ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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ナニコレ。


【番外編】オーキド博士のドーピング☆実験室 大会編

『第一回!ドーピングポケモントーナメント略してDPT杯!開幕ぅぅーーーーーーー!!!!!』

 

「「「「「うおぉおおおおおぉぉおおお!!!!!!」」」」」

 

 

 大規模な研究施設を丸ごと改修してバトルフィールドにし、観客席で囲んだ闘技場のような場所。

 五十メートルはありそうな縦長のフィールドを楕円形につつみこみ、階段状に観客席を配置した本格的なドーム状の建物。

 そこに押し詰めているのは大半が白衣と眼鏡にサンダルを身にまとったTHE研究者達。

 

 そう、研究者達による大規模な遊びもとい実験としてドーピングポケモンバトルが幕を開けたのだ。

 

 

 バトルフィールドに面した壁、客席のすぐ下に位置する場所で強化ガラスに包まれた席にいるのは――

 

「司会実況はこの俺!ポケモン生態研究室九期生、最近出した論文は『ポケモンの人工繁殖方法についての考察』、好きなポケモンはリザードンのコニシだ!ヨォロシクゥ!!」

 

 歓声の中、エコーのかかったマイク音声が響き渡る。

 そしてそれによりさらに熱を帯びる観客の嬌声。動物園と見紛うレベルで理性を飛ばしている。

 それほどまでに日頃のストレスがたまっているということだろうか。

 

 

「そして!俺の隣に座っているのはもちろんこの人!ポケモン研究の異端児!オモシロ研究者!天才と変態は紙一重!ドーピングサイコ!研究室破壊回数はダントツトップ!たまった始末書ファイルは百を超える!数々の異名を持つドーピングポケモン界きってのマッドサイエンティスト!オーキド博士だぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

 

 

「「「「「■■■■■■■■■■■■!!!!」」」」」

 

 

 何を言っているのかもはや判断がつかない程に、喉がぶっ壊れるのではと思える声を出す観客たち。

 オーキド研究室のレポートを毎度楽しみにしているファンもいれば、毎日のようにレアなポケモンを回収されていくポケモン管理部の涙の怒号も飛んでいることだろう。

 

 

「本大会では解説として入っていただきます!それでは解説のオーキド博士、一言どうぞ。」

 

「うむ―――ついに、ついにこの日がきた。わたしは待ちわびたのだ。作れど作れど廃棄されていく愛すべきポケモン達。彼らの死は無駄ではない。死というものはすべからく研究には必要なものだ。だが、それは死を与える人間達にとっては必要でも死するポケモン達にとってはなんの意味も無い虐殺であると。」

 

 一言どころか語り始めたオーキド。

 だがそれを止める声を完全無視して話を進める。

 

「だが!彼らがついに日の目を見るのだ!暗く冷たい研究施設から外へ出て、手に入れた力を存分に揮えるのだ!多くは破滅を導く失敗作!世間に出ることはあり得ない。しかしそれでもわたしは!オーキドという無力な研究者は願ったのだ!懇願したのだ!失敗という命の辞表を叩きつけられた彼らが役に立つ日がくるようにと!そしてついに!願いは叶う!このDPT杯こそ!その夢の世界!願望の盃!思う存分破滅的な力をぶつけてほしい!いざ!レッツ!!!ドーーーーゥピングゥゥゥゥウウウウウウ!!!!!!!」

 

 

 

 再度会場が揺れるほどの叫び声が上がり、熱は最高潮。

 まだ始まってすらいないのにフラフラガクガクになる者も出始めている。

 さすが研究者。体力が無い。

 

 

「さあ再度わたくしコニシに代わり、ルールの説明だ!ルールは簡単!八名のポケモントレーナーによるトーナメント戦!一対一で対戦し、決勝戦で勝利したトレーナーが栄誉あるDPT杯の初代チャンピオンだ!所持ポケモン数は一匹のみ!これはあれだ!多すぎるとマジで危ないからだ!お察し!!!そしてここにいる人間達!お前らの命は保障しない!睡眠不足な研究者ばかりで頭も意識も判断力もブッ飛んでる奴らばかりだと思うが、命は自分で守れよ!ちなみに一番危ないのはバトルフィールドに面している俺とオーキド博士だ!文句ねえだろ畜生!」

 

 

 そう、この場所にいるのは九割が命知らずで一割がノリで来ている。

 要するに全員疲れている。変わり映えのしない研究から現実逃避している連中ばかりだ。

 もちろんドーピングに関わる研究をしている人間にとってはなにかしら発見があるかもしれないが、それと自分の命を天秤にかけている時点で疲れている。

 

 こんな数多くの貴重な人材を死地に送り込む暴挙が研究施設に許されているのは、当然理由がある。

 まず、皆疲れていた。

 研究者というのは、研究が実って実績が生まれるからこそ研究しているのだ。

 だが、ここ数か月の間、ほぼすべての研究室で目立った発見も実績も生まれなかった。

 溜まるヘイト。溜まる鬱憤、ストレス。睡眠時間はどんどん削られ、無能な上司の罵詈雑言が飛ぶ日々。

 このままでは駄目だ、なにか発散することができなければ、皆頭がおかしくなってしまう。

 

 と一念発起したのが、一番頭がおかしい研究室のオーキド博士だった。

 

 

『ドーピングポケモンによるフィクション染みた力と力のぶつかり合いのバトルを娯楽として提供した場合による経済効果とストレス発散度数の考察』というもっともらしいことを並べただけの無茶苦茶な論文(読むと納得せざるを得ないレベルの論文)を学会で発表し、多くの賛同者(洗脳者)を得て、多大なる協賛資金と研究資金を獲得。

 それを元手にして、すでに使わなくなっていた大規模研究施設を買い取り、バトルフィールドへ改造。

 

 上の人間からすると頭を抱えざるを得ない状況ではあるが、もはや後には引けない為、安全対策を万全にするという条件で合意。

 

 そして今に至る。

 

 

 結果はバトルが始まる前から多くの研究者のストレスを解消していると言えよう。

 あとは穏便にバトルが終わってくれれば何の問題もないと共に、オーキドの論文の正当性が証明され、第二回大会の開催が決定されてしまうことには、まだ誰も気が付いていない。

 

 

 

「さあ早速始めていこう!第一試合はマサヒロVSヤスシ!!それ以外の情報は無い!!どんなイカれたドーピングポケモンを繰り出してくるのか!参考文献はオーキド研究室タツロウ助手著の研究レポートを見ろよ!どうせ全員持ってんだろ!!俺も持ってるぜ!!!さてそれでは両名、入場してくれーーーー!!!!」

 

 

 コニシ司会の紹介が終わると同時に、バトルフィールドに続く対面した二つの扉がズズズと重々しく開き始める。

 パッと見、鋼鉄製。ドーピングポケモンの持つ破壊ポテンシャルがどの程度か予想することが難しいため、十センチメートルほどの鋼鉄板を二枚重ねた扉を二重につけるという力の入れよう。

 ちなみにエスパー対策に観客席はエスパー遮断ガラスや緊急時観客離脱システムなど様々な防御オプションで守られている。

 貴重な人材資源は金を湯水のように使うことで賄っている。

 それでも命の危険が無くなるわけではないのが、このDPT杯のスリルポイントだ。

 もちろんトレーナーも特殊なガラス壁で守られている。抜かりは無い。想定できる範囲においては、だが。

 

 

 時間をかけて開き切った鋼鉄の扉の奥から、一人ずつゆっくりと歩いてくる。

 

 電灯とスポットライトに照らされた二人は、案の定、白衣姿だ。

 

 

「さあフィールドの上では肩書きなど不要!マサヒロとヤスシ、一体どのようなポケモンを繰り出すのか!それではバトル、スターーーーーートオゥ!!!!!」

 

 ワッと沸き上がる歓声の中、二人の研究者、もとい、この場では一人のポケモントレーナーが、互いにモンスターボールを手に取る。

 

 

 

 バトル開始の合図と共に、先ずはマサヒロがモンスターボールを広いフィールドに投げ放つ。

 

 ボールから放たれた赤い光が作り出すのは巨大な影。

 地上に降り立ったのは、炎を纏う四つ脚の怪物――――

 

 

「―――っと、これは一体なんのポケモンだ!!??四つ脚の炎ポケモンなんてギャロップくらいしかいないのでは!?解説のオーキド博士!」

 

「うむ!あれはギャロップとは似ても似つかぬな!だが四足歩行のように見えるが、あの姿、火を噴き続ける様子から、ブーバーじゃな!!」

 

「なななんと!あれがブーバー!!しょっぱな飛び出してきたのは四足歩行で筋骨隆々になってしまった炎ポケモンのブーバー!ドーピングは攻撃力の極振りか!腕力にモノを言わせて疾走しつつ、火炎放射と炎のパンチをお見舞いってか!!レアポケモンなのにドーピングの容赦ないな!!だがそこがいい!ポケモン管理部に怒られろ!!」

 

 

 ブーバーは二足歩行の炎タイプのポケモン。

 生息地はグレン島でのみ発見されている非常にレアなポケモン。

 そんな貴重な個体があろうことかパワー極振りで異常発達した両腕と両足によってまるで重戦車のようなシルエットをしている。

 特徴的な炎の流線形をそのまま形にしたような頭部ももりあがった肩に隠れ、パッと見でブーバーだと判断したオーキドはやはり権威と言える。

 

 

「さあそれに対するポケモンは一体なんだ――――・・・・ってあれ、あのモンスターボールはなんでしょうか!オーキド博士!あれ何!!」

 

「ぬ?どれどれ・・・」

 

 

 ヤスシの持つモンスターボールは、雁字搦めに鎖が巻き付き、「封」と達筆で書かれた札とか「危険」とか書かれたシールが貼り付けてある。見た目だけで開けてはいけないとわかるような代物のように見えるのだがどういうことなのか。

 

 

「おおおおおおお!!!あれは封印指定!さっそくでてきたな!!」

 

「封印指定!?なにそれ!!オーキド博士説明を!早く!!」

 

 

 実況席が異常な盛り上がりをしている。

 ある意味当然だ。なにしろフィールドに一番近い。逃げるかどうかの判断を真っ先にしないといけないのだ。

 

「その名の通りじゃよ!封印する必要があるくらい危険性のある失敗作じゃ!廃棄することも難しく、保管するにも危険!まさに封印しなければ危険なドーピングポケモンということじゃ!がっはっは!!楽しみじゃなああ!!」

 

「ぜんっぜん楽しくないが!この人が逃げて無いってことはまだ大丈夫!!横の様子を気にしながら実況するぜ!覚悟を決めろ!逃げたら一生チキンの汚名を着せてやる!!」

 

 

 

 ヤスシが力任せにモンスターボールにからみつく鎖を引きちぎる―――だけの力は無いので、ゆっくりと紐解く。

 

 そして鎖のほどけたモンスターボールを、思いっきり空高く放り投げた。

 

 

 

 モンスターボールが開く。

 

 次の瞬間、煌々と照らされていたバトルフィールドの大半を巨大な影が覆った。

 

 

 

 上を見上げるブーバーとマサヒロ。そして実況席の二人。

 突然の出来事にフィールドを見下ろす観客。

 

 その大きな影がフィールドに落ちると、地獄が完成した。

 

 

「なななななんだーーー!!!!???これはどういうことだ!!!!何が起きてるーーー!?!?!?」

 

 

 マイクの線が切れそうな程に叫ぶ実況コニシ。一回戦目からフルスロットルだ。

 だがそれも頷ける。

 今実況席を守るガラスの鉄壁は、紫色のドロドロしたもので完全に見えなくなっているのだ。

 

 

「なんっっっも見えねえ!!!解説のオーキド博士!!!お前が頼りだよろしく頼む!!!!!」

 

「初戦からなんというものが見られるんじゃ!テンションあがるな!こいつはベトベターじゃ!いや、こうまで広範囲をカバーするヘドロを生み出せるとなるとベトベトンレベルかもしれんな!どちらにしてもなんも見えんな!がはは!」

 

「なるほど博士ありがとう!確かに見えなきゃ実況できねえ!カメラさーーーーん!」

 

 

 

 

 コニシが叫ぶと、目の前に空からの映像が映し出される。

 どこまで金をかけてるのだろうかこの大会は。

 

 映し出された映像は、まさに地獄だった。

 

 フィールドの大半を埋め尽くした紫色。

 強化ガラスで守られたトレーナー二人の無事が確認できたことは行幸ではあるが、ブーバーらしき影はどこにもない。

 要所要所で何かが溶けて蒸発したような煙がブシューブシューとあがっていることから、強酸性の毒ヘドロのようなものなのだろう。

 あっという間に溶けて無くなってしまったことが容易に想像できる。

 

 超頑丈に作っている会場だからこそ無事だが、ここでなければ会場にいる観客もろとも全滅しかねない生物兵器。

 どうやら封印指定とは過剰表現でもなんでもなく、言葉通りの意味らしい。

 

 

「ブーバーは消えてなくなっちまったがトレーナーは無事で何よりだ!貴重な人材資源は大事にしないとな!あとマサヒロ選手はレアポケモンを失った始末書を今日中に提出忘れんな!」

 

 声は聞こえないががっくりと膝をついているマサヒロの姿が映し出される。なんというか、悲惨。

 

「というわけで第一試合はヤスシ選手の勝利!これどうやってボールに戻すのかわからねえけど専門の業者がいるらしいから会場復旧まで休憩な!その間はお待ちかねのオーキド博士の解説タイムとシャレこもうじゃないの!オーキド博士よろしく!!」

 

 

 わああああと歓声のあがる観客席。

 それは勝利者を称えるものか、敗者を慰めるものか、恐怖に打ち震えるものか、それとも単に騒ぎたいだけか。

 様々な思惑が交錯する中、DPT杯は続く。そしてオーキドもノリにノッている。

 

 

「がはは!一試合目からこうも素晴らしいドーピングポケモン達が骨肉の争いを繰り広げるとは眼福じゃな!まあ骨も肉も残さず無くなってしまったがな!こんな特等席で見れるというのにコニシ君、慌てすぎじゃないかね?―――何?マジでちびりそう?がっはっは!大丈夫大丈夫!多分な!さて今の試合はブーバーとベトベトンのバトルじゃったが、やはり質量というのは非常に強力じゃな。当然それを打倒すポケモンも存在するだろうが、質量は力!物量は暴力!ある意味基本ともいえる原則に忠実で、さらに触れたものを溶かすという毒性を強めたヘドロポケモン。まさに悪夢の兵器といえよう!反してブーバーじゃが決して弱いわけではない。戦う姿が見れなかったのは心残りじゃが、あそこまで最適化したドーピングポケモンは非常に作るのが難しい。全身でなく、四肢を中心に能力を高め、全身に炎を纏うことによって、単体での戦闘能力はかなり高レベルと判断できる!ベトベトンに敗北してしまったのは単に相性の問題だな!相手によってはかなり強力であっただろう。そう考えると采配の運がなかったともいえるし、逆に言えばこのブーバーに当たらなかった他の選手はラッキーだったともいえるな!」

 

 

「なるほど~今日も絶好調のオーキド博士!さすがはドーピングで数多くのポケモンを使い潰してるだけはある!」

 

「がっはっは!褒めても何もでないぞ!」

 

「褒めてねえ!!だがそこがいい!そんなこんなで会場の状態が整ったようだぜ!専門業者さすがだな!めちゃめちゃ早い仕事に大感謝だ!」

 

 あっという間に広がったベトベトンがモンスターボールに収納(封印)され、溶けて使えなくなったライトだのの周辺機械を交換し、バトル前とほぼ同じ状態まで復旧されている。

 撤収作業を進める専門業者に惜しみない賞賛と歓声が掛けられる。

 全ての事が好意的にとらえられる幸せな空間だ。やっていることはカオスでしかないが。

 

 

「んじゃあ第二試合にいくぜ!次の選手は―――・・・ってオイオイオイマジか!オーキド博士きいてねえぞ!どうなるんだこれ!次のバトルはヒロキVS――――タツロウ!!」

 

 

「「「「「グオアアアアアアーーーーー!!!!!」」」」」

 

 もはや獣の咆哮とでも言おうか。

 ある意味この研究所で一,二を争う有名人となりかけている人物。

 そう、オーキド研究室のドーピングポケモンレポートの著者、タツロウ助手であった。

 ファンというか、ある意味神扱いされている人物といっても過言ではない。

 そしてそのキャラから女性人気も高いという脅威のスペック。

 オーキド研究室は求めるレベルが非常に高い上に入りたがる人も少ないという圧倒的さを誇る場所だったが、そこへ入れた唯一無二の人物としても有名で、知能面も優秀だ。

 

 

「俺はまだ疑心暗鬼だぜ!本当に本人か?タツロウって名前は他にもいるんじゃねえのか?どうなのよオーキド博士!とりあえず出てきてもらおうか両選手入場だーーーー!!!!!」

 

「がはは、でてきてのお楽しみじゃ!」

 

 

 高らかに笑うオーキド博士を横目に、再度重苦しく二つのドアが開いていく。

 

 二重扉が開ききり、今度はスタスタと扉の奥から姿を現す。そこにスポットライトがあたり――――

 

 

 

「やあぁっぱりてめえか!!!!あまりにも有名!唯一オーキド研究室に耐性を持つ脅威のマッドサイエンティスト候補!オーキド二号!そして我らがバイブル『ドーピングレポート』の著者!!!こいつ出てきちゃ駄目だろう!!!!一番駄目なやつだろ!!!というかオーキド博士自身が出場するのを止めるのにいっぱいいっぱいで目が行ってなかったぜ畜生!!!!!!!」

 

 

 早足で出てきたタツロウはふにゃふにゃと手を振り、聞こえないのだがおそらくいつもどおり「たーのしみでーすねー」とか言っているに違いない。

 

 相対するヒロキはすでに顔が青い。いや、研究者なのでもともと体調が優れないのかもしれないが、輪をかけて酷い。

 

 

「ぐだぐだ嘆いていても始まらねえ!もういこう。いっちゃおう。何があっても知らねえぞ第二試合、開始ィ!!!」

 

 

 始まると同時に、タツロウがボールを放り投げる。

 ほんとに自然な動作で、いつも通りに、ぽーんとボールを放り投げる。

 

 当然のようにボールに貼ってある『封印』の札。

 

 

 

 そして中央付近でパッカンと割れるモンスターボールから出てきたのは――――

 

 

 

 全身にピキピキと血管のようなものが走った、紫色と赤色をごちゃまぜにしたような体色で、空中に少しだけ浮いていて、パンパンに張りつめた球体が三つほどつながっていて、凶悪な般若のような顔を必死に歪ませている、体長が五メートルはありそうなモンスターだった。

 

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

 

 会場が静まり返る。

 

 それも数秒。

 

 数秒後に、本日最も大きい声を、観客全員が発した。

 

 

 

「「「「「「「うわあああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

 

「マタドガスじゃねええかああああ!!!なんてもの出しやがる!全員まとめて自爆するつもりかよあいつ!!!ってタツロウどこいった!!!??」

 

 

 フィールドを見ると、ゴゴゴゴと閉まる扉の奥から手を振っているタツロウが見えて、すぐに見えなくなった。

 

 

「タ、タツロウ逃げやがった!!!!!おいオーキド!!!これどうなって・・・・ってオーキドどこいったーーーーーああああああああああああ!!!!!!!ふざけんな俺も逃げる!!!!!!おたっしゃで!!!!」

 

 

 阿鼻叫喚。

 

 疲れ果てていたハズの研究者は我先にと会場から逃げ、選手も逃げ、実況も解説もスタッフも全員逃げた。

 

 

 

 そして、頑丈さにこだわって作った会場は、その機能を思う存分発揮し、外壁だけ残して内部の設備を悉く爆発炎上させるにとどまった。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 後日。

 

 

 研究所内では新たな発見や研究成果が多発。

 多分いろいろな刺激や命の危機を感じたことによって覚醒したのでは、と懲りずにあらたな論文をでっち上げて第二回大会を画策するオーキドの姿があった。

 

 ちなみにタツロウ人気はとどまることを知らず、『破壊神』とか『自爆厨』とか『ハイパーヤンデレ野郎』とかいろいろな異名をGETするに至ったが、本人はそんなこといざ知らず、オーキドと共にあらたなドーピングポケモンを生み出す日々に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 




自重しない。

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