狂気&若干の胸糞注意。
これはオーキド博士がドーピングアイテムの研究に勤しんでいた時のお話。
ドーピングを行うことでポケモンがどう変化するかをつぶさに観察し、まとめていた時期。
博士も特に罪悪感などなく、研究者という立場でガンガンドーピングを使っていた狂気の時代である。
―――――――――――――――――――
「今日もワックワックドッキドキのドーピング実験だー!どのポケモンに薬物注入していこうかなー!?」
「たーのしみでーすねーオーキドはーかせ!」
めちゃくそハイテンションなオーキド博士。
そして傍には博士の助手である――――
「どのポケモンが面白くなりそうだろうね!?タツロウ君!!?」
「やーあっぱり、不定形のメタモンがおすすめ―でーすねー!」
タツロウと呼ばれた人物はこの研究所に来て一年程度。
少し間延びした口調が特徴ではあるが、根はいたって真面目。ここに来た当初はポケモンと人間の共生について研究したいですなんてお行儀のいいことを口にしていたものだ。
しかし見ての通り、この一年でかなりオーキドに毒されている。
同調する人物二人しかいない研究室。
結果的にいろんなものが破滅的な思考と共に進行していく毎日となっているわけである。
「さて、本日もいっくぞいっくぞレッツゴー!!」
「れっつーーごーーーー!」
研究者二人の目の前には、一メートルほどの回転する丸い板が壁についていた。
板にはポケモンの名前が記載されており、くるくる回る仕組み。あれだ。ダーツでタワシとかパ○ェロとかゲットできるやつにそっくりだ。
この研究室はオーキド博士が管理しているためか私物が非常に多い。
つまりパジ○ロゲットなルーレットもたくさんある私物の一つ。
いくつかあるキャビネットの中にはさらにいろんなオーキド道具が備わっているが、それはおいおい紹介できる機会もあるだろう。と思う。
「タツロウ君、スタートだ!」
「ル―――――レット、回!転!」
ガッ ギュルギュルギュルギュンギュンギュンギュンギュンギュギュギュギュギュギャアアアアアアアアアア!!!!!!
オーキドがスイッチを押すと、もう目視できないくらいのスピードで異常回転を始める。音がおかしい。
「さあ!ここで登場するのは新兵器!こちら!」
「こーちら」
そういってオーキドが壁についている赤いスイッチをポチっと押すと、ビーッビーッという音と共に床がせりあがってくる。
そうして出現したものは、長さ一メートル半ほどの大砲のようななにか。
「これこそが!このダーツのためだけに開発した『ビードル高速射出装置』であるぅ!」
「ひゃっはー!」
「この穴にビードルを詰めてスイッチを押すと」
「おすとー?」
「時速三百キロでビードルが射出される。」
「はやいー」
もはや狂気通り越して面白人間と化したオーキド博士と助手の二人。
「では発射」
「はっしゃ」
ポチっとな。
ボタンを押した瞬間、キュイーーーーンという起動音と共に、ゴウンゴウンと機械が動き始め―――――
次の瞬間爆散した。
―――――――――――――――――――
瓦礫につつまれた研究室内から最初に聞こえた声は
「がーーはっはっは!タツロウ君、無事かね?」
ゲホゲホと咳き込みながら助手が答える。
「はーいー、それよりはかせ、みてください。」
「おーー?おおー!ちゃんとビードルが刺さっておるわ!成功だな!一発しか撃てんし爆発するがな!」
「ですねー。」
「さてさて、何のポケモンが選ばれたかな?」
「えーーっとでーすね。」
「うむ。」
「タマタマですね。」
「タマタマかー!たまごポケモンだな!見た目からしてどこがどう変化するか想像し難い!だがそれがいい!さっそくレッツドーピング♪」
「どーぴんぐー!」
―――――――――――――――――――
研究所のポケモン管理部からタマタマを連れて研究室に戻る。
暴れてもよいように檻の中にモンスターボールを投げ入れ、タマタマを解放する。
「タマタマー」
「うむうむ、元気なタマタマだな!さて、順番にドーピングしていくかな・・・ええいめんどうくさい。全部いっぺんにやろう。」
「いっぺんにちゅーにゅーですー」
―――――――――――――――――――
一時間後――――
「タツロウくん」
「はいー」
「これはヤバイ」
「ですねー」
檻の中には、タマタマがいた。
本来は卵型の体を六つもった集合体のポケモンである。
だが、目の前にあるものはそうではない。
―――――都合百体近くの集合体。且つ現在も順調に増殖中な物体だった。
卵一つ一つを見ると、それぞれ色が違う。赤だったり緑だったり青だったり。
カラフルで綺麗だななんて思ったりもしたが、まさかその色の違いがそれぞれのもつ毒の種類によって分別されているとは。
檻は現在強化ガラスで完全密封してあるため問題ない。
問題ないが、無限増殖するタマタマがたまごばくだんを延々とこちらに向かって投げつけてくるのだ。
そしてそれが爆発するたびにその色の毒霧がブシャーっとガラスの檻の中で広がる。
当然のようにタマタマはその毒で死ぬことはないようだが、一つ一つの卵についた顔が白目ひんむいて一斉にこちらをガン見してくるのは心臓によろしくない。
当然といえば当然であるが、タマタマには嫌われてしまったようだ。
「オーキドはかせー、レポートはこんな感じでいいですかー?」
「うむ、ご苦労だったタツロウ君。しかしこのタマタマは廃棄だな。化学兵器としてどこかに投げ込めば壊滅を狙えそうではあるが、こうまで嫌われてしまうとそれも難しい。途中で浮遊して戻ってこられても困るし。記録が終わったら廃棄部に通しておいてくれ。」
「しょうちですー」
「今日の実験はこれでおしまいだな。明日はどんなポケモンが楽しませてくれるかな?楽しみだのー!」
「ですねー」
オーキド研究室。
ポケモン研究所内にある最もヤバいと称される場所であり、そこにいる二人も狂気に染まっている。
力を求めるがために正常な精神を損失した二人のポケモン研究はまだまだ続く。