魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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ユグドラシル戦決着です。

描写を変えてます。


暴走VS暴走

 足音を響かせてゆっくりとした動きで歩を進める黄金の龍ユグドラシル。

 目的は無くただ目の前を歩き続ける。だがそれは突如止められた……

 空気を引き千切る風切り音共に飛来した金色の光はユグドラシルが認識する速度を超えて、胴体に突き刺さる。

 

 

――バゴォオンッ!!!

 

 

 直後に響く破裂音、それでユグドラシルは後ろにズレた。

 金色の光は消える事無く突き刺した所からその場で留まり、意思を持つ様に今度は上へ飛びユグドラシルの顎を穿った。

 

 

――バゴォオンッ!!!

 

 

 再び破裂音、顎を穿たれたユグドラシルは()()()

 金色の光は今度は後ろに回り、背中に突き刺さる。

 

 

――バゴォオンッ!!! バゴォオンッ!!! バゴォオンッ!!!

 

 

 背中に突き刺さると跳ねる様に首、そして頭と突き刺さり。その度に破裂音が響きユグドラシルを地に伏せた。

 

 

――バゴォオンッ!!!

 

 

 地に伏せられたユグドラシルの目の前に金色の光が落ち、破裂音と共に周囲の地面を抉る。

 ……ここでようやくユグドラシルと金色の光が相対した。

 光の正体は人型をした何か―――黒い装甲を金色に染めたコダイだった。

 なのは達の攻撃を受けつつもその魔力を吸収し続け、限界を超えて、その身を金色に染め、近づく脅威(まほう)を蒸発し消し去る『熱』を持つユグドラシルと。

 カートリッジを取り込みその身を金色に染め、触れる脅威(まほう)を溶解する『熱』を持つコダイのこの形態。

 この2つの共通点をレイの言葉で見つけたコダイは、同じ溶かす熱を有するもの同士なら攻撃は通る見出したコダイは未だに実用性のないこの形態を躊躇なく使用した。

 まさに『目には目を』と言った所だ。リスクは大きい……だがリターンはそれ以上だった。何故なら吸収の出来ず、魔力を溶解するユグドラシルにとって唯一の有効打となった。

 そんな事を知らないユグドラシルはただ目の前にいるコダイを見つめる。それを隙としてコダイは見逃さなかった。

 

 

――キィン……

 

 

 右腕を後ろに引き、その腕に環状魔法陣が現れる。ディレイスペルだ。

 

 

――キィン キィン キィンキィンキィンキィンキィンキキキキキキキキキキキキキキキキキキッ!!!

 

 

 増え続ける環状魔法陣は十では止まらず百、千、万と増え続け右腕を覆い隠す。

 そしてその右腕をユグドラシルの鼻頭に目掛け振り抜いた。

 

 

――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 今までディレイスペルでキープしていたガンブレイズが一気に解放され、ユグドラシルに一斉に放たれる。

 連鎖する爆発音が怒涛の様に襲い魔力弾の津波がユグドラシルを呑み込み押し流していく。

 魔力弾の津波はそれ自体も高熱を持ち呑み込む木々を燃やし、触れる地を溶かし溶岩と化していく。その溶岩と魔力に流されたユグドラシルの体が半分程溶岩に沈んでいた。

 ユグドラシル自体もそれ以上の高温で焼ける事も無いし溶岩が固まる事もない。

 それを見たコダイは飛び上がり、再び金色の光になってユグドラシルの流れた先に飛ぶ。

 

 

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

 溶岩から飛び出しユグドラシルが咆哮と共に巨大な魔力の塊を向かってくる金色の光に吐き出す。

 コダイは避ける所か更に速度を上げ――――

 

 

――ギイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!

 

 

 拮抗した。

 魔力の塊は押す事も貫かれる事も無く金色の光は貫く事も、引く事も無い。

 2つの魔力はその場で微動だにしない。

 ………だが、その拮抗も長く続かなかった。

 

 

――ボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ!!

 

 

 魔力の塊と金色の光、2つの魔力が泡立ち、泡音を立てて沸騰―――蒸発し始めた。

 

 

――バァアアアアアアン!!!

 

 

 2つの魔力が形を保てなくなり破裂。

 魔力の塊は四散して、金色の光は地面―――溶岩に叩き落とされる。

 間を開けずコダイは溶岩から飛び出す。

 その直後、ユグドラシルの伸びた尾が横殴りに襲いかかった。

 ユグドラシルはコダイが来るのを予想していた訳では無い。コダイがユニゾン時に使ってい複合結界の時に対しての行動、魔力の次は物理をただ行っただけだ。

 

 

――バゴォオンッ!!!

 

 

 コダイとユグドラシルの尾がぶつかり合い破裂音が響く。その2つは弾かれる様に吹き飛んだ。

 ユグドラシルはその場で留まったが質量の少ないコダイは遠くに吹き飛ばされ、叩き落とされた所に大きなクレーターを作った。

 

 

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 ユグドラシルは溶岩の海から飛び上がり。

 コダイが落ちた先に拡散した魔力の雨を降らせる。

 

 

――ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 

 降り注ぐ魔力の雨の一粒一粒が全てが同じく高熱を持ち、大地を溶岩の海に変えていく。

 魔力の雨が止み降り注いだ一面全てが溶岩の湖となった。コダイは見えていない、まだ溶岩の湖の中に沈んでいる。

 その溶岩の湖となった場所を空から見下ろすユグドラシルがある変化を捉えた。

 溶岩が渦を描き始めた。最初はゆっくりだが徐々に速度を増し、1つの巨大な渦となった。

 渦は速度を増し続け、その渦が中の溶岩を押し出して、溶岩のかさを減らし続けて。溶岩を9割程押し流す頃に渦の正体が明らかになった。

 

 

――ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

 巨大なナイトフェンサーを頭上に構えているコダイだった。

 コダイは巨大ナイトフェンサーを振りかぶりユグドラシルに向かい投げ飛ばす。

 ユグドラシルはそれに向かい尾を振り下ろす。だがコダイの先程の攻撃とは違いナイトフェンサーは高速回転している。

 結果、ぶつかり合ったのは一瞬。ナイトフェンサーはユグドラシルの尾を滑り、僅かに軌道をずらしてユグドラシルの体を削り、ユグドラシルの後ろを飛んで行く。

 その間、コダイは反撃する事もまだ膝まで残っている溶岩から出る事無く立ち尽くしていた。

 

 ―――――足りない

 

 コダイは魔力(かわき)に飢えていた。僅かだが金色の装甲も光が弱くなっている。

 それもその筈。カートリッジの魔力を全て漏らさず体内で維持させる。そうする事でデバイスに多大な負荷を掛け、発熱させる事でこの形態を維持できている。

 装甲の中は高温と高密度の魔力で満たされており、軽い衝撃だけでも暴発して破裂するほど。コダイは無意識にそれを防ぐため、衝撃を受けた瞬間にその部分から魔力を噴射する事で暴発を防いだ。

 ユグドラシルに衝突する度に鳴る破裂音はそれが理由だ。高密度の魔力を高圧で噴出する事でユグドラシルを叩き伏せる程の威力を手に入れた。

 ………だが逆に攻撃する度に体内の魔力は減っていくと言う事だ。それに加え、ユニゾンなしでは出来ない巨大魔法の連続使用。ハイペースで魔力を消費したために金色の装甲を維持出来なっている。

 それを感覚的に察したコダイは予備に所持していたカートリッジを取り出した。それも右手では溢れそうな程の量を。

 

 

――バキィン!!!

 

 

 右手にあるカートリッジを全て握り潰しそこに溜められた魔力を取り込む。

 金色の輝きが一層強くなり今まで以上の魔力がコダイの体内で暴れ回る。その時――――コダイに変化が訪れた。

 メキリと生々しい音を立てて背中から何かが突き破る、それは1つでは無く幾つもコダイの背中を突き破り生え始める。その正体は反りの両側に刃着けた大鎌。

 柄まで生えた大鎌は数十本それが翼の様に形を成した。それは嘗てコダイが『想像したものを創造する能力』で使用した刃物で創った鉄の羽に酷似していた。

 刃の羽を広げる、動く度に金属同士が擦れる嫌な音を立てる。コダイは溶岩から飛び出し、金色の光となって再びユグドラシルに接近する。

 ユグドラシルも向かってくる金色の光に魔力の塊を吐き出した。

 

 

――ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

 魔力の塊とぶつかり合う直前、金色の光は形を変え、高速で回転し光の筋が光輪となり魔力の塊と接触。

 チェンソーの様な音を立てて金色の光輪が魔力の塊に沈んで――――否、突き進んでいく。

 魔力の塊の中を金色の光輪が溶かし、削り、突き進んでいく。そして魔力の塊を貫通、金色の光輪が通った後の魔力の塊は形を保てず四散。

 それには一瞥もくれずに金色の光輪は速度を上げユグドラシルに激突して、その右目を削った。

 

 

――ガァァァァァァアアアアアァァァアアアアァァァァァァァァアアアア!!!

 

 

 今までとは違うダメージに苦悶の雄叫びを上げるユグドラシル。

 視覚は生物と共通かはコダイにも分からない。だが効いている事には変わらない。再び金色の光輪となってユグドラシルに接近する。

 光輪はコダイ自身でもあるので意思を持つ様に縦横無尽に飛び回り、光輪の直撃の度にユグドラシルを削って行く―――

 背、胴、首、翼、次々と傷跡を残していく。あらゆる物質を魔力に変換して吸収するユグドラシルは避ける必要がなかった。

 回避行動を碌に取った事も無いユグドラシルはただ受ける事しかできなかった。

 

 

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 ただひたすら、金色の光輪を受け続けたユグドラシルが咆哮、反撃に出た。

 伸ばした自分の尾をただ闇雲に振り回すだけ。

 

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!

 

 

 だが、それだけでも脅威だった。

 巨体なユグドラシルが持つ尾も同じく巨大。

 高速で振るわれる度に空気を引き千切る風切り音が鳴り、それによって発生する風圧はユグドラシルの灼熱の体に熱せられ、熱風となって吹き荒れる。

 熱風に撫でられた地面は熱せられ再び溶岩地帯を増やした。

 その熱風がコダイも襲い光輪の動きを止めた。更にその直後にユグドラシルの尾が振り下ろされる。

 コダイは刃の羽を前に重ねて尾を受け止めた。だが振り回し続けた勢いは強く徐々に押され始めていく。

 

 ――足りない……足りない……

 

 刃の羽で受け止めながらコダイは再びカートリッジを手に溢れる程取り出した、しかも今度は両手にだ。

 

 

――バキィン!!!

 

 

 両手にあるカートリッジを握り潰し、前以上の魔力を取り込む。コダイの全身から煙が立ち上がる、周囲の空気の水分が蒸発している。

 そして、再びコダイに変化が起きた。両腕が膨張した、腕の太さも、長さも、拳の大きさも倍以上に膨らんだ。

 カートリッジから取り込んだ魔力はコダイの装甲内に圧縮されているが限界もある。その限界を超えて内側からの圧力によって高熱に熱せられた装甲は変化し腕が膨張する現象が起きた。

 その巨腕でユグドラシルの尾を掴み―――

 

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!

 

 

 振り回した。

 コダイの巨腕とユグドラシルが空中に居たため、いとも容易く引っ張られて振り回されるユグドラシル。

 回し続け勢いをつけたコダイはユグドラシルを上へ遠くに放り投げる。

 ユグドラシルを投げ飛ばした直後、コダイは腕を掲げ巨腕を覆い隠す程の環状魔法陣を形成、それを瞬時に1つに纏めると巨腕には巨大なスローナイフが握られていた。

 それを迷い無く投擲、巨腕によって繰り出される豪速の槍は、投げ飛ばされたままのユグドラシルの腹に突き刺さる。それと同時にスローナイフが強く輝く―――

 直後、巨大な爆炎がユグドラシルを包む―――

 

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッン!!!!!!

 

 

 一拍置いて爆風と爆音が襲い掛かる。

 そんな中でもコダイはユグドラシルに向かって飛ぶ。爆炎の中から落ちるユグドラシルを見つけると速度を上げ、ユグドラシル元に辿り着くとその尾を掴む。

 尾を掴んだまま肩に担ぎその状態から尾を振り下ろし、一本背負いの要領でユグドラシルを地面に叩きつけた。

 

 

――ズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!!!

 

 

 叩きつけた直後、再び肩に尾を担ぎ振り下ろして――

 

 

――ズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!!!

 

 

 叩きつける。そしてまた担いで―――

 

 

――ズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!!!

 

 

 叩きつける。また担いで叩きつける―――

 叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける。

 何度も、何度もユグドラシルを巨腕から繰り出す怪力を持って、叩きつける―――

 そして叩きつける回数が20を超えた時、ブチリと千切れる音と共に手応えが軽くなる。

 コダイが手元を見ると、ユグドラシルの尾の根元から先が無くなっていた。

 

 

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 今までより一際強い咆哮。

 振り返ると尾が無くなったユグドラシルがコダイに向かって吠えていた。

 自切――と言う行動ないし反応がある。節足動物やトカゲ等に見られ。

 外敵に捕捉された際に肢や尾等の生命活動において主要ではない器官を切り離すことで逃避できる可能性を作り、個体そのものが捕食される確率を下げるための適応であると考えられている。

 ユグドラシルはコダイの捕捉から逃れる為に邪魔な尾を自ら切り離した。

 掴んでいた尾を投げ捨てユグドラシルに向かうコダイ、握られた右腕には環状魔法陣が覆い尽くされている。

 ユグドラシルもそれに合わせ口内に魔力を集める。それでもコダイは迷う事無く加速する――――

 

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

 次の瞬間、ユグドラシルから放たれたのは塊でも散弾でもなく砲撃だった。

 ユグドラシルはこれまでの攻撃を2人に防がれた。魔力の塊と尾は今のコダイに、魔力の散弾はなのはの巨大砲撃に―――

 攻撃手段を失ったユグドラシルは新たな攻撃手段を取った、魔力の塊や散弾とは違う魔力を()()()()()()砲撃に。

 ユグドラシルの極大の砲撃にコダイは咄嗟の判断で右腕に溜めた環状魔法陣を解放、同じく極大な砲撃で対抗した。

 

 

――バァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

 

 

 ぶつかり合う砲撃、両者とも高熱を帯びた砲撃はぶつかり合う衝撃で大地を溶かし、森を焼き、空気を蒸発させる。ここに居た生物はもう死滅しているだろう。

 幸いな事はコダイがユグドラシルを遠くに放り投げた事でなのは達への被害が無かった事だ。

 砲撃の衝突、最初は拮抗しているがその軍配はユグドラシルに上がった。

 理由は単純、魔力を放出し続ける限り持続できる砲撃は、今まで魔力を吸収し続けたユグドラシルと相性が良かった。

 砲撃同士の勝負に負けたコダイはユグドラシルの砲撃に呑まれる。ユグドラシルはそれでも砲撃は止めず首を動かし軌道を変える。

 ユグドラシルの砲撃はレーザーで焼き切った様な赤い傷跡を大地に残した。赤の正体は地面を抉った際に溶けた溶岩だ。

 その赤い傷跡の半ば、そこに赤とは違う金色――コダイが居た。

 砲撃に呑まれ地面に叩き付けられた後、背中の刃の羽を全部地面へ突き刺しその場に留まっていた。

 そのコダイは両手を胸の前に構え手の間には集めた魔力が巨大な球体へと作り始めている。既に迎撃の準備は始まっていた。

 

 

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 ユグドラシルもコダイに気づき、口内に魔力を溜め、砲撃の準備に入る。

 一足も速くに準備していたコダイは集めきった魔力を両腕で押し出し今までとは質の違う砲撃を放つ。

 ほぼそれと同時に魔力を溜めきったユグドラシルが口から極大の砲撃を放つ。

 発射はほぼ同時、両者の砲撃は再び拮抗――――しなかった。

 

 

――キュイン!キュイン!キュイン!キュイン!キュイン!キュイン!キュイン!

 

 

 2つの砲撃がぶつかり合う直前、コダイの砲撃が無数の小さな閃光分かれ、ユグドラシルの砲撃を避け、そのままユグドラシルに迫る。

 一方ユグドラシルの砲撃はそのままコダイに向かう……

 コダイは砲撃では勝てないと判断しもう1つの方法を取った。それは集束砲撃のジェノサイドブレイカーによる相討ち―――

 互いの砲撃が無防備な両者に直撃。ユグドラシルとコダイの両者を中心に2つの爆発が起きた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両者の砲撃の相討ちし倒れた後、最初に動いたのはユグドラシルだった―――

 

 

――ガァ………ア………アァ………

 

 

 だがその惨状は誰の目にも分かるほど瀕死だった。

 全身に亀裂が走り体中から魔力が漏れ、翼の片方は折れ曲がり。動く度に軋みを上げていた。

 一方、相討ち覚悟で撃ったコダイも同じく瀕死。刃の羽は溶け、全身罅割れている体を巨腕で支えている。

 軋みを上がる体を持ち上げ、ユグドラシルを見る。ここでようやくコダイはある事に気づいた。

 ユグドラシルの傷が治っていない事を。ユグドラシルは金色になった後の攻撃を1度も再生されていなかった。

 エース同士による連続合体魔法に凍結魔法からの8人による一斉攻撃。

 度重なる攻撃に吸収の許容量の限界を超えて制御不能に陥り、結果金色のユグドラシルが生まれた。

 制御不能により吸収も出来なければ再生も出来ない。

 コダイは確信した。今なら殺せると、だが――――

 

 ――足りない………足りない………足りない!………足りない!!

 

 決定的に魔力が足りなかった。カートリッジももう無い………

 

 ――無ければ創れば良い……

 

 ゆっくりとした動作で持ち上げた巨腕の手のひらから突然大量のカートリッジが溢れ出した。

 コダイは『想像したものを創造する能力』で大量のカートリッジを創造した。

 それと同時にコダイの兜の口元に横一線の大きな罅が入ると獣の様な顎が現れる。コダイはその顎を大きく開き上を向くと。

 そのまま手のひらから溢れるカートリッジを流し込み、噛み砕き始め次々に魔力を取り込み始めた。

 口から溢れたカートリッジは装甲に当たり溶解、内包されている魔力は装甲の罅から流れ込み取り込まれる。

 魔力が取り込まれる度に金色の装甲は強く輝き始める。だがその度に装甲の罅から魔力が噴出する。それでもコダイは魔力を取り込み続ける――

 内側からの圧力に耐え切れず装甲の罅が広がり、一部が吹き飛ぶ、それでも魔力を取り込み続け―――

 

 

――ボッン!!!

 

 

 ついに魔力がコダイを呑み込むの爆発を起こし。その場からコダイが消えた……

 それを見続けたユグドラシル、コダイが消えたその直後だった。ユグドラシルの前に1つの影が降りて来た事。

 それはユグドラシルと目線を合わせられるほどの巨体、虹色の光が炎の様に揺らめき龍の形を作り上げたコダイの魔力―――いや、コダイそのものだった。

 虹色の龍と対峙した瞬間、ユグドラシルの痙攣が止まった。

 なのは達との激戦の中、様々な知識を増やしたユグドラシルの知能はやがて1つの感情を作りだした。それは生存的で本能的な感情―――恐怖だった。

 ユグドラシルは理解してしまった………目の前の奴には勝てないと。

 

 

――ガ……ガァァァァァァアアアアアァァァアアアアァァァァァァァァアアアア!!!!!

 

 

 恐怖か虚勢か、ユグドラシルが虹色の龍に向かい吠える。

 虹色の龍は静かに翼を羽ばたかせ宙に浮くとユグドラシルに向かって1つの光となって突撃。ユグドラシルの体を容易く貫いた。

 ユグドラシルを通り抜けそれへ上がる虹色の龍の口には巨大な透明な宝石が咥えられていた。それこそユグドラシルの核だった。

 それを一口で飲み込むと虹色の龍は翻し、核を取られ動かないユグドラシルに向かって急降下。

 

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

 

 突撃した瞬間、ユグドラシルを包み込む程の虹色の光の柱が上った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ……こ、ここは?」

 

 それから数十分後、最初に目を覚ましたのはクロノだった。

 クロノは残りの隊員を指揮するため最後衛にいた事が幸いしたのか誰よりも早く覚醒出来た。

 

「っ!ユグドラシルは……それに皆は?!」

 

 まず初めに周囲の状況を確認。自分の全員の所在と状態の確認を行った……

 

「全員、魔力の殆どが無くなっている……あの時の攻撃か。後はコダイだが……」

 

 ここにはいないコダイを見て、嫌な予感がクロノの中で浮かぶ……

 

「残った魔力でなら――」

 

 クロノは目を閉じ残った僅かな魔力でバリアジャケットを纏う。見た目こそ同じだが防御性能は無い、どんな高温でも生存可能な耐熱&耐ガススーツと言った所だ。

 

「デュランダルは……無理か」

 

 罅割れたデュランダルの待機状態のカードを見て懐に仕舞うと。コダイのいる場所、煙の上がっている地点に走り始める。

 生い茂っていた森は見る影もなく焼け焦げ、目的地まで一直線に道が続いている。

 

「なっ―――――――!!」

 

 真っ直ぐ走り続け開けた場所に辿り着いた場所にクロノは自分の目を疑った。

 それは見渡す限りの黒一色の地面に所々ガスが噴き出す大地だった。

 クロノはその場に屈み、黒い地面に凝視する一見ザラザラとして斑の様にある窪み……地面は溶岩石で出来ていた。

 

「溶けた大地が再び固まって―――と言う事は…………っ!!!」

 

 何かを確信したクロノは溶岩石の大地を見渡す……すると離れた先に黒い大地で隠れた大小の黒を見つけた。

 

「コダイ!」

 

 クロノは真っ先に小さな黒―――コダイの元に駆けつける。

 

「おい、しっかり――!」

 

 クロノがコダイを掴んだ瞬間、すぐさま手を放した。すぐに手を確認するとバリアジャケットの鉄製の手甲は煙を上げて僅かに溶けて変形していた。

 

「くそっ……やっぱり使ったか!!」

 

 クロノの嫌な予感は的中した。

 金色のユグドラシルが魔力を溶かした時、クロノは理解した―――あれはあの時のコダイと同じだと。

 言おうとして止められたのはクロノとしては有難かった……言ってしまったらコダイは迷わずあの金色の形態になるだろう。

 それでも頭の良いコダイの事だ、すぐに理解して使うだろう。ついでに言えば――――優しい言い方をすれば、隠し事が全く出来ない程正直者なレイがいる。バレるのも時間の問題だ……

 あの形態は危険すぎる。ただでさえコダイのデバイスは人体に定着している、そんな物が熱暴走を起こせば中の肉体はどうなる?

 使用後は必ず全身が高熱を帯びて、下手をすれば昏睡する程だ……

 

「ユグドラシルは………倒したのか?」

 

 クロノは次に目の前にいる大きな黒――ユグドラシルを見る。飛ぶ魔力はもう無いので全貌は見れない。

 

「…………これは、ダメだ。知られてはいけない」

 

 今までの戦いを見てクロノはこう結論付けた。

 昔の自分ならこんな事は考えないだろうなと自嘲する様な笑みを浮かべるクロノ。

 今の自分は管理局のドス黒い裏を知り、それを消し去るために三提督とコダイの発案で自分が率いる強襲隊を仮の名とする三提督公認の犯罪組織『クリミナル』を作った。

 これが管理局の裏に知られたら……ユグドラシルの遺体は違法な実験材料として使われる。

 もしこれが次元犯罪者に知られたら……管理局としては痛手となる。

 それにクロノの予想が正しければ、コダイはユグドラシルを()()()()()

 だからこれは―――ユグドラシルの詳細は隠蔽するべきだ。

 

「ユグドラシルの遺体はクイント達に運んで貰おう……救助要請はその次だ」

 

 クロノはクリミナル専用の秘匿通信で連絡し、クイント達でユグドラシルの回収の後。アースラに救助要請を送った。




悠畏様、アルクオン様、ミラ ランドラス様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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