魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
今日はアリシアと待ち合わせしているんだが……時間5分前になっても影すら見えない。
アリシアはエル同様に遊びに全力を駆使する奴だから遅れるって事は……
「コ~!!」
「は?」
アリシアの声が聞こえた……が見える範囲にはいない。
だがこの近くにいるのは確実、僅かにアリシアの魔力がある………
「ダ~!!」
その瞬間に後ろを振り向くと、何故か飛びかかる………いや飛びかかった体勢のアリシアが現れた。
「イ~♪」
――ぎゅ~!!!
「ん~♪」
そしていつもの様に抱き着かれた。そして何故か頬擦りされる…………
「離れろ」
「ぶー」
アリシアを押して無理やり引き剥がす。
「どっから湧いた」
「15分前にスタンバってました!!!」
元気よくサムズアップで返してくるアリシアだった。
………認識阻害の結界使った手の込んだイタズラだな……
「と言うか何時にも増してテンション高いな……」
「いや~元気が取り柄だし~」
頭を掻いて照れ臭そうに笑うアリシアだけど褒めてないからな?
「実は今日が楽しみすぎてあんまり寝れなかったりして」
「小学生かよ………」
そのテンションは徹夜明けのものか……
「それよりも!コダイこれ見てこれ!」
そう言って目の前にズイっと差し出されたのは遊園地のチケットだった。
「あのねリンディ母様にコレを貰ったの。1日フリーパスも貰ったから1日中遊べるよ」
「泊りがけで遊ぶきか」
「それも捨てがたいけど~………泊まるって事になったらリンディ母様が爆弾落としかねないし。フェイトの二の舞いはゴメンだし」
「おい俺が帰った後何があった」
あの女の事だから碌でも無い事だと思うけど………と言うかアリシアの表情が暗くなりが小さく『ゴメンフェイト』とか呟いているし。
「……取り敢えず行くなら早く行くぞ」
考えてもどうせ被害が来るのはアリシアのみだからこの事はどうでも良いか。
「うん!そうだね。レッツゴー!!」
アリシアの表情が一変して明るく戻り。俺の腕を絡めてそのまま引っ張って行く……
「お―――――――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
チケットを受け付けに渡しゲートを潜った瞬間、アリシアが思いっきり叫んだ……因みに周りが色々と騒がしいので周りには聞こえなかったようだ。
「ついに来たぞ遊園地~!!!」
そんなテンションが振り切っているアリシアから微妙に距離を離して傍観者のフリをした……
「ねぇねぇコダイ!どれから乗る?!」
「1つ聞いていい?何でそんなにテンション高いの?と言うかそれを見てると家の水色の馬鹿と重なるんだけど」
確かにエルのオリジナルのオリジナルだけど
「だって生まれて初めての遊園地だもん、どれにするか迷うじゃん!」
「そう言うなら俺も生まれて初めてだぞ」
「そうなの?でも行かなそうなイメージだよね。ん~………じゃあ定番のアトラクション周ろうよ」
「定番ね…………」
受付で貰ったパンフレットを見るがどれが定番なのか良く分らない………
「定番と言ったらジェットコースターだよね!」
「ジェットコースター?………あのレールの上を走る奴か」
俺が指してのは遊園地でかなり目立っている設備の1つで列車がレールを下る度に悲鳴が響いている。
「えっと………巨大ループに4回転半、さらに垂直落下等々………物凄い怖いみたいだよ」
「アレだけの悲鳴が響いているしな」
パンフレットに書かれているジェットコースターの説明を読み上げるアリシア。
確かに速そうだけど……普段からこの速度以上で飛び回る魔導師達には意味無い様な………
「早速行こうよ!速くしないと行列になっちゃう!」
ジェットコースターに向かって走るアリシアを追う。
列はもう1巡したばかりでこのまま並べば次位には乗れそう……………だった。
「アリシア―――ここは俺にかまわず行け」
俺は並ぼうとする前に止まってしまった。
「え?……どうしたのコダイ」
「この先は――俺は行けない」
「何で?もしかして怖いの?」
「怖い以前の問題だ………俺には越えられないモノが目の前にある……」
「―――越えられないモノ?」
アリシアが真剣な顔で俺を見る。
「…………アレだ」
俺が指した先にアリシアも目線を送る―――そこにあったのは………
『この線より低い方は乗れません』(150cm)
………身長制限の看板だった。
「……………他を探そう?」
アリシアが微妙な顔をしてこっちを見てきた
「待っても良いが?」
「コダイの一緒に乗りたかったの……コダイが私達よりも大きくなったらね?」
前の世界でも環境や精神的な影響でかなり小さかったからな………この先への望み薄だな。
「当初の目的は潰れたけど次は何だ?」
「ん~……じゃあコーヒーカップ!」
アリシアが指したのは巨大なコーヒーカップに客が乗り、カップを乗せてる台とカップ自体が独立で回転している物だった……
子供のいるし制限は無さそうだな。
早速2人で開いているカップに乗り込んで暫くすると係員のアナウンスと共に動き始めた……
「ねぇ……これなんだと思う?」
「……荷物置き?」
アリシアと俺の間にあるカップの中心に突き刺さっている台の様な物だった。
「にしては小さいよね~………あ、回るみたい」
アリシアが興味津々で触って確かめると円盤部分が回転する事が分った。
周りを確かめてみると家族客の子供がその円盤を必死に回していた、するとカップ自体の回転が徐々に加速していった……
「どうやらカップを回転させるらしいな」
「なるほど~………ソイヤ!!!」
何を思ったのかアリシアの奴がソレを全力で回し始めた。
円盤が回される度にカップの回転速度が徐々に加速してい―――――
「きゃあああああああああああああああああ!!!」
「自業自得だな………」
きすぎてとんでも無い事に……
「逆に回せば何とか……だめだ方向が決まっている」
「コダイ~!!!助けて~!!!」
アリシアが涙目で抱き着いて来た………え?この状態って………
「今すぐ離れろ科学的な意味で、遠心力が乗っているこの状態で重心が1つになったら……」
――ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
更に加速した……
「にゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」
数分間における高速回転地獄がようやく終わり。フラフラのアリシアを支えながら近くのベンチで休憩を取る事にした。
「コーヒーカップって――絶叫マシンだったんだ」
「いや、今のは完全な自業自得だから」
パワー主体のアリシアが全力で回した為にコーヒーカップが終わっても回転し続けて、結局係員に止めて貰った。
「次は大人しい乗り物にしようよ………体に優しい奴で」
「お前がヘタこいても大丈夫な奴だな………」
項垂れるアリシアの隣でパンフレットの中から条件に合った物を探す……
「コレ何てどうだ?メリーゴーランド」
パンフレットの地図の中央付近を陣取っている設備でかなり巨大でここの遊園地の目玉の1つの様だ。
「メリーゴーランド?!」
突如アリシアが顔を上げてこちらを見た。
「ねぇコダイ、それ乗るんならちょっとお願いしてもいい?!」
「………は?」
その時、耳打ちで聞いたアリシアの願いに呆れてしまった……
「アリシア……本当にコレでいいのか?」
「うん!」
メリーゴーランドの中から白馬を『一緒』に跨り満面の笑みのアリシア。
状況を説明すると俺は普通に馬に跨り、アリシアは俺の脚に横向きに座りその状態で抱き付いてる。
「こんな風に乗る意味あるのか?」
「いや~実はドラマ見てやってみたいと思ったんだ~」
ドラマ何か見ないから分らないが……本来1人乗りの木馬に2人で乗る必要があるのか?…………ん?
「アリシア、外見てみろ」
「外?………あ」
アリシアが視線をメリーゴーランドの外に移す。
そこに居たのは、5歳位の少女達がこちらに向かって手を振っていた。
「え?………私?」
「そうみたいだな……手を振り返したらどうだ?」
「う、うん」
もう1周して今度はアリシアが恥ずかしそうに手を振る……するとさっきの少女達は更に大きく手を振ってた。
「アハハハハ………コレ、チョット恥ずかしい」
「そうか?」
アリシアはメリーゴーランドが終わるまでその少女達に手を振っていた。
終わってからも周囲からの微笑ましいものを見る様な視線が痛かった―――――
その後はアリシアも調子を取り戻し身長制限をクリアした物をハイペースで回り気付けばもう日も落ち始めてきた。
「この遊園地はナイター営業もしてるみたいだがまだ乗るのか?」
「コダイ!最後にアレ乗ろう!」
アリシアが指していたのは観覧車だった。
「遊園地の締めと言えばこれでしょ!」
「良く分らない……そっちに合わせる」
観覧車はかなり空いていたのですぐ乗れた。
「お~高い高~い」
「しかし結構カップル客が多かったな……」
パンフレットを見ると『全貌出来る景色を眺める恋人たちの絶景スポット』と書いてある………
ゴンドラがゆっくりと進み頂上に差し掛かると辺りが薄暗くなり遊園地の設備にイルミネーションが灯り始めた。
「わぁ~キレ~」
「タイミング的には丁度良かったのかな?」
この遊園地だけでなくビルや街灯にも明かりが灯っていく……
「うひゃぁっ!!!!」
突然アリシアが変な声を上げる。
声のした方を見るとアリシアが一点を見つめて震えていた。
「何があっ……………あ~」
後ろから覗き見て理解した。
俺達の後に乗っていた男女が薄暗い事良い事に抱き合ってた……それもやましい意味で。
「はわ……はわわわわわわわ!!そそそそそ外であああああああああんなことを!!」
「いや、どちらかと言うと密室の方が正しい様な……あれ?密室ならいいのか?」
「そもそもこんな所でししししししちゃダメでしょ!!!」
後ろからで顔が見えないが真っ赤なアリシア。その割にはガッツリ齧り付いているけどな。
「え……ウソ?!あんな所に手を………ふぇっ~?!しししししししししししししし舌があんなに?!」
「嫌なら見るなよ……と言うか実況するなよ」
アリシアの方を見ると顔を出て隠しているが指の隙間からバッチリ見ていた。
ダメだコイツ状況が状況なだけにもう目が離せない状況だな……無理にでも離させるか。
取り敢えず視界から剥がす為アリシアの肩を掴んだ………
「うひゃあああああああああああああああああ!!!」
肩に触れた瞬間、アリシアが跳び上がり暴れ始めた。
しまった、声を掛けるべき―――いや、あの状態じゃ聞かなかっただろうな。
「はうっ!!」
止めようとしたらアリシアがこっちに倒れてきた……それを座ったまま床に倒れない様に抱き留めた。
「ご、ごめんコダイ!」
「ゴンドラの中で暴れるな」
「うん……ゴメン」
「分ったらもう離れてくれ」
アリシアが小さな声で謝ってくる。今の体勢はたがいに向かい合ってアリシアが俺の肩に顔を埋めてる。
「うん………」
ゆっくりとアリシアが顔を離していくが……目の前で止まった。
「どうした?」
「えっ………とこのまま戻ったらまた見ちゃいそう」
「そうか、ならこっちを見てればいい」
「うん、ありがとう……」
そう言ってアリシアがコッチ……と言うか俺を見てくる。
アレを見た直後で顔はまだ赤いままだが目は何かトロンとしているし……
「その……ごめんね、こんなとこ連れてきて」
「アレは誰も予想できないだろ……」
「あ、あはははは……そ、そうだよね!あんな場所でしちゃう何て………」
「とにかく1周するまで辛抱だな」
「そ、そうだね!(ってアレ?――――この体勢もひじょーにヤバイんじゃ………と言うか顔が近い?!)」
その後はこの体勢のまま1周するのを待った……その時に。
「お疲れ様ですありがとうござ……あら?」
「ひゃうぁっ!!!」
――ゴン!!!
「うぅ~」
係員が扉を開けた瞬間。
奇声を上げて後ろに跳んだアリシアが向こう側の窓ガラスに後頭部を強打してしゃがんで悶えた。
「えっと……もう1周しますか?」
係員に聞かれ、悶えた状態で首を横に振るアリシア。
「もう帰るそうだ」
「えっと………お気を付けてお帰りください」
係員の苦笑いが印象的だった。
帰る時はアリシアが行く時には密着していたのに今では1人分の距離を開けて並んで帰る事になった………
~おまけ~
アリシア帰宅後……
「…………あぅ~!!……あのカップルの所為だ~」
ベットに顔をうずめて脚をバタバタさせて身悶えるアリシア……
「……その所為でコダイと抱き合っちゃう体勢になっちゃったし―――って思い出すな~!!あのままキキキキキキキキキスとか速いって!」
「へぇ…………そんなことしたんだ……姉さん。ちょっとO☆HA☆NA☆SHIしよ?」
地を這う様な声に振り向くとそこにはコダイの様なハイライトが無い目をしているフェイトがいた……
「フェイト?………何でバルディッシュを起動しているの!?……というかアルフ達は?」
「アルフとリニスはここに結界を張って先にO☆HA☆NA☆SHIしたよ?」
「手遅れ!?」
「姉さん……二人っきりで………O☆HA☆NA☆SHIシヨ?」
「ちょっと待って話聞いて!キスして無いから事故で抱き合っただけ――――いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「アリシア~ゴメンよ~アタシはフェイトの使い魔だから~」
「ゴメンナサイ………今のフェイトを止めるのは私達には不可能です……」
震えながら部屋の外で結界を張っていた使い魔'sだった……
頭翅様、武御雷参型様、鍛冶様、ミラ ランドラス様、桜日紅葉雪様、畏夢様、不屈の心様、つらら@ゆき様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~