魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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久々の魔法戦。


白い鎧byコダイ

「同じ装甲―――」

 

 目の前に対峙する敵を見て呟く。

 首だけをゆっくりと動かし、俺を見つけて数秒沈黙………

 その後弾ける様に向かって来た。その進路上には逃げ遅れて泣き崩れている子供がいた。

 

「見境無しか……」

 

 流石の俺も無抵抗な子供を殺すのは気が…………引け無いな、余裕で殺せる。姿形が似てるなら中身も同じか?

 

 

――クン

 

 

 真っ直ぐ走っていた敵は子供の前でよける様に曲り、進路を戻した。

 

「どうやら中身はソックリでは無い様だな」

 

 殺す人間を判別している。だとしたら判断基準は何だ?俺の後ろにはもう誰もいない、現時点での標的は俺か……

 

「俺は誰にも恨まれるから良いとして……」

 

 目の前の死体を持ち上げて、突き出される爪を受け止める。いとも簡単に貫いた爪は目の前で止まる、間近で見ると質感は同じだった。

 死体で防げたのは一瞬だけ、死体の後ろからアイツが飛び出して左の爪を振り下ろそうとしてた、その右手には爪は無かった。

 

「取れるのかよ(それ)

 

 死体を放り上げて目隠し(ブラインド)を作り、公園の方に逃げる。防いだ死体は奴の爪で簡単に挽肉にされていた。

 爪による高速機動での戦闘……姿形はそっくりでも特性は別物のの様だな。それに――――

 

 

――ヒュオッ!!

 

 

 次に目の前に飛び込んで来たのは、回り込んだ奴の膝蹴りのモーションだ。

 両手を重ねて膝を受け止め、膝を掴んで投げ飛ばそうとするが同時に爪が振り上げられる。

 

「………ならこっちだ」

 

 

――ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 

 投げるのを止めて。キープしていたガンブレイズを至近距離で放つ。だがそれと同時に奴がのけ反りバク転数回やって離れ、至近距離で放った弾幕は不発に終わった。

 

「ずる賢さは同じ見たいだな………」

 

 しかしずいぶんと簡単に攻撃を対処してきたな。

 確証は無いが確かめるか………

 

「スローナイフ―――ディレィスペル」

 

 右手にスローナイフを3本持ち、左腕にディレイスペルで数個程キープする。

 

「まずは……」

 

 相手に目掛けてナイフを投げる。相手も迎え撃つ様にこちらに跳んで来る。

 すかさずもう3本スローナイフを同じ軌道上に前のスローナイフよりも速く投げる。

 

 

――キィン!!

 

 

 スローナイフ同士が弾かれ6本全てが地面へ突き刺さり、相手の進行を一瞬止めた。

 

「バースト」

 

 

――ズガアアアアァァァァァン!!!

 

 

 追加詠唱で爆発させる、ただこんな物で効くとは思って無い。

 

「ディレィスペル・アウト」

 

 左腕にキープした魔法を全て発動させ、煙から飛び出した来た相手に向かいスフィアを発射する。

 

 

――ヒュン!

 

 

――キィン!!

 

――キィン!!

 

 

 

――ヒュン!ヒュン!

 

 

 

 

――キキィン!!!

 

 

 相手はあるスフィアを避け、あるスフィアを切り裂き進んで行く………もうこれで確定した。

 

「ア・サンブル――スローナイフ・四重(カルテット)

 

 四重にした巨大なスローナイフを投げ飛ばす。

 

 

――シュウアッ!!!

 

 

――ズガガガガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

 

 

 そのナイフでさえも簡単に切り裂き大爆発を起こし辺りを砂煙と爆炎が包んだ。

 

「……もう見間違いとかでは無いな」

 

 キープした魔法は散弾する『ガンブレイズ』と網状のバインドを展開する『ウェブバインド』。調整して好きなタイミングで散弾、展開出来るようになったが、発動前は全く同じ形状にしている。

 ガンブレイズのスフィアは避け、ウェブバインドのスフィアは切り裂くと的確に対処している。キープした魔法は同じ環状魔法陣で統一、初見はまず対処出来ない筈―――ベアトリス式は現時点で俺しか使えないしこんな天邪鬼見たいなのも誰かが使おうとも思えない。

 ベアトリス式はキープする『ディレィスペル』を中心としたトリッキーが基本スタイル。キープしている魔法がバレたら意味が無い……直感が良いとしても良すぎる。

 もうこれは先を読まれているか腹の内を探られてるかどっちかだぞ。

 対策としたら速度か火力で上回るぐらいだ。速度に関してならイレイザーになればいいがレイが手元に無い以上これは無理。

 火力に関してはもっと無理、大火力系統はそんなに持ち合わせて無いしな………大体こっちは魔法歴6年弱だぞ?しかもどの魔法も使えないから自分が使える魔法を創ってだ………

 なのは達みたいにポンポンと簡単に出せる方がおかしいんだよ。

 

「ディレィスペルは不要だな……使えるのは………」

 

 

 

――シュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

 有効な手札をいくつか考えるが、晴れていた砂煙の中から新しく生え揃っていた右手の爪を振り上げて白い衝撃波が5本並列に並んで地面を走ってくる。

 

「また面倒くさい技を―――」

 

 当たる訳には行かないので射線上から逃げる事に………

 

 

――ギュウアッ!!!

 

 

「え?それって衝撃波?」

 

 衝撃波が5本とも列を揃えて曲がり追跡して来た。

 

「速くは無いがしつこいのがな……」

 

 いくら走っても追ってくる。障害物を挟んで相殺は出来そうに無いな、後ろの地面が抉れているし。

 

「っ……今度は前か」

 

 右腕が共鳴して前を見ると目の前で相手が爪を振りかぶっていた。

 ギリギリで下に跳び込み、距離を取りながら体勢を整える。広場に入ったのが不味かった、なら進路を限定される通路にもどるか。

 

 

――ギャリッ!!!

 

 

 後を追っていた衝撃波が地面を離れて、俺に向かって飛んで来た。

 

「スローナイフ・フォートレスシフト」

 

 距離を取った体勢のまま手を翳し、虹色の六角形の魔方陣上に展開される幾つもの連動式スローナイフを衝撃波にぶつけさせる。

 

 

 

――ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと……あ、ゴメン」

 

 爆発で吹き飛んで降りた先は切り裂かれた死体の上だった。どうやら無事道路まで飛んだ様だ。

 しかし完全に不利だな。攻め手が悉く潰される………敵の位置も右腕からの共鳴で認識して回避できる程度だ。

 こうなったらまた死体を盾に……ん?

 

「この顔、どこかで見たような…」

 

 下敷きにしていた死体を掴み上げて顔を確認する。

 

「あ、こいつ、いつか始末しようと思った犯罪者。なんでこんな所に……っ」

 

 共鳴で感知して方に死体を放り投げると、目の前で輪切りに切断された。

 

「バニシングバスター」

 

 

――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 

 それと同時に死体に向かって砲撃を放つ。

 

「ナイトフェンサー」

 

 魔力を集束して形成した十字に噴射するスフィアを高速回転させて投げ飛ばす。

 

 

――ギィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 ナイトフェンサーは目の前で止まり火花を散らした。

 

「当たって無い?何かに阻まれている。これは………紙?」

 

 それはあの時の蹴りに纏わり付いていた紙だった……

 

「邪魔したり防いだり……どういう構造しているんだ」

 

 他にも気になる点も幾つかある、俺の動きを読んでいる事と派手にやっているが無差別では無いと言う事。

 再び脈動する右腕の共鳴を頼りに奴の位置を特定する―――

 

「リリース」

 

 紙の壁と鎬を削っていたナイトフェンサーを手元に戻し、掲げると上から強い衝撃が走る。予想通り上からの奇襲か……

 ナイトフェンサーの回転数を上げて押し返すと敵が対峙するように降りてきた。動きを読まれていてもこっちも共鳴で居場所が分れば対抗は出来そうだな。

 

「後はどう当てるかだよな………」

 

 未だに掠りもしないとか結構へこむ………

 

 

 

 

 

――………ぅ

 

 

 

 

 

「何だ?」

 

 僅かに聞こえた声に目を向けるとさっき奴に切り刻まれた人だった。まだ息があったのか。

 

 

――ダッ!!

 

 

「え?………」

 

 次の瞬間敵がこっちを無視して目標を瀕死の人間に向かって走り出した………この状況で?

 ………待てよ?もしかして。

 

「行けるか?」

 

 軌道はすくい上げる様に…………

 

 

――ギィィィィィィィィィィィッ!!!

 

 

 ナイトフェンサーを相手に向かって投げ飛ばす。

 敵は避ける素振りも見せずナイトフェンサーに衝突そのまま上へと押し上げられていく。

 

「バースト」

 

 

――ズガアアアアアアァァァァァン!!!!

 

 

 追加詠唱で爆発させる。やっと初ダメージだな……

 爆発の中から落ちてくる敵はそのまま地面に叩きつけられる。

 

「どうやら先を読むのは1人限定の様だな」

 

 さっきは対象が別に行っていたからこっちの攻撃を読まれずに済んだようだ。

 

「本当に魔法戦は弱いな………今は顔を確認しないと………」

 

 

――バババババババババババババッ!!

 

 

 相手に近づこうと思った瞬間だった、崩れたと思ったら大量の白い紙となって弾け飛んだ。

 しかも巻き込む様に俺に張り付くと無理やり引かれる様に後ろに飛ばされる……

 

「この紙、拘束も出来るのか………まずい、この先は―――」

 

 紙に拘束されて投げ出された場所は先程の公園の広場だった。

 俺を囲う様に紙が等間隔に集まり奴の姿が形成される。寸分違わず本物、おまけに周囲の奴全員に共鳴している―――

 残る退路は………上。

 

「ディレィスペル――――」

 

 

――ザシュ!!

 

 

 キープした魔法を放とうとする直前、右腕を貫かれる。

 貫かれた腕には奴の白い爪が5本とも貫通していた。

 

「撃ち出されるのかよ……(それ)

 

 

 それと同時に囲んでいた奴らが一斉に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――バギギギギギギギッ!!!

 

 

 

「キャ!?」

「うゆ!?」

 

 

 

「………気持ち悪い」

 

 数体で切り刻まれて、防ごうとするなら1体が邪魔して残りが攻撃を繰り返して最終的にはジャグリングされて、投げ飛ばされた先の樹を薙ぎ倒してようやく止まった。

 死ぬのは免れたが……と言うかさっきの聞き覚えのある悲鳴は―――

 

「コダイ!」

 

 やっぱりレイだったか……隣にシオンもいる。

 

「どうしよう!結界で公園から出られなくなってナナも見つからないの!」

 

 まだ見つかって無いのか。

 

 

――ガサガサッ!!

 

 

 近くの茂みが動く音に全員が視線を向ける。

 

 

――ガサガサッ!!

 

 

 茂みから出てきたのは返り血を浴びた白い甲冑だった。

 動きを読める以上長期戦は不利だ。周囲に俺以外に先読みの対象が逸れている今なら。

 一瞬で重ねられる砲撃の零距離発射で………

 

 

――グシャッ!!!

 

 

「コダイ!!!」

「ベアトリスさん!!」

 

 爪で両腕刺されて地面に張り付けられた――――って2人に眼中無しか、完全に俺狙いか……

 

 

――トン……

 

 

「あったな。先読みされても当てる方法………」

 

 自由にできる右足を上にいる相手に触れる、蹴らずにただ押し付ける……

 

「………ア・サンブル」

 

 両腕にキープして重ねたバニシングバスター・二重(デュオ)を右足で1つにする。

 読まれても………対処出来なければ無意味だろ?

 

「バニシングバスター・四重(カルテット)

 

 

――ズガガガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 足を押し付けた状態からの零距離砲撃が相手を上空へ打ち上げる。

 

「やっぱりベアトリス式はトリッキーだな……まさかこんな事も出来るとは」

 

 けどやっぱり気持ち悪い……まだ目が回る………ジャグリングされ過ぎた。

 何とか一発当てたけど代償がキツイな。全身と刺された両腕の外傷、それに砲撃を撃った右脚は……少し休めば平気だろ。

 

 

――ドシャッ!

 

 

 砲撃で上へ打ち上げて奴がようやく落ちて来た。ずいぶん派手に飛んだな。

 

「………よし、右脚が少し回復した」

「いや……右脚よりもっと気に掛けるべき所があるのでは……」

 

 何か言っているシオンを無視して落ちて来た奴に近づく……

 

「全身を詳しく見た事無かったが、思ったより華奢だな」

 

 確か、通り魔の犯人は爪痕から子供位と仮定していたな。

 まあ、凶器の爪を振り回してたし完全現行犯だなこれ……

 

「ん?……何だこの背中にあるのは」

 

 うつ伏せに倒れたままの奴の背中には桃色の宝石にその周囲に血管の様な金色の管が伸びていた。

 

 

――ズクン!!

 

 

 今までで1番強い共鳴に脈動で右腕が痛くなる。

 

「まさかこれは―――」

 

 桃色の宝石、金色の管、紙……そして右腕の共鳴。全てが一致した………

 

「これに共鳴したのか……レイ、さっきナナが如何とか言ってたな」

「うん!ナナがどこにも居なくなったの!!早く見つけないと!」

「………その必要はない」

「え?」

 

 足元から金属音が聞こえると、奴がゆっくりと起き上がってきた。

 俺もゆっくりと後ろに下がる。

 

「もう………見つけた」

 

 立ち上がった奴の装甲は所々罅が入っており、仮面が1番深い。

 

 

――ピキピキ………パリンッ

 

 

 罅が徐々に広がり、仮面が割れ落ちた。

 

「え?………え?」

 

 レイは呆然と奴の仮面の下の顔を見ていた。

 仮面の下に隠された瞳は青紫(ヴァイオレット)、肩口で切り揃えられた銀髪は日の光を浴びて紫の色を帯び。あどけない少女の顔立ち――――

 その顔は此処に居る全員が知っている顔だった……

 

 

 

 

 

 

「何で……………何でナナがここにいるの!!!」

 

 シオンの叫びが周囲を凍らせた。




ミラ ランドラス様、イリーガルオメガモン様、湖月 秋博様、アルクオン様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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