カレー屋発見!」

 

 訳も分からず胸を張り、少し怒るエル。と言うかただのアホだろ?

 

「体が大きくなったせいか食事量も増えたのでしょう……実は私もお腹が空きました。あ、あそこのパン屋にしましょう」

「我を満足させたければあの3倍は持って来い!……む、たこ焼き屋か……全種類買えば足りるか?」

 

 

――ゴンッ!!×3

 

 

「「「きゅ~」」」

「揃いも揃って飯の事がこのアホプログラム」

 

 取り敢えずこの3人の頭に1発ずつゲンコツを入れとく。成長した分視野が広くなって、目敏くなったな……

 そしてもう1人の食欲の化身に釘刺しておくか。

 

「レイ、帰ったらすぐ食堂に行くからそれまで我慢しろ」

「まだ何も言ってないよ?!」

「思考回路があの3人と同じだからだ」

「うゆ~でも、サクラとアンズは迷子になったりしないよ!」

「さり気無く自分とエルを貶めるな……」

 

 その2人が迷子になるのは否定しないが。

 

「でも、そろそろここから離れた方がいいわよ?注目集めているし」

 

 アリサの言葉に周囲を見てみると、遠巻きに見ていたり通りすがりを装ってこちらを見ている野次馬……と言うか野郎共。理由は分かっている……

 レイ、サクラ、エル、アンズと見た目は良い連中がかなり目立っている。注目の的になるのは当然。

 

「……と言うか目立つなと言う方が無理な面子だよな。方や有名人のそっくりさん」

「あはははは………それにコダイ君は本物の有名人だもんね」

 

 視線と言う針の(むしろ)に晒される中、呟いた言葉にすずかが苦笑いを浮かべる。

 それ以前に男性的アレな視線が多い……と言うか見た目上、俺もその視線を向けられる。

 

「ここに居ても邪魔になるだけだ。さっさと―――――」

 

 

――ドクン!!!

 

 

 その時、右腕からとてつもない不快感が走った。

 

「ひぅ!!!」

 

 それと同じく。レイが突然、頭を押さえて蹲った。

 

「レイ?!」

「どうしたの?!大丈夫!?」

 

 それを見てアリサとすずかがレイに駆け寄りしゃがみ込む。

 背中を摩り、声を掛けるが。レイはそれに答えなかった。

 

「来る……何か来る……怖い……気持ち悪い」

 

 震えながら呟くレイ。

 俺のデバイスだからこの不快感を感じ取れたのか?

 確かな事は()()()()()()()()()()()()

 

 

――ドゴンッッッッ!!!!

 

 

 地面を揺るがす程の衝撃と破壊音。それが数度も……

 振り返ると、ビルの一角に大きく歪で機械的な巨大な腕、見たくない物が突き刺さっていた、その腕が周囲に幾つも突き刺さり周りを破壊していた。

 それと同時に世界が塗り替わる感覚に陥る。空を見上げると、本来の空の色では無かった。結界を張られた様だ。認識阻害に強装結界か……AMFは無いようだな。

 周囲を見渡すと……人が消えていた。残っているのはレイとサクラ、エル、アンズ……………何故かアリサとすずかが残ってた。

 

「あのさ……お前ら厄病神とかじゃないよな?ジュエルシードの時や闇の書の時と言い………」

「それはこっちが聞きたいわよ!!」

 

 かなりパニックになっているアリサが喰い気味にツッコむ。

 

「取り敢えずレイ、戻れ」

「OK!……………うゆ?」

 

 不快感が取れたのか、立ち上がったレイが静かに目を閉じるが、次には首を傾げた。

 

「あれ?……え~っと……う~!!」

 

 そして今度は力みだした……

 

「うゆ~………こうなったら!」

 

 そして何を思ったのか駆け出して、俺の右腕に抱き着き、これでもかと言うほど体を密着させ、肩に頭を擦りつけてくる……

 

「――――コダイ、たいへんだ!」

「何が?この状況?それともお前か?」

 

 今日はいつも以上に奇行が多いな。

 

「デバイスに戻れない!!!」

「―――――――――は?」

 

 一瞬、何言っているか分からなかった。元々デバイスだろう………だがレイの今までの奇行を察するに右腕に戻ろうとして戻れなかった。

 …………これってもしかして、ユグドラシルを取り込んだ弊害?こんな時に分かったって……

 

「どどどどど如何しよう!私が居なきゃコダイ飛べないよ!」

 

 その通り、レイが居ないとデバイスの機能を一切使えないし。飛行魔法が無い俺はレイがいないと飛べない。

 仕方ない……今回は陸戦か。

 

「レイ、取り敢えず離れろ。そしてアリサとすずかと一緒にいる様に」

「分かった!」

 

 元気よく答えたレイはそのままアリサ達の元へ走って行く。

 

「マテリアル集合」

 

 取り敢えず現状確認だ。マテリアルを呼んで作戦会議を始める。

 当然2人は傍にいる。

 

「まあ、まずは閉じ込められたな。範囲はどれ位だ」

「サーチャーの結果、直径20kmはあると思われる」

「無駄に広いな……」

 

 アンズからの結果に少し不明な点があった。あの腕があるから実行犯はあの転生者だろう。

 だが狙いが俺達で戦力を拡散させるならこれは広すぎる……あの死体を使うならAMFは必須なのにそれが今回は無い。直接対決なら俺だけが残るはず………

 とにかく今は結界からの脱出だな。

 

「取り敢えず此処から脱出する。周辺を攻撃されたと言う事は()()()()()()からな、それに規模も強度もある。結界の端に移動してそこに穴を開けて脱出する」

「結界破壊は任せてください。ルシフェリオンブレイカーで撃ち抜きます。今なら星ごと撃ち抜けそうです」

 

 サクラが無表情で意気揚々と答える。けどサクラ、星を壊すのはオリジナルの方な?

 

「なら、サクラとエルが前衛。俺とアンズが2人の護衛で組もう。前もって言うが俺の戦力に期待するな、どうやらデバイスが起動できないらしい」

「ええっ?!それ大丈夫なの!?レイいなきゃ、コダイ駄目じゃん!」

 

 俺の報告に大げさに驚くエル。

 ………後半の言葉には一切否定できない。と言うかこの変な資質を何とかしたい。

 

「レイが急成長した事での弊害?ならば姫も護衛に入った方が」

「心配するなアンズ。いざとなれば質量兵器(おくのて)がある」

 

 十中八九、傀儡死体が相手だ。グレネードランチャーで足りる、数を想定して連射可能な『ダネルMGL』で良いだろう。

 

「コダイ様、今ここで言ってしまうのは(はばか)られるのですが、宜しいでしょうか?」

「ん?……言ってみろ」

 

 サクラの神妙な物言いに嫌な予感を感じた。

 

「実は言いますと。先程から……正確にはこの姿になった時から少しずつですが、内から湧き上がる力に不安を案じてしまうのです……このまま力を解放したらどうなってしまうのか―――」

 

 デバイスを持つサクラの手が僅かに震えていた。

 一気に6年分も成長したんだ、レイと同じく弊害があってもおかしくは無い。

 

「………そっちもそうなのか?」

 

 俺は残り2人を見る。

 

「え、え~っと!う~っと――――ごめん。隠すつもりは無かったんだ」

「すまぬ……我も最初の時ばかりと思っていたが、力が徐々に増大する感覚が今でも続いているのだ」

 

 目を逸らして誤魔化そうとするエルだがその後、直ぐに誤った。

 アンズも目を伏せ、自分の体をきつく抱き締めている。

 だから今もバリアジャケットを使ってないのか……

 

「サクラ……魔法は使えるのか?」

「使えます……ですが、今までの様には行かないと思います」

「使えるなら良い。その持て余しの魔力を全部結界に撃ちこんどけ。作戦の変更は無しだ」

 

 今回の目的は脱出だから、戦闘は極力避ければいい。

 

「っ――――!魔力反応!!前方、上です!」

 

 サクラの言葉に全員が同時に動く。

 俺とエルが前、サクラとアンズが後ろで護衛対象の3人を挟むように組む。

 その直後、目の前に1つの影が降り立った。

 

「ほぇ?」

 

 それを見たエルが変な声を上げる。まあ、分からなくも無いな。

 

「無事か」

 

 目の前に降り立ったのはレヴァンティンを持ったシグナムだった。

 …………はぁ、今度はこれか?

 

「シグナムさん?!」

 

 それを見てすずかは驚きの声を上げる。

 

「お前たちの付近に異常を検出してな、あの中で動ける私に増援を任されたんだ」

 

 聞いてもいない事をペラペラと――――本当にふざけた事を考える連中ね?転生者って。

 

「3人の護衛は私が引き受ける。ここは任せて―――」

 

 

――ドンッ!

 

 

 何か言いながら近づいてくる、奴を軽く突き飛ばす。取り敢えずよろける位に。

 

「くっ―――どうし「その姿で近づけば、殺されないと?――――舐められた物だな」なっ―――」

 

 もう面倒臭いんで口径を狭めたバニシングバスターを()()()()で放つ。

 

 

――ドシュウウウウ!!

 

 

 砲撃はそのまま、女の胸を穿ち貫いた。砲撃が通り過ぎると女はそのまま崩れ落ちて、地面に伏した。

 

 

「「―――――きゃあああああああああああああああああああああああ!!!」」

 

 

 一瞬置いて、アリサとすずかの悲鳴が上がった。

 

「やかましい。敵が寄ってくるだろ」

「やかまし――じゃないわよ!アンタ何やっているのよ!!!」

「そうだよ!シグナムさんだよ!?仲間なのに何で!?」

 

 アリサとすずかが悲鳴のような怒鳴りを上げる。

 まあ、一般人からすればそう見えるよな。

 

「はあ……俺が本物を見間違う訳ないだろう。こいつは――――」

 

 そう言って殺した女の髪を引っ掴み、延髄にある丸いパーツ見える様に持ち上げる。

 

「偽物だ」

「へ………」

 

 それを見て怒り心頭だった2人の顔が一気に間抜け面になった。

 取り敢えずこの偽シグナムを放り捨てる。

 

「第一本人は療養中で、例え本人が行く気満々だとしても、あの家主がしがみ付いてでも止めるだろ」

 

 捨てた後に残されたのは持っていたレヴァンティンだけだった。それを拾って確かめる………

 特に本物と変わらない……AIが無いだけで普通のレヴァンティンだ。ちょうどいい武器を見つけた。

 魔法は使えなくても武器としてなら問題なく使える、下手な銃より良さそうだ。

 ん?周囲に大量の魔力反応……しかもこれは。

 

「成程、今回は中々趣味の悪い………さて、来るぞ。団体様だ」

 

 突如、空間を覆う程の複数の魔法陣が現れそこから転移して来たのは予想通りだった。

 なのは、フェイト、アリシア、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、サクラ、エル、アンズの偽物が周囲を包囲していたそれも1人ずつではなく何百人もの数だった。

 リイン姉妹がいなかったのはデバイスだからか?それにマテリアルの偽物は子供の姿のままだった。

 

「皆の偽物?!と言うか僕はもう小さくないぞ!!」

「本人が療養中で良かったですね……これで遠慮なく屠れます」

「我を真似るとは。最強の敵は自分と言う事か……消されたい様だな」

 

 エル、サクラ、アンズの三者三様に怒りを表している。

 

「ルシフェリオン―――『炎着(えんちゃく)』!」

 

 サクラがルシフェリオンの待機状態を握り締めると。炎がサクラを包み込む、その後ゆったりとした動作で腕を翳し、纏う炎を薙ぎ払うが如く腕を振るうと炎が四散する。

 

「―――参ります」

 

 纏われた炎が晴れそこから、殲滅服(ヒートスーツ)を纏い、振るい伸ばされた手にルシフェリオンを持ったサクラが現れた。

 

「よし。じゃあ僕も――――バルニフィカス!『雷纏(らいてん)』!」

 

 エルがバルニフィカスの待機状態を指に挟み、天へ掲げると空から水色の雷がエルの上に落ちてエルを包み込む。掲げた手からバルニフィカスが展開され、それを一気に振り下ろすと、雷が一瞬で消え去った。

 

「あーはっはっはぁ!電光散らして僕登場!」

 

 落雷が落ちた跡には襲撃服(スラッシュスーツ)を纏ったエルが、高笑いしながら変なポーズをとっていた。

 

「クククッ、目にものを見せてやろう――――『獄装(ごくそう)』」

 

 アンズが紫天の書を開くと闇色の魔力がアンズを包み球状に変化する。球体は1つ2つと脈動を繰り返し、徐々に脈動の間隔が狭まって、そしてついに球体が割れる。

 

「さて―――王からの断罪の時間だ」

 

 割れた中から出てきたアンズは暗黒甲冑(デアボリカ)を纏い、右手で紫天の書を胸に抱えて左手でエルシニアクロイツを持ち静かに目を伏せていた。

 

 

 

「「――――――――え?なに?」」

「おおお~!かっこいい~!!」

 

 その光景を見て。目が点になっているアリサとすずか。

 レイはいつも通り、目を輝かせた。

 

「――――何してるの?と言うか何をやっているの?」

「オリジナリティを出して見ました。折角オリジナルと乖離したので、私達らしさを出した結果です」

「カッコイイでしょ?!実は昨日から3人で考えたんだ~」

「うむ、心機一転と言う奴だ」

 

 サクラ、エル、アンズの、その誇らしげな顔がすごいムカつく。

 

「コダイ!私達もやろうよ!」

「お前が戻らないと出来ない、と言うか戻ってもしない」

 

 袖を引っ張るレイを軽く無視しておく。

 俺も一応準備を始める……と言うより偽シグナムから拝借したレヴァンティンを構えるだけ何だけど……

 

「さて……作戦開始だ」

「「「了解!」」」

 

 3人が綺麗に敬礼して上空へ飛ぶ。

 

「道は私が開きます――――ブラストファイヤー!!」

 

 サクラがルシフェリオンを進路先にいる大量の偽物に突き付け、砲撃を放とうとする。

 ………だが少し待て、何だその魔力の量。今までのサクラの砲撃と比較しても尋常ではない魔力が込められていた。

 

「3人共伏せろ。エル、アンズはこっち来て防御」

「「「は、はい!」」」

「分かった!」

「張り切り過ぎであろう!」

 

 レイ、アリサ、すずかはその場でしゃがみ込み。エルとアンズは即座に戻って来て、アンズの防御結界に全員が包まれる。

 そして次の瞬間、赤の極大な砲撃が放たれる。

 

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 砲撃は射線上のものを全て呑み込んだ。迎撃するために放たれた偽物の魔法も、防ぐために展開された偽物の防御魔法も、何もかもその偽物ごと赤が呑み込んでいった。

 

「くっ―――反動で制御が!!」

 

 だが、それはやはりサクラ自身にも負担を強いていた。空中で足場を作り踏ん張っていたが、その意味の成さず後ろにずり下がって行く。

 それだけで無く、狙いを定めていたルシフェリオンを持つ手が震えて、砲撃が()()()

 

「っ――――――のおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 ヤケクソとばかりにサクラは叫び、ルシフェリオンを引き上げて、標準を無理矢理上に逸らす。

 砲撃はそれに追従する様に持ち上がり、天井……つまり結界の最上に衝突した。

 

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 あれで壊れるとは思ってもいない。

 結界にぶつかった砲撃はそこを中心に放射状に広がり、天上を赤く染める。

 

「――――ふぅ」

 

 ここでようやく砲撃が終わったサクラが一息付く。

 だが、空は未だに夕暮れでも無いのに赤く染まっている………

 その発端であるサクラは、その赤い空を見上げ――――そして、ゆっくりとこちらを見る。

 

「―――――すみません、やり過ぎちゃいました」

 

 何時もの無表情で自分の頭を軽く小突く……どこで覚えたその仕草。

 

「限度があるわあああああああああああああああああ!!!!」

 

 アンズの全力のツッコミが結界内で響いた。

 空の赤が晴れたのは、それから少し経った後だった。




一気にパワーアップされても、そう直ぐには使い熟せませんよね?

アルクオン様、りんたんなのよ様、感想を有難うございます。

~次回もお楽しみにしてください~

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