魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
「レイちゃん!!」
「あの馬鹿……一体どこに」
レイが失踪したと分かった直後、なのはと共に部屋を隈なく探す事に。
「見つかった?」
「いや、隙間とか引き出しの中とかを探しても無理だった」
アイツはリインと同じ様に小さくなれるからな。
「じゃあもうここに居ないんじゃ……」
「その可能性が高いな」
レイが閉じ籠もっているのは大半の奴が知っているから、見つかれば騒ぎになる……それが無いと言う事は見つかって無い?
「レイちゃんが今行きそうな場所は――」
「今行きそうな場所―――」
なのはと考え始める。今の状態のレイを思い出そう、3日籠りっきりで1度も出た事は無い。とすると―――
「「食堂」」
答えは同時だった。
うん。そこしか思い浮かばない……だが。
「…………ないな」
「だね。見つかったらはやてちゃんから連絡来るし」
リインもいるから騒ぎになるから無しと。
第一、アイツが目的地に辿りつくのさえ奇跡に近いしな。
ここからミッドまで迷子になっていたし。
あの次元級の迷子をどうやって探すかだな……
取り敢えず部屋の明かりを全部付ける。部屋はベット以外散らかって無い事から大半をベットの上でいた事が分かった。
そしてベットの傍にはレイの端末が落ちていた。
「レイちゃんの端末?」
「見たいだな……発信器付きの」
発信器で探すのは初めから期待何てしてなかったし……
「誰かと話していた様だな……履歴でも調べるか」
「チョット気が引けるけど仕方ないよね」
端末を操作して履歴を調べる。
「最終履歴は………シオンか」
「その名前って、ナナちゃんのお姉さんの名前だよね?」
「そうだ、時間は…………数時間も前か。シオンから連絡が来て部屋を出たのか」
「早く追いかけないと!」
「だな、時間からかなり経っているしな」
端末をコートにしまいなのはと部屋を出る。
「俺はミッドを探す。なのはは艦内を頼む、レイの事だからまた艦内で迷子になっているかもしれない」
「分かったの!皆にも伝えてくるね」
「待て、騒ぎになったら探しにくくなる、なるべく穏便に探せ」
「わかった!」
なのはと別れてミッドに向かう。
さて……見つけ次第どう締め上げるか。
ミッドに降りてまず最初に考えることは……レイが何処に居るかだ。
レイとシオンが居る様な場所は多分公園だが絶対目的地に辿り着いて無さそうだし。
「一先ず公園だな………ん?」
――クイ
右手が小さい手に掴まれる様な感覚があった。右手も見てもそこには何も無い……だけど触れられている感覚があった。
右手はある方向に向かって小さく引っ張られる……
「付いていけば良いのか?」
それの返答か少し強く握られた。急かされる様に右手を引かれて見覚えのある道を通る事に……
「この道……もしかして」
引かれて着いた先は、予想通りの公園だった。
「ここにいるのか?」
そう聞くとまた強く握られた後、触られた感覚が無くなった。ためしに右手を動かしてみるが特に異常は無い。
「今はレイを見つける事だな」
公園に入りナナと遊んでいた場所に向かうと、そこにレイとシオンが居た。
俺は気配を消して、レイの背後に近づいて――――頭を鷲掴み持ち上げた。
――ギリギリギリギリギリ!!!
「出かける時は書置きでも残せと言っただろうがこの馬鹿が」
「うゆ~!!イタイイタイイタイ!!!ナナのおねーちゃんがミッドを出る前に会いたいって言うからぁ~!!」
「1人だと迷子なるだろうが」
「何度もならないもん!それに今日はなってないもん!!」
「威張るな。それと最初に言う事を忘れていだろうが……」
持ち上げている手に更に力を込める。
「えっと……もうその辺にしておいた方が……」
「シオンの厚意だ。今すぐ謝ったら離してやる」
「イタイイタイイタイ!!!ゴメ~ン!!」
手を離す。落ちて尻餅を着いたレイが頭を押さえて『うゆ~!』と唸っていた。
それを軽く無視して今度はシオンの方を向く。
「――で、ミッドを離れると言うのは?」
「うん………ほら、あの時ナナの事で親と大喧嘩したでしょ?それでもう『こんな家出てってやる!』って言っちゃって………それにミッドにはナナとの想い出が多すぎて。ちゃんと整理がついたら戻るつもり」
「宛てはあるのか?」
「おばあちゃんの所、相談したら全然OKだって。連れ戻そうなら魔法でぶっ飛ばすだって」
随分アグレッシブな奴だな。
「それともう1つ、渡したい物があってね。レイちゃんコッチ来て」
「……うゆ?」
呼ばれて首を傾げながらレイにシオンが渡したのは綺麗な砂の様な物が詰まったビン。
「あ………コレ」
ビンの中の砂は日の光を浴びて時折紫の光を帯びている……これはナナの亡骸だった。
「……ナナの欠片」
「そう、レイちゃんと一緒に居られるようにって……ほら、私も持ってるよ」
シオンもバックから同じビンを取りだして見せた。
「勿論ベアトリスさんにも」
「……レイの分で十分だ部屋に置く分にしておけ」
差し出されたビンを押し返す。
「それと一応俺からも、正確にはナナから渡す物がある」
俺はシオンに1枚の紙を渡した。
「ナナから?」
「今開けるな、開けるのはアッチに行ってからだ」
「え?………は、はい」
何かをが分かっていない様子だが頷いていた。
「あ、そろそろ行かないと遅れちゃう。じゃあレイちゃん、ベアトリスさん、本当にありがとう!またね!!」
「またね~!ナナのおねーちゃ~ん!!」
笑顔でシオンに同じく満面の笑みで見えなくなるまで手を振ったレイ。
「……ねぇねぇコダイ。さっきナナのおねーちゃんにあげたのってなんなの?」
シオンが見えなくなって少し経った後、レイがコートの裾を掴んで見上げて聞いて来た。
「アレか?レイにもあるぞ。ナナからのな」
「ナナからの?」
コートから紙を出してレイに渡す。
それを貰ったレイは俺と紙を交互にチラチラと見ている………あ。
「お前は今開けて良いぞ」
そう言うと、破かない様に丁寧に折り畳まれた紙を開いていく。
「………………!」
中身を見た瞬間にレイは目を見開き、肩が震え始めた……
「う……ヒック……グシュ…………泣がないっでぎめだのに……ナナのおねーぢゃんが1番悲しいのに……エグッ……ズズっ………」
涙や鼻水でグシャグシャになっている顔を服の袖で拭っている。
「ナナが幸せだって………ナナが心配しないように泣がないっで……うぅ……う~」
泣くのを我慢しているレイの手の中にある紙が落ちた。
そこにあったのは1枚の写真。ナナが残した紙の一枚……『読心』か『予知』かどういう理屈か分からないがナナがレイとシオンの2人に残した写真。
レイとナナを挟んで俺とシオンだけで無く。リイン、サクラ、エル、アンズ、エリオ等まだ顔を見ていない5人も加わった集合写真。そこに―――――
『ずっといっしょだよ』
と子供の字で書かれていた。
落ちている写真を拾い、俯いて泣くのを我慢しているレイの頭に手を乗せる……
「結界は張った。ここには誰もいないぞ」
そう言ったと同時にレイが俺にしがみ付いて顔を体に押し付けた。
「わあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!ナナ……ナナあああああああああああああああああああああああああ!!!」
堰を切ったように泣き叫ぶレイ。シオンもレイもお互いに泣くのを我慢していた。
何も言わずただ落ち着くまで待つことにした。
「………そう言えば何で公園に迷わずにこれた?」
数分泣き叫んだ後、落ち着いて顔を離したレイに何か今更な事を聞いた。コートは脱いで脇に抱えている。
「うゆ?……えっとね、何か右手を引っ張られて気づいたら公園だった。右手に何も無かったのに握られてる感じがしたよ」
「良く気絶しなかったな……ホラー苦手なのに」
「うん!アレは平気だった」
「俺も同じ様にここに来たんだが……大方レイが迷子にならない様にナナが案内したのかもな」
「言った傍から心配された!?」
当然だろうな。
「う~………こうなったらナナがビックリする位大きくなってやる~!!」
腕を振り回してヤケクソ気味叫ぶ……一気にテンション戻ったな。
「はぅ………」
暴れていたレイが突然倒れた。その直後に地鳴りの様な音がレイから聞こえた……
「お……おなかすいた」
「3日間何も食べてないからな」
倒れているレイを脇に抱えて、端末を操作してなのはに無事を伝えた―――
~おまけ~
食堂にて………
「レイが元気になって良かった……」
「うんうん、やっぱり子供は元気が一番だよ」
元気になって顔を出したレイをみて一安心したフェイトとアリシア。
「―――呑気に言っている暇があるなら速く補給してこい」
「「はぅ!!」」
厨房からのコダイの声と共に財布とメモの束がフェイトとアリシアの顔にそれぞれ当たった。現在食堂は戦場と化している、きっかけはコダイの通信だった。
レイが元気になったと聞いたなのはがそれを全員に報告し、最期に『ついでに腹を空かせた様だから何か作ってくれ』コダイが付け加え、それを聞いたはやて達が厨房を借りてレイの為に料理を御馳走する事になった――
そのレイは現在、目の前にある料理に一心不乱に食べ進めている。その両隣をリインとヴィータが固めて甲斐甲斐しく世話をしていた。
「レイちゃん、飲み物です!」
「ふぁいあと~ひいん(ありがと~リイン)」
「ほらレイ、口拭いてやるからこっち向け」
「ん~……ふぁいあと~ふぃーた(にゅ~…ありがとうヴィータ)」
食堂に着いた頃のレイは脇に抱えられてグッタリしていたが、目の前の料理の匂いで覚醒。
当初は体を壊さぬようにとシチュー等と消化に良い物を出したが――――それによってレイの胃袋にエンジンが全開になってしまった。
唯でさえ人の3倍食べるレイが3日も食べていなかったので、それを一気に取り戻す勢いで食べ始めて10分もしない内に出された料理の半分以上がが胃の中に消えた。
このペースは間に合わないと判断したコダイとはやては急いで追加を作ることに、アイン、アリサ、すずかも配膳の手伝いに入っている。
「シーザーサラダ、ローストビーフ、棒棒鶏の4人前ずつ完成、アイン運んでくれ」
「ハイ!」
「なんやあのスピード!最初のもかなり多めに作っとるのに!……はい!BLTサンドとナポリタン2人前ずつ上がりや!すずかちゃん持ってって!」
「うん!」
「コダイ!この皿空になったわ!」
「分かったアリサ。後チャーハン、エビチリ、麻婆豆腐の4人前ずつ追加」
「分かったわ!」
料理が得意な2人が急ピッチで調理して、他の3人が料理や空になった皿を洗う作業を繰り返している。
「主はやて!ただ今戻りました!」
「メモに書いてあった食材買って来たよ!!」
食堂に飛び込んで来たのは両手に荷物を抱えたシグナム、なのはとマテリアルズ。食材が尽きる前にはやてとコダイが頼んでいた。
「サクラ、エル、アンズは肉と魚を冷蔵庫、野菜は洗って渡してくれ」
「「「了解!」」」
「なのはちゃんはこれ運んでな。シグナムは3人の手伝いや」
「「はい!」」
「どんだけ食うんや!?胃の中にもう1人レイちゃんがいそうや!休む暇もあらへん!」
「手を動かせ休む暇無いぞ。普段から食いっぱなしからの断食、からの復帰だからその反動だろう……よし、メンチカツ、たらこスパ、生春巻きの4人前ずつ完成と」
「ちょっ速ない?!」
因みに調理のスピードと量はコダイの方が慣れているので上である。はやてが1品(2人前)を完成させる時間でコダイは2品(4人前ずつ)を完成させる割合だ。
「慣れだ慣れ。汁なし担担麺作ったから休憩挟め」
「サンキューおかん!」
「誰がお母さんだ」
はやてがトレーに乗った汁なし担担麺を持って厨房の奥に行く。
「はやてちゃんに言われたけどじっと何てできません!やっぱり私も手伝います!」
「ザフィーラ、シャマルを止めろ」
「分かった」
コダイに言われザフィーラは立ち上がったシャマルに何重ものバインドを掛けた。
「え?!ちょっと何で邪魔するの!?」
「レイの身の安全を確保しただけだ」
その後、レイの回復を聞いてやって来たリンディも厨房に参加して、戦争と言う名の食事を終えた……
使った食材はコダイの自腹で切った分もあって在庫には支障が殆ど無く。はやては『ともかくレイちゃんが元気なってよかったわ』と疲れた顔で言っていた。
リンディはあの状況をみて『レイちゃん、沢山食べて大きくなるのよ~』と何時通りだった。
レイはこの食事で自己最高記録を3桁に更新した。
ただし3日間何も食べて無い状態での一気食いで今度は3日間の大半をトイレに籠ることになった。
~次回もお楽しみにしてください~