魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~   作:メガネ

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デート・シグナム編

 朝早くシグナムから連絡が来て、指定した時間と場所に来てみると―――

 

「フフフフフ………待っていたぞ」

 

 バリアジャケットを展開して仁王立ちのシグナムが………

 うん、何となく分ってた。だって俺以外入れない結界張ってたし。

 

「用事を思い出した「待て!!」いきなりバインドか……」

「何故逃げる……」

 

 逃げたくもなる………後ろからレヴァンテインを突きつけられて、即戦闘態勢の奴をさわやかに迎えられるか。

 

「よし分ったまず剣を下ろせ。話はそれからだ馬鹿」

「何を言っている……折角の……デート……なのだから」

 

 そんなか細い声に後ろ向きのままシグナムを見たが。見事に顔を赤くして俯き気味でモジモジしている………顔と行動が欠片も一致して無い―――は?デート?

 

「シグナム………デートの意味分るか?」

「当たり前だ!シャマルが買う雑誌で調べた所によると女の一世一代の決闘だと―――」

「……何と言うか馬鹿とか言う以前に言っておく――1度でいいからシャマルに脳を診て貰えこの戦闘狂(バトルジャンキー)が」

 

 違う意味で気合入り過ぎ。

 俺も人の事言えないんだけど………つい最近知ったし。

 

「何っ!?違うのか!?」

「違うのが分ったらその甲冑とバインドを解いてくれ」

「す、すまない!」

 

 拘束されてたバインドが解かれる。それと同時に騎士甲冑と結界も解いたようだ。

 

「……ではトキガワ、デートと言う物は一体何だ?」

「俺も詳しくは知らないが………はやてが言うには2人でどっか出かけたり遊びに行ったり―――とらしいな。詳しい事は知らない」

「そうか………生憎私は剣しか能が無い女だ、こう言うのに関してはどうして良いか……」

「………でもシャマルの雑誌をを見て覚えたんだろ?他に何か載ってただろ」

「他に…………確か此処がオススメとレストランや娯楽施設などが体験談と共に載っていた」

「それでどうやって決闘が結びつくって………」

 

 脳みそが筋肉―――いや、むしろ脳みそが魔力か?

 

「……ここもその雑誌に?」

「ああ、確かオススメの場所だと大きく載っていた」

「だったら此処に居る男女2人組を参考にすればいいだろ」

「成程、では早速――――なぁっ?!」

 

 そうシグナムが気合を入れ直して周り見回した瞬間、変な声を出して固まった………

 その視線の先を追うと………

 

 

 男の腕に絡まる様に抱き付き、頭を撫でられて嬉しそうにしている女。

 

 ベンチで男に膝枕をして幸せそうに男の頭を撫でている女。

 

 

「はやての言い分からするとこれらの男女がデート中らしいが…………」

「こっ―――――こんな事出来るか!!」

 

 そう叫ぶシグナムだがそれらに視線を逸らすことは一切ない。

 

「私が………あんな風にトキガワに甘える………無理だ!恥ずかしさで死んでしまう!!」

 

 それ以前にそんな事出来るような奴とは思って無いし…………あ。

 

「……………何なら俺が女装をして、してやろうか?」

 

 女装はオシャレだし……

 

「なん…………だと」

 

 あ……シグナムが固まった。

 

「(トキガワが甘える?可愛らしい服を着てさっきの女達の様に……腕に抱きついたり膝枕とかして……)―――いいな、ありだ……」

 

 静かに拳を握りしめるシグナム。

 なんか悦に入って顔が危険なので後ろから頭を強めに殴る事にした。

 

――ゴンッ!!

 

「ハッ!………私は何を!?」

 

 殴って治るって闇の書関連って本当にテレビだよな……

 

「目が覚めたか?何か凄い顔してたぞ」

「すまない………その件に関してはやめて置く。折角お前も何とか男に見えるし態々着替える必要は無いだろ」

 

 別に女装はオシャレだし……

 

「……他に雑誌に載ってたシグナムが行きたい場所は無いのか?」

「あ………あるにはあるがその――――」

「どうした?」

 

 シグナムが急に言葉を詰まらせる。

 まさかまたあんな男女を見たのかと周りを見るが対象が多すぎて絞り込めなかった………

 

「―――――――ええい!こんなのは私では無い!トキガワ!!!」

 

 すると突然シグナムに肩を掴まれて真正面に向かされる。

 

 

 

 

「わ…………私と一緒にプリクラで『2ショット』と言うものをしてくれ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ~……まさかシグナムがプリクラを撮りたいと言うとは……」

「ざ、雑誌に載っていたんだ。互いの仲を深め合うには共通する物を所持すればいいと……」

「なるほどね~………所でシグナム」

「な、何だ?!」

「………………いつまで隅にいるつもりだ?」

 

 現在いる場所は、近くのゲームセンターの一角にあるプリクラコーナーだった。

 あのシグナムの声が辺りに響き周囲からの視線が痛いの何の……それを自覚したシグナムが真っ赤になって硬直。

 取り敢えず希望通りの場所にシグナムを引っ張って来たは良いが現在空いているプリクラ機の隅で悶えている……

 あ、撮るから顔出しておくか。

 

「ほら、設定終わったぞ?」

「わ……分った」

 

 やっと震えが止まって近づいて来た………背後にピッタリと。

 

「何で背後?それに証明書の写真で無いから直立不動はさすがに……」

「では一体どうすれば………」

「いや、それこそ見本載って無かったの?」

「同じポーズを取る……だな」

「それなら無難に――――」

 

 

――カシャッ!!

 

 

 カウント0と共にシャッター音が鳴る。

 1枚目はお互いにピースしているだけだった。

 

「お、この後ろにマットがある。コレを利用してパターンを変えるのか」

「そんなものまで………ん?トキガワ、次は上から撮る様だ」

「上か………折角マットあるし座ってみるか?」

「うむ……ではトキガワ、ポーズはこう頼む―――」

「え?別に良いけど」

 

 

――カシャッ!!

 

 

 2枚目はマットを使い。シグナムが俺に膝枕している所。

 

「恥ずかしいんじゃ無かったの?」

「いっ………一瞬だから問題ない!」

「そうなんだ………次は正面か」

「む……ではトキガワ、今度は後ろからで―――」

「―――は?」

 

 

――カシャッ!!

 

 

 3枚目はマットに腰かけたシグナムを後ろから抱き締める形……これもシグナムの要望。

 

「………何か要求が凄くなって無いか?」

「ききききききき気のせいだ!!!」

「説得力無いんだけど」

 

 撮る度に接触部分が増えている気がする……次は全身か?

 

「最後はだな………正面を向いて目を瞑ってくれ」

「それだけで良いのか?そっちに任せるけどさ……」

 

 言われた通りカメラに向かって目を瞑る。

 

「…………………よし」

 

 そんなシグナムの小さな声が聞こえて真横まで近づいてくる。

 ………何か深呼吸してるし………ってアレ?コレ近づいて無い?

 

 

――カシャッ!!

 

 

「あ………」

 

 最後のシャッター音と共に聞こえたのは間の抜けたシグナムの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後の4枚目………何をしたかったんだ?」

 

 取り終わった後に機械が写真に自由に装飾出来ると流れたので適当に飾る事にした。

 それで4枚目、俺は目を瞑っていたから分らなかったがただ顔が赤いシグナムが俺に顔を近づけているだけにしか見えなかった。

 

「そ、そうだな~(烈火の将たる私がプリクラでのデートの王道のキ……キスだけで遅れを取るとは…………やはりデートは一世一代の決闘だな―――)」

 

 露骨に目を逸らすシグナム。2つに分けたプリクラは大切そうに握りしめているが……

 ……このままシグナムに任せたら見て無いが雑誌に載っている碌でも無い事を実践しそうだな……この場合はこっちから引っ張るか。

 

「折角だ、プリクラ以外にもやってみるか?」

「そ、そうだな!だが私はこういう所は初めてだから良く知らないぞ?」

「心配するな、俺もよく知らない」

 

 ゲームセンターでやったのはヴィータと店の前にあるUFOキャッチャー位だしな中に入った事は1度も無い………初めてでも出来るゲームは――あ、確かあれは………

 

「あれにするか、丁度空いているし」

「トキガワ………あれは何だ?」

「パンチングマシンと言ってパンチ力を計るゲームだ。1回やって見る」

 

 金を入れて難易度を最高に設定して始める。

 

「グローブを付けて、この起き上がって来た物を思いっ切り―――」

 

 

――ドガン!!!

 

 

「殴る。計3回殴って平均を計るんだ……また来た」

 

 

――ドゴン!!!

 

 

――ドゴシャッ!!!!

 

 

「こんな感じだ。最高値があるから正確には分らないが……最後に結果がでる」

 

グローブをシグナムに渡す。結果はほぼパーフェクト。

 

「つまりは自分の力の高さを決める勝負か――面白い」

「いや別に勝負と言う訳では……昔は力を誇示するために作られたって聞くが―――って聞いて無いな戦闘狂(バトルジャンキー)

 

 シグナムがマシーンの前に立ち拳を構える。

 

「ふぅ―――ハァッ!!」

 

――ゴシャッ!!!!!

 

 

 短く息を整え、鋭い拳を放つ。

 

「む、トキガワと同じか……」

「シグナム、限界があるからその辺で威力を抑えろ、壊れる」

「問題無い、これ位で壊れるほど柔な鍛え方は………していない!!」

 

 いや、そうじゃなくて……って聞いて無い。

 

――ドコシャッ!!!!

 

 は?さらに威力上げたよ。

 

「次で最高値を出せば私の勝ちだな―――」

 

 凄い良い笑顔だよコイツ。壊れなったから問題は――おいシグたんミ☆何その右腕の紫の魔力光は?強化?強化してるのか?

 

「おい馬鹿こんな所で使う馬鹿が「ハァァァァァァァッ!!!」居たよ目の前に……」

 

 

――グシャッ!!!!

 

 

 今までで一番重く、鋭い拳が放たれた…………

 

 

――バキャッ!!!!

 

 

「「え?」」

 

 それと予想通りと言うか。マシーンの殴る所が根元からバッキリと折れた…………見た所古かったし。

 

「トキガワこの場合は?」

「取り敢えず逃げた方が良いな」

 

 お互いに頷き合い、一目散にその場から全速力で逃げた………金は置いといて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暫くあそこいけないな………」

 

 取り敢えず走って結構離れた公園で一息を付く事にした。

 

「す、すまない」

 

 ベンチで座って、ひどく落ち込んでいるシグナムがいた。

 

「いや、あそこには特に行く理由は無いし……」

「しかしだな……」

「いいから……」

「う……分った(プリクラの時は目的は完遂出来ず更にトキガワにも迷惑を掛けてしまった……)」

 

 納得行って無さそうだな………よし。

 

「今日はありがとう。シグナム」

「は?………」

「プリクラやあんな所に入ったのは初めてだし………中々面白かった」

「そ、そうか!それは良かった!」

 

 あ、顔が一気に明るくなった。

 

「そうそう、だから気にするな」

 

 

――ワシワシ!

 

 

 そう言ってシグナムの頭を撫でる。

 ちょうどベンチに座っているシグナムは良い位置に撫でやすい。

 

「なっ―――何をする?!」

「ん?何か家の末っ子みたいだったからつい」

「子供扱いするな!!」

「昔は『お母さん』って言ってたくせに?」

「っ~!!その事は忘れろと言ったはずだ!!」

「忘れる?そんな面白い事を?嫌だね、末代まで語らせる」

「本当に性格悪いなお前は!?」

 

 と言いつつ手を払おうともしないシグナム………折角なので満足行くまで頭を撫で―――もとい子ども扱いする事にした。

 

 

 

~おまけ~

 

 シグナム帰宅後。

 

「まあ……トキガワが楽しめたと言ったら概ね成功だな。それに―――」

 

 シグナムは自分の頭を触る。そこは先程コダイが触れていた所だった……

 そして本人は気づいて無いがその顔は嬉しそうに頬を緩め静かに笑っていた――――

 

 

 

「なぁはやて……何でシグナムは自分の頭を触って笑ってんだ?」

「ヴィータそれはあれやな。コダイ君のお母さんが発動したんや………」

「はやてちゃん、それって一体何ですか?」

「それはなリイン、それを受けた相手はコダイ君の事をもっとも~っと好きになるって事や!」

「リインも受けたいです~!とーさまの事もっともっとも~っと好きになりたいです~!」

 

 そんなシグナムに気づいているのは隅で隠れている八神家女性陣と………

 

 

「ワフ………(皆……頑張ってくれ。トキガワ……生きてくれ)」

 

 その更に隅で家族を見守っている1匹の小狼だった。




なんか久しぶりにコダイの『お母さん』が発動された気がする……

『  』様、鍛冶様、頭翅様、桜日紅葉雪様、つらら@ゆき様、不屈の心様、感想を有難う御座います。

~次回もお楽しみにしてください~

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