魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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もう少しで転移前まで終わりそうです。


再開は意外にも速くbyコダイ

「うゆ~……」

「自業自得だ」

 

 アリサの説教とウメボシのダメージを未だに引きずっているレイがベッドでうつ伏せになり頭を押さえて唸っている。

 ウメボシ後に俺達も説教に参加したからな。その後レイを引き摺って宛がわれた部屋に戻った。

 マテリアル達はアリサとすずかの部屋に護衛としている。

 明日の予定は、動きが無ければアリサとすずかに言われた勉強を見ておくか………

 

「あ~!!」

「今度は何だ……」

 

 突然レイが大声を上げて立ち上がる。

 

「あれ!コダイあれ!!」

 

 レイが俺の後ろを指す、振り向くとテレビでニュースをやっていた。

 

「通り魔事件?この現場は俺達とレイがすれ違った公園の近くか………」

 

 時間帯は夜。つまり俺たちがエイミィから連絡を受けて公園を後にした後か。

 負傷者は十数人、全員鋭利な刃物で全身を切り裂かれて重傷。目撃者はいない……現場の状況が映し出される、道路等に鋭い爪痕がいくつもつけられていた。

 あの爪痕………もしかして犬型の生体ガジェットか?誰にも見られる事無く十数人を切り裂くなんて芸当、俺なら余裕だが普通の奴に出来るかどうか……調べてみるか。

 

「レイ明日公園行くぞ………」

 

 俺の後追ったか、それとも別の何かか……

 転生者達は黙っていても勝手にやってくるがこの件はこっちから動かないとな。

 そして翌日、昨晩のニュースの事を『2つ目の事件の調査』と食堂にいたアリサ達に伝えた。

 

「と言う事でサクラ達は引き続き2人の護衛」

「分かりました」

「それとレイ、こっちに来い」

「な~に?」

「お前が何時迷子になるか分から無いからな、これがあれば迷わずに済むから着けてやるから来い」

「わ~コダイありがとう!」

 

 コートから取り出した物をレイに取り着ける。

 

「良し準備完了だ」

「レッツゴ~♪」

 

 俺の手には犬の散歩で使われる伸縮リード、その先はレイに着けたチョーカーに付けられている、これで迷子になっても探せる。

 

「待てこの野郎!!!」

 

――ブォン!!

 

 後ろの殺気に気づきそこから離れると、アリサが拳を振り抜いていた。

 

「何だよいきなり」

「『何だよ』じゃないわよ!何してんのよアンタは!昨日アタシが止めた事を躊躇無く実行するなこの犯罪者!!唯でさえ予備軍スレスレなのに……捕まるわよマジで!!」

 

 捕まったらその他諸々の罪状でほぼ死刑確定だから遠慮する。と言うかよく一息で言えたな今の……

 

「これのどこが危険なんだ?」

「今のレイをよく見なさい!答え出てるから!」

 

 今のレイ?………

 

「うゆ?」

 

 今のレイを見て答えを…………

 

「あ、分かったこれだな」

 

 

――ピコピコ♪

 

 

「ワンワン♪」

 

 レイに髪の色と同じ黒い犬の耳と尻尾を付ける。

 

「犬耳を忘れていた、こうすればどう見ても犬だな。さすが犬好き」

「っ――――――」

 

 

――ゴウッ!!!

 

 

 今度は椅子が振るわれた……

 

「アンタ馬ッ鹿じゃないの?!何処の世界に子供にこんなもの付ける奴がいるのよ!」

「桃子、忍、リンディ、プレシア」

「っ………それはアンタが率先してるからでしょ!!」

 

 俺を睨むアリサだが………

 

「……別に説教するのは良いが、レイを抱き締めている状態では説得力の欠片も無いぞ?」

「うっさい!」

 

 何故か俺を椅子で殴った後に小型犬の様に抱きかかえていた。

 もしかして犬耳レイを見て固まったのはあれか?揺らいだのか?

 その後騒ぎを聞きつけたなのは達がやって来て首輪を全力て取り上げられて、はやてにより犬耳レイの撮影会が行われた………

 取り敢えず犬耳レイの画像データを貰ってからレイだけを連れて件の公園に向かった。

 

「さすがに昨日の今日だと人が少ないな……」

 

 公園に足を踏み入れると人の気配が少ないのが分る。

 

「人いないね~」

 

 

――ピコピコ♪

 

 

 未だに犬耳を外してないレイが首を傾げた。何故かこれだけは許可が下りた。

 

「動き回るなら公園内までだ」

「はーい♪」

 

 取り敢えず中を探すか。局員が邪魔したら『DEATH NOTE』で黙らせるだけだ。

 

「この傷痕だな……」

 

 近く樹にあった爪痕を指でなぞる……

 

「凶器はやはり鋭い爪……この痕からすると大体人間の子供以上のサイズだな」

 

 犬型と人型とも違う新種か?となると転生者絡みか……余程暇人なんだな転生者。

 

「「きゃあああああああああああああああああああああ!!!」」

 

 は?……今の悲鳴はレイ?でも2つ聞こえたぞ……あそこの茂みか。

 

「どうした、野犬に絡まれたの…………か?」

 

 

――ガタガタガタガタ……

 

 

 犬耳がペタンと下りたレイとレイと同年代ぐらいの白い髪の子供が抱き合って震えている、その視線の先には野良犬。しかも息が荒い。

 野良犬は吠えながら飛び掛かって………………あ。

 

「ウォォォォォォン!!」

「子供盛るなこのロリコンが」

 

 

――ドコォッ!!!

 

 

 怪我をしない程度に蹴り飛ばすと野良犬は一目散に逃げ去っていた………

 

「相手見て襲えよ……」

 

 どうやらレイが犬耳を付けているからメスの犬と勘違いしたようだな……というかあの犬ドストレート過ぎるだろ。

 

「こわかったよ~!!」

「うえ~ん!!」

 

 襲われかけていた2人が抱き着いてきた。

 

「はいはい………それよりも誰だ」

「ふぇ?」

 

 とりあえず俺は白い髪の子供を指した。

 

「ナナだよコダイ!」

「ナナ?」

 

 レイが代わりに答えた。

 

「うん!昨日友達になった!」

「レイちゃんと友達!」

「「ね~♪」」

 

 あ~昨日迷子の時に遊んでいた奴か。

 

 

――ガサッ!!

 

 

 また茂みから……今度は何だ。

 

「ナナ、ここにいたんだ」

「あ、シオンおねーちゃん」

 

 向こう側の茂みからやって来たのはここからかなり遠い市立高校の制服を着たナナにシオンと呼ばれる女だった。ナナは真っ先にシオンに抱き着いていた。

 

「あのね、この人が怖い犬から助けてくれたの」

「ありがとうございます、ナナを助けてくれて」

「気にするな、こっちも借りがあるしな」

「ナナのおねーちゃんこんにちは!」

「レイちゃん?と言う事は………って貴女はまさかベアトリスさん?!」

 

 シオンは俺を見て驚いていた……

 

「あ、知ってた?」

「それはもう……ミッドでは有名人の1人ですから……」

 

 シオンは学生鞄から何かを取り出して見せる。それは以前アリサ達が買ったあの雑誌だった。

 

「まさかレイちゃんがベアトリスさんの娘さんだったなんて」

「え?何でそうなる……って雑誌のコメント」

 

 そう言えば俺とレイが母子とか思われてたな。

 

「うわ~!レイちゃんのお母さんって若くて綺麗だね~」

「えへへ~♪」

 

 

――ピコピコ♪

 

 

 照れるな否定しろ。

 

「違うだろ。そもそもこっちは15だ………色々説明を省くがこっちの性別は男でレイはデバイスだ」

「―――――えっ?!嘘だよね?!だって雑誌には子連れとか未亡人とか……」

「ああ、それな。性別は一々言うのも面倒くさいし黙ってれば面白そうだから誰にも言って無いだけだ」

「読者が聞いたらヒンシュクものですよその理由………」

 

 何か残念そうにこっちを見てくるシオン。

 

「じー……」

「うゆ?」

 

 そう言えば子供2人が静かだと思いそこに目を向けるとナナがレイを……正確にはレイに着いてる犬耳を見ていた。

 

「レイちゃん……ワンちゃんなったの?」

「うん!コレ、コダイから貰ったの。可愛いでしょ?」

 

――ピコピコ♪

 

「可愛い~♪……いいなぁ~」

 

 レイの耳を羨ましそうに指を咥えているナナ。というかつけ耳が動くのはスルー?

 

「犬じゃないが猫耳ならあるが、やるか?」

「ふぇ!?良いんですか?」

「昨日世話になったし、礼だ」

「ありがとうございます、レイちゃんのお母さん!」

「違うから話聞いてたか?」

「?」

 

 あ、これは聞いて無いな……レイと同等の馬鹿か……

 コートの中からナナと同じ髪の色の猫耳を取り出してナナに取り付けた。

 

「にゃ~ん♪」

「ナナが猫さんになった~♪」

 

 ナナに猫耳を付けると手を猫の形にして猫の鳴きまねをした。

 

「セットで尻尾もあるしついでにつけてやる」

「何でそんな物持っているんですか?」

「女装はオシャレだ」

「それが女性と勘違いされる原因では?」

 

 シオンの指摘は良く言われるが。あくまで女装(オシャレ)だ。

 

 

 

「わ~い♪」

 

「まてまて~♪」

 

 尻尾を付け終えると。犬耳を付けているレイが猫耳を付けたナナを追いかけ回して遊び始めた。

 その様子をシオンと2人で近くのベンチに座りそれを見ていた。

 

 

――ズベシャッ!!

 

 

「うぎゅっ!?」

「レイちゃん?!」

 

 あ、レイが盛大にヘッドスライディング風に転んだ。

 

「うゆ~………」

「レイちゃん大丈夫!?痛いの痛いの~………飛んでけ~!!!」

 

 慌てて駆け寄ったナナが手をレイの頭に乗せて上へ勢い良く振り上げた。

 

「……うゆ?治った!」

「やったぁ~!!」

 

 

 

 

「天使が2人いる」

「お前まで言うか」

「何ですかあれ?もしかしてナナの生き別れの双子とか……」

「見た目に相違点あり過ぎるだろうが………それにさっきデバイスと言ったはずだ」

 

 元・ロストロギアだがな。

 

「デバイス?私にはどっからどう見ても普通の……よりは胸が大きい方だけど普通の女の子にしか……人型のデバイスは聞いた事ありますけど」

「疑いたくもなるが事実だ。いつの間にかこうなっていた……」

 

 ロストロギアが右腕に着いたと思ったらデバイスになり更に馬鹿丸出しの説明で自ら肉体を得たとか誰が信じるだろうか……クイントとティーダにもこの事を話したらネタと勘違いされた。

 

「レイもレイだがナナもナナだな。あれ本当に貴様の妹か?似てないぞ欠片も……」

「そりゃそうですよ。数日前に出会ったばかりですから」

「それは赤の他人だろ……」

 

 そんな事を軽く話すシオン……

 

「今頃親は何をしているんだか……」

「親……と言うと?ナナの方か?」

「ええ……実は少しおかしい事があって」

 

 今までの明るい感じから真剣な顔になったシオン、どうやらまた巻き込まれた感じか?

 

「ナナは数日前の雨の日にずぶ濡れのボロボロで泣いているのを見つけたんです。家の両親は仕事漬けで全く帰ってこないし特に問題は無かったんですけど……」

「情が移って拾ったのか……」

「そんな犬猫みたいに……まあ放っておけなかったのは事実ですし……」

 

 照れ臭そうに笑うシオンだがどこか嬉しそうだ。

 

「あの子の身元がさっぱり分からないんです。ナナも自分の名前しか知らないと言ってます。そこでお願いがあります……」

「それで管理局の俺に捜索をって?………数日も経つのに親からの連絡も無し、身分を証明出来る物も無しか。捜索願いも出て無い様だし……別に良いだろ?連絡もしてないし、そっちも今の現状に満足してるようだし。状況から捨てられたか元々孤児だった場合が多いぞ?」

「その時は引き取ります。本当の家族として」

 

 はっきり言ったな………

 

「と言うか何でそこまで………」

「………ナナといる時間が本当に楽しいからです」

 

 シオンが向こうでレイと遊んでいるナナを見る。

 

「学校帰りにナナと今日何して遊んでいたのかを話したりとか。一緒にご飯食べたりとか。体調崩した時に心配そうに傍にいてくれたりとか。そんな時間をずっと過ごしたいんです」

「………何と言うか。ナナ以前にそっちの家庭の事情が深刻そうだな」

「言いましたよね両親が仕事漬けって……その所為か殆ど会話が無いんですよ」

 

 ……この場合親の影すらない俺はどう答えれば良い?

 そう言えばなのはも似た様な事があったと言ってたよな。確かあの時何すれば良かったって言ってたっけ?確か………

 

「小さい頃からそうなんです。学校の話をしようとしたら『忙しい』と怒られて。学校行事については家のボードに書けって――忙しいのは分るけど、もうちょっと私が居る事分って欲しいな~って」

 

 ………駄目だ。正面から話し合うと思い出したけどこれは根本的にアウトだ。

 この際だ、こいつの疑問をハッキリさせよう。遅かれ早かれナナの事は親に知れるんだしその間に。

 

「………そこまで言うのなら個人的に探してみるか」

 

 顔と名前が分かってるし明日には見つかるだろう。本人すら分からない物を管理局に預けても面倒くさい事になるからな。

 

「もう少し情報が欲しいな。何か無いか?」

「何かと言われましたら1つだけ」

 

 シオンが鞄の中から1冊のハードカバーの本を差し出した。

 

「ナナが唯一持っていた物です、なんだか分かりますか?」

「……見た所表紙が派手なだけの様だな」

 

 白い皮表紙に桃色の宝石が埋め込まれて血管の様に金色の管が伸びている。

 パラパラとページを捲って見てもただの白紙、特に意味は無い様だ……

 

「これで分かる事は殆ど無いな………」

 

 ロストロギアみたいな感じはしないし、魔力も感じないし………これと似たような本は見た事が無い。

 

「…………ん?」

 

 何だ?……この宝石に触れた時に感じる右腕の違和感は。向こうの遊具で遊んでいるレイを見ても変わった様子は無い……気のせいか。

 

「とにかくコッチの情報網で探してみる」

「ありがとうございます」

 

 本をシオンの返す。

 

 

 

 

「コダイ~♪」

「シオンおねーちゃーん♪」

 

 

 

 さっきまで遊具で遊んでいたレイが俺に、ナナがシオンに抱き着いてきた。

 

「ナナといっぱい遊んだよ!!」

「楽しかった~♪」

 

 砂場で遊んでいたのか盛大に砂だらけの2人……はしゃぎ過ぎだろ。

 

「汗かいたね~帰ってお風呂入ろうか」

「うん!」

 

 気づけばもう昼過ぎ、俺達も帰った方が良いか。元々ここの近くの通り魔事件について調べるだけの筈だったし。

 

「コダイ!私達も一緒にお風呂入ろ!」

「まだ1人で頭洗えないしなレイは」

「うゆ~……」

 

 レイがまだ付けている犬耳をペタンと垂らした。

 

「レイちゃんこっども~♪」

「む~!!ナナだって子供じゃん!」

「ふふ~ん♪私は1人で頭洗えるもん♪」

「ぶ~!!」

 

 鼻を鳴らして胸を張るナナに脹れるレイ。

 

「でもナナはシャンプーハット付けないと洗えないよね?」

「シオンおねーちゃん!!それを言っちゃダメー!!」

 

 シオンの口を塞ぎたいのか足元でピョンピョン飛び跳ねるナナ。

 

「ナナもこっども~♪」

「うぅ~……」

 

 今度はナナが猫耳を垂らした。

 

「今度たくさんお友達紹介するからみんなで遊ぼう!大丈夫だよねコダイ?」

「仕事あるから無理だろう……」

「「えぇ~!?」」

 

 レイとナナが涙目の上目づかいでこっちを見てくる。

 

「別にもう会えない訳じゃないから終わったらで良いだろ」

「「あ、そっか」」

 

 そこまで考えて無かったか。

 

「約束したし、早く帰って綺麗にしちゃおう!」

「うん!レイちゃん、レイちゃんのお母さんまたね~」

 

 シオンと手を繋ぎもう片方の手でこっちに大きく手を振った。

 

「またね~♪」

 

 レイも同じく手を振り、お互い見えなくなるまでやっていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後……

 

「ぐしゅ……まけないもん……ひっく……まけないもん……」

 

 風呂でシャンプーが目に染みて泣きながらも1人で頭を洗うのに奮闘するレイが居た。




◇ソラト◇様、アルクオン様、桜日紅葉雪様、汐音様、零崎 式様、ミラ ランドラス様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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