ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第六話 マサラタウン帰還

 朝日に照らされ、目が覚める。

 知らない天井に、一瞬どこだっけ?と錯覚した後、ポケモンセンターに宿泊したことを思い出す。

 

 ベッドに座り、少しぼーっとする。

意識がもやもやしながら、シャワーを浴びていないし歯磨きもしていないことに気付く。

 

 ポケモンセンターについている設備を借り、身の回りを整える。思考がはっきりした。

 思考がクリアになったところでようやく気付く。

 

 

 

「そういえば、ピカチュウは?」

 

 

 

 

 

 ポケモンセンター内を探すと、すぐに黄色い巨体は見つかった。

 というより、センターのメインホールで立ち話よろしく、他のポケモンと会話(?)していた。

 どうやらコミュニケーション能力は高いらしい。そのへんもドーピングで強化されたのだろうか。

 

 

 暴れているのでは?と少し不安になっていた気持ちも落ち着き、自分も少しソファに座って、昨日のことを整理して考えることにした。

 

 

 

 サカキさんが言っていたドーピングアイテム。

 それはほぼ間違いなくオーキド博士が言っていた禁止アイテムのことだ。

 これがいつの間にか世界に出回っているということになる。

 

 博士がそれを言わずにこのピカチュウを渡したということは、おそらく知らないんだろう。

 いろいろなつながりをもつ博士が知らない。

 つまりサカキさんの言ってたとおり、「表」と「裏」の世界がほぼ完全に分かれているってことになる。

 

 そしてこのことを博士が知ったら、世間に公表するだろうか。

 

 

 

 ・・・いや、しないはず。世間にこのことが知られたら、大混乱になってしまうことくらい博士にはわかるだろう。

 であれば、博士には言うべきか。この先どうすればいいか、正直自分にはわからない。

 まずは博士に相談してみよう・・・。

 

 

 というわけで、一旦マサラタウンに戻ることにした。お母さんにこのことは話せないな・・・

 

 

 

 

 さて、と立ち上がる。

 

「ピカチュウー、いくよー」

「ピカ?ピカー」

 

 

 一応素直についてくるようだ。

 手を振ってポケモンと別れるピカチュウ。他のポケモンから見て違和感はないのだろうか?

 ちょっと疑問に思ったが、まあそれはポケモンにしかわからないことだ。

 ピカチュウを連れて、一路マサラタウンへ向かう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「おおおーお、サトシィ!随分早い戻りじゃないか。なにかあったかね?」

研究所につくと、早速博士が出迎えてくれた。

 

 

「オーキド博士、昨日ぶりです。はい、ちょっとお話したいことが」

 

「おお、では奥に行こうかね。おいしい紅茶が手に入ったから飲みながら話そうじゃないか。ピカチュウも元気そうじゃのう!」

 

「ピカー」ヒョイッ

 

「ぬわあああぁあぁあぁぁぁああ!もげるぅうううううやめるんじゃああぁあぁあ!」

 

「博士ー、先行ってますねー」

 

 

 

 慣れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究所にいたほかのポケモンが現れたおかげでことなきを得た博士が部屋に入ってきた。

 

 

「やれやれ、死ぬかと思ったわい。」

 

「ピカチュウはいつもあんな感じなのですか?」

 

「まあそんな感じじゃな。随分サトシにはなついておるようじゃ。よかったよかった。」

 

「(なついて・・・いるのかなあれは?)ピカチュウは?」

 

「ポケモンたちと戯れておるよ。心配ない。」

 

「そうですか。」

 

「さて、話とはなにかな?」

 

 

 

 

 

 僕は昨日サカキさんから聞いたことを全て話した。

 話す前は笑顔だった博士も、話が進むにつれて真剣な表情に変わっていった。

 

 

 

 

「・・・ということなんです。」

 

「なるほどのぅ・・・・まさかわしの使ったアイテムが出回っていたとは・・・おそらく同じ研究所の人間が情報を漏らしたのじゃろう。」

 

「どうしましょうか」

 

「ルールを変える、しかないじゃろうな。」

 

「・・・」

 

「サトシ、君がポケモンリーグチャンピオンになり、今のルールを変えるのじゃ。アイテムの使用を禁じるのじゃよ。」

 

「僕にできるでしょうか・・・」

 

「君にしかできない。正しい心を持つ君にしかできないことじゃ。やってくれるか?」

 

「わかりました・・・!やってみます!」

 

「たのんだぞ。ポケモンの未来はサトシにかかっておる!」

 

 

 

 

 

 

 

 意気揚々とオーキド博士の研究所を出て、再度トキワシティに向かって歩いている時にふと考えた。

 そういえば、僕はポケモンをピカチュウしか持っていない。

 裏のバトルでは禁止アイテムの使用が当たり前のようだけれど、当然そんなものは僕には手に入れられない。

 ということはピカチュウのみ。もしくは普通のポケモンをバトルに出すことになるのだけど・・・

 

 思い出す。サカキさんに見せてもらったバトルの映像を。

 

 

 あの威力で攻撃されたら、普通のポケモンはひとたまりもないだろう。

 瀕死どころではなく、そのまま息絶えてしまう。

 ということはピカチュウだけで進むしかないのだろうか。

 

 しかし、その映像は別の答えも映していたじゃないか。

 

 

 

「最強のポケモントレーナー、レッド。」

 

 

 

 彼は禁止アイテムを使用していない、ノーマルポケモンで裏のバトルを勝ち抜いた。

 圧倒的な能力の差を埋めて、勝ち進んだ。

 つまり、禁止アイテムなど使わなくても勝つ手段はある。

 

 

 

 ・・・といっても、到底その方法が思いつかない。

 

 

 

「うーん、まずはレッドを探そう。」

 

 どう探していいのかもわからないけど、当面そうするしか方法が思いつかなかった。

 

 

「と、普通のポケモンもある程度ゲットしなきゃね。ピカチュウ。」

 

「ピカー」

 

 

 

 そんなことを考えながら、トキワシティへ向かう夕方のひと時だった。

 

 

 

 

 

 

 


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