魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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バレンタインデー特別編です。
これは2012年 02月14日に投稿されたお話です。
時期は中学2年生です。


バレンタインデー特別編『手作りは心が込もると言うが込め過ぎも良くない』

 今朝起きると誰も居なく、リビングに『朝早くに用事があり出かけます』とアインの字で書置きと弁当があった。

 なので身支度を整えて今までより早めに家を出て学校に向かった――――

 

「…………何だこれは?」

 

 

――ザッ………ザッ……

 

 

 学校の門をくぐると周囲の空気が一気に一変した。静寂に包まれ重く緩慢とした男子の足音しか聞こえなかった。

 それに空気が重くピリピリと張りつめている……特に濃いのは校舎側―――物凄く行きたくない……

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

 後ろの声に振り替えると黒髪でポニーテールの女子がいた。頬を赤く染めどこか落ち着きが無くソワソワしていた。

 この静寂の中でその声は良く響き、緩慢な動作で歩いていた男子の視線がが一斉にこちらを向いた。

 当然そんな視線は無視するが。

 

「たしか……同じクラスだったな」

「お、覚えててくれたの!?」

「これでも顔と名前は覚えている……で、俺に何の用だ?」

「えっと……その……これ!お願い!」

 

 突然、綺麗に包装された小箱を押し付けられた。

 

「は?」

「じゃあ!また!」

 

 

――ぴゅ~!

 

 

 反応する間も与えず女子がものすごい勢いで校舎に走っていく……

 

「何だ一体………?」

 

 

――ギロオオオオオオオオオオッ

 

 

 突如として空気が禍々しいものに変わった。何だこの殺気は………周囲の男子からか?

 今まで様々な理由で追われた事はあったがこんな濃密な殺気を出されたことは無いぞ?

 ………と言っても全くと言っても怖くないのでそれも無視して校舎に入った。貰った箱は取り敢えず崩れぬように鞄に入れて。

 

 

――ウォォォォォォォォォォオオオオン………

 

 

「………またかよ」

 

 靴置場付近……空気が一段と重く、ピリピリしている。靴箱の前で俯きながら呪詛の様に呟く男子。靴箱を何度も開け閉めをする男子。

 ここまで来るとかなり面白いな……しかし今日は珍しいな。いつもは遅刻ギリギリに来る男子もこんな早くに来ている……

 

「邪魔だ………」

 

 佇む男子を押しのけ、自分の靴箱を開ける……

 

「は?」

 

 本来靴が置かれる場所にそこにそぐわない綺麗に包装された小箱……しかも2桁はある。

 

「………衛生面的に大丈夫だろうか?」

 

 定期的に綺麗にはしているが流石に靴箱だぞ?

 

 

――オオオオオオオオオオオオォ………

 

 

「………教室に行こう」

 

 背後の一層強くなった殺気を無視して教室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が席に着いてしばらくしてなのは達がやってきた……

 

「今日は早かったねコダイ君」

「今日何故か誰も居なかったし、何もする事無いからそのまま学校に来た」

 

 何時もならレイとマテリアルズやエリオを起こしたり朝食と昼食をたりしてるから暇で仕方なかった。

 

「あ、やっぱり……それにしても」

 

 それに何か納得したなのはだが、俺の机にある物をずっと凝視している………これに関しては仕方ない。

 

「すごい……」

「ピラミッドや……」

 

 フェイトとはやてが見上げて呟いていた。

 俺の机の上には例の小箱がが靴箱の時の5倍ぐらいあり、それがピラミッド状になっている。因みに机の中もミッチリだミッシリでは無いミッチリだ。

 

「何だ今日は……俺の誕生日ではないぞ」

「コダイ君、今日はバレンタインだよ♪」

 

 隣の席のすずかが嬉しそうに答える……

 

「何だ菓子企業の陰謀(バレンタインデー)か。だから男子共が魑魅魍魎と化してしたのか」

 

「捻くれた言い方やな~」

 

 苦笑いするはやて………だが、その日にチョコを贈るのは日本が販売促進のためだけに造ったものだぞ?

 

「そんな事よりどれだけチョコもらってんのよ!!この女誑し!」

「誰が誑しだ、よく見ろ」

 

 恐らくチョコが入っているだろう箱の内1つをアリサの目の前に押し付ける。

 

「ちょっと何よ!」

「いいから見ろ」

 

 受け取ったアリサは中身が壊れないように調べ始める……

 

「特に変わった…………え?『レイちゃんへ』ってこれレイ宛?」

 

 リボンや包装紙の隙間に挟んでいるメッセージカードを見たアリサは目を丸くした。

 

「もしかして…」

 

 アリサが次々とチョコを調べ始める……

 

「これも……これもレイにって……」

 

 その言葉になのは達も調べ始めた……もちろん壊れない様に。調べた結果………

 

「全部……レイちゃん宛てなの」

 

 門での手渡し、靴箱、机のを調べた結果をなのはが代わりに言ってくれた。

 

「レイちゃん……人気物だったもんね」

 

 思い出す様にすずかが苦笑いを浮かべる。あの状況は凄かった……特に女子が。

 

「ほい、コダイ君紙袋」

 

 どこから出したのかはやてが紙袋を3つ渡してきた。

 

「準備いいな」

「ちゃうちゃう、職員室から要らないの貰うたんや」

「なんでわざわざ?」

「コダイ君、あの時の事思い出してみ?誰が学校に来たのかを――――」

 

 確か……レイとリイン……あ。

 視線を下すとはやての手には紙袋に溢れるほどのチョコが……

 

「それってもしかして」

「ふっ……全部リイン宛てや……」

 

 遠い目で笑うはやて……とにかく折角貰った紙袋を使わせて貰おう。

 

「これだけ貰ってアンタの分が1つも無いって言うのも面白いわね」

「そうか?」

 

 俺は『性格最悪の完璧超人』で通っているしな……

 

「だから………ほら」

 

 アリサが俺の目の前に綺麗に包まれた赤い袋を突きつける……

 

「レイにか?」

「アンタによ、手作りなんだから感想聞かせなさいよ!」

「俺にか?ありがとう」

 

 貰ったチョコを袋に……はやめて置こう、レイの分と混ざるから鞄に入れるか。

 

「はい♪私もコダイ君にチョコレート」

 

 すずかから渡されたのは青い小箱に黒猫のシールが貼ってある奴だった。

 

「出遅れた!コダイ、私も!」

「わ、私も!大丈夫、ちゃんと味見したから!」

「私も、ハッピーバレンタインなの!」

 

 アリシアのは銀のリボンが結ばれた黒い箱。

 フェイトのは金のリボンが結ばれて黒い箱。

 なのはのはピンクの紙で包んだ袋。

 それらが同時に目の前に差し出された。

 

「ありがとう。それと落ち着け」

 

 貰ったチョコを鞄に仕舞う。

 

「最後は私達からや」

 

 最後にはやてから差し出されたのは、綺麗に包装された白い小箱と……それよりも1回り小さい箱だった。

 

「これは?」

「ちっこいのはリインからやで。がんばっとったで?頑張り過ぎて今お休み中かもな」

 

 妖精サイズのリインが自分と同じぐらいのサイズの調理器具に悪戦苦闘するのを想像した。恐らくフルサイズでやっただろうけど。

 

「今度会ったらお礼言っておく……」

 

 2つを鞄にしまい。机の上に顕在しているピラミッドの解体に取り掛かる事にした――――まさか全てのチョコを紙袋に入れるまで始業ギリギリになるとは思わなかったが。

 

 

 

 

「はやて言いたい事がある――――」

「私もやコダイ君―――」

 

 放課後、明るく帰る男子4割と死んだ様に帰る男子4割………そしてまだ教室に置き物の様に居座る男子2割と言った感じの教室の中で俺とはやては真剣な顔でお互いの顔を見ていた。

 

「「幼女恐るべし」」

 

 俺達の手には1つから3つになった紙袋と机には朝の倍はあるチョコが置いてある。

 休み時間の間、同じクラス、違うクラス、他学年にまでレイとリイン宛てのチョコを貰うとは……

 

「……家にはよく食べる子がおるから」

「俺の所も5人もいるし……腐らずには済むな」

 

 職員室に立ち寄り、紙袋を補充してから校舎を後にし。何時もの様に全員で帰り道を歩くことに。

 チョコの方は大丈夫だろう放課後までに殆どの女子にレイ宛てを貰ったから下校中に貰う事は―――

 

「フェイト~♪」

「きゃっ!!」

 

 ………あ~知り合いと言う線を忘れていた。

 フェイトを呼ぶ声にフェイトの悲鳴に振り返ると子供形態のアルフが後ろからフェイトに抱き着いていた。

 

「ア、アルフ!危ないからダメだよ!」

「ごめんごめん。やっと見つけたからつい……」

「え?私を探していたの?」

 

 アルフに抱き着かれたままの状態で首を傾げるフェイト。

 

「そうそう!フェイトとアリシアはもう渡したのかい?」

「うん、バッチリ」

「チョット出遅れちゃったけど」

 

 照れくさそうに笑うフェイトとアリシア……渡したってチョコの事か?

 

「上手くいったんだね!……それじゃあ、はい!アタシからのチョコだよ!」

 

 フェイトの背中から降りたアルフは俺の元にやって着てオレンジの紙で包んだ袋を渡してくる……

 

「俺にか?ありがとう」

「ふふ~ん♪ちょっとは期待しても良いよ。これでもリンディの手伝いとかしてるから料理の腕には自信ありだよ!」

 

 したり顔で胸を張るアルフだが………

 

「自慢なのは良いが手は隠した方が良いぞ?」

「へ?」

「火傷、絆創膏」

「っ!!!」

 

 アルフの手の現状を言った瞬間、両手を後ろに隠して顔を真っ赤にして震えていた。

 

「み、見た?」

「バッチリ」

「ウ~!」

 

 犬の様に唸るアルフだが、むしろ微笑ましいのかフェイトとアリシアが笑っている。

 

「当然よ、お菓子は普通の料理とは加減が違うもの」

 

 また後ろから声に振り向くと今度はプレシアとその隣に子供形態のリニスが居た。

 

「母さん、リニス……もしかして2人も?」

「ええ、2人の心配とコダイさんにチョコを渡したくて飛び出したアルフを追って……はい、コダイさん」

 

 リニスから薄いオレンジの紙で包装された小箱を渡された。

 

「私達は別に後でも良いって言っているのに……はい、昔はケーキとか作っていたから期待してもいいわよ?」

 

 プレシアのは紫の紙で包装された袋を渡された。

 

「こらそこの2人大人ぶるな!リニスもソワソワしてたじゃないか!!」

「そ……それは」

 

 ビシッ!と音が鳴るぐらいの勢いでアルフに指されたリニスは慌てて目をそらす………帽子の中の猫耳が動いてるな帽子を微妙に揺れてるし。

 

「ミッドにはこういう習慣がないから年甲斐も無く緊張しちゃったわ」

 

 対するプレシアは余裕の笑みを浮かべる。

 

「そう言えば日本では『お礼は三倍返し』と聞くから期待しても良いかしら?」

「貴様の要望には裏がありそう何だが………」

 

 物資(もの)より労働(からだ)を要求されそうだな。 

 

「あら?別に警戒しなくても良いわよ?ただ以前の時の様にデートしてほしいだけよ―――勿論朝まで♪」

 

 予想通り労働(からだ)だった。

 艶やかに笑みを浮かべるプレシアの手にあるのは例の変身薬だった………

 

「デートォ?!」

「朝までぇ?!」

 

 プレシアの言葉を聞いて驚愕するアルフとリニス。

 

「ふふふふ♪それじゃあアリシア、フェイト寄り道も良いけど遅くならない様にね」

 

 にこやかに笑ったまま、一瞬でこの場から消えたプレシア。恐らくソニックブーム使ったな。

 

「逃げやがったあの女!」

「急いで追いかけないと!」

 

 アルフとリニスが凄い形相でプレシアの後を追った……

 

「………仕込んでないだろうな?」

「お母さんの事だから純粋に渡しただけだと思うよ?」

 

 プレシアに貰ったチョコを眺めるとフェイトから否定の言葉が返って来た。

 

 

 

 

 

≪警告≫

「どうしたの?レイジングハート」

 

 プレシア達と別れてしばらくして、突然なのはが首にかけているレイジングハートが点滅した。

 

≪上空から魔力反応2つ、急降下してきます≫

「え!?もしかして敵襲!?」

「結界張ってないから違うだろ。即バレるし……でレイジングハート、座標は?」

≪計測します――――真上です≫

 

 それを聞いた瞬間、俺はアリサとすずかを抱え、全員が弾かれるようにこの場から離れた。

 

 

 

――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――ピタ……ストン……

 

 

 

 飛来してきた物体は地面に激突の直前で浮遊して軟着陸した……

 一先ず抱えてたアリサとすずかを下ろして俺の後ろに待機させる、残りの魔導師組で飛来物を囲む。

 俺達の中心にあるのは人が入りそうな程の大きさのある綺麗に包装された箱……

 

「な、何なの?……これ?」

「なのは、これはどう見たってプレゼントにしか俺には見えない」

「いや、まず降ってきた事にツッコミなさいよ」

「ちゅーかさっきありえへん着地の仕方しとったで……」

 

 アリサとはやてにツッコまれた………

 

――パカッ♪

 

 プレゼントの箱が独りでに開いた。その中にあったのは。

 チョコの像……しかも。

 

「アリアさんにロッテさん!?何でここにおる!?」

 

 中身ははやてが言ったようにアリアとロッテのチョコ像なんだが、何か………うん、はっきり言おう、全裸を象った像だった。

 

「≪地球では今日はバレンタインと言ってチョコ渡す習慣みたいだから、私達もチョコを作ってみた!!≫」

 

 チョコの象からアリアの声が聞こえた……え?これって念話?

 

「≪さぁ!おねーさん特性(特別に性的なの略)チョコ!胸から何まですべてを再現!!溶かす様にネットリと舐め進めるがいい!特に胸と股を――――≫」

 

 

 

 

 

 

「言わせっかああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

「「≪≪にゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!≫≫」」

 

 

 

――チュドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

 

 ロッテがアホな事言う前に遮る様に今度は赤い何かが2つの意味で突っ込んできた。プレゼント跡地からチョコらしき欠片が弾け飛び煙が立ち込める。

 

「チッ!この変態ネコが!」

 

 煙の中から現れたのは、デバイスのアイゼンを担ぎ、騎士甲冑を纏ったヴィータだった。

 

「コダイ大丈夫か!?変な事されてねーか?!」

 

 ヴィータが俺の体をペタペタ触ってくる。

 

「え~と……一体何があったんやヴィータ?」

「あ、はやて!実はこいつらがチョコを『どうせならインパクト大きく』とか言ってプレゼント箱に対ショック吸収魔法を施してコダイの真上転移させたんだよ!」

「それがアレ?」

 

 はやてプレゼント跡地を指すとヴィータが頷いた。

 

「いたたたたた……ちびっこ!本気で殴る普通!?」

「あたたたたた………火傷防止に障壁を張って無ければ死んでいたかも」

 

 跡地からアリアとロッテがこっちにやってきた服は着ていた、だが顔や露出している脚とかにはチョコがへばり付いている。

 

「うっせぇ!!どこの世の中に自分の体にチョコを塗りたくって渡す奴がいんだよ!!」

 

 再びアイゼンを構えるヴィータ。

 あのチョコ像からアリアとロッテの念話が聞こえた訳だ。

 

「なん……やと!?私がいつかやろうと思って引かれるかも知れないと諦めた事を平然と……さすがや」

「感心するのは良いが絶対やるなよ?死ぬから」

 

 湯煎したチョコはものすごく熱いからな……

 

「1番危なかったのはシャマルだけどな。あいつ、2人がチョコを塗っているところ見て『その手があったか』ってな顔してたし……」

「気づいたのが後で本当に良かったな」

 

 何その遠まわしな自殺?

 ってこいつがそんな事を知っていると言う事は……

 

「ん?つまり同じ場所でチョコを作っていたのか?」

「ま、まぁな……それに私も作ってきた……は、初めてだから味は保障しねーかんな!不味くても文句言うなよ!」

「言うつもりは無いが……ありがとう、レイ達に取られないようにする」

 

 ヴィータから突き出されたチョコを受け取り、礼を言って鞄に仕舞う。

 

「けどまぁ………どんだけ貰ってるんだよ……お前がモテんのは今に始まった事じゃねぇけど……」

 

 俺の持っている紙袋を一瞥したヴィータがため息をついた。

 

「いや、これは全部レイの。俺のは全部鞄に入っている」

「はぁ!?紙袋の全部レイにか!?」

「リイン宛てのもあるし帰って皆で分けて食べよな~」

「マジで!?食べる!」

 

 ヴィータの目が輝いた……こうして見るとレイとリインと似てるな……お姉さんぶってるけど。

 

「さっきは驚かせてゴメンね~。と言う事でこっちが本当のチョコね」

「さすがにあれは道端では食べれないよね~」

「保険は残していたか」

「どうせならコダイと私達しかいない場所でデコって女体盛り風にしないと♪」

 

 久々に聞いたぞその言葉。

 アリアとロッテの2人ら差し出されたのは大きな袋だった。袋が半透明で中身が見える、チョコと思われる物が2つに―――

 

「何故シャツ?」

 

 それと一緒に一見場違いな高級そうなワインレッドのドレスシャツが入っていた。しかもサイズ的に寝る用では無いな。

 

「いや~チョコの材料買っている時店のポップに『チョコ+シャツ』って組み合わせが書いてあったからつい……」

「さすがにそれと一緒に渡すのは恥ずかしくて……」

「なるほど……でも良いよこの色、ありがとう」

 

 照れ臭そうに笑うロッテとアリア………

 え?あのチョコ像はもしかして照れ隠し?………な訳無いか。

 

 

――スタッ!

 

 

「ここにいたか、トキガワ」

 

 背後から綺麗に着地したのはこれまた騎士甲冑姿のシグナムだった。

 

「シグナム……何で空から来た?」

「ヴィータを追ってだ………やはり先を越されたか」

 

 シグナムが俺の手にあるアリアとロッテのチョコを見て呟いた。

 

「まぁ良い。チョコレートだ」

「っと、ありがとう」

 

 シグナムに目の前で突き出されたチョコを受け取り、鞄に仕舞う。

 

「素っ気ないよシグナム~ここは、ちょっと頬を赤らめてチョコを両手でコダイに差し出して、ちょっと弱々しい声で『私の手作りチョコを……その、う……受け取ってくれないか?』って顔を逸らし気味で言うんだよ!」

 

 とロッテが態々シグナムに変身して、俺を目の前で身振り手振りで説明し出した。

 

「―――とこんな具合に。何時もお堅い硬派なシグナムが乙女な仕草をする……まさにギャップ萌え!!」

「そんな事出来るわけがないだろ!!それ以前に私に変身するな!?」

 

 案の定シグナムがキレてレヴァンテイン抜刀準備し出した。だからはやてとアリア、頷いてないで止めろ………

 

「ハッ―――まさか『私がデレるのはコダイの前だけだ!』って言いたいのっ!?」

「……………紫電――――」

「……ヴィータ、アイゼン貸して」

「へ?……えっと、ほら」

「ん、どうも――――てい」

 

 

――ゴスッ!!

 

 

 爆発寸前のシグナムと暴走中のロッテの頭にヴィータから借りたアイゼンを振り下ろした。

 

「ぐはっ!!」

「にゃぐっ!!」

 

 2人を沈めた後、アイゼンをヴィータに返した。

 

 

――スタッ

 

 

「あ、やっぱりここにいました」

「だから何で上からくる……」

 

 今度はシャマルが降りてきた。

 

「コダイ君、ハイ!バレンタインチョコ♪あ、生チョコ何で早めに食べてください!」

 

 

 

 

――ザザッ!!

 

 

 

 

 満面の笑みで差し出した綺麗に包装された今までより一回り大きい箱(リーゼ姉妹のアレは除外)に俺とシャマル以外が素早く一歩引いた。

 これは何があっても他の奴には食べさせないで置こう……

 

「生チョコって……大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ!今度は自信ありです、今食べて見てください!」

「そこまで言うならこの場で評価するか……」

 

 この場で消化すればレイやマテリアルズの標的にならないだろう……

 

「コダイ君……ホンマに食う気か?」

「何を言っているはやて、貰ったなら食べるのが普通だろ」

 

 

――ガサガサッ!ガサガサッ!

 

 

「いや、オチが見えとるっちゅーかオチとるっちゅーか……」

 

 俺の手の中の箱が独りでに動き始めた。

 

「動いたぞ……」

「生チョコですから♪」

 

 満面の笑みのシャマル……よほど自信があるんだな……

 

「んな生チョコあるかよ!!」

「それをこっちに渡せ!今すぐ処分する!」

 

 ヴィータの言う通りこれは生チョコでは無いな、動いてるし……ん?動いてるなら生で良いのか?どっちだ?

 それとシグナム、その炎纏っているレヴァンティンを引込めろ。カートリッジロードするな。

 

「2人とも酷いです!!」

「「酷いのはお前の料理だ!」」

 

 シグナムとヴィータの様子だとまだまだって所か?

 

「それでも、食べ物を捨てるのはもったいないしな……」

「そのもったいない精神を今すぐ虚数空間に捨てろおおおおお!!!!」

 

 ヴィータの叫びを無視して箱のリボンに触れる………

 

 

 

――バシュゥンッ!!!

 

 

 

 その瞬間、箱が弾かれる様に打ち上げられた。箱は空高く上がり放物線を描く。ソレが落ちて来る頃は最早全くの別物に成り果てた……

 

 

――ピシッ!!

 

 

 俺以外の全員が固まる……

 箱の側面から蜘蛛の様な足が伸び、上を突き破って現れたのは2つの目………

 

「ギィ」

 

 

――カサカサカサカサカサカサカサカサ……

 

 

 鳴き声かどうかは不明だが、俺たちをしばらく見た名状しがたい何かは、向きを変えることなくそのまま後ろに歩き、曲がり角を蟹の様に歩いて行く………

 

「なるほど……生チョコでは無く生(物)チョコと言う事か……」

「シャ、シャマル?……ななな何入れたん?」

「えっと……生チョコは鮮度が命と言いますし鮮度が良い物を……」

 

 震えているはやてに目を泳がせながら答えたシャマル……

 

「生きが良すぎるだろ――」

「ハッ!しまった、あんなヤベェ物を放って置いたら何が起こるか分かったもんじゃねぇ!!!」

 

 次に覚醒したヴィータがさっきのが逃げた道を追った。

 

「クッ……やはり無理やりにでも処分しておけば……ッ!!」

「アリア、今すぐ結界!絶対に逃がすもんか!!」

「分かった、シャマル!自分で作ったんだから責任持ちなさいよ!!」

「そんな事言われったって~!!」

 

 シグナムは悔やみながらヴィータの後を追う。それにロッテ、アリア、シャマルの順に続いた……

 あの箱の中身は一体何だったんだ?

 

「コダイく~ん!」

「ん?」

 

 駆除に向かったはずのシャマルが戻って来た……

 

「コダイ君、これは皆で食べてください」

 

 差し出されたそれはレイ達の食べる量を考慮したサイズだろう……つまり大量。

 

「では!」

 

 何も聞かず来た道を戻るシャマル………うん、箱に耳を当てても音は無い、しかし大きすぎて鞄に入らない……紙袋に入れるか。

 

「私も行ってくる、家族の不始末は家主が責任持たへんと」

 

 はやても騎士甲冑を纏い後を追った……紙袋を持ったまま。

 

「はやてちゃん達……大丈夫かな?私達も手伝った方が…」

「やめとけなのは、たとえシャマルでもバイオハザード的なあれを作れると思えないし……それに今は、目の前の事を何とかしないと……」

「目の前の事?」

 

 俺が指を指し、なのはがそれを目で追うと……

 

「フェイト!落ち着いて!もう居ないから!!」

 

 頭を抱えてしゃがみこむフェイトを必死で落ち着かせているアリシア。

 

「あ、そう言えば。子供の頃お姉ちゃんが借りて見てた映画で似たような居たっけ?………たしか遊星からの物体エッ「すずか!!それ以上言わないで!!!」えっ!?」

 

 何かを言いかけたすずかを青ざめた顔で遮るアリサ。

 お前も見たのかあの映画……あの人間の蹂躙されっぷりは見てて爽快だったな。

 

「こいつを家に帰す事と……」

 

 

 

――ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

 

 

「うしろのバイオハザードに絶対関わらない事だ。分かったか?なのは」

「………了解」

 

 爆音と爆風を背中に受けながら何事も無かった様に固まっているフェイトを運びこの場を後にした――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま……」

 

 あの後、全員をバイオハザード(命名)に遭遇し無い様に送り、ようやく自宅についた。

 何で家に帰るだけなのに張りつめて無ければいけなかったんだよ……

 

「あ、コダイさんお帰りなさ……うわぁっ!?」

 

 迎えに来てくれたエリオが突然驚いて……まさか?

 

「背中に何かついてるとか?それとも何かついてきたとかか?」

「何言ってるか分かりませんけど何もありません!!僕が驚いたのはその袋です!」

「袋?……コレか。言っておくが俺のじゃないからな?皆レイ宛だ。俺宛ては全部鞄の中な」

 

 靴を脱いで玄関を上がっていく。

 

「そう言えばレイはどうした?いつもなら飛んでくるのに」

「レイはリビングですよ。さぁこっち!」

 

 エリオが手を引かれ、リビングに連れてかれると……

 

 

「「「「ハッピーバレンタイン!!!」」」」

 

 

 レイ、サクラ、エル、アンズがクラッカーを鳴らした。

 

「……は?」

 

 なにこの誕生日みたいなノリ。

 

「えっと……アイン、説明を」

「はい、実は今日の朝から出かけていた理由ですけど……」

 

 アイン達が居なかったのはバレンタインデーのチョコをみんなで作って、いつも家事やらで忙しい俺にプレゼントしてびっくりさせようと思ったらしい。

 

「で……それがそのチョコ?」

「はい、チョコケーキです」

 

 テーブルに置かれたチョコケーキはそれと言って派手では無いが美味しそうだった。

 

「美味しそうだが、時間も時間だし冷蔵庫に仕舞ってくれ」

「はい……ところで、先ほど結界の発生がありましたけど何があったんで「何も聞くな、何も言うな、記憶の隅に永遠に封印しろ」は、はい…」

 

 こいつ等がバイオハザードと対面してみろ……一生のトラウマになるぞ。

 

「後コレ、学校の女子共がレイにって」

 

 俺は紙袋を全部テーブルに置く。

 

「すっご~い!ねぇ食べて良い!?」

「夕食が近いんだ1個づつだけだ」

「OK♪皆で食べよう!!」

 

 レイ達がチョコを漁り始める。

 

「アイン、鞄置いて準備するからお前も1つ食べていろ」

「そうだよ!アインも一緒に食べよー?」

 

 レイがアインをテーブルに引っ張って行く……俺も鞄置かないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………あれ?何か忘れているような?

 

 

――この1番おっきいのにしよう!

 

 

「……………1番大きいって………あ、シャマル……」

 

 リビングに戻った時にはもう遅かった。

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 翌日――

 

「え~っと、トキガワ君は家の子達が倒れたらしくその看病のために今日から休むそうです」

 

 朝のHRで担任が教壇に立ってその事をクラスに伝えた。

 

「はやてちゃん……もしかして」

「なのはちゃんの想像通りや……学校終わったら、コダイ君家にお見舞いと謝りに行かんと……」




アルクオン様、ミラ ランドラス様、湖月 秋博様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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