魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

141 / 156
ようやくスランプから抜け出せたような気がします。


白い本byコダイ

 仮面の下に隠された瞳は青紫(ヴァイオレット)、肩口で切り揃えられた銀髪は日の光を浴びて紫の色を帯びる。その容貌は紛れも無いナナ本人だった。

 

 

「成程……心を読むのと未来予知の2つを持っていたのか」

 

 まずこいつの勘の鋭さは未来予知とも言っても良い。だが先程不意打ちを喰らったのから未来をと言うよりも人の心を読めるのは1人のみ。次にナナのあの時の言葉……

 

 

――『レイちゃんダメ!!車来ちゃうから早く逃げて!!!』

 

 

 その直後に車が来た……これは未来予知に近い、恐らくナナはこの2つの能力を使って俺の動きを予知した。戦闘中に時々出ていたあの紙と背中の宝石………間違い無くナナが持っていた本の装飾の宝石。

 そうなると心を読んで未来を予知を起こしているのはその宝石のロストロギアか。だがあれには何にも反応は無かった。

 ……だが確か前になのはがロストロギアなのにロストロギアの反応が無い事が前にもあったて言っていたな………あれは確か―――

 

「俺か……」

 

 経緯は知らないが今の俺とレイと似た状態、普段は本として分離させて必要となれば自分の体に戻してデバイスとして起動、つまりロストロギアを取り込み俺と全く同じタイプのデバイスになったと言う事か。

 装甲が瓜二つはそれで納得できる。攻撃を防いだり分身を作った紙は本自体の能力か?

 

「で……でもベアトリスさん、何でナナが……」

 

 静寂からシオンが抜け出したので思考を一旦放棄した。

 

「レイを助けようとした」

「私を?」

「先に通り越してトラックに突っ込んでな」

 

 最初にトラックに気づいたのもナナだしな。

 

「でもそしたらベアトリスさんが襲われる理由が……」

「さあな、何かの拍子に暴走したんだろう」

 

 ナナはその場で動かずこちらを見ているだけだ。その周囲には紙が舞っていて傷がある部分に張り付いて装甲の修復をしている。

 

「ナナ!もう大丈夫だから、私は怪我なんてしてないからもう戦わなくていいから!!」

 

 レイが俺とナナの間に入り庇う様に腕を広げる。

 

「何を言っても無駄だ……元に戻るには標的である俺を殺すしかない」

 

 完全に意識がデバイスに呑まれている。デバイスの識別機能を頼りに殺しに掛かっている。

 

「大丈夫だよ!友達だから話せば絶対分かってもらえるもん!」

「何だよそのある意味根性論的な考え」

 

 絶対になのはの影響だよな。だったら俺から産まれたデバイスがまともな考えをする筈が…………俺から?

 

「やば―――」

「うゆっ!?」

 

 頭部の甲冑の修復の途中でナナが両の爪を突き出してレイに飛び掛かると同時に俺がレイの襟首を掴みシオンの方へ放った。

 

 

――グシュッ!!!

 

 

 目標を失った爪が俺の両肩に突き刺さる。

 良く考えればレイは俺のデバイスだ、俺が狙いならレイも同じ対象になる筈だ。

 

「相手は俺だろう……」

 

 肩に刺さっている爪を更に深く押し込む。動けなければ心読んでも意味が―――

 

 

――ブシャッ!!!

 

 

 突然、両足から血が噴き出て体勢を崩してしまった。一体何が――

 

 

 

――ザシュッ!!

 

 

 

 脚に気を取られていると今度は両腕から血が噴き出た……だが今度は見逃さなかった。

 

「紙?…………しまっ」

 

 一瞬、白い紙が飛んでいるのが見えた……紙を高速で飛ばして切ったのか、確かに紙で切った傷は結構深いからな。

 両腕が切られて、爪を押し込んでいた拘束を緩めてしまい。その瞬間に刺さったまま体を持ち上げられて投げ飛ばされた。

 

 

――ドガァッ!!!

 

 

 

 背後にあった樹に叩き付けられた。

 

「最近、死んで治っての繰り返しだな……」

 

 内臓やられたか、両腕両脚を紙で深く切られた所為で体が動かない………

 投げ飛ばした張本人、ナナは俺を見据えている。だけど半分しか直って無い頭部の甲冑から除く青紫(ヴァイオレット)の瞳には光は無く何も写して無い、俺と同じ目をしている。

 ナナは血の付いた爪を振るって落とし、右手の指を手刀の形に揃える。すると背中から白い紙が現れ右腕を覆うと、爪から一振りの剣へと形状を変え、ナナはその剣先を俺の頭に狙いを定めた……

 

「ナナもうやめて!!レイちゃんは無事よ!!だからもうこれ以上ダメよ!!」

「お願いナナ!!もうコダイを傷付けないで!!お願い返事をして!!!」

 

 近くにいるシオンとレイの声を聞いても微動だにしない……いや、もう聞こえて無いかもしれない。

 

 

――シュァアッ!!!!

 

 

 ナナは躊躇いも無く、狙い通りに俺の頭目掛けて剣を突き出して来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 ナナが白い剣を突き出した、その後目の前が暗くなった。だが決して刺された訳では無かった。

 

「………やっと、止まってくれた」

 

 目の前から聞こえたのはレイの声。レイが俺を庇うように両手を広げて立っていた。

 シオンはナナを止める為に体を抱きしめていた。その時に剣を掠めたのか肩から血が滲み剣を伝っていた。

 

「ナナ……もう大丈夫、ナナが戦わなくて良いから……」

 

 シオンが優しく何度もナナの頭を撫でる。

 如何やら、レイが俺を庇ってシオンがナナを止めた形なのか?ナナの剣はレイの眉間に触れるか触れ無いかのギリギリの所まで迫っていた。

 

「……………」

 

 それでもナナは無言で前に進もうと足を踏み込むが、シオンが強く抱きしめてそれを阻止する。

 

「………リインとサクラとエルとアンズとエリオ……って言うんだ。私の友達の名前」

 

 眉間に剣を突き付けられたままのレイが何事も無く話し始めた。

 

「私ね、明日からコダイとお仕事で暫く会えないんだ。今日はこの事を言おうと思ったんだ。少しの間会えないけど、お仕事を終わらせて、さっき言った友達と一緒にここで会おうって。さっき言った他にも沢山いるんだよ?えっと………他にも言いたい事が沢山あるんだけど私じゃどう言っていいか分からないや。えっとね、だからお仕事が終わったら私と私の友達とコダイとナナとナナのおねーちゃんとみんなで遊ぼう!!」

 

 

 

 

 

「…………………ン……………」

 

 

 

 

 

 前に進もうとしたナナの足が止まった。

 

「………ナナ?」

 

 それに一番近くにいたシオンが気づいて、ナナの顔を覗き込んでいた………

 

「………やっと届いたのね」

 

 シオンが強くナナを抱きしめる。レイに突き付けられた剣がゆっくりと下り、元の紙となって四散した。

 

「レい……チャン………シおン……オネー………チャン」

「そう……アナタのおねーちゃんよ」

「私はナナの友達だよ」

 

 満面の笑みで笑うレイ。さっきはシオンが陰で見えなかったがレイ達が『届いた』と言った意味がようやく分かった。

 

「レイチャン………シオンオネーチャン」

 

 ナナの青紫(ヴァイオレット)の瞳からは涙が流れていた。

 

「意識を取り戻した?」

 

 レイとシオンの言葉が届いたのかまたは『読心』で2人の心を読んだのか………

 ナナの体がガクリと力を失いシオンに体を預けると体が薄い桃色の光に包まれて消えた頃にはナナは元の姿に戻っており、その足元には白い本が落ちていた。

 

「良かった……戻って……っ~!!」

 

 シオンが気絶したナナをそっと寝かせたのもつかの間、肩を押さえ始めた。

 

「とにかくナナをベンチまで運ぶぞ、ここじゃ応急処置も出来ない」

 

 近づいてシオンの様態を見る。そんなに深くは無さそうだな。

 

「ベアトリスさん、レイちゃん。ナナを助けてくれてありがとう」

「俺は足引っ張っただけだ、礼はレイだけにしておけ」

 

 ナナを横抱えで持ち上げて近くのベンチまで運んだ。

 

「あの……ベアトリスさん怪我は」

「見た目より頑丈なんだ」

 

 こんなの闇の意思の収束砲撃後の魔法一斉射撃の時よりもいくらかましだ。痛いだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「掠っただけだ、痕は残らないだろう。2,3日で治る」

 

 ナナをベンチに寝かせて。シオンの応急処置を施す。と言っても消毒して包帯を巻くだけだが。

 

「ナナに関してはデバイスの感謝だな。気絶してるだけで傷一つ無い」

 

 姿や性能は似ていたが『幻痛(ファントム・ペイン)』は無かったようだな。

 

「良かったね、ナナ、ナナのおねーちゃん」

「ありがとうレイちゃん」

 

 シオンが撫でるレイの頭には包帯が巻いてある。ナナが突き付けていた剣の先が少し刺さっていた様だった。

 俺も自分の簡単に手当てを始めた、この中で一番酷いのは紙で切られた両腕両脚の傷………今はここだけ止血して置けば良いか。

 服の上から包帯でややキツク巻く。他のは帰ってからでも良いか。

 

「さて、一番の問題はこの本だな」

 

 止血も終わって。ナナのそばにあった例の本を調べる。

 

「やはり見た目も普通の本だな、中身も白紙のまま」

 

 再び本をナナのそばに置く。ナナと離れている場合はやっぱり使えないのか。ここまでレイと似ているとは………俺のデバイスについてはなのは達以外には口外して無い、下手すれば研究室送りだしな。

 ここまで似てると逆に意図的に作られた見たいだな。ありえない話じゃない、以前のターエンが繰り出した死体に付けていた結晶体もロストロギアなのに反応が無いってユーノが言っていたし、間違いなく繋がりがるなこれは。

 現時点で確認している転生者はアスカ、ターエン、それとあの物体のパイロット………どれも頭脳向きじゃないな。二人は知らないがターエンに関しては悪知恵しか働かなそうな頭しているし……『生体ガジェット』も出所はアッチだしな……この世界での協力者でもいるのか?……いろんな奴に恨み買ってるし。

 

「………ん……あれ?ここは……」

「ナナ!目が覚めたのね!!」

 

 ん……どうやらナナが意識を取り戻したみたいだな。

 

「え?…シオンおねーちゃんケガを……ッ!!!」

 

 意識が曖昧な状態から、服に血が滲んでいるシオンを見て一気に覚醒したナナ、次にレイ、俺、周りを見回す度に徐々に顔を青ざめ体を震わせる……

 

「ナナ、どうしたの?どこかケガしたの!?」

 

 レイが駆け寄ってナナの肩を軽く揺する。

 

「――――覚えているのか」

 

 俺の質問に震えながらゆっくりと頷いた。

 

「レイちゃんが道路に行くときに見えたの、レイちゃんがトラックにひかれるのを。レイちゃんを助けたくて、その時に聞こえてその通りに動いてレイちゃんを助けたら眠くなって、よく分からなかったけどハッキリしていた時には………レイちゃんを襲おうとしてて………」

 

 話からすると俺の砲撃の後に目が覚めてたようだな。眠くなったというのは副作用か……

 

「大丈夫だから!私は無事だからもういいんだよ!」

「それでもレイちゃん達を傷付けちゃ意味ないよ!!」

 

 レイがそれに思わず頭の包帯を手で隠そうとしている。

 

「ずっとこの本から声が聞こえていた……『コイツは悪だ、だから殺せ』『悪は全て滅ぶべき』って……」

 

 ナナが白い本をきつく握りしめている。完全にデバイスに乗っ取られてた状態か……俺でいうあの金色の状態と同じか。

 

「ねぇコダイ!何とかならないの?!」

「………ナナとその本は一つに繋がっている。もし本に何かあればナナに何が起こるか分からない」

 

 例えナナが拒んでもこのデバイスが勝手に発動してまた人を殺す……勧善懲悪を体現している様な物だ。

 

「ねぇ……レイちゃんのお母さん」

 

 ナナに呼ばれて思考を中断する。

 

「あのね………あの時少し『分かった』のレイちゃんとレイちゃんのお母さんの事も………」

 

 恐らく『共鳴』でレイについて分かったのか……もしかしたらレイと仲良くなったのはそれも要因なのかもな……

 

「それでね、実は―――――」

 

 

 

 

 

――ゾワッ!!

 

 

 

 

 

 一瞬、右腕から全身にかけて怖気が奔って。その直後にある方向の空に視線を向けた……ナナと同時に。

 

「……こっちに……来る!」

「やっぱりナナも分かったか……俺は来る事しか分からないが……そっちは」

「とても危険で……強くて、大きい物がこっちに」

 

 全身にめぐる怖気が更に強くなる………

 空の一点が黒くなった。すぐコレだと右腕が教えてくれた。

 

 

 

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

 点は徐々に大きく、形を歪に変えた………黒い点の正体は巨大な機械の腕だった。

 

「腕!?けど何であんな大きな腕が飛んで……」

「あー!!あの腕ってこの前の無人世界であったロボットの腕!!」

 

 飛来してくる物体に首をかしげるナナだが一度見たことがあるレイが大きな声をあげる。

 

「シオンおねーちゃん、レイちゃん早く逃げて!!!!」

「こっちに向かってくるぞ、なるべく遠くだ」

「分かりました!!」

 

 シオンがレイの手を引いて公園の外へと走って行く。

 

「……ベアトリスさん何してるんですか!早く逃げないと!!」

「…………俺はコレを止める」

 

 あの悪ふざけの塊(ロボット)も転生者の仕業なら、腕の1つでも潰さないと気が済まない。

 

 

――ババババババババババババッ!!!

 

 

 

 構えようとした瞬間、目の前に現れたのは大量の白い紙だった。それが体に纏わり付いたかと思ったら強い力で後ろに引かれて後ろにいるレイとシオンの元まで飛ばされた。

 起き上がろうにも纏わり付いた紙が俺の体ごと地面に吸い付いて起き上がれない状態だった。

 

「何で紙が………?」

 

 

 入れ替わる様に立っていたのは、迫りくる腕を背に白い本を持ったナナがいた。

 

「ナナ?!何しているの、速くこっちに―――!」

 

 シオンの言葉にナナは首を横に振り、白い本を優しく腕の中に抱きしめた。

 すると本は宝石と同じ桃色の光を放ちナナの中に溶け込むとナナは再び白い装甲を身に纏った……

 

 

「え?………ナナ?」

 

 

 その姿にレイが呆気に取られていた。それは今までの装甲とは全く違った――――

 まずその姿……レイと変わらなかった身長が伸びシオンと変わらない程に。次に装甲の形状、全身を覆う形が腹部、二の腕等が露出して必要な部分のみを覆い、女性のシルエットになぞられた装甲に。

 最後に頭部を覆っていた仮面はなく代わりに耳を覆うヘッドドレスが付いて、何も隠れていない顔は子供の時と変わらない笑顔を浮かべていた。

 

 

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 腕はもう眼前まで迫っていた。ナナは手を掲げて出現させた大量の紙が俺達とナナの間に壁を作った。

 その直後、強烈な光と爆発音が辺りを包んだ―――




 湖月 秋博様、アルクオン様、冷たいストラップ様感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。