ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第百二十七話 新たな仲間は友になれるか

「ここを歩くのは三度目だね、ピカチュウ。」

「ピカチャー」

 

シオンタウンからヤマブキシティへ向けて、現在のんびり歩いているサトシ一行。

一度往復している道なため、特に戸惑うことも無くゆっくりまったり歩いている。

時間的にはもうそろそろ日が落ちようかというところ。

たまには夜の行軍もよいかなとも思ったが、野宿は嫌なので今日中にはヤマブキシティまでたどり着きたいところだ。

野生のポケモンが生息してそうな深い草叢が広がってはいるが、基本的には平坦な道のりだ。一度通ってしまえば迷うことも無い。

 

ちなみに、シルフスコープはカバンの奥深くにしまってある。見たいと思わないし、見えても困る。死を偲ぶことは大事だと思うが、この世とあの世が交わって良い事など無いとサトシは思った。

ポケモンタワーの一件でシルフスコープの性能が発揮されすぎてしまったため、なおさらだ。

 

ピカチュウがたまに装着したがってカバンを漁るが、力づくで拒否する。

無論、すぐに負けて滑稽な顔をしたピカチュウが優柔不断にうろうろする謎のモンスターが誕生するわけだが。

 

 

「ピッピカチュ」

 

「ん?どうしたのピカチュウ」

 

 

なんとかピカチュウからシルフスコープを遠ざける方法は無いだろうかと考えていたサトシの肩をツンツンするピカチュウ。お腹すいたのかな?

 

「ピカピカ」

 

「ん?ああそっか。」

 

ピカチュウの指さす方向はサトシの腰あたり。つまりモンスターボール。

ようやくピカチュウが入る気になったかと期待したかったが、言いたいことはこれだろう。

 

「ゴースト、会っておかないとね。」

 

「ピカピカチャ」

 

フジ老人と交換で手に入れたゴースト。

そういえばまだボールから出していない。しっかりと交流しておかないといざってときの連携が難しくなるため、命に関わるバトルばかりのサトシにとっては必須な事だ。

サトシはモンスターボールを腰から外し、近くの地面に転がした。

モンスターボールが開き、赤い光が飛び出す。

すでに見慣れたその光がポケモンの形を作り出す。

 

そして生まれたポケモンは。

 

 

 

 

 

「・・・・・誰?」

 

 

 

 

ゴースト、と言われれば顔はそんな感じがするが二足歩行の丸っこいポケモンが姿を現した。

色もほぼ同じ濃い紫。だが、ゴーストはその名の通りゴーストっぽく浮いていたがこのポケモンはしっかりと地面に立っている。

ニタリ、という音が似あいそうな笑顔をサトシに向けたり、きょろきょろ夕暮れ時の景色を見たりしている。

 

「フジさんと交換したのはゴーストだったハズだけど・・・」

 

不思議に思ってポケモン図鑑を向けるサトシ。ポーン、と気の抜ける電子音を響かせて目の前のポケモンの情報をしゃべりだす。

 

『ゲンガー シャドーポケモン いのちをねらう標的の影に潜むといわれている』

 

 

「・・・それだけ?」

 

本当に図鑑なのか?と思えるほどに情報が少ない。こうなったら―――

 

 

 

 

『おおおーおサートシィー!!ひっさしぶりじゃのー!全く連絡が無いんで寂しかったぞガハハ』

 

「すみませんオーキド博士、いろいろ大変でして・・・」

 

『なあに気にするな!元気に生きておることがわかってなによりじゃわい!』

 

相変わらず元気な人だなと思う。だがそれに助けられることが多いのも事実だ。

 

『ところで何か用事かね?』

 

「実はポケモン交換でゴーストをもらったハズなんですが、ボールから出してみたらゲンガーっていうポケモンに変わっていてどういうことなんでしょう?」

 

『随分混乱しておるな!それはもちろん理由があるぞ!特殊進化というやつじゃな。』

 

「特殊進化?」

 

『そうじゃ。捻りも何もない名前じゃが、特殊な進化形式のことじゃ。これについてわかっていることはかなり少ない。』

 

サトシはピカチュウと戯れているゲンガーをチラリと見て、ポケモン図鑑へ再度顔を向ける。

 

『まず一つ、この特殊進化するポケモンは四種類しか発見されておらん。そしていくら育てても進化しないという。進化するのは、他人の手に渡った時、というのが通説じゃな。』

 

「他人の手に渡った時?そんなことで進化するんですか?」

 

『最もな疑問じゃな。じゃが、信憑性は高いぞ。確かに目撃例は少ないが、所持しているトレーナーも居ないわけでは無い。サトシは運がよかったのう!』

 

「なるほど、そういうことだったんですか・・・」

 

『うむ!バッジは残り四つじゃな!頑張るんじゃぞ~』

 

「ありがとうございます!博士!」

 

『ではの~』

 

プツンという音と共に、オーキド博士の顔が消え真っ黒な画面に戻った。

 

サトシは図鑑をしまって立ち上がり、ゲンガーの元へ向かう。

 

 

サトシが近づくと、ピカチュウとゲンガーが反応してこっちを見る。

 

「ゲンガー、よろしくね!」

 

「ゲン?ゲンガーガ」

「ピカピ?チャーピカピ」

「ゲンガー、ゲンガガー」

「ピカピカピー」

 

なにやらピカチュウとゲンガーが話し始めた。

 

サトシは首を傾げて、その行動を見守る。

 

何度かピカチュウとやりとりをすると、ゲンガーはサトシの方を向き、眺めている。

 

「ゲンガー?どうしたの?」

 

サトシが問いかける。

 

数秒後、ゲンガーは手で自分の目のあたりを押さえ、大きく舌を出した。

いわゆる『アッカンベー』というポーズに似ている。

 

 

「えええ!!なんでアッカンベー!?」

 

サトシが驚くと

 

「ゲギャギャギャギャ!!!」

 

お腹を押さえて笑い出した。

 

「え?え?どういうこと???」

 

 

サトシが混乱している中でゲンガーは笑い転げている。

 

そして急に倒れた。

 

 

「!!!ゲンガー!?」

 

 

慌てて近づいて倒れたゲンガーを見下ろしてみると

 

 

「ガー ガー zzz」

 

いびきをかいて眠っていた。

 

 

「・・・・どういうこと?」

 

 

 

サトシはゲンガーと仲良くなれるか若干不安になった。

 

 




ゲンガーは萌えキャラ。

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